不整脈は加齢によるものがあるので誰にでも起こる可能性がある病気です。
不整脈の中には致死性の高いものもあります。
不整脈にはどのような種類があるのでしょうか?
致死性の高い不整脈は治療ができるのでしょうか?
本記事では不整脈の看護について以下の点を中心にご紹介します。
- 不整脈で看護や治療が必要な場合について
- 不整脈の看護目標について
- 不整脈の看護で注意すべきポイントについて
不整脈の看護について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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不整脈とは
不整脈とは⼼臓の拍動が不規則になる病気をいいます。
拍動が不規則になる原因は⼼臓の電気信号が正常に伝達されないことによって起こります。
不整脈には加齢や病気によるもの、生理的なものなど様々な原因と病型があります。
不整脈によっては、突然死や塞栓症のリスクがあります。
不整脈は早急な治療や、術後の看護が必要になる場合もある病気です。
不整脈は脈が正常より速く打つ、ゆっくり打つ、⼜は不規則に打つ状態で分けられます。
不整脈は大きく以下のように分けられます。
- 頻脈性不整脈(心拍数が100回/分以上)
- 徐脈性不整脈(心拍数が50回/分以下)
- 期外収縮不整脈(⼼拍が⾶ぶ・抜ける不整脈)
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不整脈で看護や治療が必要な場合とは?
不整脈で看護や治療を必要とするのは、以下のような場合があります。
急な発作が起きた場合 | 心室細動が起きた場合 |
心室頻拍が起きた場合 | 発作性上室頻拍が起きた場合 |
心房細動が起きた場合 | 心房粗動が起きた場合 |
洞不全症候群がある場合 | Ⅲ度房室ブロックが起きた場合 |
それぞれの不整脈の種類、特徴、治療方針、看護必要の有無などについてご紹介します。
急な発作が起きた場合
急な発作が起きた場合は以下のような病気が考えられます。
- 心筋梗塞
- 不整脈
- 狭心症
- 急性心不全
致死性のある不整脈の心室細動の場合は異常な脈動をはじめ、心停止に至ります。
心室細動の場合は一刻も早い救命処置が必要です。
意識がない場合は、救急車の手配のあと心肺蘇生法、除細動処置を行います。
心室細動が起きた場合
心室細動が起きた場合は以下のようになります。
- 不整脈種類 :頻脈性不整脈(心室性不整脈)
- 特徴 :致死性あり、数秒で意識を失い、約5分後には死に至るリスクあり
- 治療方針 :数分以内に心肺蘇生(CPR)を開始、その後、除細動処置
- 治療方法 :CPR、電気的除細動、人工ペースメーカー
- 看護 :CPR、除細動器の要請、患者や家族の精神的ケア
心室頻脈が起きた場合
心室頻拍が起きた場合は以下のようになります。
- 不整脈種類 :頻脈性不整脈(心室性不整脈)
- 特徴 :致死性あり、動悸、息切れ、血圧の著しい低下、めまい、失神
- 治療方針 :心拍リズムの回復と発作の予防
- 治療方法 :薬物療法、カテーテルアブレーション、人工ペースメーカー
- 看護 :バイタルサイン、心電図モニターの確認、患者の不安軽減
発作性上室頻拍が起きた場合
発作性上室頻拍が起きた場合は以下のようになります。
- 不整脈種類 :頻脈性不整脈(上室性不整脈)
- 特徴 :特に若い人によく見られ、心拍の異常が不快な症状としてあらわれる
- 治療方針 :心拍数の低下、心拍リズムの回復
- 治療方法 :薬物療法、カテーテルアブレーション
- 看護 :バイタルサイン、心電図モニターの確認、患者の不安軽減
心房細動が起きた場合
心房細動が起きた場合は以下のようになります。
- 不整脈種類 :頻脈性不整脈(上室性不整脈)
- 特徴 :脈が突然速く(140~160回/分)なったりバラバラになる
- 治療方針 :心拍数の低下、心拍リズムの回復、血栓の形成予防
- 治療方法 :薬物療法、カテーテルアブレーション
- 看護 :バイタルサイン、心電図モニターの確認、退院指導
心房粗動が起きた場合
心房粗動が起きた場合は以下のようになります。
- 不整脈種類 :頻脈性不整脈(上室性不整脈)
- 特徴 :心拍数が速くなり(150回/分程度)規則的に動いている
- 治療方針 :心拍数の低下、心拍リズムの回復、血栓の形成予防
- 治療方法 :薬物療法、カテーテルアブレーション
- 看護 :バイタルサイン、心電図モニターの確認、退院指導
洞不全症候群がある場合
洞不全症候群がある場合は以下のようになります。
- 不整脈種類 :徐脈性不整脈
