不整脈は心拍のリズムが乱れる症状として知られています。
しかし、不整脈の多くは期外収縮であることはあまり知られていません。
期外収縮とはどのような症状がみられるのでしょうか?
期外収縮に対しどのような治療方法があるのでしょうか?
本記事では不整脈の一種である期外収縮について以下の点を中心にご紹介します。
- 期外収縮が引き起こす症状とは
- 期外収縮の原因や診断方法とは
- 期外収縮の治療方法とは
期外収縮について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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期外収縮とは
不整脈は通常時の脈拍に異常が生じ、リズムの乱れが生じた状態をいいます。
不整脈は様々な種類があり、健康な方でも起こる症状です。
期外収縮は単発的なリズムの乱れを特徴とする不整脈の一種です。
洞結節と呼ばれる部位から電気信号を発生させて心臓のリズムをコントロールしています。
期外収縮は洞結節以外の部位から少し早いタイミングで電気信号が発生します。
結果、心臓の収縮が早まることで心臓のリズムの乱れが生じます。
期外収縮は心電図検査や脈拍をとることで発見することができます。
24時間心電図検査では健康成人の50%以上に期外収縮が出現するとの報告があります。
期外収縮は経過観察する場合も多いです。
危険な不整脈の場合はカテーテル治療など様々な治療方法があります。
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期外収縮が引き起こす症状
期外収縮が出現しても症状がなく過ごしている方が多いです。
しかし、中には自覚症状を訴える場合があります。
具体的には以下の症状です。
胸痛がある
期外収縮の自覚症状として胸部症状があります。
期外収縮が生じると、脈の途切れや、途切れた後の拍動を強く感じる場合があります。
結果、一時的に胸痛を自覚する場合があります。
期外収縮による胸痛として、以下の自覚症状がみられる場合があります。
- 一瞬ドキッとする
- 胸が重く感じる
- ドンッと大砲に撃たれたような感じがする
息苦しい
期外収縮が長期間続くと心不全を合併する場合があります。
心不全が生じると心臓のポンプが弱り、全身の血液がうっ滞しやすくなります。
血液がうっ滞すると全身の細胞に酸素が届きにくくなり、酸欠状態になります。
酸欠状態が持続すると、安静時や活動時に息苦しさや息切れがみられやすくなります。
肩こりがある
肩こりは肩周囲の筋肉痛以外に心臓病が原因になる場合があります。
心筋梗塞や狭心症の症状として、前胸部を中心とした激しい疼痛があります。
心臓由来の疼痛に関連し左肩周囲の疼痛などを伴い、肩こりと勘違いすることがあります。
心筋梗塞や狭心症など虚血性心疾患は心室性期外収縮発生の原因になる場合があります。
気持ち悪い感じがする
期外収縮は心臓のリズムが乱れることで脈が飛ぶ、触れない症状がみられます。
脈が飛ぶ感覚そのものが気持ちが悪い感覚として認識することがあります。
気持ち悪い感覚が続くと吐き気につながる可能性もあるので注意が必要です。
立ちくらみする
期外収縮が連続して出現する場合、一時的に血圧低下を引き起こす原因となります。
血圧が低下すると全身、特に脳の血管まで血液を送り込む力が弱くなります。
結果脳の血液循環が低下するため立ちくらみがみられる場合があります。
疲れやすくなる
前述の通り、期外収縮は虚血性心疾患や心不全の原因になります。
血液のうっ滞による全身の循環不全が起こると疲れやすくなります。
また、疲労が蓄積すると自律神経の乱れが生じます。
期外収縮は自律神経の乱れに関連しているため期外収縮が増える原因になります。
頭痛がある
前述の通り、期外収縮が続くと低血圧の原因になります。
脳の血液循環が低下すると脳細胞が酸欠状態を起こします。
結果、頭痛を感じ、片頭痛になる可能性があります。
動悸があるまたは徐脈になる
期外収縮により心拍のタイミングが途切れた後の拍動を強く感じることがあります。
