気管切開とは、何らかの原因で気管が狭くなり、呼吸困難になっている場合に必要とされる処置になります。
呼吸を確保したり、痰を吸引しやすくするために気管に孔をあけることをいいます。
気管切開とは、どのような場合に適応する施術なのでしょうか?
気管切開は、なぜ必要なのでしょうか?
この記事では、気管切開について解説しながら、気管切開が必要な理由や気管切開の手術方法などについてご紹介します。
- 気管切開とは
- 気管切開が必要な理由とは
- 気管切開のメリットとは
- 気管切開のデメリットとは
気管切開について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ、最後までお読みください。
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気管切開はどんな場合に適応する施術?
気管切開とは、何らかの原因で呼吸困難になっている場合に必要とされる処置になります。
呼吸を確保したり、痰を吸引しやすくするために気管に孔をあけることをいいます。
気管切開の適応には、以下の5つがあります。
- アレルギー反応により、気道(空気の通り道)がむくみ、狭くなってしまった場合
- 腫瘍などにより、気道が狭くなったり、塞がってしまっている場合
- のどの反射機能の低下より、自力で痰を出すことが難しい場合
- 長期にわたり、人工呼吸器による呼吸管理が必要な場合
- 鼻や口からの挿管が難しい場合
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気管切開する理由と手術内容
気管切開は、なぜ必要なのでしょうか?
また、どのような手術が必要なのでしょうか?
気管切開が必要な理由と手術例について詳しく見てみましょう。
理由
正常な場合、吸い込んだ空気は気道を通って肺に送られます。
しかし、気道が閉鎖された場合、空気が肺に送られないため、呼吸困難に陥ります。
呼吸困難とは、自力で呼吸や痰を吐き出すことができない状態のことです。
そのような場合、生命を維持するために気管切開を行い呼吸ができる状態にしなければなりません。
気管切開が必要な理由は、気道を確保するためになります。
手術内容の例
- 仰向けに寝た状態で、肩の下に枕を入れ、顎が上がった状態にします。
- 輪状軟骨と胸骨の上を切開します。
- 甲状腺を持ち上げ、気管軟骨を切開します。
- 気管カニューレを挿入します。
- 切開した皮膚を縫います。
- レントゲンで気管カニューレの挿入位置を確認します。
気管カニューレってどんなもの?
気管カニューレとは、どのようなものなのでしょうか?
気管カニューレについて詳しく見てみましょう。
気管カニューレの特徴や種類
気管カニューレには、さまざまな種類があります。
気管カニューレの特徴や種類について見てみましょう。
気管切開後につけるチューブ
気管カニューレとは、気管切開術を行った患者の気管切開孔に留置する管のことです。
種類
気管カニューレは、大きく分けて3つの種類があります。
・カフなし
カフとは、気管カニューレの先端付近にある風船のことをいいます。
そのため、気管カニューレの先端付近に風船がないカニューレのことを指します。
小児は気管壁が弱いため、主に小児に使用されます。
・カフ付き
気管カニューレの先端付近に風船が付いているカニューレになります。
カフを膨らませると、気管と気管カニューレの隙間がなくなります。
気管と気管カニューレの隙間がなくなることで、誤嚥や空気の漏れを防ぎます。
・カフ上部吸引チューブ付き
気管カニューレの先端付近にある風船上部に吸引チューブが付いたカニューレになります。
気管切開部からの出血、口腔や鼻腔などから流れ込む唾液は、カフ上部に貯留します。
カフ上部に貯留した分泌物をチューブから吸引できます。
カフ上部吸引チューブ付きは、気管カニューレ挿入患者でも発声できるようにと開発された商品のため、「スピーチカニューレ」とも呼ばれています。
起こる可能性のあるトラブル
気管カニューレ挿入により、どのようなトラブルが見られる可能性があるのでしょうか?
