一般的に、女性は男性より貧血が起こりやすいといわれています。
なぜ、女性は貧血になりやすいのでしょうか。
また、女性の貧血を予防・改善するにはどうしたらよいのでしょうか。
本記事では、女性の貧血の原因について、以下の点を中心にご紹介します。
- 女性の貧血の主な原因
- 貧血になりやすい婦人科系の疾患
- 女性の貧血の予防・改善方法
女性の貧血の原因について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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貧血とは
貧血とは、血液中の赤血球が減少した状態です。
より具体的には、赤血球の中のヘモグロビンが減少した状態を貧血と呼びます。
ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ成分です。
ヘモグロビンの数が減少すると、身体に酸素が行き渡らなくなり、さまざまな症状があらわれます。
貧血の主な症状は以下の通りです。
- めまい・立ちくらみ
- 動悸
- 息切れ
- 疲れやすい・だるい
- 眠気
貧血の主な原因は、ヘモグロビンの原料である鉄分が不足することです。
出典:厚生労働省「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」
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貧血が女性に多い原因
女性は男性に比べると貧血のリスクが高めです。
なぜ、女性は貧血が起こりやすいのでしょうか。
主な原因を解説します。
生理
女性の貧血の代表的な原因の一つが、生理です。
定期的に出血する分、女性は男性より貧血のリスクが高いのです。
生理によって貧血が起こるのは、経血と一緒に鉄分が流出するためです。
鉄分が不足するとヘモグロビンが作られにくくなるため、貧血のリスクが高まります。
つまり生理による出血量が多い方ほど、貧血のリスクは高くなります。
具体的には、月経過多の女性が該当します。
妊娠・出産期
妊娠・出産・授乳も貧血の代表的な原因です。
妊娠中・授乳中は、胎児の成長や母乳の生成のために、大量の鉄分が用いられます。
簡単にいえば、通常よりも鉄分の消費量が多くなるわけです。
鉄分の消費に補給が追いつかなくなると、やはり体内の鉄分は不足します。
つまり貧血が起こりやすくなるのです。
もともと貧血気味だった方は、ますます症状が重くなることもあります。
妊娠前後で貧血がひどくなった場合は、意識して鉄分の摂取量を増やすことが大切です。
更年期
実は更年期も女性の貧血原因の一つです。
更年期とは、閉経の前後10年間を指します。
具体的な期間には個人差がありますが、一般的には45〜55歳が更年期に該当します。
更年期に貧血が起こりやすいのは、月経過多になりやすいためです。
たとえば閉経が近づくと、月経周期が短くなることがあります。
原因は、女性ホルモンのバランスの崩れです。
月経周期が短くなると、そのぶん出血量が増えるため、貧血になりやすいのです。
さらに、更年期には婦人科系の疾患のリスクが高くなります。
たとえば子宮筋腫や子宮腺筋症などが代表的です。
いずれも月経過多になりやすいため、貧血のリスクが高くなります。
貧血と婦人科系の疾患の関係性については、後ほど改めて解説いたします。
ストレス
ストレスも貧血の原因となり得ます。
ただし、ストレスが直接貧血を引き起こすわけではありません。
ストレスが貧血を招くのは、消化器官の機能低下をもたらすためです。
ストレスを受けると胃腸の働きが抑制されるため、食欲がわきにくくなります。
結果、食事量とともに鉄分の摂取量が減り、貧血に至るケースが少なくありません。
また、ストレスは胃腸の働きを低下させます。