ドキッとしたり脈が飛ぶ感覚は動悸として自覚することがあります。
また、期外収縮が連続して出現すると脈拍が飛ぶ頻度が増します。
結果、触れる脈が減ることで徐脈につながる可能性があります。
期外収縮が起こる原因
期外収縮が起きる原因として原因部位が特定できるもの、器質的、心因性などがあります。
具体的には以下の通りです。
期外収縮の原因部位別分類
心臓は電気信号を正確に伝えることで適切な収縮が得られます。
心房内の洞結節から電気信号が発生します。
その後心房内に伝わり心房を収縮させた後、房室結節を通って心室に伝わります。
上記電気信号の経路の途中で電気信号が発生すると期外収縮になります。
発生部位別による分類は以下の通りです。
心房性の期外収縮
心房性の期外収縮は心房から発生する異常な電気信号です。
心房性の期外収縮は健康成人でも93.7%に観察されるとの報告があります。
期外収縮が発生する原因として加齢や自律神経の乱れが影響しています。
具体的な原因は以下の通りです。
カフェイン | たばこ | 睡眠不足 | 運動不足 | ブルーライト |
脱水 | ミネラル不足 | 胃酸逆流 | 飲酒 | 姿勢や体位 |
房室接合部性の期外収縮
心房と心室をつなぐ房室接合部が原因で期外収縮があらわれる場合があります。
房室結節やヒス束と呼ばれる部位などが異常興奮することが原因です。
心電図検査にも特徴的な所見がみられます。
房室接合部から心房に電気信号が流れるため、P波が陰性反応を示します。
心室性の期外収縮
心室由来の異常興奮が原因となる期外収縮があります。
心室性の期外収縮は健康成人でも約40~100%の方にみられるといわれています。
期外収縮が発生する原因として加齢や生活習慣、病気などが影響しています。
具体的な原因は以下の通りです。
カフェイン | 不眠 | 飲酒 | 喫煙 |
肺疾患 | 心臓病 | 高血圧 |
器質的な原因
心臓そのものの器質的な原因で期外収縮が発生する場合があります。
具体的には以下の通りです。
リウマチ性弁膜症に罹患している
関節の炎症で知られているリウマチですが、心臓弁膜症の原因にもなります。
特に僧帽弁の疾患(僧帽弁閉鎖不全症、僧房弁狭窄症)の原因の大半はリウマチです。
リウマチ性弁膜症に罹患すると期外収縮など不整脈が発生しやすくなります。
急性心筋梗塞を罹患した
心筋梗塞は冠動脈が閉塞して心筋が酸素不足になる疾患です。
心筋の異常が発生すると電気信号の経路に異常が発生します。
結果、心室性期外収縮が出現する原因となります。
急性心筋梗塞の場合、ほぼ100%心室性期外収縮があらわれるとの報告があります。
心因性の原因
ストレスや不安など、心因性が原因で期外収縮が発生する場合があります。
具体的には以下の通りです。
更年期のホルモンバランスの乱れによる期外収縮
更年期になると女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少します。
ホルモンのバランスが崩れると更年期障害を発症し心身に様々な不調があらわれます。
更年期障害は自律神経が乱れる原因になります。
動悸などが出現しやすくなり、期外収縮の原因になります。
ストレスを感じて期外収縮が起こる
ストレスを抱えると交感神経が高まり自律神経が乱れやすくなります。
結果、期外収縮など不整脈を誘発する原因になります。
また、ストレスの原因として仕事や生活習慣が影響する場合があります。
具体的には不眠やオーバーワーク、飲酒やたばこなどです。
生活習慣が乱れるとストレスを溜めるだけでなく、自律神経が乱れやすくなります。
不安を感じて期外収縮が起こる
期外収縮による胸痛やドクンとする感覚など不快感が強く印象に残る場合があります。
不快の原因が不明な場合、強い不安感に襲われます。
また原因が期外収縮と分かっている場合でも、再度期外収縮がでないか不安感が残ります。
不安感が続くとストレスに感じてしまうため、期外収縮を誘発する原因となります。
自律神経失調症が原因で期外収縮が起こる
自律神経失調症とは、何らかの原因で自律神経が乱れ様々な症状が出現する病気です。
原因はストレスや不規則な生活、女性ホルモンの減少や疾患、うつ病などです。
