双極性障害は気分が高まる躁状態と気分が落ち込むうつ状態を繰り返す病気です。
躁状態を繰り返すことで周囲の人を傷つけたり、無謀な計画や買い物などを実行することでさまざまな日常生活への影響を与えます。
そして、うつ状態になると死にたくなるほどの重たい空気に押し潰されそうな気分になると同時に躁状態の自分に対して自己嫌悪を感じてしまい、より気分が落ち込むことがあります。
では双極性障害になるにはどういった原因や症状があるのでしょうか?
そして双極性障害の治療方法はあるのでしょうか?
そこで今回は双極性障害の原因と治療方法について以下の点を中心にご紹介します。
- 双極性障害の主な原因は?
- 双極性障害にはどういった治療方法があるの?
- 双極性障害とうつ病との見分け方は?
双極性障害の原因と治療方法について理解するためにもご参考頂けますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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双極性障害とは
双極性障害の特徴や分類について解説します。
双極性障害の特徴
双極性障害とは躁状態とうつ状態を繰り返す病気です。
躁状態にある患者は異常に気分が高まっており、うつ状態にある時は異常に気分が落ち込むという特徴があります。
どんな人でも幸せな気分や悲しい気分を感じることで気分が高まることや落ち込むことがあります。
しかし、双極性障害の場合はそうした気分への変化が行きすぎることで周囲の人との人間関係が崩れること・社会的信用を失う状態になりがちです。
I型とII型の違い
双極性障害には2つの種類があり、Ⅰ型とⅡ型に分けられ、主に症状の現れ方・症状の度合いによって別れています。
Ⅰ型は典型的な躁状態とうつ状態を交互に繰り返し、日常生活や仕事において正常に行動することが難しい状態です。
人間関係を良好に保つことができないので、入院による治療が必要です。
Ⅱ型は軽い躁状態とうつ状態を繰り返しており、入院するほどではないけれど実生活や人間関係を保つことなどが大変になりやすく、症状が軽度なので双極性障害だと気づかれない場合が多いです。
双極性障害の患者数
双極性障害の患者数は世界的に見ると100人に1人といわれており、国内では数十万人いるとされています。
人口500人の内1人は双極性障害にかかっているとされていますが、詳細な調査が行われていないのではっきりとしたことは分かりません。
しかし、双極性障害の患者の推移を見ると年々患者数が増えていることもあり、珍しい病気という訳ではないです。
うつ病との違い
双極性障害とうつ病は似たような病気と思われますがまったく違う病気です。
うつ病の場合は常に気分の落ち込み・やる気が出ない・眠れない・強い不安感など精神的にネガティブな状態が続くことが主な症状です。
しかし、双極性障害の場合はうつ状態と行き過ぎた気分の高まりである躁状態を交互に繰り返す病気で、最初に受診した際はうつ病として診断されることがあります。
しかし、その後躁状態が発覚した際や発症した際に双極性障害として診断されることが多いので、最初は気づきにくい病気であるというところがうつ病との違いです。
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双極性障害の発症原因
双極性障害の発症原因には下記のものがあります。
- ストレス
- 遺伝
順番に解説します。
ストレス
双極性障害の原因として挙げられるのがストレスです。
強いストレスを感じることで自律神経が乱れて脳の神経伝達物質に影響を与えることで発症する場合があるとされています。
しかし、双極性障害とストレスに関する因果関係ははっきりとした証明されていないので、あくまで可能性の1つとされています。
遺伝
もう1つの原因とされているのが遺伝です。
遺伝的な体質により、体内で作られるノルアドレナリンなど特定の脳の神経伝達物質が正常に調整できない状態となり発症するきっかけになっています。
しかし、こちらもはっきりとした因果関係は証明されていないのであくまで可能性の1つとされています。
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双極性障害は幼少期の影響が原因?
