「物が飲み込みづらい」という場合、心身の異常が疑われます。
飲み込みにくさは重大な病気のサインの可能性もあるため、早めの受診が望まれます。
それでは飲み込みにくいと感じる場合、診療科は何科が適当なのでしょうか?
また、飲み込みにくさの原因にはどんなものがあるのでしょうか?
本記事では、飲み込みにくい場合、何科を受診すべきかについて、以下の点を中心にご紹介します。
- 飲み込みにくさに対応しているのは何科なのか
- 飲み込みにくい原因とは
- 飲み込みにくい場合の受診のタイミング
飲み込みにくい場合、何科を受診すべきかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
飲み込みにくいとは
食べ物・飲み物・唾液などが飲み込みにくいと感じる場合、嚥下障害が疑われます。
嚥下障害は、嚥下に支障が出る状態です。
嚥下とは、食べ物などを口に入れて飲み込むまでの一連の動作を指します。
嚥下には次の5つの段階があり、いずれかに問題が起こると嚥下障害に至ります。
- 先行期
- 準備期
- 口腔期
- 咽頭期
- 食道期
嚥下障害の主な症状は次の通りです。
- 食べ物などが飲み込みにくい
- のどや胸が詰まった感じがする
- のどや胸に不快感がある
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飲み込みにくいのは何科で受診?
食べ物が飲み込みにくいと感じる場合、病院は何科を受診すべきなのでしょうか。
何科を受診すべきかは、症状にあわせて選びます。
嚥下障害は、全身疾患・心理的ストレスなどによって引き起こされることが多いためです。
嚥下障害を引き起こす病気としては、たとえば扁桃炎・がん・うつ病などが代表的です。
全身疾患が原因で嚥下障害が起こっている場合、まず根本原因を治療する必要があります。
よって、何科を受診すべきか迷った場合は、飲み込みにくさ以外の症状を考える必要があるのです。
ここからは、嚥下障害に適した診療科と、対応する症状の例をご紹介します。
「何科を受診すればいいか変わらない」という場合の参考にしてください。
耳鼻いんこう科
次のような症状がみられる場合、耳鼻いんこう科の受診を検討してください。
- 飲み込みにくい
- 発熱
- のどの不調(痛み・違和感・腫れ)
- 耳の不調(痛み・聞こえにくい)
- 鼻の不調(鼻水・鼻づまり)
何科を受診すべきか迷う場合も、まずは耳鼻いんこう科を受診してみましょう。
耳鼻いんこう科は、のどのトラブル全般を受け付けているためです。
内科
次のような症状がある場合は、内科の受診が適当です。
- 飲み込みにくい
- 発熱
- のどの不調(痛み・違和感・腫れ)
- 耳の不調(痛み・聞こえにくい)
- 鼻の不調(鼻水・鼻づまり)
- 倦怠感などの全身症状
何科を受診すべきか迷う場合や、他の診療科での受診に気が引ける場合は、まず内科に相談するのも良い方法です。
心療内科
次のような症状がある場合、心療内科の受診を検討してください。
- 飲み込みにくい
- のどが詰まったような感覚
- のどがイガイガ・ザラザラする
- 声が出ない
嚥下障害は、身体ではなく心の問題で起こることもあります。
心の問題とは、たとえばストレス・うつ病・心身症などが代表的です。
飲み込みにくさに加え、精神的な不調を感じる場合は、心療内科を受診するのも1つの方法です。
呼吸器内科
のどのトラブルがある場合は、呼吸器内科を受診するのも良い方法です。
たとえば次のような症状がある場合は、呼吸器内科の受診を検討してください。
- 飲み込みにくい
- のどの不調(痛み・息苦しさ)
- 鼻の不調(鼻水・鼻づまり
- 胸の痛み
精神科
嚥下障害があり、かつ精神的なストレスに心当たりがある場合は、精神科の受診を検討しましょう。
精神科を受診する目安は、以下のような症状がある場合です。
- 飲み込みにくい
- のどの違和感(痛み・腫れ・圧迫感・ザラザラする)
- うつ症状(憂鬱・悲観的・イライラ・不眠・めまい・頭痛・食欲減退)
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飲み込みにくいときに考えられる病気
