一般的に、ものが飲み込みにくいのは高齢者特有の症状と考えられています。
しかし30歳以下の若い方でも、ものが飲み込みにくくなることがあります。
若いのに飲み込みにくいのは、なぜなのでしょうか?
また、将来嚥下障害にならないように予防する方法はあるのでしょうか?
本記事では、若い方の飲み込みにくい事柄について、以下の点を中心にご紹介します。
- 若いのに食べ物が飲み込みにくい原因とは
- 嚥下障害の基準とは
- 将来的な嚥下障害を予防する方法
若い方の飲み込みにくい事柄について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
嚥下障害とは
若い方で食べ物などが飲み込みにくい場合、嚥下障害が疑われます。
まずは嚥下障害の基本的な情報をご紹介します。
嚥下の仕組み
嚥下とは、食べ物などを口に入れて飲み込む一連の動作を指します。
嚥下は次の5つの段階で構成されています。
先行期 | 目の前の食べ物を目・鼻などで「食べ物」として認識し、口に運ぶ段階 |
準備期 | 先行期で口に入れた食べ物を噛み砕き、食塊(かたまり)にする段階 |
口腔期 | 準備期でできた食塊を、舌を使って喉の奥に運ぶ段階 |
咽頭期 | 「嚥下反射」という機能によって食塊が咽頭を通過し、食道に入る段階 |
食道期 | 食塊が食道から胃へ運ばれる段階 |
嚥下障害とは、先行期から食道期のいずれかに支障が出た状態です。
嚥下障害の主な症状は次の通りです。
- 食事中にむせる
- 水・食べ物などがうまく飲み込みにくい
- 食事に時間がかかる
- 食べたものが口の中に残る
- 食後に声がかすれる
- 固いものが噛みにくい・飲み込みにくい
嚥下障害の主な原因
嚥下障害の主な原因は加齢です。
唾液の減少や、咀嚼筋の衰えによって生じます。
嚥下障害の加齢以外の原因については、次項で詳しく解説します。
以下の記事では嚥下障害について詳しく解説しています。
よろしければご覧ください。
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若いのに飲み込みにくい理由
食べ物が飲み込みにくいという症状は、特に高齢者に目立ちます。
しかし近年は、20代などの若い方でも食べ物が飲み込みにくい状態になることがあります。
若いにもかかわらず食べ物が飲み込みにくい場合、原因として次のものが考えられます。
- 器質的原因
- 機能的原因
- 心理的原因
- 医原性原因
それぞれ解説します。
器質的原因
食べ物・飲み物などが飲み込みにくい場合、器質的原因が疑われます。
器質的原因とは、嚥下に必要な器官に病気・ケガなどがあることです。
嚥下障害の器質的な原因としては、以下が代表的です。
- 嚥下器官の炎症(口内炎・扁桃炎・食道炎)
- がん(食道がん・口腔がん)
- 嚥下器官の先天的奇形
- 外傷
たとえば食道にがんができると、腫瘍が食道を塞ぐことがあります。
すると食べ物が食道を通る際、腫瘍に阻まれてスムーズに通過しにくくなります。
結果として、食べ物が飲み込みにくいという状態に陥るのです。
機能的原因
機能的原因とは、嚥下に必要な器官の機能が低下している状態です。
嚥下に必要な器官とは、たとえば口・のどの筋肉や、筋肉を動かす神経系などが該当します。
嚥下障害の具体的な機能的原因には、以下があります。
- 老化による筋力低下
- パーキンソン病
- ALS
- 脳卒中
パーキンソン病・ALSは全身の筋肉の動きに異常が出る疾患です。
のどなどの筋肉も動きにくくなるため、嚥下が困難になることがあります。
脳卒中では脳血管や脳神経が破壊され、筋肉をコントロールする脳神経がダメージを受けます。
結果、嚥下障害が起こりやすくなるのです。
心理的原因
食べ物が飲み込みにくい原因に、心理的原因もあります。
簡単にいえば、心理的ストレスが嚥下障害を引き起こすのです。
嚥下障害の具体的な心理的原因は以下の通りです。
- うつ病
- 心身症
- ストレス性胃潰瘍
ストレスが原因の嚥下障害は、心因性嚥下障害または咽頭異常感症などと呼ばれます。
心因性嚥下障害は、のど・食道などに明らかな原因を特定できないのが特徴です。
また、心因性嚥下障害では飲みにくい対象物が特定されているケースが多くみられます。
