ものを飲み込む際に胸が痛い場合、さまざまな原因が考えられます。
ときには重大な病気のサインの可能性もあります。
飲み込む際に胸が痛くなる原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
また、病院を受診するタイミングはいつなのでしょうか?
本記事では、飲み込むときに胸が痛い事柄について、以下の点を中心にご紹介します。
- 飲み込みで胸が痛いと感じる原因
- 飲み込むときに胸が痛む場合の対処法
- 病院を受診するタイミング
飲み込むときに胸が痛い事柄について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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飲み込み(嚥下)とは
飲み込みとは、食べ物などを口に入れて飲み込むまでの一連の動作のことです。
飲み込むという動作は、「嚥下」とも呼ばれます。
物の飲み込みがうまく行われない状態は、嚥下障害と呼ばれます。
代表的な症状には以下があります。
- 飲み込みのときにのどが痛い(嚥下痛)
- 飲み込んだものが気管に入ってむせやすい(誤嚥)
- 飲み込みのときに胸が痛い・違和感がある
嚥下障害にはさまざまな原因が考えられます。
飲み込みの際の胸の痛みの原因について、解説していきます。
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飲み込みで胸が痛いと感じる原因
飲み込みの際に胸が痛いと感じる原因は、大きく分けて4つあります。
それぞれ解説します。
自律神経の乱れにより喉の筋肉が収縮する
飲み込みで胸が痛いと感じる原因として、自律神経の乱れが考えられます。
自律神経は全身の器官・ホルモン分泌・筋肉の収縮などをコントロールする神経系です。
自律神経のバランスが崩れると、のどなど、全身の筋肉の収縮に異常が出やすくなります。
のどの筋肉が正常に動きにくくなるため、のどや胸が痛いと感じることがあるのです。
痛みのほかに、物を飲み込みづらくなるケースもみられます。
自律神経が乱れる原因としては、ストレス・疲労・睡眠不足などが代表的です。
胃酸が食道に逆流して炎症を起こしている
飲み込みで胸が痛いと感じる場合、逆流性食道炎が疑われます。
逆流性食道炎は、食べた物や胃酸が食道からのど元に逆流する状態です。
胃酸が逆流すると食道の粘膜が焼けるため、のど・胸が痛いと感じやすくなります。
胸の痛みに加えて、以下の症状がある場合は、逆流性食道炎の可能性が疑われます。
- げっぷ
- 口の中が酸っぱい
- 起床時の口中の苦み
食道の粘膜に傷がある
食道の粘膜に異常があると、飲み込む際にのど・胸が痛いと感じやすくなります。
代表的なのは咽頭炎などです。
咽頭炎はのどの粘膜が炎症を起こした状態で、いわゆる風邪にあたります。
粘膜が刺激に弱くなるため、食べ物と粘膜のささいな摩擦などでも痛みを感じることがあります。
食道がんも胸痛の代表的な原因です。
食道に腫瘍ができると、飲み込んだ食べ物とこすれて痛みを感じやすくなります。
冠動脈が動脈硬化を起こしたり収縮したりする
飲み込む際に胸が痛いと感じる場合、心臓に問題があるかもしれません。
代表的なものに狭心症・心筋梗塞などがあります。
狭心症は心臓の太い血管(冠動脈)が細くなり、一時的に心臓に血液が供給されなくなる状態です。
一方、心筋梗塞は冠動脈が詰まって、心臓の筋肉に血液が届かなくなる状態です。
いずれも心臓が酸欠を起こすため、強い胸の痛みを感じやすくなります。
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飲み込みで胸が痛いときの対処法
飲み込みの際に胸が痛いと感じる場合の対処法をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
ストレスを解消する
特に器質的な問題がみつからない場合、胸の痛みの原因はストレスの可能性があります。
胸の痛みを改善するには、ストレスを解消することが大切です。
より具体的には、ストレスを解消することで自律神経のリズムを整える必要があります。
自律神経が整うと、のどの筋肉の収縮が正常に行われやすくなります。
結果、胸の痛みの改善が期待できるのです。
ストレスを解消する方法としては、以下が代表的です。
- 質の良い睡眠
- 適度な運動
- 趣味(買いもの・旅行・芸術鑑賞・食事・仲間との会話)
- アロマテラピー
- ぬるま湯にゆっくり浸かる