気管カニューレ挿入により、起こる可能性があるトラブルについて見てみましょう。
カニューレが外れる
気管カニューレが抜けてしまう理由としては、
- 気管カニューレの固定が不十分なため
- 患者本人が故意または不注意で抜いてしまったため
などがあります。
過度なカフ圧による壊死や血流障害
気管カニューレのカフを膨らませすぎることにより、起こります。
圧が強いことで気管壁の壊死や血流障害が起こる可能性があるためです。
カフ圧(カフの量)は個人によって異なるため、適宜カフ圧を調整する必要があります。
気管切開のメリットとデメリット
気管切開には、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
気管切開のメリットとデメリットについて詳しく見てみましょう。
メリット | デメリット |
安定的な呼吸が確保できる 気管内に貯留した痰を容易に吸引できる 口や鼻からの挿管と比較し死腔が少ない 口や鼻からの挿管と比較するとカニューレの挿入や固定が容易である 傷口が小さく、患者への侵襲が少ない 飲み込みに問題がない場合は、食事摂取が可能である 発声が可能な場合もある | 気管切開のための手術による負担がある 感染など合併症のリスクがある 通常の呼吸のように温度や湿度が保てない 医療的ケアが常時必要になる 発声が困難な場合もある 見た目が気になる |
気管切開に関する疑問
気管切開に関する疑問点について詳しく見てみましょう。
声は出る?
声帯(発声する部分)より下の位置が切開されるため、声帯への影響はありません。
誤嚥が少なく、喉頭の機能に問題がない場合は、スピーチカニューレを使用します。
スピーチカニューレを使用することで声を出せます。
気管切開は治るものなの?
気管切開による治療後、呼吸が安定し、問題がなければ気管切開孔は塞ぐことが可能です。
孔が塞がるまでどのくらいかかる?
気管切開孔が塞がるまでの期間は、通常1.5ヶ月ほどといわれています。
気管切開の跡は残る?
気管切開の跡は、横に数センチ残ります。
時間の経過とともに傷跡は、徐々に薄くなっていきます。
痰が増える理由は?
気管切開孔から挿入する気管カニューレは、体が異物とみなします。
そのため、気管切開後は痰が増える場合があります。
気管切開後の生活
気管切開後の日常生活では、いくつかの注意点があります。
気管切開後の日常生活での注意点について詳しく見てみましょう。
食事
飲み込みに問題がない場合は、食事摂取は可能です。
しかし、嚥下機能の低下や、誤嚥のリスクが高い場合は禁止される場合があります。
お風呂・シャワー
気管切開中もお風呂やシャワーは可能です。
気管切開孔からお湯が入らないように工夫する必要があります。
ビニール製のエプロンをかけたり、浴槽につかる場合は胸の高さまでにしましょう。
就寝
就寝時は、布団などにより、気管切開部が塞がれないように注意しましょう。
夜間、就寝中も痰づまりにならないように適宜痰を吸引する必要があります。
外出
気管切開中でも、以下の場合は公共交通機関を利用しても問題ありません。
- 気管カニューレからの吸引が必要ない場合(必要な場合は自分で行える)
- 気管カニューレの自己抜去のリスクや閉塞がない場合
- 気管切開以外の問題やリスクがない場合
尚、同乗者がいない単独での場合は、医師による判断と指示が必要になります。
在宅
気管切開後の患者が在宅で生活するためには、家族の協力が不可欠となります。
- 適宜気管カニューレから痰の吸引
- 気管切開孔のガーゼ交換
- 吸引カテーテルの交換や吸引器具の洗浄
などを自身または家族が行う必要があります。
手技や患者の観察ポイントについては、入院中に医師や看護師が指導してくれます。
気管切開後、回復のために必要なケア
気管切開後は、どのようなケアが必要となるのでしょうか?
