不整脈とは、心臓の脈の打ち方が不規則になった状態をいいます。
不整脈は、遺伝するのでしょうか?
遺伝性不整脈とは、どのような不整脈なのでしょうか?
本記事では、遺伝性不整脈について以下の点を中心にご紹介します。
- 不整脈とは
- 遺伝性不整脈の症状とは
- 遺伝性不整脈の治療方法とは
遺伝性不整脈について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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不整脈とは
不整脈とは、心臓の脈の打ち方が不規則になった状態をいいます。
脈が100回/分以上と速く打つ不整脈は、頻脈性不整脈といわれます。
一方、脈が50回/分以下とゆっくり打つ不整脈は、徐脈性不整脈といわれます。
その他にも、脈が飛ぶ期外収縮といわれる不整脈もあります。
不整脈の原因はさまざまであり、
- 病気によるもの
- 疲労やストレスなど生理的なもの
- 加齢によるもの
などがあります。
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不整脈が遺伝する可能性
不整脈は、遺伝的要因によるものがあり、遺伝性不整脈といわれます。
遺伝性不整脈は、若年や中年で突然死しやすい病気の1つとされています。
遺伝性不整脈の種類と原因について詳しく見てみましょう。
遺伝性不整脈の種類
遺伝性不整脈は、主に3つのタイプに分類されます。
先天性QT延長症候群
先天性QT延長症候群は、小児期から若年に多い遺伝性不整脈になります。
突発的に不整脈が起こり、死に至る場合もあります。
先天性QT延長症候群の心電図上では、QT時間の延長がみられます。
QT時間は、心室の興奮開始から、興奮が落ち着くまでの時間をあらわしています。
QT延長は、トルサードポワンという危険な不整脈を引き起こしやすくなります。
トルサードポワンは、多形性心室頻拍の一種であり、失神や突然死を招く場合があります。
ブルガダ症候群
ブルガダ症候群は、若年から中年男性に多い遺伝性不整脈になります。
安静時や睡眠中に心室細動が起こり、失神や痙攣が見られ、死に至る場合もあります。
ブルガダ症候群の心電図上では、STの上昇が見られます。
STの上昇は、心筋の障害をあらわしています。
カテコラミン誘発多形性心室頻拍
カテコラミン誘発多形性心室頻拍は、小児期に見られる遺伝性不整脈になります。
カテコラミン誘発多形性心室頻拍は、運動中に心室頻拍が起こり、死に至る場合があります。
カテコラミン誘発多形性心室頻拍は、QT延長症候群の類縁疾患といわれています。
しかし、QT延長症候群と比較すると、
- 致死的不整脈の発生率が高い
- 突然死に至る可能性がとても高い
といわれています。
カテコラミン誘発多形性心室頻拍の通常の心電図上では、異常が見られにくいといわれています。
そのため、発見が難しく、運動負荷を加えた心電図検査を行う必要があります。
遺伝性不整脈の原因
遺伝性不整脈の原因は、タイプによって異なります。
先天性QT延長症候群やブルガダ症候群の原因には、
- カリウムやナトリウム、カルシウムなどの心筋の活動電位を形成するイオンチャネル
- 細胞膜蛋白
などによる遺伝変異が約20%見られています。
しかし、約70〜80%は原因不明といわれています。
カテコラミン誘発多形性心室頻拍の原因には、
- 心臓リアノジンレセプター
- 心臓カルセクエストリン
の2つの遺伝子変異が見られています。
しかし、約30%は原因不明といわれています。
不整脈が遺伝する確率
出典:合同研究班参加学会【遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン】
不整脈が遺伝する確率は、どれくらいなのでしょうか?
遺伝性不整脈の診療におけるガイドラインで、遺伝性不整脈の有病率について見てみましょう。
ある調査で日本における心臓突然死の年間発生率は、年間約13万人と推測されています。
久山町における心臓突然死100例の病理解剖による死因は、
- 虚血性心疾患 59%
- 原因不明の心疾患 23%
となっています。
原因不明の心疾患の一部は、遺伝性不整脈による可能性が高いと考えられています。
通常の病理解剖で器質的心疾患が認められなかった突然死症例があります。
器質的心疾患が認められなかった突然死症例に対して、遺伝学的剖検を行いました。
その結果、17.6〜26.1%で遺伝性不整脈に関連する遺伝子に変異が見られたことが明らかになっています。
以上のことから、
- 日本での突然死の年間発生率は、年間13万人である
- 年間の突然死数の約7万人は心臓突然死である
- 遺伝性不整脈は、突然死の約10%を占めている
ことが推測されます。
遺伝性不整脈の症状
遺伝性不整脈には、どのような症状が見られるのでしょうか?
遺伝性不整脈は、発作が見られないときはほとんどが無症状です。
遺伝性不整脈は、心電図の検査を受けた際に偶然発見されることが多いです。
遺伝性不整脈の症状が見られる場合は、
- 動悸
- ふらつき
- 失神
などがあります。
遺伝性不整脈で起こりうる合併症
遺伝性不整脈では、どのような合併症が引き起こされるのでしょうか?
遺伝性不整脈の合併症は、タイプによって異なります。
先天性QT延長症候群で引き起こしやすい合併症には、
- ブルガダ症候群
- 伝導障害
などがあります。
ブルガダ症候群で引き起こしやすい合併症には、
- 心房細動
- 進行性心臓伝導障害
- 3型QT延長症候群
- 洞不全症候群
などがあります。
カテコラミン誘発多形性心室頻拍で引き起こしやすい合併症は、特異的なものがないといわれています。
遺伝性不整脈の治療方法
遺伝性不整脈の治療には、どのような方法があるのでしょうか?
遺伝性不整脈の治療方法は、タイプによって異なります。
先天性QT延長症候群には、3つのタイプがあり、発作を引き起こす状況が異なります。
1型の場合は、運動中に発作を引き起こします。
2型の場合は、興奮したり、驚いたりしたときに発作を引き起こします。
3型の場合は、安静時や睡眠中に発作を引き起こします。
発作を引き起こす状況が異なるのは、原因となる遺伝子が異なるためと考えられています。
1型や2型の発作には、β遮断薬が用いられます。
3型の発作には、一般的に抗不整脈(メキシレチン)が用いられます。
植え込み型除細動器を体内に植え込む場合があります。
先天性QT延長症候群は、トルサードポワンから心室細動へ移行し、突然死に至る場合があります。
植え込み型除細動器は、致死的不整脈を感知し、電気ショックによる治療を行います。
ブルガタ症候群の治療には、確実に効果がある薬剤はありません。
先天性QT延長症候群と同様に、植え込み型除細動器を体内に植え込む場合があります。
植え込み型除細動器の植え込みは、ブルガダ症候群の発作による突然死を予防するためです。
カテコラミン誘発多形性心室頻拍の治療には、β遮断薬が用いられます。
β遮断薬で効果が見られない場合は、抗不整脈薬(フレカイニド)を併用します。
また、カテコラミン誘発多形性心室頻拍の治療でも植え込み型除細動器を体内に植え込む場合があります。
植え込み型除細動器を植え込んだ場合は、発作予防のために運動制限を行います。
不整脈の遺伝のまとめ
ここまで遺伝性不整脈についてお伝えしてきました。
遺伝性不整脈についての要点を以下にまとめます。
- 不整脈とは、心臓の脈の打ち方が不規則になった状態である
- 遺伝性不整脈の症状には、動悸、ふらつき、失神などがある
- 遺伝性不整脈の治療方法には、β遮断薬、抗不整脈、植え込み型除細動器などがある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。