胃腸の働きが悪くなると、摂取した栄養が十分に吸収されなくなります。
つまり鉄分を摂取しても、十分な量が体内に取り込まれなくなるわけです。
結果、ヘモグロビンの原料が足りなくなるため、貧血のリスクが上昇します。
貧血の原因となる婦人科の疾患
女性特有の疾患が貧血を引き起こすこともあります。
貧血と関わりが深い婦人科疾患をご紹介します。
子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮の壁にコブができることです。
原因は、子宮の筋肉の発達・増殖などです。
子宮筋腫の多くは良性です。
女性にはめずらしくない病気で、30代女性の2〜3割が発症しているともいわれています。
子宮筋腫には以下のタイプがあります。
- 筋層内筋腫
- 漿膜下(しょうまくか)筋腫
- 粘膜下筋腫
- 頸部筋腫
子宮筋腫ができると、月経に異常が起こりやすくなります。
たとえば以下のような症状が代表的です。
- 経血が増える
- 月経が1週間以上続く
- ひどい生理痛
- 月経時以外の出血・腹痛・腰痛
特に粘膜下筋腫・頸部筋腫は月経過多になりやすいため、貧血のリスクも高くなります。
子宮腺筋症
子宮腺筋症は子宮内膜症の一種です。
子宮内膜症とは、本来子宮の内部にできるべき子宮内膜が、子宮の外にできる状態です。
子宮腺筋症では、子宮内膜が子宮平滑筋という組織の中に生成されます。
ちなみに子宮内膜とは受精卵を包みこむ組織で、月経周期にあわせて成長します。
排卵を迎えると、子宮内膜は妊娠に備えて成長します。
その後、妊娠が発生しなければ、子宮内膜は血液と一緒に体外に排出されます。
いわゆる月経が起こるのです。
子宮平滑筋にできた子宮内膜にも同様のサイクルが起こります。
排卵を迎えると子宮内膜は成長し、妊娠しなければ体外に排出されます。
しかし子宮平滑筋の中にできた子宮内膜には、体外に出るための出口がありません。
そのため排出された子宮内膜は、老廃物として子宮平滑筋の中に蓄積されていきます。
月経のたびに子宮平滑筋に老廃物が蓄積されると、子宮全体が肥大して固くなります。
すると月経時にひどい生理痛が起こったり、経血量が増加しやすくなったりします。
つまり月経過多になりやすいため、貧血のリスクが上昇します。
子宮腺筋症が起こりやすいのは、出産を経験した40代以降の女性です。
出産経験の無い女性や、20~30代の女性が発症することもあります。
多くの場合、閉経を迎えると症状は消失します。
子宮内膜増殖症
子宮内膜増殖症は子宮内膜が異常に分厚くなる状態です。
子宮内膜は通常、排卵を迎えると、妊娠に備えて成長します。
妊娠が起こらなければ、子宮内膜は子宮から剥がれ落ち、経血として体外に排出されます。
子宮内膜増殖症では、子宮内膜が分厚くなるぶん、月経時の経血量も増えやすくなります。
つまり出血過多になりやすいため、貧血のおそれが高まります。
さらに、子宮内膜増殖症では、不正性器出血が起こることも少なくありません。
具体的には、月経時以外にも性器からの出血がみられます。
なお、子宮内膜増殖症は子宮体癌の前触れとして起こることもあります。
不正性器出血や貧血が長く続く場合は、病院で検査を受けるのがおすすめです。
子宮頸がん・子宮体癌
子宮のがんが貧血を引き起こすこともあります。
たとえば子宮頸がん・子宮体癌が代表的です。
子宮頸がんは、子宮の下半分に発生するがんです。
対して子宮の上半分に発生するがんが、子宮体癌と呼ばれます。
子宮がんの代表的な症状が不正性器出血です。
月経時以外に性器から出血するほか、おりものに血が混じることもあります。
貧血を引き起こす婦人科疾患の多くは良性疾患です。
しかしときには、子宮がんのような悪性疾患が隠れている場合もあります。
婦人科系の不調を抱えており、かつ出血過多による貧血が続く場合は、念のため病院で検査を受けましょう。
高齢女性の貧血の原因は?