自律神経が乱れると、心臓の電気刺激が余計な場所で発生する期外収縮の原因になります。
期外収縮の診断方法
期外収縮の診断方法として脈拍の確認や心電図検査があります。
具体的には以下の通りです。
脈を測って不整脈が連発するか確認する
脈を測ることで不整脈の違いが確認できます。
手首の親指側に橈骨動脈があるため、指で押さえて測定します。
脈が単発で飛ぶ場合、期外収縮の可能性があります。
1分間で5、6回以上脈が飛ぶ場合や連続して脈が飛ぶ場合は早急に精査や治療が必要です。
また、機械で血圧測定する際、エラーが頻繁に出現する場合は要注意です。
期外収縮が原因で脈が飛ぶため、正確に測定ができなかった可能性があります。
心電図検査を行う
心電図検査を行うと正確に期外収縮が診断できます。
心房性の期外収縮は通常より早いタイミングで同じ収縮波形がみられます。
心室性期外収縮は収縮波形が異なり、幅広い形になります。
心電図検査には24時間継続的に測定するホルター心電図があります。
期外収縮が出現する時間や生活動作などを正確に測定することができます。
器質的原因がなく頻度が少ない期外収縮なら予後良好
心筋梗塞や心不全など器質的原因を伴う期外収縮の場合、命の危険性があります。
また、期外収縮の量が以下の場合は注意が必要です。
- 心室性期外収縮が連続で3連発以上
- 心房性期外収縮が1時間に30回以上もしくは20連発以上
上記器質的原因がなく、期外収縮の頻度が少ない場合は予後は良好です。
予後良好の期外収縮の頻度は以下の通りです。
- 期外収縮が1日に1000回未満
- 心室性期外収縮が単発
自己判断で診断や治療をするのはやめよう
期外収縮の大半は治療が必要ありません。
自律神経の乱れが原因の場合がほとんどです。
しかし、期外収縮は狭心症など心臓の病気や致死性の不整脈につながる可能性があります。
また、COPDなど肺疾患、バセドウ病など甲状腺疾患などの原因になります。
期外収縮が見られた場合は自己判断で診断や治療を行うことはやめましょう。
一度循環器の専門医に診察してもらうことをお勧めします。
期外収縮は治らない?標準的な治療方法とは
期外収縮の治療方法として、外科的治療や生活習慣の改善などがあります。
具体的には以下の通りです。
カテーテルアブレーションで期外収縮を治す
カテーテルアブレーションは、先端に金属のついたカテーテルを用いた不整脈治療法です。
不整脈の原因となる心筋を選択的に熱焼灼することで不整脈の発生を抑えます。
期外収縮の場合、頻発性心室期外収縮がカテーテルアブレーションの治療適応になります。
薬を服用する
期外収縮の場合、抗不整脈薬は通常使用しません。
抗不整脈薬の投与は効果が限定的、又は副作用を伴う場合があります。
期外収縮に対し、主に不快な期外収縮やその症状を抑えることを目的に薬を使用します。
具体的には以下の薬です。
- 交感神経の興奮を抑える薬(β遮断薬)
- 脈拍を穏やかにする薬(Ca拮抗薬)
- 神経の緊張を抑える薬
- 漢方薬
心因性の原因を取り除く
期外収縮は心因性、特にストレスが原因で生じることがあります。
まずストレスや不安の原因が何なのかを特定する必要があります。
ストレスを発散するため気分転換や運動、リラクゼーションなどがおすすめです。
不安に対しては、カウンセリングなどを受け、病気の知識や対処法を学びましょう。
更年期に対しては、婦人科を受診し女性ホルモンの治療などを行いましょう。
生活習慣を改善する
生活習慣が乱れると自律神経が乱れる原因になります。
喫煙や飲酒を控え、3食規則正しく摂取できるよう心がけましょう。
睡眠の時間を確保し、眠りを促すために寝る前にストレッチなどを行いましょう。
カフェインは不眠の原因になるため過度な摂取は控えましょう。
期外収縮の予後悪化を防ぐ生活習慣7選
期外収縮は自律神経に関連するため、生活習慣に影響されます。
生活習慣を見直さず放置すると悪化し、心室細動など病気を発症する可能性があります。
期外収縮の予後悪化を防ぐために生活習慣を見直す必要があります。
生活習慣の具体的な改善方法は以下の7選です。
