くも膜下出血は、脳動脈瘤の血管が突然破裂する病気です。
くも膜下出血の原因には、頭部を強打する、もやもや病などがあります。
くも膜下出血にはどのような症状があるのでしょうか?
本記事では、くも膜下出血の症状について以下の点を中心にご紹介します。
- くも膜下出血でみられる症状とは
- くも膜下出血の前兆症状
- くも膜下出血の治療方法について
くも膜下出血の症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
スポンサーリンク
くも膜下出血とは
くも膜下出血とは、脳動脈瘤が突然破れて出血した状態をいいます。
脳は、外側の硬膜、くも膜、内側の軟膜という3層の脳膜に覆われています。
くも膜と軟膜の隙間には、脳に酸素と栄養素を届ける太い動脈があります。
太い動脈が突然破れて、くも膜下出血となります。
くも膜下出血の原因としては、脳動脈瘤破裂がほとんどです。
頻度としては、1年で人口10万人あたり約20人で、好発年齢は50~60歳代、女性が2倍多くなっています。
また、危険因子として
- 高血圧
- 喫煙
- 多量の飲酒
- 家族性
などが考えられます。
スポンサーリンク
くも膜下出血は脳卒中の一種
くも膜下出血は脳卒中の1種に含まれます。
脳卒中の特徴・その他の病気をご紹介します。
脳卒中とは
脳卒中とは、脳血管障害の総称です。
具体的には、脳血管が詰まったり破れたりすることで、脳細胞が壊死した状態を指します。
脳細胞が壊死した部分の機能は失われます。
たとえば脳卒中の後遺症で運動失調がみられるのは、運動機能を司る脳細胞が壊死したためです。
脳卒中の原因の多くは動脈硬化です。
脳の血管が脆くなるため、詰まったり破れたりしやすくなります。
出典:厚生労働省【脳血管障害・脳卒中 | e-ヘルスネット】
脳卒中の種類
脳卒中には主に3種類あります。
- 脳梗塞
- 脳出血
- くも膜下出血
脳梗塞・脳出血についてそれぞれご紹介します。
脳出血
脳出血は、脳の血管が破れて出血する状態です。
あふれ出した血液は時間が経過すると血腫(血の塊)となって、脳細胞を圧迫します。
さらに時間が経つと、あふれ出した血液によって脳がむくみます。
いずれも脳細胞が壊死しやすくなるため、身体に重大な障害が残りやすくなります。
脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が詰まったり狭くなったりする状態です。
脳内の血流が著しく停滞するため、脳細胞が酸欠を起こして壊死しやすくなります。
脳梗塞というと、突然倒れて意識を失うイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、それは脳梗塞の症状のほんの一部なのです。脳梗塞の原因や症状についてよく理解することで、もしもの時に適切な対応ができるようにしましょう。また、[…]
くも膜下出血でみられる症状
くも膜下出血でみられる症状には
- 経験したことないような激しい頭痛
- 意識が朦朧とする
- 吐き気や嘔吐
などがあります。
それぞれ具体的にご紹介します。
経験したことないような激しい頭痛
くも膜下出血で特にみられる症状には、激しい頭痛を経験する方が多いです。
頭痛の症状は、突然の持続する頭痛、急に痛みはじめた頭痛、バットで殴られたような頭痛など表現はさまざまです。
今までに経験したことないような激しい頭痛と表現するほどの激しい痛みが起こります。
しかし、頭痛をほぼ感じない例もあります。
意識が朦朧とする
意識が朦朧とする症状も比較的多くみられます。
頭痛もなく、急に意識を失ったり、寝ていたりするような症状もみられます。
そのほか、数時間以内もしくは数分以内に繰り返し眠気と錯乱が起こることもあります。
反応がなくなったり、覚醒が困難になったりする場合もあります。
吐き気や嘔吐
激しい頭痛の後、吐き気や嘔吐などの症状がみられる方もいます。
激しい症状が出た場合は、くも膜下出血の可能性があります。
くも膜下出血の可能性がある場合は、迷わずにすぐ救急車を呼びましょう。
くも膜下出血の前兆(初期)症状の特徴
くも膜下出血の前兆(初期)症状の特徴には
- 血圧の激しい上昇と下降
- 持続的・瞬間的な激しい頭痛
- 目の痛み・物が二重に見える
- めまい
- 吐き気・嘔吐
- 意識が低下する
- 頭がモヤモヤする
などがあります。
それぞれ具体的にご紹介します。
血圧の激しい上昇と下降
くも膜下出血の前兆症状として、血圧が激しく上がったり下がったりすることがあります。
心当たりのない血圧の激しい乱高下があった場合は、すぐに受診しましょう。
また、脳動脈瘤があったり、生活習慣病があったりする方は、普段から血圧をこまめに計測しましょう。
