腹水はお腹に水がたまる病気です。
腹水は腎臓や肝臓の病気と関連性があります。
腹水がたまる原因は何でしょうか?
腹水になる病気にはどのようなものがあるでしょうか?
本記事では腹水について以下の点を中心にご紹介します。
- 腹水になる原因
- 腹水の診断方法
- 腹水の治療方法
腹水について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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腹水とは
腹水はお腹の中に水(タンパク質を含む体液)がたまった状態です。
通常、お腹の中には腸がスムーズに動くために50ml程度の腹水が存在しています。
正常時は腹水は腹膜などでの産生と、血管や腹膜での吸収でバランスを取っています。
腹水は「腹水の過剰産生」や「腹水の排出の妨げ」でバランスが崩れて起こります。
腹水はタンパク質がどのくらい含まれているかで以下のように分類されます。
- 滲出液腹水(タンパク質の多い液体の腹水)
- 漏出液腹水(タンパク質の少ない液体の腹水)
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腹水になる原因
腹水になる主な疾患に以下のようなものがあります。
がん | 心不全 |
腎不全 | 肝硬変 |
ウイルス性肝炎 | 膵炎 |
結核性腹膜炎 |
それぞれの疾患と腹膜との関連性についてご紹介します。
がん
がん性腹膜炎によって起こる腹水があります。
がん性腹膜炎の腹水は滲出液で主に炎症が原因となって出現します。
がん性腹膜炎は腹膜にがんが転移したことで起こります。
がんが腹膜に転移すると、腹腔内にがん細胞が散らばりお腹の中で炎症が起こります。
お腹の中で炎症が起こると、血管内の成分が滲みだして腹水が増えます。
滲みだした腹水にはタンパク質を多く含みます。
がん性腹膜炎に転移しやすいのは、胃がん、大腸がん、卵巣がんなどがあります。
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心不全
心不全も腹水が出現する原因の一つです。
心不全の腹水は漏出液で血管内圧の上昇が原因となって出現します。
心臓の右側(右心)は肺へ血液を送り出す働きをしています。
右心不全になると肺へ血液を送ることができず心臓へ戻る血液の受け入れができません。
したがって右心不全になると静脈に血液が滞留することになります。
静脈での血液の滞留が血管内圧の上昇を招き、水分がしみ出て腹水が増えます。
しみ出た腹水はタンパク質の少ない漏出液です。
腎不全
腎不全の症状の1つに腹水があります。
体の水分量は腎臓によって一定に保たれています。
腎臓でできる尿はほとんどが再吸収されて残りが尿として排出されます。
腎不全の悪化で尿量が減ると体の水分量が増えて水分が滞留することになります。
お腹に滞留した水分が腹水です。
肝硬変
肝硬変は体に症状があらわれる非代償期になると腹水などの合併症があらわれます。
腹水の増加は血管内圧の上昇が原因の1つです。
肝硬変の腹水は血管内圧の上昇の他にアルブミン(タンパク質の1種)の減少も原因としています。
アルブミンは血管内の水分量の保持や血管へ余分な水分を取り込む働きをしています。
アルブミンの減少は以下の2つを引き起こすことがあり腹水を増やします。
- 余分な腹水を血管内に取り込めない
- 血管内の水分が外へ滲みだす
肝硬変は2つの原因で腹水が起きる代表的な疾患です。
ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎も腹水と関連性があります。
ウイルス性肝炎は肝炎ウイルスによって肝機能障害を引き起こす病気です。
肝炎を引き起こすウイルスにはA~E型などがあります。
中でもC型肝炎は感染すると約70%がキャリアになるとされています。
C型肝炎は慢性化すると腹水の合併症を伴う肝硬変に進むことがあります。
膵炎
膵炎によって膵液が腹腔内に漏れ出して貯留する膵性腹水があります。
膵臓が突然炎症を起こすことを急性膵炎と呼びます。
膵内で炎症が起こると活性化した膵酵素が血液や尿、腹水へと溢れ出します。
また腹水を起こす細菌性腹膜炎もあります。
細菌性腹膜炎は急性膵炎などの臓器の炎症に波及して起こります。
結核性腹膜炎
結核性腹膜炎は細菌感染を伴う特発性細菌性腹膜炎の1つです。
特発性細菌性腹膜炎は、結核や、肝硬変、ネフローゼ症候群などに伴って発症します。
症状の1つに腹水貯留があり、腹水液は滲出性です。
腹水でみられる症状
腹水が少量のときは自覚症状があまりみられません。
腹水が大量になると胃の圧迫や横隔膜の押し上げで以下のような症状がみられます。
蛙腹になる | おへそが飛び出る |
胃の圧迫で食事が摂れない | 吐き気がする |
息切れ | 足のむくみ |
腹水の診断方法
腹水の診断には以下の3つがあります。
【医師の診断】
腹水が大量にある場合は腹部診察で診断がつくこともあります。
