不正出血とは月経時以外に出血が起こることです。
不正出血は卵巣・子宮の病気というイメージが強いですが、ストレスによって起こることもあります。
そもそも不正出血とはどのような症状のことをいうのでしょうか?
なぜ、ストレスが不正出血を引き起こすのでしょうか?
本記事では、ストレスによる不正出血について、以下の点を中心にご紹介します。
- 不正出血とは
- ストレスと不正出血の関係
- 不正出血を引き起こす病気
ストレスによる不正出血について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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不正出血とは
そもそも不正出血とは何でしょうか。
主な症状・原因について解説します。
症状
不正出血とは、月経時以外に女性の性器から出血することです。
不正性器出血とも呼ばれます。
具体的な症状は以下の通りです。
- おりものの量が増える
- おりものに血が混じる
- 茶色・褐色の血が出る
- 黒い血が出る
- 生理のような鮮血が出る
- ピンク色の血が出る
- 大量の鮮血が出る
出血の色が異なるのは、不正出血の発生場所・部位が異なるためです。
出血の色だけでは発生場所・原因は特定できないため、早めに婦人科を受診してください。
不正出血が起こる主な原因
不正出血は、原因に応じて数種類に分類できます。
代表的な原因と種類は以下の通りです。
種類 | 原因 | 起こりやすい場面・人 |
器質性出血 | 膣・子宮・卵巣などの病気 | 性交時など |
機能性出血 | 女性ホルモンバランスの乱れ | ホルモンバランスが不安定な方(中学生・高校生・更年期)・低用量ピル服用中の方 |
中間出血 | 卵胞ホルモンの分泌の低下 | 月経の排卵期 |
着床出血 | 受精卵の着床時に子宮内膜が傷つく | 妊娠初期 |
その他 | 性器の外傷など | 性交時・ティッシュで強くこする |
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なぜストレスが原因で不正出血するの?
不正出血の原因の1つとして、ストレスが挙げられます。
ストレスによる不正出血は、「機能性不正出血」に該当することがほとんどです。
なぜストレスが不正出血を引き起こすのかというと、理由は自律神経にあります。
自律神経とは、内臓の働き・ホルモン分泌などをコントロールする神経系です。
自律神経は、交感神経と副交感神経が交互に入れ替わることでバランスを保っています。
しかし、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなることがあります。
代表的な原因が、ストレス・疲れなどです。
ストレス・疲労が溜まると、交感神経が活性化しやすくなります。
反対に副交感神経は抑制されるため、自律神経のリズムが乱れやすくなります。
自律神経が乱れると、女性ホルモンのバランスも崩れます。
自律神経は、女性ホルモンをはじめ、さまざまなホルモン分泌を制御しているためです。
女性ホルモンの分泌が乱れると、生理の仕組みに支障をきたすため、不正出血が起こる可能性があります。
女性ホルモンの乱れと不正出血
女性ホルモンのバランスが崩れると、不正出血が起こります。
理由は、子宮内膜の成長に支障をきたすためです。
そもそも月経とは、妊娠に備えて成熟した子宮内膜が体外に排出される現象です。
子宮内膜は子宮の中にできる器官で、受精卵を着床させ、胎児を育てる役割を果たします。
子宮内膜は、月経周期にあわせて成熟・剥離を繰り返します。
子宮内膜の成長を管理するのは、「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2つの女性ホルモンです。
エストロゲンは子宮内膜を分厚くするホルモンで、月経〜排卵までの周期に分泌されます。
プロゲステロンは子宮内膜を安定させ、排卵後〜月経までの周期に分泌されるホルモンです。
ストレスによって女性ホルモンのバランスが崩れると、エストロゲン・プロゲステロンの分泌に異常が起こります。
すると、月経周期にあわせて子宮内膜が正常に発達しなくなるのです。
結果、月経時以外に子宮内膜が剥がれ落ち、不正出血が起こりやすくなります。
ストレスによる排卵障害
ストレスによって不正出血が起こるもう1つの原因として、排卵障害が挙げられます。
排卵障害とは、排卵がうまくいかなくなることです。
そもそも排卵が起こるのは、脳から卵巣に指令が送られるためです。
具体的には、脳からGnRH・LH・FSHなどのホルモンが分泌されることにより、卵巣からの排卵が促されます。
ストレスを受けて自律神経が乱れると、排卵を促すホルモンの分泌にも支障をきたします。
結果として、排卵日を迎えても排卵が行われなくなるのです。
排卵がストップすると、女性ホルモンのうち、プロゲステロンが分泌されなくなります。
プロゲステロンは、排卵後に合成される「黄体」から分泌されるためです。
