脳細胞に影響を与える脳卒中は身体や認知機能に後遺症を残す恐ろしい病気です。
脳卒中は言葉の通り「卒=突然」、「中=あたる」ため、発症の予測が難しいです。
しかし、脳卒中に対する要因を解決することで予防することができる病気です。
脳卒中を予防するためにはどのようにすればよいでしょうか?
脳卒中の前兆を知ることで対処することは可能でしょうか?
本記事では脳卒中の予防について以下の点を中心にご紹介します。
- 脳卒中の原因は
- 脳卒中を予防策とは
- 脳卒中の前兆症状はあるのか
脳卒中の予防について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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脳卒中とは
脳卒中は心筋梗塞、悪性新生物と合わせて3大疾病の1つに数えられます。
脳卒中は介護が必要となる病気の1つとして知られています。
脳卒中が原因の要介護者は認知症に次いで多く、要介護者全体の約2割を占めます。
出典:厚生労働省「Ⅳ介護の状況」
脳卒中に関する詳細は以下の通りです。
疾患の概要
脳卒中とは脳内の血管が出血や梗塞することで、脳機能に障害を与える病気です。
損傷した血管より先に酸素や栄養が届かないことで脳細胞に障害を与えます。
損傷した血管の場所によって以下の障害を伴う場合があります。
運動麻痺 | 感覚障害 | 言語障害 | 意識障害 | 嚥下障害 |
歩行障害 | 認知機能障害 | 高次脳機能障害 | 頭痛・吐気 | 視覚障害 |
脳卒中を発症すると一般的に障害された脳細胞の反対側の麻痺が生じます。
脳卒中の障害の程度は損傷した血管の場所や大きさにより異なります。
脳卒中の分類
脳卒中は発症機序により大きく2つに分類されます。
脳の血管が詰まる脳梗塞と脳の血管が出血する脳出血です。
詳細は以下の通りです。
脳梗塞
脳梗塞とは、何らかの原因で脳の血管が詰まることで脳細胞に影響を及ぼす病気です。
生活習慣病に起因する場合が多い特徴があります。
脳梗塞の頻度は脳卒中の中で最も高く、全体の約75%以上を占めます。
出典:厚生労働省「脳卒中の治療と仕事の両立お役立ちノート」
脳梗塞は発症機序により以下の3つに分類されます。
- アテローム血栓性脳梗塞
血管の内側の変化(プラーク)が原因で生じる脳梗塞です。
大きな血管や首の血管が動脈硬化などで狭くなる特徴があります。
- 心原性脳塞栓症
心臓でできた血栓が心臓から脳の血管に流れて詰まる(塞栓)脳梗塞です。
他の2つの脳梗塞と比較し、突然発症し重症になりやすい特徴があります。
- ラクナ梗塞
太い血管から分岐した血管(穿通枝、直径15㎜以下)が詰まる脳梗塞です。
非常に小さな梗塞の為、無症状の場合があり、隠れ脳梗塞の原因になります。
隠れ脳梗塞を発症した方は脳梗塞の再発率が高くなる傾向があります。
脳出血
脳出血とは、脳の血管から出血することで出血範囲の脳細胞に影響を与える病気です。
高血圧を起因とする場合が多いです。
脳出血は発症機序により以下の2つに分類されます。
- 脳内出血(狭義の脳出血)
脳の内部にある細い血管が破れて、脳内に出血する病気です。
血液が固まり脳内に血腫を作り、脳を圧迫することで脳細胞に影響を与えます。
出血部位により病名は異なります。
具体的な病名は以下の通りです。
被殻出血 | 視床出血 | 皮質下出血 | 脳幹出血 | 小脳出血 |
脳内出血の頻度は脳梗塞に次いで高く、全体の約20%を占めます。
初期症状に頭痛を伴うことが多いです。
- くも膜下出血
脳の表面をおおう膜(くも膜)の下(くも膜下腔)に出血する病気です。
若年層(40~60 代)の発症が多い特徴があります。
他の脳卒中と比較し、脳動脈瘤が原因となる場合が多く、全体の約7割を占めます。
くも膜下出血の頻度は全体の約10%を占めます。
初期症状に鈍器で殴られたような激しい頭痛を伴うことが多いです。
致死率が高く、くも膜下全体の死亡率は約10~67%との報告があります。
出典:日本脳卒中学会「Ⅳ.クモ膜下出血」
