年を重ねることで目の前がかすんだり、太陽の光が眩しく感じることが増えてきます。
老眼や眼精疲労が見られない場合、白内障の可能性があります。
白内障になるとどのような症状が見られるのでしょうか?
白内障に対する効果的な治療法や検査方法が何なのか気になります。
本記事では白内障について以下の点を中心にご紹介します。
- 白内障の種類とは
- 白内障の典型的な症状とは
- 白内障の治療法や検査方法とは
白内障について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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白内障とは
白内障とは目の器官の1つである「水晶体」が濁り、視力が低下する病気です。
水晶体はカメラの凸レンズに似て、外から入る光を曲げて調整する働きがあります。
水晶体は自動的に厚みを調整し、近くのものを見るとき水晶体を分厚く変化させます。
対して遠くのものを見るとき水晶体を薄く変化させます。
白内障を患うと、水晶体を構成するタンパク質が変性し、黄白色や白色に濁ります。
結果、外からの光が通りにくくなり、ピントが合わなくなってしまいます。
出典:厚生労働省「白内障(はくないしょう)」
水晶体の濁った状態や部位の違いで以下の4種類に分類されます。
- 核白内障:水晶体の中心から濁る
- 皮質白内障:水晶体の外側から濁る
- 前嚢下白内障:水晶体の前側から濁る
- 後嚢下白内障:水晶体の後ろ側から濁る
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白内障の種類は6つ
白内障は発症機序により6つに分類されます。
具体的には以下の通りです。
老人性白内障
老人性白内障は文字通り加齢が原因で発症する白内障です。
発症が早い方では、40代より自覚症状が見られる場合があります。
80代では全ての方が白内障を発症するとの報告があります。
出典:日本眼科学会「白内障」
老人性白内障は、水晶体の周囲から濁り、徐々に中心に向かって濁る特徴があります。
発症初期の場合、自覚症状がほとんど見られません。
水晶体のタンパク質は紫外線を吸収すると酸化し変性します。
加齢に伴い長い年月紫外線(UV-B、UV-A)に曝露されることが原因との報告があります。
出典:国立環境研究所地球環境研究センター「絵とデータで読む太陽紫外線」
糖尿病性白内障
糖尿病を発症した方の合併症として糖尿病性白内障があります。
体内の余分な糖質の蓄積や活性酸素による酸化が原因となります。
病態により以下の種類に分類されます。
- 真性糖尿病白内障
・1型糖尿病が原因で発症する白内障です。
・比較的若年者の発症が多く、血糖コントロール不良状態が持続することが原因です。
・発生頻度は糖尿病性白内障の1%程度と極めてまれです。 - 仮性糖尿病白内障
・加齢+糖尿病が原因で発症する白内障です。
・老人性白内障と同様に40代頃より発症しますが、進行スピードが速いのが特徴です。
・発生頻度は99%と糖尿病性白内障のほとんどを占めます。
白内障患者の内、約26%で糖尿病を合併しているとの報告があります。
また60歳以下の糖尿病患者は皮質白内障が出現しやすく、進行しやすいです。
生理的老化に加え、病的老化が加わることで進行スピードが速くなります。
出典:葛飾区「糖尿病と白内障」
アトピー性白内障
アトピー性白内障は文字通りアトピー性皮膚炎が原因で発症する白内障です。
かゆみに伴う顔面の刺激(目を掻く、叩くなど)が原因と考えられています。
20代の若年者が発症しやすく、進行スピードが速い特徴があります。
出典:大阪回生病院「アトピー性眼疾患について」
アトピー性皮膚炎患者の内、約12~17%の割合で白内障を合併するとの報告があります。
また、アトピー性白内障を伴った患者のほぼ100%の割合で顔面皮膚病変があります。
出典:大阪医科大学「アトピー性白内障」
アトピー性白内障は水晶体の前嚢下、後嚢下から発症します。
初期から水晶体の中心が濁り、急激な視力低下が見られる特徴があります。
結果短期間で手術適応になることが多いです。
先天性白内障
先天性白内障は出生時または小児時に発症する白内障です。
先天性白内障は様々な先天性疾患を併発しやすいといわれています。
生後3か月以内の先天性白内障患者は45~66%合併症を伴っているとの報告があります。
出典:大阪医科大学「先天異常を伴う白内障」
水晶体の形質形成遺伝子や構造タンパクの遺伝子変異が原因と考えられています。
また眼球の形成異常、胎内感染症、代謝異常疾患も原因との報告があります。
