骨粗鬆症は骨折のおそれがあるため、高齢者は特に注意すべき病気です。
すでに骨粗鬆症の方は、早めに治療を受けることで、骨折などのリスクを減らせます。
そもそも骨粗鬆症にはどのような治療があるのでしょうか?
また、薬以外で治療する方法はあるのでしょうか?
本記事では、骨粗鬆症の治療について、以下の点を中心にご紹介します。
- 骨粗鬆症の治療とは
- 骨粗鬆症の治療薬
- 薬以外の骨粗鬆症の治療方法
骨粗鬆症の治療について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは、骨密度が低くなった状態です。
骨の中がスカスカになるため、ささいな転倒や衝撃でも骨折しやすくなります。
骨粗鬆症は多くの高齢者にみられる症状です。
主な原因としては、加齢・カルシウム不足・閉経などが挙げられます。
出典:厚生労働省【骨粗鬆症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)】
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骨粗鬆症の治療の目的
骨粗鬆症の治療の目的は、骨密度の低下を抑制して骨折を防ぐことです。
具体的には、骨折による寝たきりなどを防ぐことで、QQL(人生の質)を高く保つことを目的とします。
骨粗鬆症の治療は基本的に薬物療法ですが、個人によって治療内容は異なります。
適切な治療を受けるためにも、まずは病院で検査を受けることが大切です。
骨粗鬆症の治療の流れ
骨粗鬆症の治療の流れについてご紹介します。
病院によって、検査内容や治療費に違いがありますが、治療期間はおおむね一緒です。
くわしく解説します。
受診する科
骨粗鬆症で病院を受診するときは、基本的には整形外科がおすすめです。
ただし、医療機関によっては外科・内科・婦人科などで診療している場合もあります。
かかりつけの病院がある場合は、診療科にかかわらず、まず相談してみるのも良い方法です。
検査と診断
骨粗鬆症の治療を始める前に、まず「骨粗鬆症である」という診断が必要です。
骨粗鬆症の診断は、検査結果をもとに下されます。
骨粗鬆症の主な検査方法は以下の通りです。
- 問診
- 骨密度検査
- 骨代謝マーカー
それぞれ解説します。
問診
何科を受診するにしろ、まずは問診が行われることが一般的です。
問診とは、医師が患者に対して症状や生活状況などを聞き取ることをいいます。
骨粗鬆症の問診では、以下のような質問がされることが一般的です。
- 閉経時期
- 病歴
- 生活習慣(食事内容・運動・喫煙・飲酒など)
- 困っている症状
- 症状があらわれはじめた時期
骨密度検査
骨密度検査は、骨の中のカルシウム量を測定することで、骨の状態を調べる方法です。
骨密度は、若い方の骨密度の平均値100%を基準とし、自分の骨の量が何%なのかで示されます。
自分の骨の量が70%未満の場合、骨粗鬆症と診断されます。
また、骨密度80%以下の場合は、骨粗鬆症の1歩手前です。
骨密度検査には、主に4種類の方法があります。
DEXA法 | X線を利用して骨の中のカルシウム量を調べる |
超音波法 | かかとの骨に超音波を当てて骨密度を測定する |
MD法 | X線を利用し、アルミ板と比較することで手の骨密度を測る |
CT法 | CTを利用して骨密度を測る |
最も高い精度を期待できるのはDEXA法です。
ただしX線を利用するため、一部の方は受けられない場合があります。
DEXA法を受けられない方には、超音波法などが利用されることが一般的です。
骨代謝マーカー
骨代謝マーカーとは、破壊される骨の量と新しく作られる骨の量を示す数値です。
骨代謝マーカーは、血液検査あるいは尿検査で調べます。
骨代謝マーカーを調べる目的は、骨吸収・骨形成の状況を把握することです。
骨吸収は、古くなった骨が破壊されて吸収されることをいいます。
対して骨形成とは、吸収した骨をもとに新しく骨を作る仕組みのことです。
骨吸収と骨形成の収支がゼロであれば、骨の量は極端に増減することはありません。
しかし、ときに骨吸収が骨形成を上回ることがあります。
骨吸収の量が極端に増えて骨量が減少に転じると、骨粗鬆症に至ります。
骨代謝マーカーでは、骨吸収と骨形成の際に合成される物質の量を調べることで、骨量を測定します。
骨吸収・骨形成の際に合成される物質(マーカー)は以下の通りです。
- 骨吸収マーカー(TRACP-5b)
- 骨形成マーカー(P1NP)
骨吸収マーカーが極端に多い場合は、骨密度が低下していると判断できます。
つまり骨粗鬆症がすでに起こっている、または将来的なリスクが高いといえるのです。
治療費
骨粗鬆症の検査・治療費は、個人の状態・医療機関・処方薬などによって異なります。
DEXA法の検査では、1割負担450円、3割負担1350円の検査費が必要です。
また、薬の処方があれば別途費用がかかります。
処方薬別の費用例については、以下の表の通りです。
