女性の身体は、生理的な理由で腹水がたまることもあるほどデリケートです。
腹水は女性特有のものを含め、病気による症状の1つでもあります。
では、女性特有の腹水の原因は何なのでしょうか?
腹水がたまった時の対処法には、どのようなものがあるのでしょうか?
本記事では女性特有の腹水について、以下の点を中心にご紹介します。
- 女性特有の腹水を引き起こす原因
- 腹水がたまっているときの自覚症状
- 腹水の治療方法
女性特有の腹水について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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腹水とは?
腹水とは、内臓を包む腹膜でおおわれた部分である腹腔にたまった、多量の水のことを指します。
臓器同士の摩擦を防ぐため、腹腔に存在する水は20~50mlほどが正常値です。
本来、この水は腹膜で産生・吸収され、一定量が保たれています。
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腹水がたまった際に現れる自覚症状について
腹水がたまった際に自覚しやすい症状は、主に以下のとおりです。
腹部の膨満感 | 食欲不振 | 胸やけ |
腹痛 | 息切れ | 便秘 |
体重の増加 | 足首のむくみ | 嘔吐 |
腹水をセルフチェックしたい方は以下の記事も併せてお読みください。
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腹水の原因となる女性特有の病気
腹水の原因として考えられる病気は、主に以下のとおりです。
- 卵巣がん
- 卵巣腫瘍
- 子宮体がん
- 子宮頸がん
- 乳がん
順番に解説していきます。
腹水の原因となる病気|卵巣がん
子宮の両側にある卵巣にできるがんです。
卵巣がんは、初期症状がほとんどありません。
しかし、がんの進行により腫瘍の肥大化や腹水による下半身の膨らみがみられます。
腹水の原因となる病気|卵巣腫瘍
卵巣腫瘍は、良性・境界悪性・悪性(がん)の3種類の総称です。
良性の場合でも腹水がたまることがあります。
卵巣腫瘍の約90%は良性であり、腫瘍=悪性ではありません。
腹水の原因となる病気|子宮体がん
子宮の奥(子宮体部)にできるがんです。
卵巣がんと同様に、子宮体がんにも目立った初期症状はありません。
症状の進行により、腹水をはじめ月経以外の出血や性交痛が生じます。
腹水の原因となる病気|子宮頸がん
子宮の入り口付近にできるがんです。
初期症状がほぼなく、症状が出始めた頃にはがんが進行していることも少なくありません。
性交渉の経験がある女性は、誰もが罹患する可能性があります。
腹水の原因となる病気|乳がん
乳がんが進行すると、腹水がたまることがあります。
腹水によって内臓が圧迫され食欲不振に陥ると、身体がさらに衰弱するため命に関わります。
腹水の原因、またがんとの関連性についてはこちらをご覧ください。
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排卵期の女性は腹水が溜まりやすい?
女性は、1か月に一度卵巣から排卵が起こります。
排卵期の女性に起こる変化は、主に以下のとおりです
排卵直後や妊娠初期は腹水がたまりやすい
排卵直後や妊娠初期は、女性ホルモンであるエストラジオールが高い数値になります。
エストラジオールの数値が高くなることにより、一時的に腹水がたまりやすくなるのです。
排卵前後と月経前後に起こりやすい体調不良の症状
排卵直後や月経前後に起こりやすい症状は以下のとおりです。
- 軽い腹部のつっぱり感
- 軽度の胃痛や吐き気
- 喉の渇き など
腹水の量が多い場合は卵巣刺激症候群の可能性もある
排卵直後や月経前後で腹水がたまることは、珍しいことではありません。
ただ、極端に範囲が広い、腹水の量が多いなどの場合は卵巣刺激症候群(OHSS)の可能性があります。
卵巣刺激症候群の原因
卵巣刺激症候群の原因は、
- 女性ホルモン(エストラジオール)の高数値
- 不妊治療に使用される排卵誘発剤
などが一般的です。
卵巣刺激症候群になりやすい人
卵巣刺激症候群になりやすい傾向として、
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCO)の方
- 排卵誘発の際に卵胞が10個以上あった方
などが挙げられます。
卵巣刺激症候群の治療・対処法
卵巣刺激症候群は、点滴などで穏やかに腹水や卵巣の腫れの治療を行います。
また、自身で行う対処方法としては、
- 安静にする
- 体重・尿量の計測
- 飲水制限
などがあります。
腹水を引き起こす他の病気
先述した女性特有の病気以外にも、腹水を引き起こす病気があります。
- 肝硬変
- 腎不全
- 心不全
順番にみていきます。
腹水を引き起こす病気|肝疾患
ウイルス性肝炎や脂肪肝、アルコール性の肝障害の総称です。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、異常が起きても症状が出るまでなかなか気付きません。
肝疾患が進行すると、全身の倦怠感や黄疸、皮膚のかゆみなどが起こります。
腹水を引き起こす病気|腎不全
初期症状はほとんどなく、症状が出る頃には進行していることが多いのが腎臓病です。
尿に異常な量のタンパク質が漏れ出し、全身のむくみなどが起こります。
病状が進行すると慢性腎不全となり、人工透析が必要となる病気です。
腹水を引き起こす病気|心不全
心臓のポンプ機能が弱まり、働きにくくなる病気です。
十分な量の血液を全身に送れず、呼吸困難や動悸、むくみなどを引き起こします。
肝疾患が引き起こす腹水についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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腹水の診断と治療について