出典:難病情報センター「先天白内障」
高度の水晶体混濁を生じた先天性白内障は早期手術が重要です。
手術が遅れると良好な視機能を回復できないと報告があります。
片眼白内障や左右差の著しい例は生後 1~2 カ月以内に手術する必要があります。
また両眼白内障は生後 3 カ月以内に手術する必要があります。
手術後、眼鏡などを装着し、矯正、弱視訓練を開始すると視力が発達しやすくなります。
出典:日本小児眼科学会「先天性白内障」
外傷性白内障
外傷性白内障は外部からの刺激が原因で水晶体に傷がつくことで発症する白内障です。
水晶体を固定する糸(チン小帯)に傷がつき、水晶体の位置がずれる場合があります。
また、水晶体が濁るだけでなく固くなる過熱白内障になるリスクが高いです。
外傷性白内障は外傷の原因によって以下の2つに分類されます。
- 鈍的外傷
・眼球周囲に打撲など鈍い衝撃を受けることで水晶体に障害を与える
・格闘技や球技スポーツなどが原因になる場合がある - 穿孔性外傷
・鋭利物が直接眼球に当たることで角膜を貫通して水晶体に障害を与える
・現場作業や交通事故などが原因になる場合がある
スポーツや交通事故が原因になる場合が多いため、発症年齢は若い方が多いです。
主な自覚症状は視力低下です。
出典:田村眼科「外傷性白内障」
併発性白内障
併発性白内障は他の病気が原因で発症する白内障です。
併発性白内障は以下の病気が原因で発症する可能性があります。
- ぶどう膜炎:ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)が炎症を引き起こす眼疾患
- 網膜剥離:眼球の内側にある網膜が剝がれ、視力低下を引き起こす眼疾患
- 網膜変性症:光を信号に変える網膜に異常をきたす遺伝性、進行性眼疾患
- 緑内障:眼圧上昇などが原因で視神経が障害し、視野が狭窄する眼疾患
- 硝子体出血:眼球の内側の大部分を占める硝子体に出血を伴う眼疾患
白内障の典型的な症状
白内障を患うと視覚に関する様々な症状を呈します。
具体的には以下の症状です。
光を眩しく感じる
正常な水晶体は外からの光を集めて網膜に鮮明な像を伝えます。
しかし、水晶体が濁ることで乱反射を起こし光を適切に集められなくなります。
結果、光を眩しく感じてしまいます。
特に夜間は光が散乱しやすいため眩しく感じやすいです。
車のライトや街灯、信号など眩しく感じてしまいます。
視界が霞む
白内障になると水晶体が白く濁ります。
カメラやメガネのレンズと同様に濁ったレンズはぼやけて見えます。
白い濁りが原因で白みがかった霞みが見えてしまう特徴があります。
視力が低下する
白内障が進行すると視力低下が見られます。
白内障は失明になるリスクが最も高い病気として世界的に知られています。
白内障による視力低下は混濁した水晶体の部位により異なります。
中心部が混濁すると視力低下につながります。
結果、白内障の種類や進行具合により視力低下に差が生じます。
老人性白内障の場合、初期は外側の水晶体のみ濁るため視力低下はほとんど見られません。
しかし病状が進行し水晶体の中心部が濁ると急激な視力低下が見られます。
出典:日本医療機器産業連合会「白内障について」
日中と夜間で見え方が変わる
水晶体の前面にある瞳孔は光の量により大きさを変化させます。
日中は光の量が多いため瞳孔を縮小させ眼球より取り入れる光の量を減らします。
一方夜間は光の量が少ないため瞳孔を拡大させ眼球より取り入れる光の量を増やします。
白内障の状態により日中と夜間の見え方に変化が生じます。
老人性白内障は水晶体の外側から白濁します。
瞳孔が拡大する夜間では水晶外外側からの光が集めにくくなります。
結果、夜間の見えにくさを自覚します。
一方、水晶体の中心部から白濁すると瞳孔を縮小させた日中は光が集めにくくなります。
結果、日中の見えにくさを自覚します。
出典:東京逓信病院「白内障の自覚症状」
近視が進行する
近視とは眼に入った光の屈折異常により、遠くのものが見えにくくなる病気です。
網膜にピントを合わせる調整が困難となり、網膜より手前でピントが合う症状です。
光の屈折の調整には水晶体が関係します。
正常であれば近くのものを見るとき水晶体は厚く、遠くのものを見るとき薄く変化します。
白内障が進行すると水晶体が硬くなり、分厚い状態から変化が難しくなります。
結果、網膜より手前のピントになり、近視症状が進行します。
出典:日本近視学会「近視とは?」
物が二重に見える
物体を見たときに二重や三重に見える症状を複視といいます。
複視には以下の2種類あります。
