老年症候群とは、加齢によりからだの機能が低下してしまうことをいいます。
老年症候群の特徴には、複数の症状が関連してさまざまな症状が生じます。
では、老年症候群にはどのような特徴や症状があるのでしょうか?
本記事では、老年症候群について以下の点を中心にご紹介します。
- 老年症候群の特徴とは
- 老年症候群の症状について
- 老年症候群の予防とは
老年症候群について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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老年症候群とは
老年症候群とは、加齢によって病気や心、からだの状態に問題が生じる症状の総称のことをいいます。
老年症候群は、医師の診察や介護、看護を必要とする症状があらわれます。
たとえば、ふらついたり、つまずいたりなどの症状があらわれます。
最初は、たいした問題ではないと思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、少しずつ生活の質や活動量が低下してしまいます。
また老年症候群を放置していると、最悪の場合、寝たきりの状態になる可能性もあります。
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老年症候群の3つの特徴
老年症候群には
- 特定の疾患ではない
- 致命的な症状はない
- 症状を自覚しにくい
などの3つの特徴があります。
それぞれ具体的にご紹介します。
特定の疾患ではない
老年症候群の特徴は、特定の疾患ではなく、複数の症状が関連しています。
そのため、高齢者が総合病院へ受診すると、複数の診療科を受診する必要があります。
また、1つの病気に対して病院を受診していた場合、合併症があらわれることもあります。
合併症があらわれた場合、合併症の治療も必要になり、複数の診療科を受診することになります。
そのほか、老年症候群の症状がみられると病気かもしれないと考える方が多いと思います。
しかし、医療機関を受診しても老化といわれてしまうことが多いです。
専門医はしっかり診察しても、老年症候群では病名をつけるのが困難な場合がしばしばあります。
そのため、特定の疾患ではなく老化として扱われるのが、老年症候群の特徴です。
致命的な症状はない
老年症候群の症状は、さまざまなものがあります。
そのため、致命的な症状はなく、複数の症状があらわれます。
老年症候群の症状は、ほとんどが命に直接影響するわけではありません。
症状としてあらわれている方は、辛い思いをしている方もいると思います。
しかし、致命的な症状ではないことから、老化という言葉で扱われる傾向にあります。
症状を自覚しにくい
老年症候群の症状は、少しずつ症状が強くなる傾向にあります。
そのため、最初は症状を自覚しにくいという特徴があります。
しかし、気が付いたときには、日常生活に支障をきたしていることがあります。
老年症候群は、少しずつ症状がでるため、日常生活に影響するまで自覚しにくいです。
老年症候群の主な症状
老年症候群の主な症状には
- 高齢者全般に起こりやすい症状
- 前期高齢者(75歳以下)で増加しやすい症状
- 後期高齢者(75歳以上)で増加しやすい症状
などがあります。
それぞれみていきましょう。
高齢者全般に起こりやすい症状
老年症候群の症状は、50項目以上であるといわれています。
高齢者全般に起こりやすい症状について、以下の表にあらわしています。
めまい | 息切れ | 腹部にしこりができる | 胸や腹に水がたまる | 頭痛 | 意識障害 |
不眠 | 転倒 | 骨折 | 黄疸 | リンパ節腫脹 | 下痢 |
低体温 | 肥満 | 睡眠時呼吸障害 | 腹痛 | 喀血 | 吐下血 |
加齢による違いがなく、高齢者全般に起こりやすい症状です。
また、症状の重さなどは変わらない症状がほとんどです。
さらに、急性に起こる症状もあり、加齢によってだけでなく起こる症状でもあります。
前期高齢者(75歳以下)で増加しやすい症状
前期高齢者である75歳以下の高齢者に、増加しやすい症状を以下の表にあらわしています。
認知症 | 脱水 | 麻痺 | 骨関節変形 | 視力低下 | 発熱 |
関節痛 | 体重減少 | 喀痰 | 咳嗽 | 喘鳴 | 食欲不振 |
浮腫 | しびれ | 言語障害 | 悪心嘔吐 | 便秘 | 呼吸困難 |
前期高齢者では、認知症や視力の低下、関節痛などの症状が増加しやすくなります。
認知症や視力の低下などは、長く付き合う症状といえます。
後期高齢者(75歳以上)で増加しやすい症状
後期高齢者である75歳以上で、増加しやすい症状を以下の表にあらわしています。
認知症 | 脱水 | 麻痺 | 骨関節変形 | 視力低下 | 発熱 |
関節痛 | 腰痛 | 喀痰 | 咳嗽 | 喘鳴 | 食欲不振 |
浮腫 | しびれ | 言語障害 | 悪心嘔吐 | 便秘 | 呼吸困難 |
後期高齢者で増加しやすい症状では、加齢や環境の変化により症状が悪化することがあります。
また、老年症候群の症状の中でも、とくに「フレイル」に注目されています。
フレイルとは体の予備機能が衰えることで、身体的、精神的ストレスに対して回復できない状態をいいます。
米国の報告では、65歳以上の高齢者の6~7%がフレイルの状態とされています。
また、90歳以上では30%以上がフレイルの状態と考えられています。
フレイルになると、筋力低下、歩行速度の低下、体重減少などの症状が顕著にあらわれます。
そのため、フレイルになる前に症状に対して対処することが大切です。
フレイルに対して対処することで、年齢にふさわしい状態にまで改善することが期待できます。
逆にフレイルに気付かずに放置してしまうと、さまざまな悪影響を及ぼします。
フレイルを放置していると、肺炎や脳卒中などに罹患した場合、容易に悪化する可能性があります。
さらに、最終的に介護状態へ進行してしまいます。
老年症候群の部位ごとの具体例