治療薬 | 1割負担(円) | 3割負担(円) |
ボナロン | 320 | 960 |
フォサマック | 250 | 740 |
ベネット | 270 | 820 |
テリボン | 4330 | 13000 |
エディロール | 278 | 833 |
アスパラ・CA | 94 | 282 |
治療期間
骨粗鬆症の治療期間は、個人によって差があります。
一般的には、1年~数年単位の長いスパンをかけて治療します。
特に女性は長い治療期間を要する傾向がみられます。
女性の骨粗鬆症の原因の多くが、閉経による女性ホルモンの減少であるためです。
女性ホルモンのうち、エストロゲンには骨吸収を抑制する作用があります。
閉経するとエストロゲンの分泌量が減ります。
そのため、骨吸収のスピードが速くなり、結果として骨粗鬆症に至るのです。
閉経した女性は、エストロゲンの分泌が増えることはほとんどありません。
つまり骨粗鬆症の根本原因の解決が難しいため、治療も長引きやすくなります。
骨粗鬆症の治療方法
骨粗鬆症の治療は薬物療法が中心となります。
薬物療法とは、薬剤を服用または点滴で投与する方法です。
また、薬物療法以外にも、以下の治療方法があります。
- 食餌療法
- 運動療法
- サプリメント
以下でくわしく解説します。
治療薬
骨粗鬆症の治療薬は、大きく分けて以下の3タイプです。
- 骨の吸収を抑える
- 骨の形成を助ける
- 骨の吸収・形成を調整する
それぞれの特徴や具体的な薬剤をご紹介します。
骨の吸収を抑える薬
骨吸収を抑えることで、骨形成との収支をゼロに近づける薬です。
骨吸収と骨形成の収支がゼロに近くなるほど、骨量の減少がゆるやかになります。
女性ホルモン(エストロゲン) | 閉経によって減少したエストロゲンを補う |
カルシトニン | 骨吸収を抑制する・骨粗鬆症による痛みを軽減する |
ビスフォスフォネート | 骨吸収する細胞(破骨細胞)の働きを抑制する |
イプリフラボン | 骨のカルシウムが溶け出すのを防ぐ |
ラロキシフェン | エストロゲンと似た作用を持つ |
SERM(サーム) | エストロゲンと似た作用を持つ |
デノスマブ | 破骨細胞の生成に関わるタンパク質の働きを抑制する |
骨の形成を助ける薬
骨形成を促進することで、骨量を増やす作用があります。
代表的な薬剤は以下の通りです。
副甲状腺ホルモン薬(テリパラチド) | 新しい骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを促進する |
ビタミンK2 | 骨折の予防に役立つ |
吸収と形成を調整する薬
骨吸収と骨形成の速度を調整することで、骨量の減少を防ぎます。
代表的な薬剤は以下の通りです。
活性型ビタミンD3製剤 | カルシウムの吸収を助ける・骨吸収と骨形成を調整する |
カルシウム製剤 | 骨の原料であるカルシウムを補う |
ビタミンK | 骨の中のカルシウムが溶け出すのを防ぐ |
食餌療法
骨粗鬆症では食餌療法も重要です。
日頃から次のような栄養素・食品を積極的に摂取することで、骨粗鬆症の予防・改善が期待できます。
- カルシウム
- ビタミンD
- ビタミンK
それぞれ解説します。
出典:厚生労働省【骨粗鬆症の予防のための食生活 | e-ヘルスネット(厚生労働省)】
カルシウム
カルシウムは骨の原料となる栄養素です。
60歳以上の方は、1日あたり600〜800g程度のカルシウム摂取が必要だといわれています。
カルシウムが豊富な食品としては、乳製品が代表的です。
たとえば牛乳であれば、1日にコップ2〜3杯を目安にしてください。
しかし、牛乳を1日3杯飲むのは難しい場合があります。
そのため、足りないカルシウムは、他の乳製品や小魚・緑黄色野菜などで補いましょう。
出典:農林水産省【大切な栄養素カルシウム】
ビタミンD
ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を助ける作用があります。
カルシウムは単体では吸収されにくいため、ビタミンDと一緒に摂りましょう。
ビタミンDは、日光を浴びると体内で生成されます。
骨粗鬆症予防のためには、1日30分〜1時間程度の日光浴もおすすめです。
しかし高齢の方は、若い方に比べるとビタミンDの合成効率が低下しています。
そのため、日光浴だけでは十分なビタミンDを得るのが難しい場合もあります。
ビタミンDを効率よく摂るには、日光浴に加え、食品からの摂取が大切です。
ビタミンDが豊富な食品は、きのこ類が代表的です。
他にも、いわし・さけ・うなぎなどの魚介類にもビタミンDは含まれています。
ビタミンK
ビタミンKは、骨の中からカルシウムが溶け出すのを防ぐ作用があります。
近年では、骨粗鬆症の治療のためにビタミンK製剤を用いることも増えています。
ビタミンKは食品からでも摂取可能です。
具体的には、納豆や緑黄色野菜・果物などがあります。
