脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
飽和脂肪酸は、一般的に固体で乳製品、肉などの動物性脂肪に豊富に含まれています。
では、飽和脂肪酸にはどのような種類や働きがあるのでしょうか?
本記事では、飽和脂肪酸について以下の点を中心にご紹介します。
- 飽和脂肪酸の種類と働き
- 飽和脂肪酸の効果とは
- 飽和脂肪酸が含まれる食品について
飽和脂肪酸について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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飽和脂肪酸とは
飽和脂肪酸とは、脂肪酸のうち炭素同士の二重結合をもたない脂肪酸のことをいいます。
飽和脂肪酸は、牛の脂肪であるヘット、豚の脂肪であるラード、バターなどの糖物性の脂質に多く含まれています。
とくに、牛肉は飽和脂肪酸の割合が52%となっており、さらにバターには62%が飽和脂肪酸となっています。
飽和脂肪酸を豊富に含む脂肪は、融点が高くなります。
そのため、常温であっても固体であることが多く、牛肉などの白い部分が飽和脂肪酸になります。
また、人間の体内でも作ることができ、糖質から合成されます。
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飽和脂肪酸の種類と働き
飽和脂肪酸の種類と働きには、どのようなものがあるのでしょうか?
以下でそれぞれ具体的にご紹介します。
飽和脂肪酸の種類
飽和脂肪酸とは、脂質の構成成分で炭素数の違いから
- 短鎖脂肪酸
- 中鎖脂肪酸
- 長鎖脂肪酸
の3つに分類されます。
以下でそれぞれみていきましょう。
短鎖脂肪酸
脂肪酸とは、油脂を構成する成分の1つです。
数個~数十個の炭素が鎖のようにつながって構成をしています。
その中で、炭素の数が6個以下のものを短鎖脂肪酸とよばれます。
短鎖脂肪酸には、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが含まれます。
中鎖脂肪酸
中鎖脂肪酸は、炭素数が8~12個のものをいいます。
中鎖脂肪酸は、ココナッツ、パームフルーツなどヤシ科植物の種子に含まれる成分です。
植物油に含まれるオレイン酸やリノール酸と同じ脂肪酸の仲間になります。
また、母乳や牛乳などにも含まれているため、普段から摂取している成分です。
ココナッツオイルには、およそ60%の中鎖脂肪酸が含まれています。
また、MCTオイルは、100%中鎖脂肪酸でできているオイルです。
長鎖脂肪酸
長鎖脂肪酸は、炭素数が14個以上のものをいいます。
長鎖脂肪酸は種類が多くあり、飽和脂肪酸に分類されるもの、不飽和脂肪酸に分類されるものがあります。
そのため、長鎖脂肪酸は固体、液体どちらの油脂にも含まれています。
飽和脂肪酸の働き
飽和脂肪酸の働きには、どのようなものがあるのでしょうか?
以下でそれぞれご紹介します。
短鎖脂肪酸
短鎖脂肪酸は、大腸において、腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖を発酵することで生成されます。
生成された短鎖脂肪酸は大腸粘膜組織から吸収され、上皮細胞の増殖、粘液の分泌や水などの吸収のためのエネルギー源となります。
また、短鎖脂肪酸の一部は血流にのって全身に運ばれます。
全身に運ばれたあと、肝臓、筋肉、腎臓などの組織でエネルギー源や脂肪を合成するための材料となります。
さらに、短鎖脂肪酸には、腸内環境を弱酸性にすることで有害な菌の増殖を抑えます。
また、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促す、免疫反応を抑制するなどの機能があります。
中鎖脂肪酸
中鎖脂肪酸は、ココナッツや母乳などに含まれている成分の1つです。
中鎖脂肪酸は、消化吸収が早く、ケトン体の生成を促してくれます。
そのため、ケトン体回路による脂肪燃焼効果が期待できます。
糖質制限と並行して中鎖脂肪酸を摂ることで、脂肪が燃えやすい体質になります。
また、中鎖脂肪酸は糖質制限をしていない状態でもケトン体の生成を促進してくれます。
そのため、過度な糖質制限は必要ありません。
しかし、ある程度は糖質制限をしないとケトン体が働かないので、中鎖脂肪酸の摂取と糖質制限は並行して行いましょう。
さらに、中鎖脂肪酸は脳のエネルギー源になるため認知症の予防に有効です。
近年の研究ではケトン体は脳のエネルギー源として利用できることが判明されました。
そのため、中鎖脂肪酸は認知症の予防や抑制効果が期待できます。
アルツハイマー型認知症は、脳のブドウ糖がエネルギー源になりにくいため、エネルギー不足になります。
その結果、脳にエネルギーが届かず脳細胞が働かなくなり機能不全になることで、認知症が進行してしまいます。
しかし、ケトン体を脳のエネルギー源とすることで、アルツハイマーや加齢による脳機能の低下を抑制できます。
長鎖脂肪酸
長鎖脂肪酸は、バター、牛脂、植物油などの身近な食品に豊富に含まれています。
長鎖脂肪酸は、体に良い働きをするものもあります。
しかし、体に悪い働きをするものもあるので、摂取する油には注意しましょう。
積極的に摂り入れたい長鎖脂肪酸には、オレイン酸、リノレン酸、DHA・EPAがあります。
オレイン酸、リノレン酸、DHA・EPAには、悪玉コレステロールの減少や血圧を適正にするなどの効果が期待できます。
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飽和脂肪酸がもたらす影響