持続的・瞬間的な激しい頭痛
脳動脈瘤が本格的に破裂する前兆として、持続的・瞬間的な激しい頭痛の症状がみられることがあります。
くも膜下出血の前兆症状としてあらわれる頭痛を「警告頭痛」といいます。
前兆として起こる頭痛は起こらないこともあります。
また、頭痛の強さも個人差があり異なります。
目の痛み・物が二重に見える
目の痛みや物が二重に見える症状を「動眼神経麻痺」といいます。
目の後ろの動脈に動脈瘤ができている場合、動眼神経が圧迫されることで動眼神経が麻痺します。
目の症状があらわれるため、眼科へ受診する方もいます。
めまい
くも膜下出血の前兆症状として、めまいの症状がみられることがあります。
めまいは動脈硬化が進行していたり、頸椎が変形していたりすることでめまいが生じます。
また、脳幹や小脳への血流障害が起きてめまいが起こることもあります。
吐き気・嘔吐
吐き気や嘔吐を伴う頭痛が持続する場合、くも膜下出血の前兆と考えられます。
血液が髄膜を刺激したり、頭蓋内の圧力が上昇したりすると、吐き気や嘔吐が起こる可能性があります。
意識が低下する
脳動脈瘤は、出血や瘤が脳神経を圧迫します。
脳神経が圧迫されることで、意識が低下する症状がみられることがあります。
頭がモヤモヤする
脳動脈瘤が原因で脳神経が圧迫されることにより、頭がモヤモヤしたり頭の違和感などがみられたりすることもあります。
くも膜下出血の前兆症状は、しばらくすると治ることがあります。
しかし、数日後に大きな発作が起こる可能性もあります。
前兆症状の原因が思い当たらない場合は、早めに病院へ受診しましょう。
くも膜下出血が起こる原因
くも膜下出血が起こる原因には
- 脳動脈瘤の破裂
- もやもや病
- 頭部を強打する
などがあります。
それぞれみていきましょう。
脳動脈瘤の破裂
くも膜下出血を発症した方の約9割は、脳動脈瘤の瘤からの出血と考えられています。
脳動脈瘤には、
- 先天的原因による嚢(のう)状動脈瘤
- 動脈硬化による紡錘状動脈瘤
- ストレスや動脈硬化による解離性動脈瘤
などがあります。
脳動脈瘤は、血管の分岐部の血管が弱い箇所に生じます。
血管の分岐部に風船のように形成されることを嚢(のう)状動脈瘤といいます。
基本的に血管は弾力性があり強い組織です。
しかし、何らかの原因で弱くなった血管の壁から動脈瘤が破裂し、くも膜下出血を起こします。
動脈瘤は、通常10ミリ以下の大きさです。
しかし、5%程度の確率で11ミリ以上になり、治療が難しくなります。
そのほか、動脈瘤は大きくなるとまわりの神経や脳を圧迫して症状が出ることもあります。
脳動静脈奇形
くも膜下出血の原因ではあまり多くありませんが、脳動静脈奇形が原因の場合もあります。
脳動静脈奇形とは、脳の内部や周囲の動脈と静脈の接続異常のことをいいます。
脳動静脈奇形は生まれたときから存在していることもあります。
通常は、症状があらわれることで初めて脳動静脈奇形に気付きます。
もやもや病
もやもや病は日本で最初に発見された疾患です。
頭蓋内で脳内の太い動脈が徐々に細くなり、不足した脳血流を補うためにもやもやした脆い血管が発達する病気です。
もやもや病で血管が破裂することで、くも膜下出血となります。
頭部を強打する
交通事故や外傷などで頭を強くぶつけた場合、くも膜下出血が生じることがあります。
くも膜下出血のリスクを高める前兆
くも膜下出血のリスクを高める要因をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
家族歴
くも膜下出血は家族性が指摘されています。
簡単にいえば、遺伝するということです。
近親者にくも膜下出血の発症者がいる場合は、いない方に比べると発症リスクは高めです。
定期的に検診を受けるなどして、早期発見に努めましょう。
高血圧
高血圧は、くも膜下出血をはじめ脳卒中の代表的な危険因子です。
高血圧が脳卒中のリスクを高める理由は、動脈硬化を招くためです。
血圧が高い状態が続くと、血管がダメージを受けて硬く・分厚くなります。
簡単にいえば、血管が脆くなるため、なにかのキッカケで破れやすくなります。
喫煙
喫煙はくも膜下出血をはじめ脳卒中のリスクを高めます。
理由は、タバコの煙に含まれるニコチンにあります。
ニコチンは血管を収縮させたり、傷つけたりする成分です。
簡単にいえば、ニコチンを摂取すると脳の血管が大きなダメージを受けるのです。
一説では、喫煙習慣のある方は、脳卒中のリスクが2~3倍高いと指摘されています。
くも膜下出血の検査方法
くも膜下出血の疑いがある場合は、CT検査かMRI検査を行います。
しかし、出血から時間が経っている場合、軽症の場合はCT検査ではわからない可能性もあります。
CT検査ではわかなかった場合は、MRI検査を行い出血の確認をします。