- 規則正しい生活
脂質やアルコールを控える
胸の痛みの原因が逆流性食道炎の場合は、食べ過ぎに注意しましょう。
特に脂質・アルコール・柑橘類・甘い物・刺激物のとりすぎには注意が必要です。
刺激物とは、たとえばカフェイン・香辛料・炭酸飲料などが代表的です。
また、食後は少なくとも30分程度横にならないようにしましょう。
食後すぐ横になると、重力の負荷が少なくなり、食べたものが逆流しやすくなるためです。
腹圧がかからないようにする
逆流性食道炎による胸の痛みを改善するには、なるべく腹圧を下げることが大切です。
腹圧とは、外からお腹にかかる圧力のことです。
たとえば締め付けのきつい服装などは、お腹を圧迫するため腹圧が上がりやすくなります。
逆流性食道炎の方は、できるだけゆったりした服装を心がけてください。
また、逆流性食道炎の方は、重い荷物を持つのはなるべく避けましょう。
重いものを持つときは、身体に力が入り、瞬間的に腹圧が高くなりやすいためです。
腹圧を低くするには、肥満・猫背の解消も重要です。
すぐには肥満・猫背の解消が難しい場合は、寝るときの姿勢を工夫してみましょう。
具体的には、枕などを使って上体をやや高めに保ってください。
上体を高くして眠ると就寝中の逆流が起きにくくなるため、胸の痛みが改善されやすくなります。
原因となる病気を治療する
胸の痛みの原因が全身疾患の場合は、根本原因である疾患を治療することが大切です。
たとえば逆流性食道炎の方は、セルフケアとあわせて、消化器内科などでの治療を検討してください。
胸の痛みの原因が分からない場合は、まず検査を受けて原因を特定する必要があります。
胸の痛みに隠れた重大な病気を見逃さないためにも、医療機関で検査を受けてください。
胸の痛み・飲み込みづらさなどがある場合、診療科は内科・循環器内科・消化器内科などが適当です。
飲み込みで胸が痛いときに受診する目安
飲み込む際に胸が痛む場合、重大な病気のサインの可能性があります。
病気を見逃さないためにも、できれば医療機関で検査を受けましょう。
では、病院はどのタイミングで受診すべきなのでしょうか。
ここからは、飲み込みで胸が痛む場合の受診の目安をご紹介します。
一時的な痛みであれば様子をみる
胸の痛みが一時的であれば、重大な病気である可能性は低いといえます。
もし短時間で症状が落ち着いた場合は、少し様子をみてもかまいません。
ただし、胸の痛みが強烈な場合・気になる症状がある場合は、病院の受診を検討してください。
症状が3日以上続くときは受診しよう
症状が継続する場合は、病院の受診を検討すべきタイミングです。
具体的には、3日が目安です。
ただし、必ずしも受診まで3日待つ必要はありません。
たとえば症状が短時間で繰り返す場合・次第に強くなる場合は、念のため病院を受診してください。
理由は、狭心症などのおそれがあるためです。
診療科は消化器内科
飲み込む際に胸が痛む場合、診療科は消化器内科が適当です。
原因として、逆流性食道炎などの消化器系の疾患が疑われるためです。
飲み込み時以外にも胸が痛む場合は、循環器内科・心臓外科などの受診を検討しましょう。
ストレス・うつ症状などの精神的な不調を抱えている場合は、精神科・心療内科の受診も視野に入れてください。
激しく胸が痛い
胸の痛みが強烈な場合は、すぐに病院を受診してください。
理由は、心筋梗塞や狭心症などが疑われるためです。
たとえば胸痛に加えて以下の症状がある場合は、心疾患が強く疑われます。
- 動悸
- 息切れ
- 冷や汗
- めまい、など
心疾患が疑われる場合は、躊躇せずに救急車を呼んでください。
焼けるように胸が痛い
焼けるように胸が痛い場合は、すぐに医療機関を受診してください。
心筋梗塞や狭心症のほか、食道がんなどが疑われるためです。
いずれも重大な病気のため、くれぐれも放置はしないでください。
特に狭心症・心筋梗塞が疑われる場合は、すぐに救急車を呼んでください。
他の症状も出ている場合
胸痛に加えて次のような症状が出ている場合は、速やかに病院で検査を受けてください。
理由は、心筋梗塞などの心疾患が疑われるためです。
息切れ
息切れは、呼吸しづらいと感じる状態です。
たとえば次のような症状が該当します。
- 激しく運動した後のように、「ハアハア」と息が短くなる
- 空気を吸い込みづらいと感じる
- 呼吸の回数が増える
ふらつき
ふらつきとは、身体の動きに支障がでる状態です。
たとえば次のようなケースがふらつきに該当します。
- 立ち上がった瞬間にクラッとしためまいを感じる
- 足下がおぼつかず、まっすぐ歩けない