- 単眼複視:片目で見たときに複視症状が見られる、近視、遠視、乱視などが原因
- 両眼複視:両目で見たときに複視症状が見られる、視神経、筋肉の麻痺が原因
白内障は単眼複視が出現しやすい病気の1つです。
水晶体が濁ることで光が上手く屈折せず散乱して透過してしまいます。
結果、物体が二重に見えてしまいます。
老眼鏡をかけても見づらい
老眼は加齢にて水晶体が固くなり、厚さが変えられずピントが合わなくなる病気です。
症状として近くのものが見えにくくなります。
老眼鏡をかけることで近くに対するピントが合わせやすくなり、見えやすくなります。
一方白内障の水晶体も同様に固くなる場合があります。
しかし前述の通り、近視症状が出現しやすくなります。
結果白内障患者の老眼鏡ではピントが合わず、見えにくさが生じます。
白内障になる原因
白内障を発症する最も多い原因は加齢です。
老人性白内障は50代では4割以上が発症し、80代になるとほぼ100%の方が発症します。
その他白内障になる原因疾患は以下の表の通りです。
糖尿病 | アトピー性皮膚炎 | 炎症 | 外傷 |
紫外線 | ステロイド剤 | 風疹感染 |
糖尿病やアトピー性皮膚炎を伴っていると若年齢でも発症するリスクが高まります。
風疹は妊娠初期に感染すると胎児に影響し、先天性白内障が生じる場合があります。
白内障の検査方法
白内障を適切に診断するためには、様々な検査を受けて評価する必要があります。
具体的には以下の通りです。
視力検査
視力検査では裸眼での検査と眼鏡などを使用した矯正視力の検査を行います。
白内障は水晶体の濁り具合や濁る場所によって視力低下が異なります。
矯正視力の低下がみられる場合は白内障が原因の可能性があります。
コントラスト検査
コントラスト検査とはものの大きさや白黒濃淡が正確に認識できるか評価する検査です。
日常生活に近い環境下での感度評価のことをコントラスト感度といいます。
環境で図の太さ、大きさ、濃さがどの程度まで判別可能か測定します。
また、光の眩しさに関する感度評価のことをグレア感度といいます。
図に光りをあて、眩しい状態で同じ検査を行います。
核白内障の場合、水晶体の中心から濁りが生じます。
結果、初期より視力に加え、コントラストの低下が見られやすくなります。
細隙灯顕微鏡検査
細隙灯顕微鏡検査は肉眼で見えにくい眼球の異常を発見する検査です。
細長い光で眼球を照らし、特殊な顕微鏡で拡大します。
白内障の場合、水晶体の濁りを直接確認することができます。
水晶体以外に角膜や結膜も調べることができ、傷や炎症の状態を確認できます。
眼圧検査
眼圧検査は眼球内の房水によって保たれる眼球内圧を測定する検査です。
白内障の場合は水晶体の混濁が原因の為、通常眼圧は変化しません。
視力低下があり眼圧が上昇している場合は緑内障など他の疾患を疑う必要があります。
眼底検査
眼底検査は眼球の奥の状態を調べる検査です。
主に網膜や視神経、毛細血管などの異常がないか調べることができます。
糖尿病の場合、網膜症や毛細血管の動脈硬化などを発症している場合があります。
水晶体の混濁に加え、上記症状が見られる場合は糖尿病性白内障の可能性があります。
眼軸長検査
眼軸長とは角膜から網膜までの距離をいいます。
白内障手術を行う場合、水晶体を取り除き人工レンズを挿入する必要があります。
眼軸を測定することで人工レンズの度数を決定することができます。
白内障の治療方法
白内障の治療方法は病態の進行度により異なります。
白内障初期の場合は点眼薬が中心となります。
注意が必要な点として、点眼薬は進行予防であり、白内障を治療することはできません。
白内障治療に用いられる点眼薬は以下の2種類です。
- ピレノキシン製剤
・白内障の原因物質であるキノイド物質はアミノ酸の代謝異常で生じる
・上記点眼によりキノイド物質生成を阻害し、水晶体の混濁化を防ぐ - グルタチオン製剤
・グルタチオンが低下すると白内障の原因となるタンパク質の酸化がすすむ
・上記点眼は抗酸化作用に発揮し水晶体を維持し白内障を予防する
白内障による自覚症状(眩しさ、見えにくさ)が見られる場合は外科手術の適応です。
外科手術は白内障を根治する唯一の方法です。
白内障の手術は以下の方法があります。
- 超音波乳化吸引術(PEA+IOL)
・現在最も標準的に行われている手術方法
・超音波を用い水晶体を破砕、吸引する手術方法、切開創も2~3mmと小さい
手術時間は10~20分程度 - レーザー白内障手術
・レーザーを用いて角膜、前嚢、水晶体を切開し吸引する手術方法
・侵襲が少なく、誤差も小さいが、自費診療となる - 水晶体嚢外摘出術(ECCE)