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予防のために知るべき脳卒中の原因
脳卒中を引き起こす最大の原因は血管の動脈硬化です。
脳を走行する細い血管が動脈硬化の影響で狭窄や破裂を起こすことで発症します。
動脈硬化を起こす原因は以下の通りです。
高血圧
高血圧とは収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上をいいます。
高血圧は脳梗塞、脳出血と共通して最大の危険因子です。
高血圧の状態が持続すると動脈血管に負担がかかり、結果動脈硬化を引き起こします。
軽症の高血圧(160/100mmHg未満)の場合、3.3倍脳卒中が発症しやすくなります。
また、重症の高血圧(180/110mmHg以上)の場合、8.5倍脳卒中が発症しやすくなります。
糖尿病
糖尿病は血糖値が慢性的に高い状態が続く病気のことをいいます。
血糖値が以下の基準を超えると糖尿病と診断されます。
- 空腹時血糖:126mg/dl以上
- 随時血糖値:200mg/dl以上
- HbA1c:6.5%以上
糖尿病は動脈硬化のリスクを高める病気の1つです。
また、血液がドロドロになりやすく、血管を詰まらせる原因になります。
糖尿病を発症すると、脳梗塞発症のリスクは2~4倍高まります。
心臓病
心臓病とは心臓に何らかの構造や機能異常を伴う病気の総称です。
心臓病は以下の疾患に分類されます。
心不全 | 冠動脈疾患 | 心臓弁膜症 |
心筋症 | 不整脈 | 先天性心疾患 |
心臓病は脳卒中と同じく動脈硬化が原因の1つとなります。
脳卒中発症した方の5人に1人は、心臓病を合併しているという報告があります。
脳梗塞の発生機序の1つに心臓由来の脳梗塞である心原性脳塞栓症があります。
心原性脳塞栓症は心臓でできた血栓が心臓から脳の血管に流れて詰まる脳梗塞です。
他の脳梗塞と比較し、突然発症し、重症になりやすい特徴があります。
心原性脳塞栓症の原因の約7割は不整脈疾患である心房細動が原因という報告があります。
喫煙
喫煙は脳梗塞・くも膜下出血発症リスクを高める原因になります。
1日20本以上喫煙習慣があると脳梗塞発症リスクは高まるとの報告があります。
また、受動喫煙も脳卒中発症の危険因子になるとの報告があります。
出典:日本脳卒中学会「3-1.脳卒中一般の危険因子の管理(5)喫煙」
飲酒
過度な飲酒は脳卒中発症リスクを高める原因になります。
1日平均3合以上の飲酒は、時々の飲酒と比較し1.6倍脳卒中になるとの報告があります。
アルコールには血圧上昇作用があるため、出血性脳梗塞のリスクを高めます。
一方1日1合未満の飲酒は、時々の飲酒と比較し脳梗塞が約4割少ないとの報告があります。
アルコールは善玉コレステロールの血中濃度を上げ血液をサラサラにする作用があります。
出典:国立がん研究センター「飲酒と脳卒中発症との関連について」
肥満
肥満症は脳梗塞発症リスクを高める原因になります。
肥満度をあらわす指標の1つにBMIがあります。
BMIは体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)の計算式で求めることができます。
日本肥満学会の定めたBMI数値と肥満度の判定は以下の通りです。
BMI(kg/m²) | 判定 | WHO基準 |
<18.5 | 低体重 | Underweight |
18.5≦~<25 | 普通体重 | Normal range |
25≦~<30 | 肥満(1度) | Pre-obese |
30≦~<35 | 肥満(2度) | Obese classⅠ |
35≦~<40 | 肥満(3度) | Obese classⅡ |
40≦ | 肥満(4度) | Obese classⅢ |
出典:日本肥満学会「肥満度分類」
BMIが高い方は脳梗塞発症リスクが高くなるとの報告があります。
またBIMが30kg/m²以上の場合、心原性脳塞栓症のリスクが高くなるとの報告があります。