腹水の可能性がある場合は、内科や消化器内科への受診が望ましいでしょう。
超音波やCTといった検査方法で、画像を使用しての診断が一般的です。
大量に腹水がたまっている場合は、腹部の診察のみで診断がつくこともあります。
腹水の治療方法は病気によって異なりますが、主に以下のようなものがあります。
- 抗がん剤治療
- 腹水穿刺ドレナージ
- 腹腔静脈シャント
- 腹水ろ過濃縮再静注法(CART)
- 輸液の制限
- 利尿剤投与
- 水分・塩分の制限
それぞれ解説していきます。
腹水の治療法|抗がん剤治療
抗がん剤を使い、がん細胞を死滅または増殖を抑制する治療法です。
抗がん剤の効果は個人差があるものの、がん細胞だけではなく正常な細胞にも影響を与えます。
そのため、抗がん剤治療は副作用が大きい傾向がみられる治療法です。
腹水の治療法|腹水穿刺ドレナージ
腹水がたまっている腹腔内に針を刺し、腹水を抜く治療方法です。
原因が未特定の腹水の診断や、腹水による苦痛緩和を目的として行います。
腹水穿刺を行うには禁忌とされている状態(腸閉塞や妊娠など)があるため、注意が必要です。
腹水の治療法|腹腔静脈シャント
腹腔内と静脈を繋ぎ合わせる治療方法です。
たまった腹水は、繋いだ静脈系の血管を通って血管内に流入させます。
腹水の治療法|腹水濾過濃縮再静注法(CART)
腹水を採取し、細菌やがん細胞などの濾過・腹水の濃縮を経て体内に再静注する治療方法です。
この治療法には、
- 血液浄化用の機械を用いるポンプ式
- 採取した腹水の自重を用いた落差式
の2種類があります。
この治療によって、腹水による膨満感の軽減など、生活の質(QOL)を改善することが可能です。
腹水の治療法|輸液の制限
輸液による腹水の悪化を防ぐため、輸液量の制限を行うことがあります。
特に、経口で1日500mlの水分を摂取可能な場合には輸液は行わないことも少なくありません。
腹水の治療法|利尿剤投与
利尿剤を用いて、腹水を尿として排出する治療方法です。
飲水制限もないため、比較的安全で有効性の高い方法といえます。
腹水の治療法|水分・塩分の制限
塩分は身体に水分をためやすくするため、腹水の量によっては制限が必要です。
塩分制限は5~7g/日、水分は1L以下/日が望ましいでしょう。
症状が強い場合には水分を500ml/日ほどに制限することもあります。
女性の腹水は妊娠にも影響するの?
子宮頸がんや卵巣嚢腫など、女性特有の病気によって腹水がある場合も、妊娠や出産は可能です。
ただ、進行した卵巣がんや子宮体がんの場合、治療として卵巣や子宮の摘出を行います。
その場合は卵巣や子宮といった妊娠するための機能がなくなるため、妊娠はできません。
病気を早期に発見し治療をすることが、妊娠や出産の可能性を高めるポイントといえます。
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女性特有の病気の罹患数
厚生労働省は、全国のがん登録罹患者数のデータを公表しています。
平成31年(令和元年)における、女性のがん罹患率は以下のとおりです。
順位 | 部位 | 罹患者数(人) | 割合(%) |
1位 | 乳房 | 97,142 | 22.5 |
2位 | 大腸(結腸・直腸) | 67,753 | 15.7 |
3位 | 肺 | 42,221 | 9.8 |
4位 | 胃 | 38,994 | 9.0 |
5位 | 子宮 | 29,136 | 6.7 |
出典:厚生労働省【平成31年(令和元年)全国がん登録罹患数・率報告 18P図2】
続いて、女性特有のがんにおける罹患者数は以下のとおりです。
部位 | 乳房 | 子宮 | 子宮頚部 | 子宮体部 | 卵巣 |
罹患者数(人) | 97,142 | 29,136 | 10,879 | 17,880 | 13,388 |
出典:厚生労働省【平成31年(令和元年)全国がん登録罹患数・率報告 27P】
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女性特有の腹水についてよくあるQ&A
腹水とは何ですか?
腹水とは、腹腔内に異常に水分が溜まる状態を指します。
これは、さまざまな原因により、腹腔内の組織から液体が過剰に分泌されるか、または吸収されないために生じます。
女性特有の腹水の主な原因は何ですか?
女性特有の腹水の原因としては、卵巣がんや子宮がん、子宮内膜症などの婦人科系の疾患が挙げられます。
これらの疾患は、腹腔内に液体を溜め込むことがあるため、腹水の原因となることがあります。
腹水の症状はどのようなものがありますか?
腹水の主な症状としては、腹部の膨満感や重だるさ、呼吸時の苦しさ、食欲不振、体重増加などが挙げられます。
腹水が多量に溜まると、腹部が膨れ上がることもあります。
腹水の診断方法は?
腹水の診断は、主に超音波検査やCTスキャンを用いて行われます。
これにより、腹腔内の液体の量や位置を確認することができます。
また、腹水の採取や細胞診を行うことで、腹水の原因を特定することも可能です。
腹水の治療方法はどのようなものがありますか?
腹水の治療方法は、原因によって異なります。
腹水を直接的に取り除くための治療としては、腹水の穿刺排液が行われることがあります。
また、原因となる疾患の治療を行うことで、腹水の再発を防ぐことが目指されます。
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女性特有の腹水のまとめ
ここまで、女性特有の腹水についてお伝えしてきました。
女性特有の腹水の要点をまとめると以下のとおりです。
- 女性特有の腹水を引き起こす原因は、排卵や月経、がんや卵巣嚢腫などの疾患
- 腹水がたまっているときの自覚症状は、腹部の膨満感や食欲不振、腹痛など
- 腹水の治療方法は、抗がん剤治療、水分・塩分の制限など
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。