嚥下障害を引き起こす病気をご紹介します。
もし何科を受診すべきか迷ったときは、以下のような病気に心当たりがないかを考えましょう。
診療科を選ぶ助けになります。
急性扁桃炎
急性扁桃炎は、扁桃炎の1種で、急激に発症するのが特徴です。
扁桃炎とは、のどの奥にある扁桃腺の感染症で、いわゆる風邪と考えてかまいません。
扁桃炎では次のような症状があらわれることが多くあります。
- のどの痛み・腫れ
- 発熱
- リンパの腫れ
- 頭痛
- 関節痛
急性扁桃炎に心当たりがある場合、診療科は耳鼻いんこう科または内科が適しています。
扁桃炎
扁桃炎は風邪の1種です。
扁桃炎の中でも数が多いのは、急性扁桃炎です。
急性扁桃炎が悪化すると、扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍などに発展するおそれがあります。
咽頭炎
咽頭炎とは、咽頭の粘膜やリンパがウイルスなどに感染し、炎症を起こした状態です。
扁桃炎と同じく、風邪の1種に位置づけられています。
咽頭は、鼻孔から食道の入り口までの間のことで、鼻や口に近い器官です。
つまり咽頭はウイルスの侵入口に近い器官であるため、感染症のリスクが高いのです。
咽頭炎の症状としては、次が挙げられます。
- のどの痛み・違和感
- 発熱
- リンパの腫れ
- 倦怠感
- 耳の違和感・痛み
咽頭炎で何科を受診すべきか迷ったときは、耳鼻いんこう科または内科を受診してください。
急性咽頭炎
急性咽頭炎は、急激に発症する咽頭炎です。
咽頭炎の中でも比較的数が多いタイプです。
急性扁桃炎の症状は次の通りです。
- のどの痛み・違和感
- 嚥下痛
- 発熱
- リンパの腫れ
- 倦怠感
- 耳の違和感・痛み
特徴的なのは嚥下痛です。
嚥下痛とは、飲食物や唾液を飲み込むときに発生するのどの痛みです。
急性咽頭炎ではのどの粘膜が炎症を起こします。
そのため、飲み下す際の刺激などによって嚥下痛が発生しやすくなります。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、食後に胃酸・胃の内容物がのど元まで逆流してくる状態です。
主な症状は次の通りです。
- のどの違和感・痛み・腫れ
- 口の中が酸っぱい
- 胸が焼ける感覚
- 咳
- 声のかすれ
逆流性食道炎の診療科は、消化器内科が適しています。
何科を受診すべきか迷ったときは、まず内科に相談してもかまいません。
急性上気道炎
急性上気道炎は、鼻からのどにかけてウイルスなどに感染して炎症を起こした状態です。
いわゆる風邪に該当します。
急性上気道炎の主な症状は次の通りです。
- のどの痛み・違和感
- 嚥下痛
- 発熱
- リンパの腫れ
- 倦怠感
- 鼻水
- 咳
急性上気道炎が疑われる場合、診療科は耳鼻いんこう科が適当です。
何科を受診すればよいか迷う場合は、最寄りの内科に相談してみましょう。
扁桃周囲炎
扁桃周囲炎は、扁桃腺の周りが細菌感染によって炎症を起こした状態です。
多くの場合、急性扁桃炎などが悪化して起こります。
主な症状には以下のものがあります。
- のどの痛み・腫れ
- 嚥下痛
- 発熱
- 飲み込みにくい
- 耳の痛み
扁桃周囲炎の診療科は、耳鼻いんこう科または内科が適しています。
不安障害
不安障害は、さまざまな物事に対して過剰な不安・恐怖を感じる状態です。
些細なことに不安を覚え、日常生活に支障が出ている場合は、不安障害が疑われます。
不安障害には次のようなものが含まれます。
- 全般性不安障害
- パニック障害
- 社会不安障害
- 強迫性障害
不安障害の主な症状は次の通りです。
- 常に漠然とした不安・恐怖を抱えている
- イライラ・そわそわすることが多い
- 疲れやすい
- 頭痛・めまい
- 動悸
不安障害を発症すると、不安・恐怖などのストレスを感じやすくなります。
ストレスは嚥下障害の原因の1つです。
嚥下障害があり、精神的な不調を抱えている場合は、精神科や心療内科の受診を検討してください。
出典:厚生労働省【不安障害|こころの病気について知る】
扁桃周囲膿瘍
扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)は、炎症によって扁桃腺周辺組織に膿がたまった状態です。