老年症候群の部位ごとの具体例を以下の表にあらわしています。
部位 | 具体例 |
脳 | 認知症、せん妄、記憶力低下 |
目 | 視力低下 |
耳 | 難聴 |
骨 | 弱くなる、骨粗鬆症 |
関節 | 骨関節変形、関節痛 |
そのほか、腰痛、膀胱萎縮、尿失禁、頻尿などの症状があります。
また、老年症候群には、生理的老化と病的老化が複雑に関連しています。
生理的老化とは、加齢により誰にでも起こる症状をいいます。
たとえば、耳が聞こえづらくなる、小さな忘れ物をする、就寝中にトイレの回数が増えるなどがあります。
病的老化とは、疾患やけがが原因でおきる症状です。
病的老化は、
- 合併症の症状としてあらわれるもの
- 多臓器疾患の影響や、社会的条件に影響されて出現してくる症状
などがあります。
上記のような老年症候群の症状があらわれた場合、病気の治療により改善できるのか、生理的老化なのか確認しましょう。
病的老化の場合は、病気の治療により症状の改善が期待できます。
しかし、生理的老化や、病気が治らないために症状が改善できない可能性があります。
病的老化なのか生理的老化なのか理解することで、症状の改善が期待できるか判断できます。
老年症候群になる原因
老年症候群になる原因はさまざあります。
主に
- 運動不足
- 低栄養
- 社会的サポートの不足
- 糖尿病
などの原因があります。
糖尿病の高齢者では、糖尿病ではない高齢者に比べ、老年症候群の症状が約2倍起こりやすいといわれています。
そのため、糖尿病は老化が進行してしまう病気です。
また、老年症候群により糖尿病の治療が難しくなるという悪循環が起こる可能性もあります。
高齢者の糖尿病の治療では、老年症候群の予防や生活の質の維持が、治療の目的となります。
老年症候群を予防するには
老年症候群を予防するには
- 適度な運動
- 口腔ケア
- 栄養バランスの良い食事
- 感染症の予防
- 人との交流
などがあります。
それぞれ具体的にみていきましょう。
適度な運動
老年症候群を予防するには、適度な運動はとても効果があります。
週に1度仲間と継続して運動している方についての報告があります。
その結果、7年間で日常生活の活動度や運動機能に低下があまりみられませんでした。
また、継続的に運動することは、老年症候群の予防に有効です。
さらに、運動することでホルモンの分泌を促し、認知症の予防にも期待できます。
筋力低下は転倒や骨折しやすくなり、寝たきりにつながってしまいます。
そのため、ウォーキングやストレッチなど、下半身を中心に筋力を鍛えるとよいでしょう。
口腔ケア
口腔ケアをすることで、噛む力をつけると認知症の予防につながります。
そのため、口腔ケアをして、歯の健康を保ち、噛む力をつけることが大切です。
また、口腔ケアには、誤嚥性肺炎などの病気の予防にも有効です。
栄養バランスのよい食事
加齢に伴い食事量が減り低栄養になると、老年症候群の原因になります。
老年症候群の予防には、栄養バランスのよい食事を摂り、低栄養を防ぐことが大切です。
栄養バランスのよい食事には、魚、野菜、果物を多く摂り入れるようにしましょう。
感染症の予防
高齢者は、加齢により体力が減少することで感染症にかかりやすくなります。
感染症を予防するために、ワクチン接種を行うようにしましょう。
また、普段の生活でも人混みを避けたり、手洗いうがいをしたりすることが大切です。
人との交流
体力が低下すると、家に引きこもり、外部からの刺激がない生活をする傾向にあります。
人との交流や刺激がない生活は、認知機能を低下させる可能性があります。
そのため、人と会って会話や交流をし、脳に刺激を与えることで認知機能を維持できます。
老年症候群と関連している病気
老年症候群と関連している病気には
- ホルモン減少
- ビンスワンガー白質脳症
があります。
それぞれみていきましょう。
ホルモン減少
老化によるホルモン減少には
- うつ
- 認知判断力の低下
- 精力低下
- 一部の筋力低下
などがあります。
ホルモン減少と老年症候群と関連しているとされています。
また、男性更年期や遅発性の男性ホルモン欠乏などもホルモン減少が要因とされています。
ビンスワンガー白質脳症
ビンスワンガー白質脳症とは、高齢者でなくてもみられる病気です。
ビンスワンガー白質脳症は、50歳代でも尿失禁、認知症、妄想、歩行障害、誤嚥などの症状がみられます。
脳の白質という部分では、ラクナ梗塞と呼ばれる症状が生じます。
ラクナ梗塞は、脳の深い場所に発生する直径15mm以下の小さな脳梗塞のことをいいます。
30歳くらいから、ラクナ梗塞や循環障害などが増加します。
白質の部分の変化は個人差があり、老年症候群と関連性があるとされています。
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老年症候群とフレイルは相互に影響している
加齢に伴い、持病が複数あったり、老年症候群の症状も生じていたりする高齢者が多いかと思います。
フレイルとは、加齢により心身が衰えることで社会との関わりが減少した状態をいいます。
また、加齢により老年症候群の症状があらわれ、その結果、フレイルが進行してしまいます。
フレイルの状態を改善せずに放置すると、介護状態になる可能性が高くなります。
生活習慣病などの重症化予防や低栄養、運動機能の低下などフレイルの進行を予防することが大切です。
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老年症候群のまとめ
今回は、老年症候群の情報を中心にお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 老年症候群には、特定の疾患ではない、致命的な症状はないなどの特徴がある
- 老年症候群は、息切れ、めまい、不眠、転倒、骨折などの症状がある
- 老年症候群の予防には、適度な運動、口腔ケア、栄養バランスのよい食事など
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。