脳卒中や脳梗塞は、日本人の死因の上位に食い込みます。
ところで、脳卒中と脳梗塞の違いとはどのようなものなのでしょうか。
また、予防するにはどうしたらよいのでしょうか。
本記事では、脳卒中と脳梗塞の違いについて、以下の点を中心にご紹介します。
- 脳卒中と脳梗塞の違いとは
- 日本人の死因と脳卒中
- 脳卒中の原因とは
脳卒中と脳梗塞の違いについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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脳卒中と脳梗塞の違い
脳卒中と脳梗塞の特徴をそれぞれ解説します。
両者の違いを知るためにも、ぜひご参考ください。
脳卒中
脳卒中とは脳血管障害の別称です。
具体的には、脳血管が詰まったり破れたりすることで、脳内の血液循環が滞った状態を指します。
脳卒中は「脳出血」と「脳梗塞」の2つに分けられます。
つまり脳梗塞とは、脳卒中の1種なのです。
脳卒中の代表的な種類は以下の通りです。
- 脳梗塞
- 脳内出血
- くも膜下出血
脳卒中によって脳血管に障害が起こると、そこから先へは血液が届きません。
血液を受け取れなくなった脳細胞は酸欠に陥り、やがて壊死します。
壊死の範囲が広いほど、脳機能には大きなダメージがあらわれます。
たとえば、歩行障害や言語障害といった後遺症が残りやすくなります。
前兆としてあらわれる症状
脳卒中は多くの場合、ある日突然発症します。
しかしなかには、本格的な発症前に、前兆のような症状があらわれることもあります。
特に脳梗塞・くも膜下出血は前兆症状があらわれることが多いです。
脳卒中の代表的な前兆症状とは、たとえば以下のようなものです。
- 片側の手足に力が入らない
- 片側の顔面が歪む
- まっすぐ歩けない
- 片側の手足がしびれる
- ろれつが回らない
- 言葉が出てきづらい
- 片目が見えない
- 視野が狭くなる
- 激しい頭痛
- 嘔吐・吐き気
救急車を呼ぶタイミング
脳卒中の症状・前兆があらわれたら、すぐに救急車を呼ぶのがベストです。
特に意識障害がある場合は、すみやかに医療機関に搬送してください。
症状が軽微の場合は、#7119に電話するのも1つの方法です。
#7119は救急安心センター事業の番号で、医師や看護師などの医療関係者が、救急車を呼ぶ場合の相談に乗ってくれます。
軽度のしびれのみがみられる場合や、会話・歩行に問題が無い場合は、ひとまず相談してみましょう。
治療方法
治療方法は脳卒中の種類に応じて違います。
たとえば脳梗塞の場合は、脳血管の詰まりを解消するような治療法がとられます。
一方、脳内出血・くも膜下出血の場合は、脳血管の出血を止めるための治療を行います。
止血剤や、脳のむくみをとる抗浮腫剤の利用が代表的です。
あるいは、破れた血管を塞ぐような手術を行うこともあります。
- 開頭クリッピング術
- 血管内コイル塞栓術
出血がひどい場合は、頭蓋骨を外して、脳内に詰まった血の塊を取り除く手術が行われることもあります。
脳卒中の原因の多くは高血圧です。
そのため脳卒中の治療では、同時に高血圧の治療を行うことも少なくありません。
たとえば血圧を下げる薬剤の投与を行います。
後遺症
脳卒中は、治癒後も後遺症が残ることが少なくありません。
運動障害 | 半身が動かしづらい・力が入らない・まっすぐ歩けない・足をひきずる |
感覚障害 | 手足のしびれ・手足の感覚が過敏になる・手足の感覚がにぶくなる |
視覚障害 | 目が見えない・視野の一部が欠ける・二重映しに見える |
言語障害 | ろれつが回らない・言葉がでてきづらい・言葉の意味を理解できない・読み書きが困難 |
認知機能の低下 | 注意力の低下・記憶障害・社会的な行動ができない |
その他 | 嚥下障害・排尿障害・抑うつ |
脳卒中の後遺症として代表的なのは、痙縮です。
筋肉が過度に硬直してしまい、手足が動かしづらくなる状態です。
手足が自分の意思と関係なく動くケースも見られます。
具体的には、以下のような症状があらわれます。
- 手指が曲がったままになり、開きづらい
- 肘が曲がったままになる
- 足の指が内側に丸まる
予防方法
脳卒中の主な原因は高血圧です。
つまり脳卒中を予防するには、高血圧を予防することが大切です。
高血圧予防のためには、以下のような生活を心がけましょう。
- 塩分を控えめにする
- 動物性の脂質を控え、悪玉コレステロールを増やさない
- 野菜・果物・魚を積極的に摂る
- 1日3食規則正しく食べる
- 飲酒はほどほどにする
脳梗塞
脳梗塞は脳卒中の1種です。
脳卒中のなかでも、脳血管が詰まるタイプを脳梗塞と呼びます。
血管が詰まる原因は、動脈硬化などによって血管内部が狭くなるためです。
あるいは血栓という血の塊が血管を塞ぐこともあります。
血管が詰まると、そこから先へは血液が届かなくなるため、脳細胞が壊死します。