出典:国立がん研究センター「肥満度と病型別脳梗塞の発症リスクとの関連について」
肥満症はメタボリックシンドロームを発症させる原因になります。
メタボリックシンドロームは内臓肥満に加え、以下の病気が該当した状態をいいます。
- 高血圧
- 高血糖
- 脂質異常症
ウエスト周囲径(腹囲)が以下の場合、メタボリックシンドロームの診断基準となります。
性別 | ウエスト周囲径(cm) |
男性 | ≧85 |
女性 | ≧90 |
メタボリックシンドロームは動脈硬化のリスクを高める病気の1つです。
メタボリックシンドロームを発症すると脳梗塞発症のリスクは約3倍高まります。
ストレス
様々なストレスは脳卒中発症リスクを高める原因になります。
ストレスを感じると交感神経が優位に働き血圧や心拍数上昇につながります。
結果、動脈硬化のリスクを高めてしまいます。
量的労働負荷(休みが少ない、残業が多い)は脳卒中発症と関連するとの報告があります。
質的労働負荷(仕事への不満)は脳卒中発症と関連するとの報告があります。
出典:労働者健康安全機構「仕事の過重な負担による脳や心臓の病気(過労死)の発生を防ぐために―職業性ストレスの重要性―」
加齢
加齢は脳卒中発症リスクを高める原因になります。
加齢に伴い、血管の老化が進み動脈硬化の原因になります。
50代を過ぎると脳卒中発症リスクは高まります。
脳卒中全体の約6割が70代以降という報告があります。
出典:日本職業・災害医学会「勤労者世代における脳卒中の実態:全国労災病院患者統計から」
遺伝
遺伝は脳卒中発症リスクを高める原因になる場合があります。
特に若年性脳卒中は遺伝性の疾患の可能性があります。
原因として以下の通りです。
脳動脈瘤
動脈に発生する、瘤状や紡錘状のコブ。くも膜下出血の原因の8割を占める。
脳動静脈奇形
くも膜下出血の原因の1つ。脳の動脈と静脈の間に異常な血管の塊ができる病気。
皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)
脳梗塞の原因の1つ。脳の細い血管が障害され脳梗塞を繰り返す病気。
脳梗塞というと、突然倒れて意識を失うイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、それは脳梗塞の症状のほんの一部なのです。脳梗塞の原因や症状についてよく理解することで、もしもの時に適切な対応ができるようにしましょう。また、[…]
脳卒中を予防しよう!発症しやすい人の原因
脳卒中には発症しやすい傾向の方がいらっしゃいます。
ある特定の要素を備えた人と、そうでない人では発症リスクが高いことがわかっています。
生活習慣
脳卒中の発症リスクが高くなる生活習慣があるとする研究発表があります。
脳卒中のリスクが高まる生活習慣は以下の通りです。
- 喫煙習慣
- 肥満
- 運動不足
- 野菜不足
- アルコールの過剰摂取
これらの生活習慣は、高血圧や動脈硬化などの血管疾患の原因ともなっています。
さらに、この傾向に男女の差がないこともわかっています。
性格
脳卒中になりやすい性格があります。
- 意欲的
- 勤勉である
- 向上心がある
- 競争心がある
ビジネスマンとしては非常に優秀で、マルチタスクの傾向があり仕事ができる人です。
その反面、ストレスを常に抱えている傾向があります。
時間を無駄に使うことに抵抗があり、遅れるとイライラしたり、焦ったりします。
やり残した仕事がある、仕事がうまくいかないということに対してナイーブです。
自分を責める傾向があるかもしれません。
精神的に苦痛を感じやすい人、緊張や不安を感じやすい人も脳卒中リスクが高くなります。
マイナスの感情をため込んでしまう傾向の人は、脳卒中のリスクだけではありません。
うつ病などの精神疾患の原因ともなります。
性格はすぐには直せるものではありません。
しかし、自分に脳卒中になりやすい性格があることを自覚することは大切です。
息抜きやリラックスを心がけましょう。
脳卒中の予防策
脳卒中の予防策の基本は生活習慣を見直すことです。
具体的には以下の通りです。
食事内容を見直す