腹部を軽く打診すると中空の音がしますが、少ない(約1リットルに満たない)と検知できないことがあります。
【画像検査】
画像検査では超音波検査またはCT検査が行われることがあります。
【腹水の分析】
腹水の原因を分析するために腹壁に針を刺して腹水のサンプルを採取することがあります。
調べる内容は以下のようなものです。
腹水液の種類(滲出性、漏出性) | 色 |
にごり | 血液 |
細菌 | がん細胞の有無 |
腹水の治療方法
腹水の治療方法には以下のようなものがあります。
【安静にする】
- 肝臓に血液が入りやすくして腹水の産生を減らす(肝硬変の方など)
- 腎臓に血液が届きやすくなり余分な水分を尿で排出できる
【塩分制限】
塩分を摂りすぎると血液中のナトリウム濃度を下げるために体は水分をためようとします。
利尿剤の効果を出すために、塩分の制限が必要です。
塩分の制限は水分の制限にもつながりますが、症状によっては水分量の制限も必要です。
【利尿薬】
食事療法による効果が得られない場合、通常は利尿薬を使います。
【腹水の排出】
症状が強い場合や腹水を急いで減らす場合は、お腹に針を刺して腹水を排出します。
しかし、腹水ろ過濃縮再静注を用いて抜いた腹水のうち栄養分を体に戻すこともあります。
【アルブミンの点滴】
腹水の原因がアルブミンの不足である場合は血液製剤のアルブミンの点滴を行います。
アルブミンの点滴には使用日数制限があるので注意が必要です。
難治性腹水に関して
難治性腹水に関して以下のことを説明します。
- 難治性腹水とは
- 難治性腹水の治療法
- 難治性腹水で起こりうる合併症
難治性腹水とは
腹水の治療において以下のような症状を難治性腹水症といいます。
- 利尿薬治療で効果が得られない
- 副作用で利尿薬の増量ができない
難治性腹水の治療法
難治性腹水の治療法には以下のようなものがあります。
- 腹水穿刺排液
- アルブミン製剤の点滴
- 腹膜頸静脈シャント術
- 腹水ろ過濃縮再静注
難治性腹水で起こりうる合併症
難治性腹水で起こりうる合併症を以下にご紹介します。
【腹水穿刺排液治療】
腹水穿刺排液治療で起こりうる合併症は以下の通りです。
出血 | 感染 |
電解質異常 | 急激な血圧低下 |
【アルブミン製剤の点滴】
アルブミン製剤の点滴治療で起こりうる合併症は以下の通りです。
ショック | アナフィラキシー |
発熱 | 顔面紅潮 |
じんましん | 悪寒 |
腰痛 | 頭痛 |
血圧低下 | 吐き気 |
【腹膜頸静脈シャント術】
腹膜頸静脈シャント術治療で起こりうる合併症は以下の通りです。
時期 | 合併症 |
術中 | 創部多量出血 |
ショック | |
呼吸不全 | |
術後早期(~1ヵ月) | 皮下出血 |
心不全・肺水腫 | |
重篤なDIC | |
創部感染、敗血症 | |
発熱持続 | |
消化管出血 | |
シャント閉塞 | |
ARDS | |
術後後期(2ヵ月~) | シャント閉塞 |
静脈血栓症 | |
脳梗塞 | |
シャント変位 |
腹水に用いる薬の種類
腹水に用いる薬には以下のような種類があります。
- スピロノラクトン
- フロセミド
- トルバプタン
それぞれの薬の概要を説明します。
スピロノラクトン
以下にスピロノラクトンの薬効、効能または効果をまとめます。
【薬効】
抗アルドステロン性利尿・降圧剤
【効能または効果】
心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、悪性腫瘍に伴う浮腫及び腹水
フロセミド
以下にフロセミドの薬効、⼀般的な商品、効能または効果をまとめます。
【薬効】
利尿降圧剤
【効能または効果】
高血圧症、悪性高血圧、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、尿路結石排出促進
トルバプタン
以下にトルバプタンの薬効、⼀般的な商品、効能または効果をまとめます。
【薬効】
V2-受容体拮抗剤
【効能または効果】
- ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果が不十分な心不全に置ける体液貯留
- ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果が不十分な肝硬変に置ける体液貯留
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腹水のまとめ
ここまで腹水についてお伝えしてきました。
腹水についての要点を以下にまとめます。
- 腹水になる原因にはがんや心不全、腎不全、肝硬変、ウイルス性肝炎、膵炎、結核性腹膜炎などがある
- 腹水の診断方法は、医師の診断や画像検査(超音波やCT)、腹水の原因分析がある
- 腹水の治療方法は、安静にすることや塩分制限、薬物治療(利尿薬)、腹水の排出、アルブミンの点滴がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。