そのため脳梗塞では、重大な後遺症が残ることが少なくありません。
脳梗塞は、大きく分けると以下の3タイプがあります。
- ラクナ梗塞:細い血管が詰まるタイプ
- アテローム梗塞:太い血管が詰まるタイプ
- 心原性脳梗塞:心臓でできた血栓が脳血管を詰まらせるタイプ
前兆としてあらわれる症状
脳梗塞は、本格的な発症前に前兆があらわれる場合が多いです。
代表的な前兆症状は以下の通りです。
- 片側の手足に力が入らない
- 片側の顔面が歪む
- まっすぐ歩けない
- 片側の手足がしびれる
- ろれつが回らない
- 言葉が出てきづらい
- 片目が見えない
- 視野が狭くなる
- 激しい頭痛
- 嘔吐・吐き気
前兆症状は数分~数時間で消失することもあります。
短時間で症状が消える場合は、一過性脳虚血発作と呼ばれます。
一過性脳虚血発作は、一時的に脳の血流がストップすることです。
血流はすぐに再開されるため、伴って症状も消失するのが特徴です。
一過性脳虚血発作は一時的な発作ですが、その後、脳梗塞に発展することが少なくありません。
もし脳梗塞の前兆症状があらわれた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
救急車を呼ぶタイミング
脳梗塞で救急車を呼ぶタイミングは、脳卒中と大きな違いはありません。
症状に気づいた時点で、すぐに救急車を呼びましょう。
症状が軽微の場合は、#7119に連絡するのも1つの方法です。
なお、脳梗塞・脳卒中は、治療開始が早いほど、その後の重症化や後遺症のリスクを低減できます。
すこしでもおかしいと感じる症状がある場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。
治療方法
脳梗塞の治療法は、発症後の経過時間によって違います。
発症後4.5時間以内であれば、t-PA治療を用いることが一般的です。
t-PA治療は、静脈に薬剤を注射して、脳の血栓を溶かすという治療法です。
血管の詰まりを解消することで、脳の血流を再開させるのが狙いです。
t-PA治療の前には血液検査などが行われます。
検査時間は平均1時間ほどです。
つまり有効時間内にt-PA治療を始めるには、発症から3.5時間以内に病院に到着している必要があります。
発症後4.5時間以上経過している場合や、t-PA治療で十分な効果を得られない場合は、血管内治療を行うことが一般的です。
血管内治療とは、カテーテルという細い管を血管に挿入する治療法です。
より具体的には、カテーテルを通して血管を開通させたり、血管の詰まりを取り除いたりします。
t-PA治療と血管内治療は併用されることもあります。
たとえば「内頸動脈」「中大脳動脈水平部」などの太い血管が詰まっている場合が該当します。
太い血管が梗塞した場合、t-PA治療のみで血管を再開通させるのは困難であるためです。
t-PA治療後に血管内治療を行うと血管の再開通率が上がるだけでなく、治癒後の後遺症リスク低減も期待できます。
t-PA治療と血管内治療の併用は、発症24時間以内が一般的です。
なお、実際の治療法は、脳梗塞の発生部位などによって違います。
後遺症
脳梗塞による後遺症は、脳卒中の後遺症と大きな違いはありません。
運動障害 | 半身が動かしづらい・力が入らない・まっすぐ歩けない・足をひきずる |
感覚障害 | 手足のしびれ・手足の感覚が過敏になる・手足の感覚がにぶくなる |
視覚障害 | 目が見えない・視野の一部が欠ける・二重映しに見える |
言語障害 | ろれつが回らない・言葉がでてきづらい・言葉の意味を理解できない・読み書きが困難 |
認知機能の低下 | 注意力の低下・記憶障害・社会的な行動ができない |
その他 | 嚥下障害・排尿障害・抑うつ |
予防方法
脳梗塞の原因は、脳卒中と大きな違いはありません。
具体的には、生活習慣の乱れが原因で発症します。
そのため脳梗塞を予防するには、生活習慣を見直すことが大切です。
- 栄養バランスのよい食事
- 適度な運動
- 十分な睡眠
- 禁酒・禁煙
反対に脳梗塞のリスクを上昇させるのは、以下のような要因です。
- 生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質代謝異常)
- 肥満
- 禁煙・飲酒
- 運動不足
- ストレス
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性別にみた死因順位
令和2年の男女の死因の違いを以下の表にまとめました。
男性 | 女性 | |
1位 | 悪性新生物 <腫瘍> | 悪性新生物 <腫瘍> |
2位 | 心疾患 | 心疾患 |
3位 | 脳血管疾患 | 老衰 |
4位 | 肺炎 | 脳血管疾患 |
5位 | 老衰 | 肺炎 |
6位 | 誤嚥性肺炎 | 誤嚥性肺炎 |
7位 | 不慮の事故 | 不慮の事故 |