一方、排卵日を境にエストロゲンの分泌も自動的に低下します。
つまり、2つの女性ホルモンの分泌が止まるため、子宮内膜を制御する仕組みが停止するのです。
そのため、未成熟な子宮内膜が出血を起こしやすくなり、不正出血につながります。
自律神経や女性ホルモンのバランスを乱す原因
自律神経や女性ホルモンを乱す代表的な原因は、精神的・肉体的なストレスです。
以下のようなものが該当します。
- 引っ越し・転職などの環境の変化
- 仕事による疲れ
- 失恋
- 人間関係の悩み
- 極端なダイエット・体重の増減
ストレスが原因の不正出血は、ストレスが解消されれば治ることがほとんどです。
社会で生活していく上で、ストレスを完全に避けることは困難です。従って、正しくストレスと向き合っていくことが、人が健康的に暮らしていくためには大切です。今回はストレスについて、以下の点を中心に解説していきます。 ストレス症状[…]
不正出血から考えられる病気の種類
不正出血は、子宮・卵巣・膣の病気によって起こることもあります。
特に2週間程度出血が続く場合や、大量に出血している場合は、病気の可能性があります。
不正出血の原因となる病気について、説明していきます。
子宮筋腫
子宮の筋肉に良性の筋腫(コブ)ができることです。
子宮の内側に筋腫ができると、子宮内膜が傷つきやすくなるため、月経期間外に出血を起こします。
不正出血以外の症状では、強い月経痛・月経不順・貧血・立ちくらみなどが代表的です。
子宮筋腫が大きくなると、不妊・流産が起こりやすくなります。
子宮頸管ポリープ
子宮の入り口(頸管)に、キノコ状のポリープができることです。
多くの場合、ポリープ自体は良性ですが、こすれたり傷ついたりすると出血を起こします。
ポリープが傷つく原因としては、スポーツ・排泄時のいきみ・性行為などが代表的です。
ポリープが大きくなると、特に刺激が無くても出血することもあります。
不正出血以外の症状としては、茶褐色のおりものなどが挙げられます。
子宮内膜炎
子宮内膜炎は、子宮内膜が炎症を起こした状態です。
炎症の主な原因として、大腸菌・クラミジア菌・淋菌などの細菌感染があります。
不正出血が起こるのは、炎症によって子宮内膜から出血するためです。
出血以外の症状としては、発熱・おりものの増加・腹痛などがあります。
子宮内膜炎が慢性化すると、不妊症に発展することもあります。
子宮腟部びらん
子宮膣部びらんは、子宮の入り口がただれているように見える現象です。
本当にただれているわけではなく、月経周期の関係で見た目がピンク色っぽく変化しています。
子宮膣部びらんの原因は、女性ホルモンの活発化により、子宮膣部の組織がふくらんで外に張り出すことです。
多くは無症状ですが、張り出した組織が出血を起こすことがあります。
子宮内膜増殖症
子宮内膜増殖症は、子宮内膜が異常に分厚くなることです。
子宮体がんの前触れとして起こることもあります。
子宮内膜が分厚くなった結果、月経期間外に剥離して出血を起こすことがあります。
その他の症状は、月経不順や月経過多、ひどい月経痛などです。
子宮頸がん
子宮頸がんは、子宮の入り口にできるがんのことをいいます。
子宮頸がんの原因は、多くの場合、性交時などにヒトパピローマウイルスに感染することです。
子宮頸がんは、数年かけて進行することが一般的です。
初期には自覚症状があらわれにくく、進行に伴い不正出血・異常なおりものなどが見られるようになります。
子宮体がん
子宮体がんは、子宮上部の体部にできるがんです。
子宮体がんのリスクが高まるのは、40代以降の女性といわれています。
不正出血は、子宮体がんの代表的な症状です。
その他の症状としては、血の混じったおりものや、排泄痛・性交痛・下腹部痛などが挙げられます。
子宮体がんは高齢になるほど発症率が高まります。
そのため、閉経後に不正出血がある場合は、婦人科で検査を受けましょう。
萎縮性膣炎
萎縮性膣炎は、閉経前後の女性に多く見られます。
原因は、女性ホルモンの減少によって膣内が乾燥することです。
膣内の壁が薄くなるため、ささいな刺激で傷がついて出血することがあります。
膣内が傷つく原因としては、性行為・スポーツ・排泄時のいきみなどが挙げられます。
不正出血以外の症状は、黄色い膿のようなおりものや膣の痛み、違和感などです。
放置すると慢性膣感染症や尿路の障害などに発展しやすくなるため、早めに婦人科を受診してください。
卵巣嚢腫
卵巣嚢種は、卵巣にできた腫瘍の中に水が溜まる状態です。
多くの場合、腫瘍は良性ですが、まれに悪性の場合もあります。
腫瘍が破裂すると、不正出血の原因となります。
卵巣嚢腫は、激しい腹痛・月経痛・腰痛のほか、不妊症を引き起こすこともある病気です。
不正出血があったときの対処方法
不正出血が起こったとき、どのように対処すべきか迷うこともあるでしょう。
ここからは、不正出血が起こったときの対処法をご紹介します。
病院に行って診てもらう
不正出血が3日以上続く場合は、病院で診察を受けましょう。
診療科は婦人科が適当です。
1日で出血が治まる場合は、様子を見てもかまいません。
すぐに対処が必要な場合も!
