嚥下障害とは、食べ物を食べて飲み込む動作が不自由になった状態をいいます。
嚥下障害では、どのように食事を工夫したら良いのでしょうか?
嚥下障害では、どのような食事形態があるのでしょうか?
本記事では、嚥下障害の食事について以下の点を中心にご紹介します。
- 嚥下障害とは
- 嚥下障害での食事形態とは
- 嚥下障害で食べにくい食品とは
- 嚥下障害の食事介助のコツとは
嚥下障害の食事について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
嚥下障害とは
嚥下障害とは、食べ物を食べて飲み込む動作が不自由になった状態をいいます。
嚥下障害は、さまざまな原因により、嚥下機能が低下することでみられます。
嚥下機能が低下することにより、
- 食事が十分に摂取できなくなる
- 栄養不足や体重減少につながりやすい
- 食べ物がのどにつまり、窒息する
- 肺炎を引き起こしやすい
などの危険性があります。
嚥下障害は、命に関わる合併症を引き起こす可能性もあります。
しかし、嚥下障害は適切な訓練をすることにより、改善することができます。
経口摂取が可能な場合は、個々の状態に合わせて食事形態を工夫する必要があります。
誰でも食事中にむせて、苦しい思いをしたことありますよね。でも、それが頻繁に起こるようなら嚥下障害かもしれません。とくに高齢者に多く、誤嚥性肺炎など重篤な病気の原因にもなります。本記事では嚥下障害について以下の点を中心にご紹介します[…]
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嚥下障害で食べやすい食事の形態5段階
嚥下障害の方にとっては、どのような食事形態が摂取しやすいのでしょうか?
嚥下障害の方の食事形態は、0〜4までの5段階に分類されています。
嚥下障害の方が摂取しやすい食事形態について詳しくみてみましょう。
嚥下訓練食品0j、嚥下訓練食品0t
嚥下訓練食品0jは、均質で付着性・凝集性・硬さが配慮されたゼリー状の食事形態です。
jは、ゼリー状をあらわします。
嚥下訓練食品0jは、ゼリー離水が少なく、スライス上にスプーンですくうことができるものです。
嚥下訓練食品0tは、均質で付着性・凝集性・硬さが配慮されたとろみ水の食事形態です。
tは、とろみをあらわしています。
嚥下訓練食品0jのとろみは、中間のとろみ〜濃いとろみです。
嚥下訓練食0jと0tは、重度の嚥下障害の方に適しています。
嚥下訓練食0jと0tの咀嚼能力は、若干の送り込みの能力を必要とする程度で、
- そのまま丸のみしても可能
- 残留した場合も吸引が可能
- タンパク質含有量が少ない
食事形態です。
嚥下調整食1j
嚥下調整食1jは、均質で付着性・凝集性・硬さ・離水が配慮されたゼリー、プリン、ムース状の食事形態です。
嚥下調整食1jの咀嚼能力は、若干の食塊保持と送り込み能力が必要です。
- そのまま丸のみしても可能
- 送り込む際に少し意識して口蓋に舌を押し付ける必要がある
- 嚥下訓練食0tと比較するとややざらつきがある
食事形態です。
嚥下調整食2-1、嚥下調整食2-2
嚥下調整食2-1は、ピューレ・ペースト・ミキサー食など、均質でなめらか、べたつかず、まとまりがある食事形態です。
嚥下調整食2-1は、スプーンですくって食べることができるものです。
嚥下調整食2-2は、ピューレ・ペースト・ミキサー食などで、べたつかず、まとまりやすい不均質なものを含む食事形態です。
嚥下調整食2-2は、スプーンですくって食べることができるものです。
嚥下調整食2-1と2-2の違いは、均質であるか不均質なものも含まれるかです。
嚥下調整食2-1と2-2の咀嚼能力は、下顎と舌の運動による食塊形成能力と食塊保持能力が必要です。
- 口腔内の簡単な操作で食塊状となる
- 咽頭で残留、誤嚥しにくい
食事形態です。
嚥下調整食3
嚥下調整食3は、簡単に押しつぶすことができ、食塊形成や移送が容易で、咽頭でばらけずに嚥下しやすいよう配慮がされた食事形態です。
嚥下調整食3は、多量の離水がないものです。
嚥下調整食3の咀嚼能力は、口蓋と舌の間での押しつぶし能力が必要です。
- 舌と口蓋の間で押しつぶしことが可能
- 押しつぶし、送り込む能力
- 誤嚥のリスク軽減が配慮された
食事形態です。
嚥下調整食4
嚥下調整食4は、硬さ・ばらけやすさ・はりつきやすさなどがない食事形態です。
箸やスプーンで簡単に切ることができるやわらかさのものです。
嚥下調整食4の咀嚼能力は、上下の歯槽提間の押しつぶし能力が必要です。
- 誤嚥と窒息のリスクが配慮された素材と調理方法
- 歯がなくても対応可能
- 上下の歯槽提間で押しつぶすまたはすりつぶす能力
- 舌と口蓋間では押しつぶすことが難しい
食事形態です。
嚥下障害のこれらの食事形態5段階は、嚥下訓練を行う際の共通認識をとるための分類です。
病院をはじめ、施設や一般家庭で用いられています。
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嚥下障害で食べにくい食品の特徴7選
嚥下障害の方にとって、どのような食品が食べにくいのでしょうか?