また、腰から細い針をさして調べる髄液検査をすることもあります。
そのほか、脳動脈瘤の場所を調べるためには、造影剤を用いた3DCT血管撮影を行います。
3DCT血管撮影だけでは不十分な場合には、カテーテルを使った脳血管撮影を行うこともあります。
スポンサーリンク
くも膜下出血に用いられる治療方法
くも膜下出血に用いられる治療方法には
- 開頭クリッピング術
- 血管内コイル塞栓術(動脈瘤塞栓術)
があります。
それぞれ具体的にご紹介します。
開頭クリッピング術
開頭クリッピング術は、開頭により、出血を取り除きながら脳の隙間をはがして動脈瘤を出します。
出した動脈瘤を金属製のクリップで閉鎖する手術です。
クリップは、特別な理由がない限りその場所に置いたままになります。
また、くも膜下出血後に発生する脳血管萎縮を予防することが大切です。
脳の表面や脳の中の出血をできるだけ取り除き、脳の中の水分を循環させる管をおくことで脳血管萎縮を予防できます。
血管内コイル塞栓術(動脈瘤塞栓術)
血管内コイル塞栓術は、動脈瘤の中にカテーテルを留置し、コイルを動脈瘤内につめることで動脈瘤を閉塞させます。
動脈瘤の状態にあわせて風船付きのカテーテルや金属のステントを使用し動脈瘤を閉塞させることもあります。
開頭クリッピング術と比べると、切らずに済むため患者への負担が少なくなるというメリットがあります。
しかし、血栓を予防するために血液が固まりにくくなる薬を一定期間服用する必要があります。
また、再治療が必要になる割合が高くなるというデメリットもあります。
開頭クリッピング術、血管内コイル塞栓術のどちらの方法がよいかは、患者の状態などによって異なります。
スポンサーリンク
くも膜下出血の予防方法
くも膜下出血の予防方法には
- 高血圧を改善する
- 禁煙する
- 生活習慣を見直す
- 定期的に検査をする
などがあります。
それぞれ具体的にご説明します。
高血圧を改善する
くも膜下出血の原因のなかでも、最も一般的なものは高血圧になります。
高血圧の方は高血圧ではない方と比べると、くも膜下出血による死亡リスクが約3倍も高くなります。
高血圧は、動脈瘤にかかる圧力も常に高い状態にあるため、破裂の危険性が高くなります。
高血圧の原因には、塩分の摂りすぎがあります。
塩分の多い食事を好む方は、くも膜下出血のリスクが上がります。
そのため、食事内容を見直し、高血圧を改善しましょう。
禁煙する
くも膜下出血の原因では、最大のリスクとされるのが喫煙です。
喫煙に関する調査では、喫煙者のリスクは非喫煙者の2.2~3.6倍にもなります。
1日の喫煙量が10本未満であっても、20本以上吸っている方もリスクに差はありません。
そのため、喫煙自体がくも膜下出血のリスクを高めています。
禁煙することで、くも膜下出血のリスクを下げられます。
生活習慣を見直す
くも膜下出血の予防には、生活習慣を見直すことが大切です。
食事では、塩蔵品や漬け物、みそ汁などを摂りすぎないようにしましょう。
また、野菜に含まれるカリウムには塩分の排出を促します。
普段から、野菜を多めに摂りましょう。
そのほか、ストレスを解消するために仕事から離れてリラックスできる趣味を持ちましょう。
また、適度な運動を習慣化し、適切な睡眠時間をとることも重要です。
定期的に検査をする
くも膜下出血には、遺伝的要素もあります。
そのため、くも膜下出血を含む脳卒中を発症した方がいる場合は、発症リスクが高くなります。
くも膜下出血を予防するためには、脳動脈瘤があるか脳ドックなどでMRI検査を行うことがおすすめです。
スポンサーリンク
くも膜下出血の症状が発症しやすい時間帯
くも膜下出血の症状が発症しやすい時間帯があります。
発症時刻が多い時間帯は、午前6時~12時までの間とされています。
また、午前8時~10時と午後6時~8時の2つの時間外のピークがあります。
起床後は血圧が急激に上がりやすいため、血管や心臓への負担が大きくなり発症しやすくなると考えられます。
どういう時間帯にくも膜下出血の症状が発症しやすいかを知ることで、予防につながります。
出典:「Ⅳ.クモ膜下出血」
くも膜下出血の症状のまとめ
今回は、くも膜下出血の症状の情報を中心にお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- くも膜下出血は、激しい頭痛、吐き気や嘔吐、意識が朦朧とするなどの症状がある
- くも膜下出血は、血圧の乱高下、持続的な激しい頭痛、意識が低下などの前兆症状がある
- くも膜下出血の治療方法には、開頭クリッピング術、血管内コイル塞栓術がある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。