食事はスムーズにできるものの、つばが飲み込みにくいなどが代表的です。
心因性嚥下障害は、うつ病・心身症の方に多くみられます。
がんなどの大病を患う方も、心理的ストレスによって心因性嚥下障害を発症しやすくなります。
医原性原因
医原性原因とは、医療的処置が原因で引き起こされる嚥下障害です。
たとえば次のようなケースが代表的です。
- 薬の副作用
- 手術後の合併症
- 手術時のキズの影響
- 経管栄養
代表的なのは、薬の副作用による嚥下障害です。
嚥下障害を引き起こす薬剤には以下のものがあります。
- 向精神薬(抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬・抗精神病薬)
- 抗がん剤
- 利尿薬
- 抗てんかん薬
向精神薬・抗がん剤は、ドライマウスを引き起こすことがあります。
ドライマウスは嚥下障害の代表的な原因です。
また、一部の向精神薬は、嚥下に必要な筋肉の動きを阻害することもあります。
嚥下障害の原因について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
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若いうちの嚥下障害は問題ない?
若い方は高齢者に比べると、嚥下障害によるリスクは低くなっています。
多くの場合、若い方の嚥下障害の症状はむせる程度です。
症状は個人差がありますが、なにも飲み込めなくなるほど重症化することはほとんどありません。
では、若い方で嚥下障害が疑われる場合、病院は受診しなくてもよいのでしょうか。
答えは「いいえ」です。
たとえ若い方でも嚥下障害の可能性がある場合は、医師の診察を受けてください。
若い方でも誤嚥が起こると、誤嚥性肺炎に発展するおそれがあるためです。
また、嚥下障害の裏に重大な病気が隠れている可能性も否定できません。
若い方で嚥下障害がみられる場合は、脳卒中・ALS・食道炎などが疑われます。
重大な病気を見落とさないためにも、嚥下に不安を感じた場合は病院で検査を受けましょう。
嚥下障害の治療方法
嚥下障害の治療法は大きくわけて「リハビリ」と「手術療法」の2種類です。
嚥下障害が軽度の場合は、リハビリが選択されることが一般的です。
嚥下障害のリハビリ方法は次の2通りです。
内容 | 例 | |
間接訓練 | 食べ物を使わず、嚥下に必要な器官を強化する方法 | 嚥下体操・口や頬のマッサージ・頸部関節可動域訓練・唾液腺マッサージ |
直接訓練 | ゼリーやとろみ食などの食べ物を使って嚥下機能を強化する方法 | 交互嚥下・複数回嚥下 |
嚥下障害が重度の場合は、手術が選択されることもあります。
手術方法は大きく分けて次の2通りです。
内容 | 例 | |
嚥下機能改善手術 | 嚥下に必要な器官の機能を強化するための手術 | 輪状咽頭筋切断術・喉頭挙上術 |
誤嚥防止術 | 気道と食道を完全に分離させる | ー |
以下の記事では嚥下障害の治療法についてまとめています。
よろしければご覧ください。
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嚥下障害の判断基準
嚥下障害かどうかを判断するには、次のようなセルフチェックが有効です。
【飲み込む力のチェック方法】
- 30秒間で唾液を3回以上飲み込めるか
- 5秒以内に30mlの水をむせずに飲めるかどうか
上記の1・2が達成できない場合は、嚥下障害が疑われます。
また、次のような項目に心当たりがある場合も、念のため病院で検査を受けましょう。
【嚥下障害のチェックリスト】
- 食事中・後にむせやすい、よく咳をするようになった
- 水・お茶なしで食べ物を飲み込めない
- 食後に声がかすれる
- 食後に痰が出る
- なんとなくのどに違和感がある
若いうちからできる将来の嚥下障害対策
嚥下障害の原因の多くは加齢です。
筋力の低下などによって嚥下器官の機能が低下するため、嚥下障害に至ります。
将来的な嚥下障害のリスクを下げるには、若い頃から予防に取り組むことが大切です。
ここからは、若い方ができる嚥下障害対策をご紹介します。
フェイストレーニング