・水晶体の前嚢を切り取り核は皮質をそのまま除去する手術方法
・上記手術が困難な場合行われる
・切開創が大きく縫合が必要なため目の負担が大きい - 水晶体嚢内摘出術(ICCE)
・水晶体を嚢ごと全て除去する手術方法
・最も侵襲が大きい方法で現在ほとんど行われていない
白内障の手術をするタイミング
白内障の手術のタイミングは生活スタイルや仕事など人により異なります。
日常生活や仕事で困っている場合は手術を受けたほうがよいでしょう。
生活や仕事で車を使用する方は以下の点が見られる場合は手術を検討してください。
- 視力が0.6以下:車の運転条件は0.7以上のため
- 眩しさを感じる:周辺視野が狭くなったり判断が遅れるため
注意として自覚症状が見られにくい白内障(核白内障)があります。
老眼を伴った核白内障の場合、水晶体が肥大することで一見近くが見えやすくなります。
結果、白内障の発見が遅れ手術負担が増大する可能性があります。
白内障の有無に関わらず、眼科の定期受診を受けることをおすすめします。
検査で水晶体が硬くなっている場合は、自覚症状がなくても手術することをおすすめします。
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白内障の予防方法
白内障の予防方法として水晶体をできる限り健康に保つことが重要です。
具体的には以下の通りです。
紫外線・ブルーライトから目を守る
紫外線は眼球が光と一緒に取り込まれ、活性酸素によるタンパク質変性の原因になります。
ブルーライトは網膜奥まで到達しやすく目のピントがずれや、眩しさの原因になります。
サングラスやつばの長い帽子は光の量を抑えるため紫外線予防に役立ちます。
パソコンや携帯の液晶用にブルーライトカットのフィルムがあるので活用しましょう。
食生活を改善する
偏った食生活は心身だけでなく白内障を進行させる可能性があります。
具体的には以下の食生活です。
乳製品
牛乳など乳製品にはガラクトースが多く含まれます。
主にエネルギー代謝として使用されなすが、摂取量が多いと白内障リスクが上昇します。
お菓子やジュース
糖質を多く含むため、糖尿病のリスクが高くなり、糖尿病性白内障につながります。
インスタント食品
脂や塩分が多く、体内の酸化リスクが上昇します。
偏った食生活を改善させ、バランスのよい食事を摂取するよう心がけましょう。
抗酸化作用がある成分を摂取する
目の酸化を予防するために抗酸化作用が含まれた成分を摂取し白内障を予防します。
必要な成分と多く含まれる食品は以下の表の通りです。
栄養素 | 効果 | 多く含まれる食品 |
ビタミンC | 抗酸化作用にて目の活性酸素発生を予防 | いちご、レモンなど果物に多い |
ビタミンE | 抗酸化作用、ビタミンCの働きを長持ちさせる | アーモンドなどナッツ類やうなぎなど魚介類に多い |
βカロチン・ルテイン | カロテノイドの一種、目の抗酸化作用がある | ニンジン、ほうれん草など緑黄色野菜に多い |
ゼアキサンチン | 強力な抗酸化作用があり、黄斑部を光の刺激から守る | パプリカ、とうもろこしなど |
ポリフェノール | アントシアニンなど目の疲労感の予防や改善に効果がある | ブルーベリーや赤ワインなど |
適度に運動をする
適度な運動は全身の血流を改善させるため、目の循環を高めます。
また、運動による疲労が睡眠の質を高め、目の疲労回復につながります。
運動は生活習慣病改善にも役立つため、糖尿病や動脈硬化の改善にもつながります。
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白内障の患者数と推移
白内障の患者数は徐々に減少傾向にあり、現在約90万人です。
一方、手術件数は年々増加傾向にあり、現在年間手術件数が100万件以上です。
手術数の増加が患者数の減少に影響を与えている可能性があります。
年齢別では65歳を過ぎると白内障患者は急激に増えます。
65歳以上の白内障患者数は全体の約9割近くになります。
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白内障のまとめ
ここまで白内障についてお伝えしてきました。
白内障の要点をまとめると以下の通りです。
- 白内障は年齢や他疾患、遺伝による要因など計6種類に分類される
- 白内障の典型的な症状は眩しさや目のかすみ、視力低下である
- 白内障の根本治療は手術のみ、検査方法は視力検査、細隙灯顕微鏡検査などがある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。