- 特徴 :持続性の場合は脱力感、疲労が見られ、心拍低下による失神もあり
- 治療方針 :心拍数の上昇
- 治療方法 :人工ペースメーカ、薬物療法
- 看護 :バイタルサイン、心電図モニターの確認、創部観察、退院指導
Ⅲ度房室ブロックが起きた場合
Ⅲ度房室ブロックが起きた場合は以下のようになります。
- 不整脈種類 :徐脈性不整脈
- 特徴 :心拍数が低下(50回/分未満)、疲労、めまい、失神
- 治療方針 :心拍数の上昇
- 治療方法 :人工ペースメーカ、薬物療法
- 看護 :バイタルサイン、心電図モニターの確認、創部観察、退院指導
不整脈の看護目標
不整脈の看護目標として以下の3つが挙げられます。
- 不整脈の危険性について理解させる
- 不整脈に合併症を起こさない
- モニタリングによる精神的ストレスを取り除く
それぞれの内容についてご説明します。
不整脈の危険性について理解させる
不整脈には命にかかわる危険性のリスクがあります。
リスクがあることを説明し、理解を得る必要があります。
不整脈には合併症を起こす危険性があります。
例えば心房細動には脳梗塞や心不全を起こし死に至る可能性があります。
また、不整脈の治療は主に薬物治療になります。
不整脈の危険性から、退院後の薬物治療においても以下の指導が必要です。
- 定期的な外来受診の必要性
- 正しく継続して薬の服用ができる方法や注意事項の確認
不整脈に合併症を起こさない
不整脈の看護目標に合併症を起こさないことを挙げました。
不整脈に合併症を起こすと死に至ることがあるからです。
不整脈によって起こる代表的な合併症は血栓によって起こる脳梗塞や心不全などです。
心房細動や心房粗動の方は脳梗塞や全身性塞栓症の二次的リスクが高くなってきます。
心房細動は心房が麻痺して小刻みに震えている状態です。
麻痺した心房では血液が滞留しやすくなり、血栓が心房内に形成されることがあります。
脳梗塞は、形成された血栓が血管を通り脳まで運ばれて脳の血管が詰まって起こります。
血栓の形成予防のための抗凝固薬の服用は脳梗塞を起こさないために大変大事になります。
不整脈の合併症を防ぐために薬の飲み忘れの注意などの看護指導が大切になります。
モニタリングによる精神的ストレスを取り除く
モニタリングによる精神的ストレスを取り除くことを看護目標に挙げました。
モニターを装着していると、常に監視されていることでストレスを感じることがあります。
ストレスを取り除くために不整脈の原因や装着の必要性などの説明や声かけが大切です。
不整脈の看護計画
不整脈の看護計画を以下の3つに分けて説明します。
- 観察計画(OP) |得られた情報を記載する
- 援助計画(TP) |手を使って援助する看護内容
- 境域計画(EP) |口で説明することを書く
看護目標は「不整脈による危険性を理解し、合併症を起こさない」とします。
観察計画(OP)|得られた情報を記載する
以下の観察計画(OP)のそれぞれの根拠を記載します。
バイタルサイン
脈拍、呼吸、体温、血圧、意識レベルを1日3回(朝・昼・晩)測定・記録します。
客観的なデータをもとにアセスメントし、以下の発見をします。
- 全身状態の変化
- 異常の兆候の発見
不整脈の頻度
不整脈の出現状況と経過から不整脈の兆候から早期発見します。
心電図波形の観察
心電図波形の観察から不整脈の有無、緊急対応か経過観察かの判断をします。
胸痛など胸部症状の有無
胸痛などの胸部症状は不整脈による血行動態の悪化であらわれる症状の1つです。
息切れの有無
息切れは不整脈による血行動態の悪化であらわれる症状の1つです。
援助計画(TP)|手を使って援助する看護内容
以下の援助計画(TP)のそれぞれの根拠を記載します。
楽な体勢になるよう工夫する
胸部の動きを阻害せず、リラックスできる体位の工夫をします。
食事や排泄、入浴を援助する
日常生活の援助と食欲、便や尿の状態、体の変化などから体調の異変の兆候を発見します。
服薬状況を把握する
医師の指示通りの服薬と反応(尿量、血圧の値、自覚症状など)の確認をします。
輸液を管理する
輸液速度、薬剤の投与量、投与方法の正確性の確認と安全管理をします。
病態が悪化したら医師に知らせる
死に至る重篤化を防ぐため不整脈の症状から緊急対応の判断をして、医師に知らせます。
電極装着や装着部位の変更を行う
看護師は心電図モニターの基本波形を理解するスキルが必要です。
基本に基づいた電極の装着、装着位置による正確な波形による不整脈の兆候を監視します。
不安な気持ちを傾聴する
不安な気持ちを傾聴することで精神的ストレスによる体調不良や免疫力低下を防ぎます。
教育計画(EP)|口で説明することを書く
以下の教育計画(EP)のそれぞれの根拠を記載します。