高齢の女性で貧血がある場合、婦人科系以外の全身疾患が疑われます。
なお、貧血の原因疾患は一つとは限りません。
複数の疾患の合併によって貧血に陥るケースも多くみられます。
高齢女性の貧血の原因疾患は、たとえば以下があります。
- 悪性腫瘍(胃がん・大腸がん)
- 腎臓の障害
- 消化器系の障害(胃潰瘍)
- 血液の病気(白血病)
鉄分不足も高齢女性の貧血の代表的な原因です。
高齢になると食が細くなるため、栄養不足になりやすいのです。
特に鉄分・タンパク質・ビタミンB12の量が不足すると、血液が作られにくくなり、貧血のリスクが高まります。
貧血の診断基準
貧血の診断基準をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
ヘモグロビンの基準値
貧血かどうかは、ヘモグロビンの数値によって判断できます。
一般的な基準は以下の通りです。
男性 | 13.0g/dl以下 |
女性 | 12.0g/dl以下 |
高齢者 | 11.0g/dl未満 |
ヘモグロビンの数値が10g/dlを下回ると、重い貧血症状があらわれやすくなります。
ただし症状の感じ方・程度には個人差があります。
ヘモグロビンの数値と重症度
ヘモグロビンの数値が小さくなるほど、重篤な貧血症状があらわれやすくなります。
軽度の貧血 | 10~12g/dl |
中程度の貧血 | 7~9g/dl |
重度の貧血 | 4~6g/dl |
軽度の貧血の場合は、自覚症状がないこともあります。
なお、輸血の対象となるのはヘモグロビン数値が6g/dlを下回った場合です。
貧血の予防・対処法
女性の貧血の予防・改善方法をご紹介します。
貧血にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
食生活の見直し
女性の貧血の原因で最も多いのは鉄分不足です。
そのため貧血を予防・改善するには、鉄分の摂取量を増やすことが大切です。
鉄分が豊富な食品には以下があります。
- レバー類
- 赤身の魚(まぐろ・かつお)
- 大豆・大豆製品
- 緑黄色野菜(小松菜・春菊・ほうれん草)
- 海藻(ひじき)
タンパク質・ビタミンC・ビタミンBの摂取も意識しましょう。
タンパク質・ビタミンBは血液を作るのに欠かせない成分です。
ビタミンCには鉄分の吸収を助ける作用があります。
つまり貧血予防のためには、鉄分に加え、バランス良く栄養を摂ることが大切です。
出典:厚生労働省「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」
サプリメント
食事からの鉄分摂取が難しい場合は、サプリメント・鉄剤を利用するのもよい方法です。
鉄分含有のサプリメントはドラッグストアなどで購入できます。
栄養摂取はできる限り食事から行うことが望ましいでしょう。
しかし、貧血が改善されない場合などは、サプリメントで足りない鉄分を補いましょう。
ストレスを貯めない
ストレスは貧血の原因となります。
ストレスを受けると胃腸の機能が低下し、鉄分の吸収効率が下がるためです。
さらに、ストレスは貧血だけでなく、さまざまな疾患の原因ともなります。
貧血やその他の疾患を予防するためにも、こまめにストレスの発散・解消に努めましょう。
ちなみに代表的なストレス解消法は以下の通りです。
- 趣味
- 買い物
- 旅行
- 芸術鑑賞
- 休養
定期健診・疾患の治療
貧血の原因が全身疾患にある場合、まずは原因疾患の治療をする必要があります。
全身疾患の早期発見・治療につなげるためにも、定期的な検診を受けましょう。
女性の鉄分平均摂取量と推奨量
厚生労働省のデータによると、女性の1日の鉄分摂取量の目安は以下の通りです。
月経がある女性 | 10.5mg |
月経がない女性 | 6.5mg |
月経過多の女性 | 16mg(13mg以上) |
成人女性の多くは、1日10g以上の鉄分摂取が望まれます。
しかし実際には、多くの女性は鉄分の摂取量が十分ではありません。
平成28年度の調査では、18歳以上女性の1日平均鉄分摂取量は7.3mg/日という結果が出ています。
女性は生理・妊娠などがあるぶん、男性より貧血のリスクが高いとされています。
貧血を予防するためにも、鉄分の摂取量を意識して増やすことが大切です。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
出典:厚生労働省「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」
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女性の貧血の原因まとめ
ここまで、女性の貧血原因についてお伝えしてきました。
女性の貧血原因の要点をまとめると以下の通りです。
- 女性の貧血の主な原因は、月経・妊娠・出産や、更年期に伴う月経過多など
- 貧血になりやすい婦人科系の疾患は、子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮がんなど
- 女性の貧血の予防・改善方法は、栄養バランスのよい食事・ストレスの発散・定期的な検診
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。