食事内容を見直すことで血液の状態の改善や血管の老化を予防することができます。
具体的な食事のアプローチは以下の通りです。
減塩
前述の通り、高血圧は脳卒中を発症するリスクの一因となります。
塩分過多は高血圧のリスクを高める可能性があります。
高血圧の有無に関わらず、1日6g未満に制限するよう心がけましょう。
出典:日本高血圧学会「高血圧の予防のためにも食塩制限を」
魚介類の摂取
脳卒中は血液がドロドロになると発症するリスクが高まります。
魚介類は血液をサラサラにする成分を多く含んでいます。
具体的には以下の魚介類を摂取すると脳卒中予防に効果的です。
成分 | 成分を多く含む魚介類の種類 | 成分の効果 |
DHA | ブリ、サバ、クロマグロ脂身、スジコ | 不飽和脂肪酸の1種 血管の弾力性を高める、赤血球の柔軟性向上 |
EPA | マイワシ、クロマグロ脂身、サバ、ブリ | 不飽和脂肪酸の1種 血栓予防、高血圧予防 |
タウリン | サザエ、牡蠣、コウイカ、マグロ血合肉 | アミノ酸の1種 コレステロール上昇予防、塩分排出による高血圧予防 |
アルギン酸 | モズク、ひじき、わかめ | コレステロール低下作用 |
出典:農林水産省「特集1 だから、お魚を食べよう!(1)」
野菜・果物の摂取
野菜や果物には血圧を安定させる、血液をサラサラにする成分などが含まれます。具体的には以下の野菜や果物を摂取すると脳卒中予防に効果的です。
成分 | 成分を多く含む魚介類の種類 | 成分の効果 |
カリウム | 野菜類や果物類、海藻類など | ナトリウムを排出し、高血圧を予防 |
ペクチン | りんご、いちご、柿、プルーンなど | コレステロール低下作用 |
ポリフェノール | ワイン、ブルーベリー、緑茶など | 抗酸化作用が強く、動脈硬化を予防 |
カロテノイド | 緑黄色野菜、マンゴー・パパイヤなど | 活性酸素の発生を抑え、動脈硬化を予防 |
ビタミンC | ピーマン、ブロッコリー、キウイフルーツなど | 過酸化脂質の生成を抑え、動脈硬化を予防 |
ビタミンE | ナッツ類など | 抗酸化作用、過酸化脂質の生成を予防 |
野菜や果物を多く食べると脳卒中による死亡リスクが低下するといわれています。
1人1日当たりの果物摂取目標量を「可食部で 200g以上」を意識しましょう。
出典:日本生活習慣病予防協会「野菜や果物を食べると脳卒中や心臓病のリスクを下げられる」
農林水産省「果物摂取の目安量」
食事バランスを考え、規則正しく摂取する
栄養が偏るとカロリーオーバーや脂質過多になり、動脈硬化の原因になります。
主食、主菜、副菜を準備できるよう心がけましょう。
間食を摂取することや食事を抜くと、肥満や動脈硬化の原因になります。
1日3食、決まった時間に摂取できるよう心がけましょう。
こまめに水分補給をする
一般的に脳卒中は冬場に多いイメージがありますが、脳梗塞は夏場が最も多いです。
原因として脱水が考えられます。
夏場は気温や湿度が上昇するため発汗しやすくなります。
体内の水分量が減少し、血液がドロドロになりやすくなります。
結果、脳梗塞のリスクは高まります。
夏場の脳卒中を予防するためには水分補給がとても重要です。
しかし1 回に多量の水分を摂ると、水分補給の合間で脱水症状を起こす可能性があります。こまめに水分補給するよう心がけましょう。
禁煙をする
喫煙は脳卒中を含む循環器疾患に対する危険因子の1つに含まれます。
喫煙は血管を収縮させ、血管抵抗を高めるため、血圧上昇につながります。
また、習慣的に喫煙を続けると動脈硬化の原因になります。
脳卒中のリスクは喫煙本数が多いほど大きくなるとの報告があります。
一方で5 ~10年間禁煙すると脳卒中のリスクは低下するとの報告があります。
必ず禁煙をして血管の負担を減らしましょう。
出典:日本脳卒中学会「3-1.脳卒中一般の危険因子の管理(5)喫煙」
飲酒を控える
適度な飲酒は血栓を形成する成分「フィブリノーゲン」の値を低くするといわれています。
適度な飲酒の目安量は以下の通りです。
お酒の種類 | 量(ml) | アルコール度数(%) | 純アルコール量(g) |