不整脈に至った原因を理解できるようにする
患者自身が不整脈の原因を理解することで、意識的に対策を取り改善に取り組めます。
治療継続の必要性を理解する
不整脈は継続治療の必要な病気です。
治療継続の必要性を理解することで、退院後の正しい治療が継続できます。
禁煙すべき理由を理解する
喫煙は不整脈を引き起こします。
また、喫煙は心房細動の危険因子(非喫煙者の1.5倍)とされています。
不整脈の症状に気付いた際の対応方法を知る
不整脈の症状に気付いた際の対応方法を知ることで、合併症や重篤化の予防処置ができます。
ペースメーカーや心電図用の電極の取扱い説明をする
ペースメーカーや心電図用の電極の取扱いの説明を受けることで不安やストレスの緩和につながります。
不整脈の看護で注意すべきポイント9選
不整脈の看護で注意すべきポイントがあります。
以下の2つに分けてご紹介します。
- 危険度や緊急性が高い致死性不整脈で注意すべきポイント
- 病棟における不整脈看護で注意すべきポイント
それぞれの具体的な対策を合わせてポイント9選になります。
危険度や緊急性が高い致死性不整脈で注意すべきポイント
危険度や緊急性が高い致死性不整脈で注意すべきポイント4選を以下に挙げます。
意識レベルや脈拍を調べて状態を把握する
心室頻拍では動悸、息切れ、血圧の著しい低下、めまい、失神で死に至ることがあります。
心室細動では数秒で意識を失い、約5分後には死に至ります。
致死性の高い心室頻拍や心室細動が起こったらまず以下のことを確認します。
- 意識レベル
- 脈拍触知の有無
- 呼吸の有無
心室頻脈や心室細動では心肺蘇生が最優先
心室頻拍や心室細動はどちらも致死性の高い不整脈です。
どちらの不整脈も起きた場合は心配蘇生が最優先になります。
いつどんな変化をしたのか経時的な看護記録を取る
致死性不整脈ではいつどんな変化をしたのか経時的な看護記録を取ることが大事です。
心室細動が心臓発作後2~3時間で発生した場合は、直ちに除細動処置を行うことで回復することが見込まれます。
患者さんや家族の不安を除く精神的ケアにも気を配る
心室頻拍や心室細動が発生した場合は致死に至る危機的状況です。
患者や家族の方の動揺も大きいものがあります。
看護師の患者や家族の方の不安を除く精神的ケアはとても大切なものです。
病棟における不整脈看護で注意すべきポイント
病棟における不整脈看護で注意すべきポイント5選を以下に挙げます。
バイタルサインをこまめに確認する
不整脈で看護師が気をつけることの1つは常に患者の状態を観察することです。
バイタルサインは「生命兆候」のことで以下の測定を行い、正常値と比較し確認します。
【バイタルサインの測定】
測定項目 | 基準値の目安 |
脈拍 | 60~100回/分 |
呼吸 | 16~20回/分 |
血圧 | 120/80mmHg以下(収縮期血圧/拡張期血圧) |
体温 | 36~37℃ |
測定は1日3回(朝・昼・晩)行い、記録します。
心電図モニターで波形を確認する
不整脈の患者は心電図モニターの波形に注意して観察する必要があります。
看護師は心電図モニターが重篤な波形に移行しているのを見逃さないことが重要です。
治療薬の種類や量、全身状態をモニタリングする
不整脈の看護では薬物治療中の治療薬の種類や量、全身状態のモニタリングが必要です。
特に催不整脈作用は注意深く観察する必要があります。
催不整脈作用とは薬の投与によって起こる以下の作用です。
- 既存の不整脈が憎悪する
- 新たな不整脈が発生する
不整脈の徴候を見つけたら医師に報告する
不整脈の兆候を見つけたら医師に報告することが必要です。
不整脈の種類による特徴的な症状を把握し危険が増す前に報告することが大切です。
ペースメーカーを植え込んだ側の手を挙げないよう指導する
ペースメーカー術後の看護ケアに植え込んだ側の手を挙げないよう指導することがあります。
植え込んだ側の手を挙げるとペースメーカーのリードの先端がずれることがあります。
リードの先端がずれると横隔膜の神経を刺激し、しゃっくりが止まらないことがあります。
不整脈の看護まとめ
ここまで不整脈の看護についてお伝えしてきました。
不整脈の看護についての要点を以下にまとめます。
- 不整脈の看護や治療は不整脈の種類によって緊急性の有無があり、心室脈拍や心室細動は致死性が高い
- 不整脈の看護目標には、危険性の理解、合併症の予防、治療の精神的ストレス緩和などがある
- 不整脈の看護では危険度や緊急性、病棟における看護によって注意すべきポイントが異なる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。