- 自力で身体をまっすぐ保つのが難しい
- 身体に力が入らない感じがする
動悸
動悸とは、自身の心拍を普段以上に意識する状態です。
たとえば次のようなものが該当します。
- 心臓がドキドキと早くなる
- 心拍がドクンドクンと大きく感じられる
- 心拍が「ドキッ」と詰まったり乱れたりする
胸の詰まり
胸の痛みに加えて、胸が詰まったような感覚に襲われることがあります。
代表的なケースは以下の通りです。
- 胸の中に大きな異物が詰まっている感覚がある
- 胸が押しつぶされているような感じがする
- 胸が詰まった感覚がして、息が吸いづらい
呼吸しづらさ
息切れの1種で、呼吸がしづらくなります。
たとえば次のようなケースが代表的です。
- 胸が詰まったような感覚がして、息が吸えない・吐きづらい
- 吸っても息が苦しい
- 呼吸が浅い
- 呼吸にあわせて「ゼーゼー」のような異音がする
上手く飲み込めない
唾液などがうまく飲み込めなくなることがあります。
あるいは、飲み込めるものの、のど・胸に痛みが出る場合もあります。
背中も痛い
胸に加えて背中に痛みがある場合、心筋梗塞や狭心症が疑われます。
背中だけでなく、みぞおち・のど・奥歯などに痛みが発生することもあります。
痛みの原因は、血液が届かなくなることで、心臓が酸欠を起こすためです。
症状の程度は個人差がありますが、痛みは強烈であることが一般的です。
飲み込みで胸が痛い場合に考えられる病気
飲み込む際に胸が痛む場合、なんらかの全身疾患が疑われます。
代表的な疾患をご紹介します。
咽喉頭異常感症
咽喉頭異常感症は、原因不明ののど・胸の異常な感覚です。
ハッキリした原因は分かっていませんが、一説ではストレス・精神的な不調が指摘されています。
咽喉頭異常感症では、飲み込みの際にのどや胸に痛み・異物感があらわれるのが特徴です。
症状は個人差がありますが、特に唾液の飲み下しに痛み・違和感を感じる傾向がみられます。
一方で、固形物の飲み込みはスムーズに行えることもあります。
咽喉頭異常感症による胸の痛みを改善するには、ストレスの発散・心身の休養などが大切です。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、食後などに、食べたものや胃酸が胃から食道に逆流する状態です。
胸の痛みが出る理由は、胃酸によって食道などの粘膜が損傷するためです。
胸の痛み以外の症状には、たとえば以下があります。
- 胸焼け
- 口の中が酸っぱい・苦い
- げっぷ
- 息が吸いづらい
- 痰・声の掠れ
逆流性食道炎の原因は、食道と胃の間にある弁(下部食道括約筋)が緩むことです。
特にリスクが高いのは、早食い・大食い・脂質過剰な食事の習慣がある方です。
食後すぐに就寝するという生活習慣の方も、逆流性食道炎が起こりやすくなります。
食道がん
食道がんは、食道に悪性の腫瘍ができる疾患です。
胸やのどに痛みが出る理由は、食べ物が食道を通過するときに腫瘍とこすれるためです。
腫瘍によって食道の粘膜が炎症を起こすことで、痛みが生じる場合もあります。
食道がんは、放置すると命を落とすこともあります。
以下のような症状がある場合は食道がんが疑われるため、病院を受診してください。
- 声のかすれ
- 咳
- 血痰
- 息苦しさ
- (特に固形物が)飲み込みづらい
狭心症
狭心症は、冠動脈が細くなって、心臓に十分な血液が行き渡らなくなる状態です。
心臓が酸欠(虚血)状態に陥るため、強烈な胸の痛みなどがあらわれやすくなります。
胸の痛み以外の狭心症の主な症状は次の通りです。
- 呼吸困難
- 動悸
- めまい
- 冷や汗
- 吐き気
- 腹部・背中の強烈な痛み
狭心症の症状は20分程度で治まることが一般的です。
症状が治まったからといって、放置するのはやめましょう。
狭心症は、放置すると心筋梗塞に発展する可能性があるためです。
狭心症の症状があらわれた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
飲み込みで胸が痛い場合まとめ
ここまで、飲み込みで胸が痛い事柄についてお伝えしてきました。
飲み込みで胸が痛い事柄の要点をまとめると以下の通りです。
- 飲み込みで胸が痛いと感じる原因は、ストレス・逆流性食道炎・食道がんなど
- 飲み込むときに胸が痛む場合の対処法は、ストレス解消・食後の逆流の防止など
- 病院を受診するタイミングは、痛みが強い場合や、3日以上症状が続く場合
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。