ビール | 中瓶1本500 | 5 | 20 |
清酒 | 1合180 | 15 | 22 |
ウィスキー・ブランデー | ダブル60 | 43 | 20 |
焼酎(35度) | 1合180 | 35 | 52 |
ワイン | 1杯120 | 12 | 12 |
出典:保健指導リソースガイド「適度のアルコールが脳卒中リスクを低減 ただし飲み過ぎると逆効果」
運動をする
適度な運動を続けることで脳卒中予防に効果を発揮します。
運動習慣がない方は、ある方と比較し脳卒中発症する割合が20%高いとの報告があります。
1日20分以上、週3回以上運動を続けることができるよう心がけましょう。
出典:日本生活習慣病予防協会「脳卒中は運動の習慣化で防げる 週に3日以上は汗をかくと効果的」
運動の種類の1例としては以下の通りです。
- プール
- ジョギング
- ウォーキング
- 縄跳び
- 自転車
休憩と睡眠を十分にとる
前述の通り、労働時間が長く、休みが少ないと脳卒中のリスクは高まります。
仕事の合間に休憩を取り、疲労を蓄積しすぎないよう心がけましょう。
睡眠時間と脳卒中は密接に関係しています。
睡眠時間が短いと(4時間以下)、脳卒中発症率や死亡率が高くなります。
また睡眠時間が長いと(10時間以上)、同様に脳卒中発症率や死亡率が高くなります。
脳卒中リスクを低下させるために睡眠時間を6~7時間前後にコントロールしましょう。
出典:Sleep med.「Relationship of sleep duration with the risk of stroke incidence and stroke mortality: an updated systematic review and dose-response meta-analysis of prospective cohort studies」
厚生労働省「睡眠に関する施策的背景」
コーヒーは脳卒中予防に効果的な飲み物?
コーヒーを定期的に飲むことで脳卒中の予防効果が期待できます。
コーヒーを1日に0.5~3杯飲むと脳卒中の発症リスクが21%低下するとの報告があります。
コーヒーが脳卒中予防に働く理由は以下の通りです。
コーヒーに含まれる脳卒中の予防効果
コーヒーの成分にはポリフェノールの1つ、クロロゲン酸が豊富に含まれています。
クロロゲン酸の効果は以下の通りです。
- 抗酸化作用:脂肪の蓄積を抑え、動脈硬化を予防する
- 血栓予防:血栓溶解酵素に働き、血栓を溶かす
- 糖尿病予防:血糖値上昇を抑制し、糖尿病を予防し、結果動脈硬化を予防する
血液をサラサラにし、血栓を予防することで脳卒中予防に期待できます。
コーヒーは飲み過ぎに注意
コーヒーの成分にはカフェインが含まれています。
カフェインを過剰摂取すると、以下の症状がみられる場合があります。
めまい | 心拍数増加 | 興奮 | 不安 |
震え | 不眠 | 下痢 | 吐気・嘔吐 |
出典:農林水産省「カフェインの過剰摂取について」
また、長期的な過剰摂取では高血圧のリスクを高めます。
1日3杯を上限にコーヒー摂取を抑えるよう心がけてください。
日常における脳卒中予防
日常生活における環境や行動に配慮することで、脳卒中予防が期待できます。
具体的には以下の通りです。
力まないようにする
重いものを持ち上げたり排便の際、息をこらえて力むことがあります。
力む動作は瞬間的な血圧上昇につながり、脳の血管に負担がかかります。
重いものを持つときは息を止めない、または誰かに手伝ってもらうようにしましょう。
排便時に力む可能性がある場合は便を柔らかくする必要があります。
食物繊維を多く摂り、水分をこまめに飲むよう心がけましょう。
温度差に気を付ける
季節の変わり目は朝と昼の温度差が見られます。
また、浴室と脱衣場は温度差が生じやすくなります。
温度差を体感すると急激な血圧上昇につながり、脳の血管に負担がかかります。
室内の温度が下がりすぎないよう、こまめに暖房器具を用いましょう。
脱衣場に暖房器具を置くなど、温度差を最小限にするよう心がけましょう。