フェイストレーニングは、口・首周りの筋肉を強化する方法です。
嚥下に必要な器官が鍛えられるため、将来的な嚥下障害の予防につながります。
フェイストレーニングのやり方の例をご紹介します。
【E運動】
- 口を横に伸ばし、「イィー」と声を出す(声は出さなくてもよい)
- のどに力を入れるようなイメージで奥歯を5秒ほど食いしばる
- 5~10回ほど繰り返す
【舌出し運動】
- 1 大きく口を開く
- 2 舌を前に突き出し上下にしっかり動かす
- 3 舌を左右にしっかり動かす
- 4 2~3を3回ほど繰り返す
【のど上げ体操】
- 1 のど・あごの下に手を添えて少量の水を飲み、のどの動きなどを感じる
- 2 のど・あごの下に手を添えて水を力強く飲み、のどの動きなどを感じる
- 3 2の要領で水を飲んだ直後にのどに力を入れ、3~5秒ほど静止する(息が止まった状態を保つ)
フェイストレーニングは顔回りの筋肉が強化されるため、リフトアップも期待できます。
よく噛んで食事をする
嚥下障害を予防するには、よく噛んで食べることを心がけましょう。
十分に咀嚼すると、口・あご・首の筋肉が強化されるためです。
より負荷を大きくするなら、すこし硬いものを食べるのもよい方法です。
食材を大きめにカットすると、食べ応えが出るため、自然に咀嚼数が増えます。
口腔ケアをしっかり行う
嚥下障害予防のためには、食後の口腔ケアは入念に行いましょう。
丁寧な歯磨きのほか、フロスや歯間ブラシを使ったケアが有効です。
口腔を清潔に保つと、口内に雑菌が繁殖しにくくなります。
虫歯・歯周病を予防できるため、高齢になっても自分の歯を維持しやすくなります。
自分の歯を使って食事すると、咀嚼が安定します。
結果として咀嚼筋が強化されるため、嚥下障害のリスクが低くなります。
バランスのよい食生活を意識する
嚥下障害は、脳卒中やがんなどの生活習慣病が原因で起こることがあります。
つまり嚥下障害を予防するには、根本原因である生活習慣病を予防することが大切です。
生活習慣病予防に欠かせないのが栄養バランスのよい食事です。
具体的には、次のようなポイントを意識しましょう。
- 野菜・果物を多めに摂る
- 塩分・脂質・糖質の摂りすぎを控える
- 1日3食規則正しく摂る
生活習慣病を予防するには、食事だけでなく、運動・睡眠を見直すことも大切です。
飲酒・喫煙習慣がある方はできる限り控えるようにしましょう。
嚥下障害の予防法について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
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若者におけるドライマウスの割合|飲み込みにくさの原因の一つ
嚥下障害の原因の1つとして、ドライマウスが指摘されています。
ドライマウスとは、唾液の分泌量が減って口内が乾燥した状態です。
口内が乾燥すると、食べ物が口・のど・食道でひっかりやすくなります。
結果として、嚥下障害に至ることがあるのです。
近年は若い方のドライマウスが増加しています。
2013年の調査を参照すると、ドライマウスを自覚している方は、全体の57%でした。
年代別にみると、10〜20代の方の割合は64%でした。
ドライマウスは、30歳以下の方に特に目立つことが分かります。
ドライマウスの原因・仕組みはハッキリ解明されていません。
しかし一説では、ストレスなどの心理的原因がドライマウスを引き起こすと指摘されています。
出典:【10代・20代の男女の約3分の2は口が渇いている!!】
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若いのに飲み込みにくいまとめ
ここまで、若い方の飲み込みにくい事柄についてお伝えしてきました。
若い方の飲み込みにくい事柄の要点をまとめると以下の通りです。
- 若いのに嚥下しにくい原因は、器質的原因・心理的原因・機能的原因など
- 嚥下障害の基準とは、唾液を30秒間で3回以上飲み込めるかなど
- 将来的な嚥下障害を予防する方法は、フェイストレーニングや口腔ケアなど
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。