飽和脂肪酸で得られる効果には
- エネルギーの生成
- コレステロール値の上昇
- 脂肪の蓄積の抑制
- 脳出血の予防
などがあります。
それぞれ具体的にご紹介いたします。
エネルギーの生成
飽和脂肪酸には、エネルギーを生成する効果があります。
飽和脂肪酸などの脂質1gでおよそ9kcalのエネルギーを作れます。
そのため、飽和脂肪酸は効率の良いエネルギー源といえます。
さらに、余ったエネルギーは体内で皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。
そのため、エネルギーが供給できないときに脂肪をエネルギーに変換してくれます。
コレステロール値の上昇
飽和脂肪酸は、コレステロールの元となるため、コレステロール値や善玉コレステロール値を上昇させる働きがあります。
善玉コレステロールには、血液中のコレステロールを回収して、動脈硬化を予防する効果があります。
しかし、悪玉コレステロールにはコレステロールを体の末端へ運ぶ働きがあります。
そのため、悪玉コレステロールが増加すると血管がつまる原因となるので、摂りすぎには注意しましょう。
脂肪の蓄積の抑制
飽和脂肪酸の中でも中鎖脂肪酸には、脂肪の蓄積を抑制する働きがあります。
長鎖脂肪酸は、体内に入るとエネルギーになり、過剰分のエネルギーは皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積されます。
一方、中鎖脂肪酸は肝臓に運ばれてすぐにエネルギーとして分解されます。
そのため、中鎖脂肪酸は体内に蓄積されにくくなります。
脳出血の予防
飽和脂肪酸は脳出血の予防効果が期待できます。
飽和脂肪酸が不足すると血管がもろくなってしまいます。
その結果、脳出血や脳卒中の原因になるとされています。
日本人の40~69歳の男女を対象にした研究結果があります。
研究結果では、飽和脂肪酸の摂取が少ないと血圧、肥満度、コレステロール値などを考慮しても脳出血になる確率が増加しています。
また、45歳以上の男性を対象にした研究結果があります。
研究結果では、飽和脂肪酸の摂取が1日10g以下の場合、10年間の脳卒中での死亡率が1日10g以上摂取している方の約2倍になるとの報告があります。
飽和脂肪酸が含まれる食品
飽和脂肪酸が多く含まれる食品には
- 牛脂
- ラード
- ヤシ油
- パーム油
- 牛乳
- バター
- 魚介類
などがあります。
飽和脂肪酸は、血液中の中性脂肪やコレステロール値を上昇させる働きがあります。
飽和脂肪酸の過剰摂取は、肥満や脂質異常の原因となります。
そのため、バランス良く摂ることを意識しましょう。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い
脂肪酸には、炭素がすべて飽和結合で満たされた飽和脂肪酸と、一部に二重結合を持つ不飽和脂肪酸があります。
さらに不飽和脂肪酸には、二重結合を1個だけ持つ一価不飽和脂肪酸、2個以上持つ多価不飽和脂肪酸があります。
また、不飽和脂肪酸は、炭素間の二重結合の構造の違いにより、シス型とトランス型に分けられます。
天然の不飽和脂肪酸のほとんどは、炭素間の二重結合がすべてシス型です。
トランス型の二重結合が1つ以上ある不飽和脂肪酸をまとめてトランス脂肪酸といいます。
脂肪酸のうちエネルギーになるのは、第一に飽和脂肪酸になります。
飽和脂肪酸の次に一価不飽和脂肪酸となります。
飽和脂肪酸が貯蔵脂肪として使われるのは、化学的に安定した物質のためです。
多価不飽和脂肪酸は化学的に不安定なため、過酸化物質を作りやすく、貯蔵に向いていないとされています。
飽和脂肪酸の目安摂取量
厚生労働省では、国民の健康維持・増進のため摂取量の基準を定めています。
飽和脂肪酸の1日あたりの目安摂取量を以下の表にあらわしています。
性別 | 男性 | 女性 | |||||||||
年齢 | 18-29歳 | 30-49歳 | 50-64歳 | 65-74歳 | 75歳以上 | 18-29歳 | 30-49歳 | 50-64歳 | 65-74歳 | 75歳以上 | |
脂質 (エネルギー比率) | 目標量 | 20% 以上 30% 未満 | 20% 以上 30% 未満 | ||||||||
飽和脂肪酸 (エネルギー比率) | 目標量 | 7%以下 | 7%以下 | ||||||||
n-6系脂肪酸 (g/日) | 目安量 | 11g | 10g | 9g | 8g | 8g | 7g | ||||
妊婦9g、授乳婦10g | |||||||||||
n-3系脂肪酸 (g/日) | 目安量 | 2.0g | 2.2g | 2.1g | 1.6g | 1.9g | 2.0g | 1.8g | |||
妊婦1.6g、授乳婦1.8g |
出典:厚生労働省【日本人の食事摂取基準】
脂質の摂取量は、多すぎても少なすぎても健康に悪影響を与える可能性があります。
そのため、一部の種類の脂質については、摂取量の基準が定められています。
飽和脂肪酸のまとめ
ここまで、飽和脂肪酸の情報を中心にお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 飽和脂肪酸の種類には、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸があり、エネルギー源になる
- 飽和脂肪酸の効果には、エネルギー生成、コレステロール値の上昇、脂肪蓄積抑制など
- 飽和脂肪酸が含まれる食品には、牛脂、ラード、ヤシ油、パーム油、牛乳など
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。