脳卒中予防の十か条
日本脳卒中学会では脳卒中予防を目的に、十か条を提唱しています。
具体的には以下の通りです。
- 手始めに 高血圧から 治しましょう
- 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
- 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
- 予防には たばこを止める 意志を持て
- アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
- 高すぎる コレステロールも 見逃すな
- お食事の 塩分・脂肪 控えめに
- 体力に 合った運動 続けよう
- 万病の 引き金になる 太りすぎ
- 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ
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脳卒中の予防薬
脳卒中の予防法として、予防薬を服用する方法があります。
具体的な内容と効果は以下の通りです。
抗血栓薬
血液をサラサラにすることで、血栓生成を予防する
脳循環代謝改善薬
脳の血流を改善させ、脳細胞の働きを高める
降圧剤
高血圧を予防し、脳出血や動脈硬化を予防する
脂質異常症治療薬
中性脂肪や悪玉コレステロールを減少させ、動脈硬化を予防する
糖尿病治療薬
血糖値の上昇を抑え糖尿病の予防や、動脈硬化を予防する
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脳卒中の前兆を知って重症化を予防しよう
脳卒中の前兆として、初期症状があります。
具体的には以下の通りです。
- 顔面の症状:笑うと片方の口角が下がる、片側の目が明けにくい、など
- 片側の運動障害:箸がうまく持てない、まっすぐ歩けない、など
- 片側の感覚障害:手足のしびれ、痛みを感じにくくなる、など
- 会話に関する症状:ろれつが回らない、会話が理解できない、など
- 痛み:突然激しい頭痛が生じる、肩こりが生じる、など
- 視覚障害:ものが二重に見える、片側の見える範囲が狭くなる、など
上記のような症状が見られた場合、すぐ救急車を呼び病院に受診してください。
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季節による脳卒中発症リスク|予防のために
脳卒中は季節により発症リスクが異なります。
具体的には以下の通りです。
脳梗塞は夏に生じやすい
夏場は気温や湿度が上昇するため発汗しやすくなります。
水分と一緒に塩分も失われてしまいます。
結果、体内の水分量が減少、浸透圧が変化するため血液がドロドロになりやすくなります。
結果血管が詰まりやすくなり、脳梗塞発症のリスクが高まります。
脳出血は冬に生じやすい
冬場は日中の温度差が生じやすくなります。
また室内でも布団から出るとき、風呂に入るときは温度差が生じます。
温度差を体感すると急激な血圧上昇が生じます。
結果、血管が破れて脳出血につながる可能性があります。
もし脳卒中で倒れたら?重症化の予防
脳卒中は意識障害を伴う可能性があり、突然その場で倒れてしまう可能性があります。
倒れた人を見かけた場合、まず一次救命処置に準拠した対応が必要となります。
周囲の安全確認の後、意識や呼吸状態を確認してください。
意識がはっきりしている場合、脳梗塞の早期発見手段として「FAST」があります。
FASTとは脳梗塞発症のサインを確認するセルフチェック式の手段として用いられます。
具体的には以下のサイン確認と手順を行います。
- Face(顔):笑顔を作り、顔の片側が下がっているか確認
- Arm(腕):腕を上げたとき、片腕が下がっているか確認
- Speech(言葉):短い文章を話す際、言葉が出ない、ろれつが回らないか確認
- Time(発症時間):上記症状が1つ以上見られた場合は脳梗塞を疑い、時間を確認
脳卒中を疑った場合はその場で衣類を緩め、楽な姿勢にします。