出典:厚生労働省【心疾患の治療と仕事の両立 お役立ちノート】
処方された薬は飲み続ける
医師から処方された薬は期外収縮の症状などを抑える目的としてとても重要です。
自己判断で服薬を止めると心臓の負荷が高まります。
結果、期外収縮だけでなく他の病気を発症する恐れがあります。
期外収縮を予防するために薬を飲み続けましょう。
薬の効果や副作用など不明な点があれば医師や薬剤師に相談しましょう。
タバコを吸わない
タバコに含まれるニコチンは交感神経に作用する働きがあります。
期外収縮だけでなく、血圧上昇や動脈硬化など心臓に対し様々な影響を及ぼします。
長期間の喫煙は狭心症など虚血性心疾患を発症させ、期外収縮があらわれやすくなります。
心臓の機能を安定させるために必ず禁煙しましょう。
アルコールを摂取しすぎない
適度なアルコールは心疾患のリスクを低下させます。
しかし、過度なアルコールは交感神経の働きを高める作用があります。
結果、動悸や呼吸困難と合わせて期外収縮があらわれやすくなります。
適度なアルコール摂取量を意識して飲むよう心がけましょう。
具体的なアルコール量は以下の通りです。
性別 | 1日の純アルコール量(ml) |
男性 | 20~30ml |
女性 | 10~20ml |
お酒の種類による純アルコール量は以下の通りです。
お酒の量 | 純アルコール量(ml) |
ビール中瓶(500ml) | 25 |
日本酒1合(180ml) | 27.5 |
酎ハイ(7%)1缶(350ml) | 25 |
ワイン1杯(120ml) | 15 |
焼酎(20%)1合(180ml) | 36.3 |
出典:厚生労働省「アルコール換算表」
コーヒーに含まれるカフェインの過剰摂取に注意
コーヒーに含まれるカフェインは自律神経に作用する効果があります。
1日にコーヒーを2杯以上飲むと心室性期外収縮が2倍に増加するとの報告があります。
一方、1日にコーヒー2〜3杯の摂取は不整脈などのリスクが低下するとの報告があります。
極端な過剰摂取は控え、定期的にコーヒーを飲み続けるよう心がけましょう。
バランスの良い食事をとる
食事を見直し、バランスの良い食事をとることで期外収縮を予防する効果が期待できます。
自律神経を安定させるために、塩分や脂肪分など過剰摂取に注意しましょう。
その他期外収縮を予防する具体的な栄養素などは以下の通りです。
栄養素 | 効果 | 食材 |
ビタミンB群 | 神経を落ち着かせる | 豚肉、卵、納豆など |
ビタミンC群 | ストレスや不安を和らげる | ブロッコリー、ピーマン、イチゴなど |
ビタミンE群 | 自律神経を安定させる | ゴマ、アーモンド、玄米など |
カルシウム | 精神を落ち着かせる | 牛乳、チーズ、ヨーグルトなど |
疲れをとるための睡眠時間を確保する
睡眠不足がみられると疲労やストレスが蓄積しやすく、期外収縮の原因となります。
また睡眠不足は心拍出量の低下を誘発し、無酸素代謝を起こしやすいとの報告があります。
無酸素代謝が続くと体に乳酸が溜まり、心臓の負担が増加し突然死の原因になります。
疲れをとるために適度な睡眠時間を確保しましょう。
眠りが浅い、寝付けない場合は睡眠薬の適応を考慮し医師に相談しましょう。
軽く息が弾む程度の運動を継続する
軽く息が弾む程度の運動は期外収縮を予防する効果を発揮します。
運動習慣をつけることで生活習慣の改善が期待できます。
適度な運動は最大酸素摂取量を増加する働きがあります。
また、副交感神経の活性化により予備心拍数の改善もみられます。
結果、心室性期外収縮が減少するとの報告があります。
不整脈の一種である期外収縮まとめ
ここまで不整脈の一種である期外収縮についてお伝えしてきました。
不整脈の一種である期外収縮の要点をまとめると以下の通りです。
- 期外収縮は動悸や息切れなど心疾患に関連した症状がみられる
- 期外収縮の原因は器質的な要因以外に、自律神経の過剰興奮などがある
- 期外収縮の治療はカテーテル治療や生活習慣改善や心因性の原因除去などがある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。