扁桃周囲膿瘍は、多くの場合、扁桃炎などが悪化して起こります。
扁桃周囲膿瘍が重症化すると、膿の蓄積が喉・胸部にまで広がることもあります。
さらに重症化すると、死に至ることもあります。
扁桃周囲膿瘍の具体的な症状は次の通りです。
- のど・首・耳の激しい痛み
- 激しい嚥下痛・摂食障害
- 高熱
- リンパ節の腫れ
- 口臭
- よだれ
扁桃周囲膿瘍の診療科は、耳鼻いんこう科が適しています。
何科を受診すべきか迷う場合は、内科や呼吸器内科に相談するのも1つの方法です。
咽頭喉頭炎
咽頭喉頭炎はのどの感染症です。
具体的には、のどの粘膜が細菌などに感染して、炎症を起こした状態です。
咽頭喉頭炎の主な症状は次の通りです。
- のどの痛み・腫れ
- 嚥下痛
- 発熱
- 飲み込みにくい
- 耳の痛み
咽頭喉頭炎が疑われる場合、診療科は耳鼻いんこう科・内科が適当です。
飲み込みにくさを感じる原因
食べ物などが飲み込みにくい場合、原因として以下が考えられます。
原因 | 具体例 |
のど・食道の粘膜の炎症 | 急性扁桃炎・急性咽頭炎など |
のど・食道の内部が狭窄している | がん・ポリープ・異物 |
嚥下に関わる筋肉の異常 | 老化・パーキンソン病 |
嚥下をコントロールする神経系の異常 | 認知症・脳卒中 |
精神的なストレス | 咽喉頭異常感症 |
飲み込みにくいを医師に伝えるには
症状を医師に相談する際に、押さえておきたいポイントをご紹介します。
嚥下障害で受診を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
具体的な症状や特徴
まずは、どのような症状か自分でしっかり振り返りましょう。
具体的なポイントは次の通りです。
- 飲み込みにくい物(固形物・唾液など)
- 飲み込みにくいと感じるタイミング(食事のとき・唾液の嚥下など)
- 飲み込みにくさ以外の症状(頭痛・咳・鼻水・耳痛・発熱・吐き気・体重減少・ストレス)
症状によって、日常生活でどのような場面に支障をきたしているのかを伝えられるとベストです。
症状が出始めた時期
症状が出始めた時期を、なるべく正確に思い出しましょう。
もし症状が出始めたキッカケがある場合は、必ず医師に伝えてください。
症状が特に強くなる時間帯などがあれば、あわせて医師に報告してください。
症状の経過観察
症状の経過を医師に伝えられるとベストです。
たとえば悪化している・回復しているなどの情報を報告してください。
症状に波がある場合も、医師に伝えておきましょう。
服用している薬
常用している薬などがある場合は、医師に伝えてください。
嚥下障害は薬剤の副作用によって起こることもあるためです。
薬は処方薬・市販薬を問いません。
飲み込みにくいと感じたら早めの受診を
食べ物などが飲み込みにくいと感じる場合、できる限り早めに病院を受診してください。
理由は主に2つあります。
1つめは、嚥下障害は、がんなどの病気のサインの可能性があるためです。
飲みにくさを放置すると、重大な病気を見逃すおそれがあります。
2つめは、嚥下障害を放置すると食事に偏りが出るおそれがあるためです。
飲み込みにくさを感じると、固い食べ物などを敬遠しがちになります。
結果、栄養バランスに偏りが出てしまい、身体に不調をきたすおそれがあります。
栄養不良がもたらす不調とは、たとえば免疫力の低下・代謝の低下・疲労感などです。
また、筋力低下や骨粗鬆症が起こることもあります。
筋力低下や骨粗鬆症は転倒・骨折・寝たきりに発展する場合もあるため、注意が必要です。
出典:厚生労働省【口腔機能の健康への影響 | e-ヘルスネット】
飲み込みにくい:何科のまとめ
ここまで、飲み込みにくい場合、何科を受診すべきかについてお伝えしてきました。
飲み込みにくい場合、何科を受診すべきかの要点をまとめると以下の通りです。
- 飲み込みにくさには、耳鼻いんこう科・内科・呼吸器内科・心療内科・精神科など
- 原因には、扁桃炎などののどの炎症・がん・老化・認知症・ストレスなどがある
- 受診のタイミングは、できる限り早めがよい
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。