その場から動かさず、119番通報し、救急隊の到着を待つようにしましょう。
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脳卒中の再発リスクを知って適切に予防しよう
1度脳卒中を発症すると再発するリスクを伴います。
脳卒中の種別による再発率は以下の通りです。
再発率(%) | |||
1年以内 | 5年以内 | 10年以内 | |
脳梗塞 | 10.0 | 34.1 | 49.7 |
脳出血 | 25.6 | 34.9 | 55.6 |
くも膜下出血 | 32.5 | 55.0 | 70.0 |
出典:J Neurol Neurosurg Psychiatry「Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community」
脳卒中を再発する一因として生活習慣や服薬管理が不十分であることが考えられます。
具体的には以下の点が考えられます。
- 服薬管理が不十分:血圧、血糖値、脂質代謝など
- 生活習慣:喫煙、過度な飲酒など
- 他疾患による影響:心臓病、糖尿病など
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脳卒中での死亡は予防できる?|死亡率
令和2年度の調査によると脳卒中全体の死亡者数は約10万人です。
死亡者全体の約7.5%を占めます。
悪性新生物、心疾患、呼吸器疾患に次いで、死因の第4位です。
出典:厚生労働省「第7表 死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)」
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性別で脳卒中発症のしやすさが異なる?男女別の予防策
脳卒中の発症は脳卒中の種別により性差があります。
脳梗塞や脳出血の割合は僅かに男性が多い傾向にあります。
一方でくも膜下出血は男性と比較し女性が約2.5倍発症率が高いです。
特に閉経後の女性の発症率が高い傾向にあります。
女性ホルモンのエストロゲンの減少が原因になっていると考えられています。
性差による発症率の違いは以下の通りです。
発症率(%) | ||
男性 | 女性 | |
脳卒中全体 | 53.3 | 46.7 |
脳梗塞 | 54.7 | 45.3 |
脳出血 | 58.1 | 41.9 |
くも膜下出血 | 28.9 | 71.1 |
脳血管に関係する他の疾患
脳卒中以外に脳血管に関連する疾患があります。
具体的には以下の通りです。
病名 | 症状 | 特徴 |
脳腫瘍 | 脳内の膜や神経などにできる腫瘍性疾患 | 脳内で発症する(原発性脳腫瘍)、がんの転移(転移性脳腫瘍)がある |
脳動脈瘤 | 脳内の動脈の一部が膨らみ、こぶのような状態になった疾患 | 破裂するとくも膜下出血の原因になる |
もやもや病 | 頭蓋骨内の交通動脈(ウィリス動脈輪)の一部が、徐々にふさがる疾患 | 女性に多い |
認知症 | 脳内の神経や細胞が破壊され、記憶障害など様々な症状を呈する疾患 | アルツハイマー型認知症や脳卒中に付随する脳血管性認知症などがある |
頭部外傷 | 頭に外からの力が加わり、脳に損傷をもたらす疾患 | |
脳炎 | ヘルペスなどのウイルス感染が原因で脳内に炎症を起こす疾患 |
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脳卒中の予防まとめ
ここまで脳卒中の予防についてお伝えしてきました。
脳卒中の予防の要点をまとめると以下の通りです。
- 脳卒中の原因は動脈硬化で高血圧などが起因して発症する
- 脳卒中の予防策は食事内容や運動など生活習慣を見直す必要がある
- 日常における脳卒中予防は温度変化や力みなど急激な血圧上昇を抑えることである
- 脳卒中の前兆は片側の顔面や運動麻痺、感覚障害、視覚障害などがある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。