全身疾患を抱えた方が気をつけたい現象の1つに、乳酸アシドーシスがあります。
乳酸アシドーシスは命を落とす危険もあり、実際に致死率50%とも指摘されています。
乳酸アシドーシスとは、いったいどのようなものなのでしょうか。
本記事では、乳酸アシドーシスについて、以下の点を中心にご紹介します。
- 乳酸アシドーシスとは
- 乳酸アシドーシスの症状
- 乳酸アシドーシスになりやすいのは
乳酸アシドーシスについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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乳酸アシドーシスとは
乳酸アシドーシスとは、乳酸の蓄積または乳酸の代謝低下が原因で、アシドーシスが起こることです。
アシドーシスとは、体内に過剰な酸が発生することで、血液が酸性に傾いた状態です。
具体的には、血液の水素イオン濃度が正常域より7.4±0.05低い状態を指します。
アシドーシスには、大きく分けて代謝性と呼吸性の2種類があります。
乳酸アシドーシスは、代謝性アシドーシスに分類されています。
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乳酸アシドーシスの種類
乳酸アシドーシスは大きく分けて3タイプがあります。
それぞれの特徴や原因をご紹介します。
A型乳酸アシドーシス
A型乳酸アシドーシスは、アシドーシスの中でもっとも重篤になりやすいタイプです。
主な原因として、体内の酸素不足が挙げられます。
体内への酸素供給が不足すると、嫌気解糖が起こります。
嫌気解糖とは、酸素を用いずにエネルギーを生み出す仕組みのことです。
嫌気解糖では過剰な乳酸が生成されるため、血液が酸性に傾いて乳酸アシドーシスに陥りやすくなります。
体内が酸素不足に陥る原因としては、全身の血液循環の低下などが代表的です。
心筋梗塞・不整脈などによる心原性ショックなどが嫌気解糖を引き起こすこともあります。
B型乳酸アシドーシス
B型乳酸アシドーシスは、全身疾患などを原因とするタイプです。
A型に比べると重篤化リスクは低いと指摘されています。
B型乳酸アシドーシスを引き起こす疾患は、肝臓障害・糖尿病・がんなどが代表的です。
あるいは、フェンホルミン・メトホルミンなどの薬剤が原因となることもあります。
メトホルミンは糖尿病治療やがん抑制に用いられる薬剤です。
腎機能が低下した方がメトホルミンを服用すると、血中に乳酸が増えやすくなるため、乳酸アシドーシスが起こりやすくなります。
D-乳酸アシドーシス
Dー乳酸アシドーシスは、乳酸アシドーシスのなかでは頻度が低いタイプです。
Dー乳酸アシドーシスが起こりやすいのは、腸切除や空腸バイパスの手術を受けた方などです。
腸の手術を受けた方は、結腸などでDー乳酸が生成されやすくなります。
Dー乳酸は人体内では代謝されないため、生成後は血中に蓄積されます。
血中のD-乳酸の量が過剰になると、D-乳酸アシドーシスに至ります。
乳酸アシドーシスの症状
乳酸アシドーシスの症状の種類・程度は個人差があります。
初期には、以下のような消化器系の症状があらわれるケースが多くみられます。
- 悪心
- 嘔吐
- 腹痛
- 下痢
その他の初期症状としては、筋肉痛・倦怠感なども代表的です。
乳酸アシドーシスが進行すると、次のような症状があらわれることもあります。
- 過呼吸
- 脱水
- 低血圧
- 低体温
- 昏睡
最悪の場合は、命を落とすこともあります。
一説では、乳酸アシドーシスの致死率は50%と指摘されています。
乳酸アシドーシスの診断方法
乳酸アシドーシスの診断方法をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
動脈血ガス、血清電解質
動脈血ガスとは、血液中のガスの成分を調べる検査です。
肺・心臓・腎臓や体液の状態を把握するのに役立ちます。
血清電解質では、血液中の電解質の成分を調べます。
血液のphのほか、体内の水分や浸透率を把握するための検査です。
動脈血ガスや血清電解質の結果が血中pH < 7.35となった場合は、乳酸アシドーシスと診断されます。
アニオンギャップ、デルタギャップの算出
アニオンギャップとは、血液中の陽イオン・陰イオンの差です。
一方、デルタギャップは、正常なアニオンギャップとの差をあらわすものです。
アニオンギャップやデルタギャップは、動脈血ガス検査の結果をもとに出されます。
アニオンギャップが高くなっている場合は、乳酸アシドーシスが疑われます。
血中乳酸濃度
血中の乳酸の濃度を調べる方法です。
血液中に大量の乳酸が認められる場合は、乳酸アシドーシスの可能性が高まります。
具体的には、乳酸濃度 > 5~6mmol/Lかつ動脈血ガスでpH < 7.35の場合、乳酸アシドーシスと診断されます。
乳酸アシドーシスの治療方法
乳酸アシドーシスの治療方法をご紹介します。
軽症の場合は、治療せずに経過観察に留める場合もあります。
A型・B型乳酸アシドーシス
A型・B型の乳酸アシドーシスは、全身疾患などが原因で引き起こされます。
乳酸アシドーシスを治療するには、まず根本原因である疾患・症状の治療が求められます。
たとえばA型の原因は、心筋梗塞や不整脈などによる酸素の供給不足などです。
つまり乳酸アシドーシスを改善するには、心疾患などを治療して、体内の酸素供給量を増やす必要があります。
B型は糖尿病などの疾患のほか、薬剤の使用が原因です。
乳酸アシドーシスを改善するには、原因疾患を治療したり、原因となる薬剤の服用を中止したりします。
D-乳酸アシドーシス
D-乳酸アシドーシスの治療法には、たとえば以下があります。
- 輸液
- 炭水化物制限
- 薬剤投与
乳酸アシドーシスを起こしやすい人の特徴
以下のような症状がある方は、乳酸アシドーシスのリスクが高いと指摘されています。
- 腎臓障害
- 肝機能障害
- 循環器系の疾患
以下のような条件にあてはまる方は、あてはまらない方に比べると、乳酸アシドーシスのリスクが高めです。
- 高齢者
- 脱水
- シックデイ
- 大量飲酒
乳酸アシドーシスの発現数の推移
近年は、乳酸アシドーシスの増加傾向がみられます。
2004年~2009年までは、1年間の乳酸アシドーシスの発現数は5件以下でした。
2010年には10件に到達し、2014年~2016年では33~34件の発現が報告されています。
2018年の発現数は38件でした。
乳酸アシドーシスの発現の背景因子としては、以下が挙げられます。
- 腎障害(慢性・発現時急性悪化)
- 飲酒
- 脱水
- 心疾患
- 経口摂取不良
脱水や経口摂取不良がある際にメトホルミンを服用すると、乳酸アシドーシスの発現リスクが高まると指摘されています。
出典:厚生労働省【医薬品等の安全に係わる調査結果報告書】
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乳酸アシドーシスのまとめ
ここまで、乳酸アシドーシスについてお伝えしてきました。
乳酸アシドーシスの要点を以下にまとめます。
- 乳酸アシドーシスとは、体内に過剰な乳酸が溜まって、血液が酸性に傾くこと
- 乳酸アシドーシスの症状は人それぞれだが、一般的には胃腸症状が出る
- 乳酸アシドーシスになりやすいのは、腎臓障害・肝臓障害などがある方・高齢の方・脱水症状の方・大量飲酒をする方
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。