不正出血の中には、すぐに対処が必要なケースもあります。
子宮がん・膣がんなどのサインである可能性が高いためです。
次のようなケースに当てはまる場合は、できる限り早めに婦人科を受診してください。
- 2週間以上、不正出血している
- 短期間で不正出血を頻繁に繰り返す
- 大量に出血する
- 閉経後に不正出血がある
- めまい・腹痛・貧血などの症状を伴う
不正出血と生理不順に違いはある?
不正出血と生理不順の違いは、「出血の原因が生理かどうか」です。
不正出血はストレス・卵巣の病気などが原因なので、生理による出血ではありません。
一方、生理不順は生理周期が乱れることであり、出血の原因は生理自体にあります。
ちなみに、性器からの出血の原因は、婦人科で検査を受けなければ判断できません。
異常な出血がある場合は、原因を特定するためにも、病院で検査を受けましょう。
あるいは、基礎体温を測るのも良い方法です。
出血と体温の上昇が重なる場合は、不正出血ではなく、排卵出血の可能性が高くなります。
排卵出血とは排卵日に子宮内膜の一部が剥離することで、多くの場合、さほど心配はありません。
ピル服用と不正出血の関係は?
低用量ピルは、排卵を抑制する薬剤です。
高い避妊効果がありますが、吐き気・頭痛・乳房痛などの副作用が出ることがあります。
不正出血も副作用の1つで、はじめてピルを服用したときに起こりやすい症状です。
ピルを服用すると、女性ホルモンのバランスが崩れやすくなります。
結果として、生理期間外に出血しやすくなるのです。
低用量ピルの使用開始から2〜3ヶ月ほど経つと、不正出血は起こりにくくなります。
もし3ヶ月目以降に不正出血がある場合は、ピルが合っていない可能性があります。
あるいは、出血の原因はピルではなく、子宮・卵巣の病気かもしれません。
低用量ピルを長期使用して不正出血が続く場合は、婦人科に相談してみましょう。
ストレスによる不正出血の予防方法
ストレスが原因の不正出血は、ストレスが解消されれば治ることがほとんどです。
不正出血を予防・改善するためにも、以下のようなことを心がけてください。
- 十分な睡眠・休養を取る
- 規則正しい生活
- 栄養バランスのよい食事
- ストレス解消
- リラックスできる時間を作る
不正出血の原因がストレスかどうかは、自己判断できません。
卵巣・子宮の病気が隠れている可能性もあるためです。
もし不正出血が続く場合や、不安な症状がある場合は、念のため病院で検査を受けてください。
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子宮がん検診を受けている人は意外に少ない
不正出血は、ストレスではなく子宮がんが原因で起こることもあります。
子宮がんには、子宮の入り口にできる子宮頸がんと、子宮の奥にできる子宮体がんがあります。
特に子宮頸がんは、婦人科系のがんの中でも発症率が高い病気です。
子宮頸がんは高齢者に多い病気ですが、最近は20代後半から30代での発症も目立ちます。
日本における子宮頸がんの発症者数は、年間約8,500人といわれています。
子宮がんは、放置すると命を落とすおそれが高い病気です。
重症化や命の危機を回避するためにも、子宮がんは早期発見・治療することが大切です。
子宮がん検診は、子宮がんの早期発見に役立ちます。
しかし日本では、子宮がん検診の受診率はさほど高くありません。
欧米の子宮がん検診の受診率が70〜80%であるのに対し、日本は20%程度です。
特に若年者の受診率が低く、20代では10%程度の方しか検診を受けていません。
子宮がんの中でも、子宮頸がんは初期に症状があらわれにくいです。
代表的な症状は不正出血ですが、「ストレスや疲れのせい」と勘違いし、がんを見逃すケースが多々見られます。
子宮頸がんは早期治療すれば、8割以上が回復するといわれています。
そのため、定期的にがん検診を受け、早期発見につなげることが大切です。
出典:厚生労働省【がん検診手帳 (3)子宮頸がん検診について】
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ストレスによる不正出血のまとめ
ここまで、ストレスによる不正出血についてお伝えしてきました。
ストレスによる不正出血の要点をまとめると以下の通りです。
- 不正出血とは、生理期間外に性器から出血すること
- ストレスにより女性ホルモンのバランスが崩れるため、不正出血が起きる
- 病気としては、子宮筋腫・子宮頸管ポリープ・子宮がんが代表的
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。