特に納豆は、腸内でビタミンKを増やす作用があるため、おすすめの食品です。
運動療法
骨粗鬆症の治療には適度な運動が大切です。
運動時に身体に加わる物理的な衝撃には、骨を強くする作用があります。
骨折を恐れてじっとしていると、ますます骨はもろくなります。
骨粗鬆症の治療・予防におすすめなのは、ウォーキングやジョギングです。
足の裏が地面につくと、適度な衝撃が骨に加わり、骨を強くしてくれます。
また、以下のような動作もおすすめです。
- その場で軽くジャンプする
- 椅子から立つ・座るを繰り返す
もし歩行が難しい場合は、かかと落とし運動も良い方法です。
【かかと落とし運動】
- 足をそろえてまっすぐ立つ
- その場でつま先立ちする
- 足の力を抜いて、かかとをまっすぐストンと落とす
- 1~3を10回×3セット繰り返す
姿勢が不安定な方は、転倒を防ぐために、机や椅子につかまってください。
立ち上がるのが難しい方は、椅子に座ったまま行ってもかまいません。
運動は骨粗鬆症の治療に有効ですが、必ずしも行うべきものではありません。
骨粗鬆症がかなり進行している方は、無理に運動するとかえって転倒・骨折するおそれもあります。
骨粗鬆症の治療のための運動の是非や種類・程度については、かかりつけ医に相談してください。
出典:厚生労働省【骨粗鬆症予防のための運動 -骨に刺激が加わる運動を | e-ヘルスネット】
サプリメント
骨粗鬆症の治療には、サプリメントを利用するのも1つの方法です。
カルシウムやビタミンDのサプリメントなどは、骨粗鬆症の改善に役立ちます。
病院で治療薬を処方されている方は、サプリメントは不要な場合もあります。
サプリメント服用の是非については、医師とよく相談してください。
なお、サプリメントには骨粗鬆症を根本的に治療する効果はほとんど期待できません。
骨粗鬆症の治療薬などに比べると、効果が薄いためです。
骨粗鬆症の治療では、基本的に治療薬や食餌療法を優先してください。
サプリメントは、処方薬や食事で足りない栄養素を補う程度と考えておきましょう。
骨粗鬆症の治療に伴う副作用はある?
骨粗鬆症の治療薬は、他の医薬品に比べると副作用のリスクは低めです。
しかし、絶対に副作用が起こらないわけではありません。
代表的な副作用は以下の通りです。
- 吐き気
- 下痢
- 食欲不振
- 便秘
- 顎骨壊死(がっこつえし)
副作用の中でも起こりやすいのは、吐き気・下痢などの消化器系の症状です。
消化器系の副作用は、服用のタイミングや水の量を見直すことで改善できる場合があります。
副作用の中でも特に深刻なのは、顎骨壊死です。
顎骨壊死とは、顎の骨が腐ることです。
特に顎骨壊死のリスクが高いのは、抜歯治療や歯周病治療を受けている方です。
骨粗鬆症の治療薬を服用すると、歯茎や歯の修復が行われにくくなります。
すると、歯茎についた傷が治りにくくなり、細菌に感染して顎の骨が溶けることがあるのです。
歯科治療を受けている方が骨粗鬆症の治療を受ける場合は、かかりつけ医に相談することが大切です。
出典:厚生労働省【ビスホスホネート系薬剤による顎骨壊死 】
骨粗鬆症を予防するには?
骨粗鬆症は高齢者の病気というイメージがあります。
しかし骨粗鬆症の多くは、若い頃からの生活習慣の積み重ねに起因して起こることもあります。
そのため骨粗鬆症は、高齢者だけでなく、若年者も予防に努めることが大切です。
以下でくわしく解説します。
出典:【骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015 年版(P44~46参照)】
若年者
若い頃の食習慣・運動習慣は、将来的な骨粗鬆症のリスクを大きく左右します。
たとえば偏った食事を続けると、骨のカルシウム貯蔵量が下がります。
結果、将来的に骨粗鬆症を起こしやすくなります。
特に思春期前後の方は、ダイエット目的で無理な食事制限をするケースが多くみられます。
将来的な骨粗鬆症リスクを下げるためにも、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。
また、18歳以前にある程度の強度のある運動をすることも、骨粗鬆症予防に効果的です。
中高年者
骨粗鬆症のリスクが高まるのは、40代以降の中高年者です。
中高年者が骨粗鬆症を予防するには、栄養バランスの良い食事・適度な運動を心がけることが大切です。
また、飲酒・喫煙は骨粗鬆症や骨折のリスクを高めます。
骨粗鬆症予防のためには、酒・たばこはやめるのがベストです。
骨粗鬆症の治療のまとめ
ここまで、骨粗鬆症の治療についてお伝えしてきました。
骨粗鬆症の治療の要点をまとめると以下の通りです。
- 骨粗鬆症の治療は、薬物療法が中心
- 骨粗鬆症の治療薬は、骨吸収を抑える薬・骨形成を促進する薬などが代表的
- 薬以外の治療法には、食餌療法・運動療法・サプリメント摂取がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。