嚥下障害では、誤嚥の危険性が高い食品は避ける必要があります。
それでは、どのような食品が誤嚥の危険性が高いのでしょうか?
嚥下障害の方が食べにくい食品について詳しくみてみましょう。
粘りが少なくサラサラしている
お茶、みそ汁、ジュースなどの粘り気が少なくサラサラしている液体は、誤嚥の危険性が高い食事形態です。
とろみ剤などを利用し、とろみをつけると食べやすくなるでしょう。
口腔内でまとまらずバラバラになる
ひき肉、かまぼこ、イカ、タコ、タケノコ、レンコン、豆腐など口腔内でまとまりづらい食品は、誤嚥の危険性が高くなります。
水分が少なくパサパサ
パン、カステラ、いも類、ゆで卵、クッキー、らくがんなどの水分が少なくパサパサしている食品は、誤嚥の危険性が高くなります。
口腔内に付着しやすい薄さである
のり、わかめ、青菜類、最中の皮、ウエハースなど口腔内に付着しやすい食品は、誤嚥の危険性が高くなります。
粘りが強くベタベタしている
もち、だんご、生麩、大福など粘りが強い食べ物は、誤嚥や窒息の危険性が高くなります。
酸っぱくてむせやすい
酢の物、柑橘類、オレンジジュースなど酸っぱくてむせやすい食べ物は、誤嚥の危険性が高くなります。
硬くて喉に詰まりやすい
ピーナッツや粒のままの大豆など硬くてのどに詰まりやすい食べ物は、誤嚥の危険性が高くなります。
細かく砕いたり、ペースト状の形態にして摂取すると良いでしょう。
嚥下障害の食事介助のコツ13選
嚥下障害の方への食事介助は、どのように行えば良いのでしょうか?
嚥下障害の方への食事介助のコツについて詳しくみてみましょう。
足を床につけて深く腰掛ける
嚥下障害の方の適切な食事姿勢をとるためには、足を床につけて深く腰をかけましょう。
背が90度の姿勢を保持しましょう。
前傾姿勢で肘の角度が90度を目安にする
嚥下障害の方の食事姿勢は、前傾姿勢で肘の角度が90度を目安にしましょう。
後頭部にまくらやタオルなどを使用し、前傾姿勢を保持しましょう。
ベッドで食べる場合はリクライニングを挙げて顎を引く
嚥下障害の方がベッドで食事を摂取する場合は、リクライニングをあげて顎を引きましょう。
背の角度は、背中にまくらなどを使用し、90度を保持するように工夫しましょう。
排泄を済ませておく
嚥下障害の方は、食事の前には必ず排泄は済ませておきましょう。
口腔内を清潔にしておく
嚥下障害の方は、食事摂取の前後だけではなく、常に口腔内を清潔に保ちましょう。
食べこぼしで汚れないようエプロンをする
嚥下障害の方の食事介助では、食べこぼして洋服が汚れないようにエプロンを着用しましょう。
唾液分泌を促す体操をする
嚥下障害の方は、食事摂取の前に唾液分泌を促すために体操を行いましょう。
むせた時は顔を下に向けた状態で口を開けて咳込む
嚥下障害の方が食事中にむせた時は、顔を下に向けた状態で口を開けて咳込むようにしましょう。
適切な大きさのスプーンで小さなひと口を食べさせる
嚥下障害の方への食事介助は、適切な大きさのスプーンを使用し、ひと口ずつ食べさせましょう。
ひと口量は少なめに、よく噛んでから飲み込みましょう。
温度にメリハリをつけた食事メニューを提供する
嚥下障害の方への食事は、温度にメリハリをつけた食事メニューを提供しましょう。
介護者が隣に座って介助する
嚥下障害の方への食事介助者は、隣に座って介助しましょう。
主食とおかず、水分を交互に食べさせる
嚥下障害の方への食事介助は、主食とおかず、水分を交互に食べさせましょう。
せかさないようにする
嚥下障害の方への食事介助は、せかさないようにしましょう。
また、食後はすぐに横にならず30分程度は座って過ごしましょう。
自宅で作れる嚥下障害に適した食事レシピ
嚥下障害の方に適した食事は、どのように調理したら良いのでしょうか?