気管切開後に必要なケアについて詳しく見てみましょう。
痰の吸引
自力で痰を出せない場合は、気管カニューレから痰を吸引する必要があります。
痰の吸引回数は、個々によって異なります。
カフ圧の確認
気管カニューレの先端付近に、カフといわれる風船が付いているカニューレがあります。
カフの空気は、自然に少しずつ抜けるため、適宜カフ圧を確認しましょう。
カフの空気が少なすぎると、気管カニューレが抜けてしまう場合があります。
一方、カフを膨らませすぎると、気管壁のトラブルを招くことがあります。
カフ圧は個人によって異なるため、適宜カフ圧を調整し、確認する必要があります。
気管カニューレがカフ付きでない場合は確認の必要はありません。
固定バンドや皮膚の確認
気管カニューレが抜けてしまわないように、固定するためのバンドがあります。
固定バンドが緩すぎると、気管カニューレが抜けてしまう場合があります。
一方、固定バンドを締めすぎると首周囲の皮膚トラブルを招くことがあります。
最低でも1日1回は固定バンドを外し、首周囲の皮膚トラブルの有無を確認しましょう。
また、固定バンドが汚れている場合は、適宜清潔な固定バンドに交換しましょう。
口の中のケア
口腔内が汚れていると、細菌が繁殖します。
口腔から気管に流れ込む唾液により、肺炎を引き起こしてしまう可能性があります。
最低1日1回は歯磨きをしたり、口腔内を清拭するなど清潔に保つ必要があります。
加湿フィルターの管理
気管切開後は、通常の呼吸のように温度や湿度が保てなくなります。
そのため、痰が固くなったり、乾燥しやすくなります。
したがって、人工鼻といわれる加湿フィルターを使用する必要があります。
気管カニューレの交換
気管カニューレの交換は、2〜3週間に1回または適宜行う必要があります。
気管カニューレの交換は、原則医師または研修を受けた看護師によって行われます。
万が一、気管カニューレが抜けてしまった時のために、家族は事前に緊急時の対応を説明されます。
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気管切開した患者は訪問看護を利用できる?
気管切開後の患者は、介護保険サービスを利用できます。
介護保険サービスで訪問看護を利用することで、
- 体調管理
- 気管カニューレのガーゼ交換
- 気管切開孔など皮膚トラブルケア
などを依頼できます。
家族の負担を軽減するためにも、訪問看護以外に定期的なショートステイなどの利用も検討すると良いでしょう。
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医療的ケアが必要な子どもに対する支援体制
気管切開後は、医療的ケアが常に必要になります。
厚生労働省や文部科学省の報告によると、全国的に医療型障害児入所施設は常に満床となっています。
そのため、在宅で子どもと一緒に暮らす選択をする方が多いのが現状です。
気管切開後の子どもとその家族を支援するためにさまざまなサービスが展開されています。
医療的ケアが必要な子どもが、日常生活を送るために利用できるサービスには以下のようなものがあります。
サービス名 | サービス内容 |
児童発達支援 | 日常生活上の基本的な動作などの指導 |
医療型児童発達支援 | 日常生活上の基本的な動作などの指導と治療 |
放課後等デイサービス | 学校の授業終了後や休日に生活能力向上の訓練などの支援 |
居宅介護 | 居宅での入浴、食事、通院の介助、生活の相談など |
訪問看護 | 訪問看護師による日常生活の支援やケア |
訪問診察 | かかりつけ医による定期的な診察 |
往診 | かかりつけ医による緊急時の診察 |
計画相談支援 | 障害福祉サービスの利用計画案を作成など |
障害児相談支援 | 障害児通所支援の障害児支援利用計画案を作成など |
短期入所 | 障害児支援施設や病院などに短期間入所し、日常生活を支援 |
上記のサービスは一部になります。
各サービスの対象は、それぞれ異なります。
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気管切開のまとめ
ここまで、気管切開や気管切開が必要な理由、気管切開の手術方法などを中心にお伝えしてきました。
気管切開の要点をまとめると以下の通りです。
- 気管切開とは、呼吸困難になっている場合に気管に孔をあけることをいう
- 気管切開が必要な理由は、気道を確保するためである
- 気管切開のメリットは、安定的な呼吸の確保・痰を容易に吸引できるなどがある
- 気管切開のデメリットは、手術による負担・感染など合併症のリスクなどがある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。