双極性障害の具体的な原因にはストレス・遺伝の可能性があると先ほど説明しました。
しかし、環境要因として幼少期の頃に経験した出来事がきっかけで発症する可能性があるとされています。
幼少期の場合、親と接する機会が1番多いので、例えば親を失うことや不適切な接し方などを経験することで子供は強いストレスを受けます。
そのため、大人になってから発症する場合や、小児の頃に双極性障害を発症するリスクがあります。
双極性障害の治療方法
双極性障害の治療方法は主に下記の3つです。
- 薬物療法
- 磁気刺激療法
- 心理社会的治療
薬物療法
双極性障害における薬物治療は主に気分安定薬・抗精神薬を服用します。
気分安定薬は躁状態とうつ状態の差をなるべく最小限にし、その状態を維持する効果があります。
日常的に服用する場合は気分安定薬を基本にしますが、躁状態・うつ状態が悪化した場合は即効性が強い抗精神薬を状況によって服用します。
磁気刺激療法
双極性障害におけるうつ状態が続く場合は磁気刺激療法を行うことで改善する場合があります。
磁気刺激療法とはうつ状態が悪化している人の頭にコイルを当て、コイルを通じて脳内に微量の電流を流すことで直接脳を刺激させる治療法です。
この治療法は体への負担やダメージも少なく、服薬療法で効果が無かった人のうつ状態を改善させる効果があります。
しかし、効果に関しては個人差もあり、うつ状態の再発予防などの効果についてはまだ未知数な部分もあります。
心理社会的治療
心理社会的治療とは双極性障害であることを受け入れた上で、病気に対する理解を深めつつ、対処方法を学ぶ治療法です。
基本的には薬物療法と並行して行われており、主に心理教育・認知行動療法の2種類が行われます。
心理教育は双極性障害という病気や治療で使われる薬の性質などについて理解することと同時に、症状の再発の予兆など自身で気づくこと・ある程度症状のコントロールをできるようになることを目標に治療を行います。
そして認知行動療法は、例えばうつ状態に陥りやすい自身の考え方や癖などを客観的な考え方やポジティブな考え方に切り替えることができる様にする治療法です。
更に睡眠を含めた生活リズムの乱れは躁状態・うつ状態の再発・悪化に繋がりやすいので、睡眠・生活リズムの安定化も治療の一環として行われています。
双極性障害の症状
双極性障害の症状は、うつ症状と躁症状で大きく違います。
うつ症状
うつ症状が見られる時の主な症状は以下の通りです。
- 気分が落ち込み、やる気が起きない
- 何をしても楽しめない
- 訳もなく疲れやすい
- 考えがまとまらない
- 自分には生きる価値がないと自分を責めてしまう
- かんたんな事でも決断力がなくなる
- 急に死にたくなる
- 食欲がでない
躁症状
躁症状にある時に見られる主な症状は以下の通りです。
- 睡眠時間が2時間以下でも活動的に動くことができる
- 人の話を聞かずに話し続ける
- 次々にアイデアが出てくる
- 段取りを組み立て計画的に行動することが難しい
- 自分が偉くなったと思い込んでいる
- すぐに気が散る
- ちょっとしたことですぐ怒りやすい
- 買い物やギャンブルに莫大な金額をつぎ込む
- 初対面の人にやたらと声をかける
- 性的に奔放になる
双極性障害の周期
双極性障害における躁状態・うつ状態が出現する周期は個人差により違いがあります。
最初の躁状態とうつ状態の間隔は大体4〜5年程度開くのが一般的ですが、治療をせずに悪化・再発を繰り返すと3年や2年と間隔が短くなり、最悪の場合は1年間の間に4回以上躁状態とうつ状態を繰り返す場合もあります。
この状態を急速交代型(ラピッドサイクラー)と言われ、病状が落ち着かないことから心身共に大きな負担が生じています。
双極性障害の認知度・理解度の割合
双極性障害はあまり一般的に知られていないことが多く、病気に対する理解度も低いのが実情です。
2013年日本イーライリリー株式会社で行われた双極性障害の一般市民における認知調査の結果、72.8%の人が双極性障害について「知らない」「聞いたことがない」と回答しています。
そして、調査を進めると、双極性障害の特徴である躁状態とうつ状態について、社会的に否定的な態度やネガティブなイメージを持たれつつ、躁状態に関しては病気として認識されにくいこともあるという結果も出ています。
さらに双極性障害のうつ状態に周りの人が気がついても、単なるうつ病と間違えられやすいこともあります。
このように病気に関する周りからの認知度・理解度が低いことで双極性障害の人への偏見や誤解を招くきっかけに繋がります。
そうなることで双極性障害を抱えた人は適切な治療やケアを受けられにくく、社会から距離を置かれることになり、病気の回復や改善・社会的な復帰もより厳しいものになるので注意が必要です。
参照:精神医学 55巻4号(2013年4月)双極性障害に関するインターネットによる認知度調査
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双極性障害の原因まとめ
ここまで双極性障害の原因と治療法についてお伝えしてきました。
双極性障害の原因と治療法をまとめると以下の通りです。
- 発症原因ははっきりとしたことはまだ分かっていないが、ストレス・遺伝などで脳の神経伝達物質の調整がうまくできないことで発症するとされている。
- 双極性障害の治療方法は薬物療法や磁気刺激療法・心理社会的治療の3つが代表的で、治療を行わないと躁状態・うつ状態の間隔が徐々に短くなり再発を繰り返す。
- 双極性障害は躁状態とうつ状態を交互に繰り返すことが特徴的で一般的なうつ病とは症状など違いがあり、病状の程度により型・Ⅱ型と分類されている。
- 双極性障害という病気は周りからの認知度・理解度が低いことなどもあり、誤解や偏見を招くきっかけとなる。
これらの情報が皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。