嚥下障害の方に適した食事の調理の仕方について詳しくみてみましょう。
食べにくいものを除いて作る常食
嚥下障害の方の常食は、
- さらさらした液体状のもの
- 水分が少なくパサパサしているもの
- ベタベタしていて口腔内に付着したり、飲み込みづらいもの
- 口腔内でまとまりづらいもの
- 硬くて噛みにくいもの
などは食べやすいように工夫する必要があります。
- さらさらした液体状のものは、とろみ剤を使用しましょう
- パサパサしているものは、水分を含ませましょう
- 口腔内でまとまりづらいものは、マヨネーズやドレッシング、卵や小麦粉などでつなぎ、まとめてみましょう
- 硬くて噛みにくいものは、煮込む・蒸す・つぶす・するなどで柔らかくしましょう
キザミ食
キザミ食は、調理した食材を細かく刻んで食べやすくしましょう。
そのままでは、食べづらい場合はとろみ剤を使用しましょう。
ミキサー食
ミキサー食は、調理した食材に水分を加え、ミキサーにかけてとろとろにすることです。
そのままでは、食べづらい場合はとろみ剤を使用しましょう。
ミキサー食は、食材を一種類ずつミキサーにかけ、見た目や味、においにも配慮しましょう。
ごはんやパン、麺類などは、水分を十分に吸わせてからミキサーにかけましょう。
野菜類は、生でミキサーにかけるのではなく、温野菜を中心に調理すると良いでしょう。
ソフト食
ソフト食は、常食をやわらかくしたものになります。
ソフト食で魚を使用する場合は、さけやカレイなどやわらかい魚の食材を選択しましょう。
ひき肉など口腔内でばらけやすいものや繊維質の食材は、使用しないようにしましょう。
ムース食
ムース食は、調理した料理や食材をミキサーにかけてムース状にします。
液体などのさらさらした状態のものは、とろみ剤でムース状にしましょう。
濃厚流動食
濃厚流動食は、1ml当たり1kcal以上のエネルギーを摂取できる流動食をいいます。
濃厚流動食は、少量で高エネルギー、タンパク質やビタミン、ミネラルをバランス良く摂取できる流動食になります。
主食は、おかゆの上澄み液である重湯を利用します。
重湯に卵黄、牛乳、豆乳、バター、生クリーム、脱脂粉乳、チーズなどを加えます。
さらにタンパク質量を増やしたい場合は、白身魚、卵、豆腐、ゼラチンなどを加えましょう。
栄養補給食、水分補給食
栄養補給食や水分補給食とは、健康食品の1つになります。
ビタミン、ミネラル、アミノ酸など、毎日の食生活では必要量を摂取することが難しい場合に補助できる食品です。
市販で購入できる栄養補給食としては、ごはんにかけるたまごペースト、ゼリードリンクなどがあります。
市販で購入できる水分補給食としては、ポカゼリー、お水のゼリーなどがあります。
嚥下障害の食事まとめ
ここまで嚥下障害の食事についてお伝えしてきました。
嚥下障害の食事についての要点を以下にまとめます。
- 嚥下障害とは、食べ物を食べて飲み込む動作が不自由になった状態をいう
- 嚥下障害での食事形態には、5つの段階がある
- 嚥下障害で食べにくい食品には、サラサラした液体やパサパサしたものなどがある
- 嚥下障害の食事介助には、13通りのコツがある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。