8位 | 腎不全 | アルツハイマー病 |
9位 | 自殺 | 血管性等の認知症 |
10位 | 慢性閉塞性肺疾患(COPD) | 腎不全 |
脳血管疾患は、男性では3位、女性は4位です。
男性の脳血管疾患による死亡人数は5万390人、死亡率は84.0%でした。
対して女性の死亡人数は5万2,588、死亡率は83.0%でした。
なお、死亡総数に占める脳血管疾患の割合は、男女合計で7.5%でした。
脳血管疾患によって死亡する方は、その他の疾患・原因に比べても多いことが分かります。
出典:厚生労働省「性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」
脳梗塞というと、突然倒れて意識を失うイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、それは脳梗塞の症状のほんの一部なのです。脳梗塞の原因や症状についてよく理解することで、もしもの時に適切な対応ができるようにしましょう。また、[…]
脳卒中の5大リスク
脳卒中を引き起こし得る5大リスクをご紹介します。
脳卒中予防のためにも、ぜひご参考ください。
高血圧
血圧が慢性的に高い状態です。
具体的には、140/90mmHgで高血圧と診断されます。
高血圧の主な原因は以下の通りです。
- 偏った食生活
- 運動不足
- 肥満
- 飲酒・喫煙
- ストレス
糖尿病
血糖値が慢性的に高い状態です。
血糖値を下げるホルモン「インスリン」の働きが低下することが原因です。
予防法は以下の通りです。
- 栄養バランスのよい食事
- 糖質・脂質の摂りすぎに注意する
- 適度な運動
- 十分な睡眠
- 肥満を予防する
脂質異常症
脂質異常症は、血中の悪玉コレステロール量が異常に増える状態です。
善玉コレステロール量が異常に少なくなる場合も含まれます。
脂質異常症の主な原因は以下の通りです。
- 過食
- 喫煙・大量飲酒
- 運動不足
- 遺伝
- 肥満
不整脈
不整脈は、心拍のリズムが乱れることです。
心拍のリズムが乱れると、血液の成分が凝固して血栓ができやすくなります。
血栓が血液に乗って脳に運ばれ、血管を詰まらせると、脳梗塞の原因となります。
不整脈の代表的な要因は以下の通りです。
- 生活習慣病(高血圧・糖尿病)
- 心疾患
- ストレス
- 薬の副作用
喫煙
喫煙は脳卒中の代表的な原因の1つです。
タバコの煙に含まれるニコチンは、血管を収縮させたり、損傷させたりするためです。
喫煙する方は、非喫煙者に比べて脳卒中のリスクが2~3倍高いと指摘されています。
喫煙していた方が途中で禁煙した場合、脳卒中リスクは徐々に下がります。
ほかにもある脳血管障害
その他の脳血管障害についてご紹介します。
ぜひご参考ください。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳卒中の1種です。
脳の表面にある「くも膜」の下の血管が破れて、脳内出血が起こった状態です。
最大の特徴は、突然、激しい頭痛があらわれる点です。
くも膜下出血は、発症前に前兆症状があらわれるケースもみられます。
くも膜下出血の主な前兆症状は以下の通りです。
- 血圧の大きな変動
- 頭痛
- 視力低下
- めまい
- 吐き気・嘔吐
- 意識低下
脳溢血
脳溢血は、脳内に血液があふれることです。
脳出血という名称でも知られています。
脳梗塞と同じく、運動障害・麻痺・言語障害などの後遺症が残ることが少なくありません。
頸動脈狭窄
のどの太い血管が狭窄して、脳への血流が滞る状態です。
あるいは狭窄によって生じた血栓が血管を詰まらせることもあります。
頸動脈狭窄は脳梗塞に移行することも少なくありません。
ただし軽度の場合は自覚症状があらわれないこともあります。
もやもや病
ウィリス動脈輪閉塞症とも呼ばれます。
ウィリス動脈輪とは、脳の太い血管につながる細い血管で、輪っか状をしているのが特徴です。
もやもや病では、ウィリス動脈輪がゆっくり閉塞していきます。
脳の血流が滞るため、脳卒中に似た症状・後遺症があらわれます。
もやもや病には、虚血型と出血型の2タイプがあります。
脳動静脈奇形
胎児に発生する先天異常です。
脳内の動脈と静脈が直接つながり、血管の塊ができてしまうという疾患です。
血管の塊が破裂・破れたりすると、脳内には出血が起こります。
出血はしていないものの、けいれん・麻痺などの症状があらわれることも少なくありません。
脳卒中と脳梗塞の違いについてのまとめ
ここまで、脳卒中と脳梗塞の違いについてお伝えしてきました。
脳卒中と脳梗塞の違いの要点を以下にまとめます。
- 脳梗塞は脳卒中の1種である
- 脳卒中は、日本人の死因の上位に入る
- 脳卒中の5大リスクは、生活習慣病・喫煙など
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。