嚥下機能は加齢に伴って衰えてきます。
嚥下機能を維持することは、高齢になっても健康を維持するために大事なことです。
嚥下機能が低下する理由は何でしょうか?
嚥下機能を維持することは可能でしょうか?
本記事では嚥下おでこ体操について以下の点を中心にご紹介します。
- 嚥下の機能が低下する理由について
- 嚥下機能が弱ったらどうなるかについて
- 嚥下おでこ体操で嚥下機能を維持できる理由について
嚥下おでこ体操について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
嚥下とは
嚥下(飲み込み)とは口で飲食物を咀嚼したのち胃まで送り込む一連の動作を言います。
飲み込みは口、咽頭、喉頭の器官の筋肉や神経を連携して使って出来る動作です。
食べ物を口に入れてから嚥下するまでの過程は以下の5段階に分けられます。
- 先行期
- 準備期
- 口腔期
- 咽頭期
- 食道期
いずれかの過程で嚥下機能が低下して飲み込みが難しくなる症状を「嚥下障害」といいます。
飲み込みの力が弱まることの原因の多くは、加齢による筋力の低下で引き起こされます。
嚥下機能は、体操などのトレーニングを継続することで維持できます。
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嚥下の機能が低下する理由
嚥下の機能が低下する理由には以下のようなものが挙げられます。
それぞれの理由について説明します。
加齢で筋力が低下する
嚥下機能の低下の原因は、加齢により衰えた咽頭や喉頭の器官などの筋力低下によっておこります。
嚥下機能に関連する筋肉群には以下のようなものがあります。
【嚥下機能に関連する筋肉群】
関連する筋群 | 主な働き |
表情筋 | 口の開閉や食べ物を咀嚼するときの食塊の保持 |
咀嚼筋 | 食べ物を咀嚼する機能 |
舌骨上筋 | 開口や舌骨の挙上 |
舌骨下筋 | 甲状軟骨の挙上 |
舌筋 | 舌を動かし食塊を形成したり送り込み |
口蓋筋 | 軟口蓋の挙上 |
咽頭筋 | 咽頭の収縮 |
喉頭筋 | 喉頭の挙上 |
嚥下は関連する筋肉群の総合的な働きによって機能します。
加齢によって、どこかの筋力低下が起こるとバランスが崩れ、機能低下の原因となっているのです。
喉の位置が下がってくる
嚥下機能が低下する理由に加齢による喉の位置の降下があります。
喉頭(のどぼとけ)は、喉頭挙上筋によって吊り上げられています。
しかし、喉頭挙上筋が衰えると、喉頭の位置が下がり嚥下時の喉頭挙上が不十分になります。
喉頭挙上が不十分になると、食道入口の括約筋の機能低下も引き起こすのです。
食道入口の括約筋の機能低下は、喉頭閉鎖の不全とタイミングがずれる原因となります。
したがって喉の位置が下がることで食物が気管へ入り誤嚥を引き起こすことになるのです。
唾液の分泌量が減る
嚥下機能低下の理由の1つに、唾液の分泌量の減少があります。
唾液の分泌量は、加齢により減少していきます。
唾液の分泌量の減少は、口腔内に存在する細菌(病原性微生物)の増殖を促します。
増殖した細菌は唾液と一緒に気管や肺に流れ込み、誤嚥性肺炎のリスクを高めます。
高齢者の口腔ケアは、嚥下障害を予防するために、大変重要です。
口腔ケアには以下のような効果があります。
- 唾液の分泌活性化
- 口腔内の細菌の除去
- 食べ物の残りかす除去
- 誤嚥による肺炎の予防
嚥下反射が弱まる
嚥下反射が弱まると低下するのが嚥下機能です。
嚥下反射は、食べ物を口に入れてから嚥下するまでの咽頭期に起こります。
食べ物は嚥下反射という機能を使って食道へ送り込まれます。
嚥下反射が弱まる原因には以下のようなものがあります。
- 加齢による筋力低下(喉頭挙上や喉頭閉鎖に関わる筋力低下や咽頭収縮筋の収縮力低下)
- 脳血管障害による麻痺(脳梗塞や脳出血などによる麻痺)
- 神経筋疾患(筋萎縮性側索硬化症やパーキンソン病)
- 心理的な原因(神経性食欲不振症や認知症、うつ病など)
- 医原性の原因(薬剤の副作用、経管栄養チューブの影響、術後の合併症)
十分な咀嚼ができなくなる
高齢になって、十分な咀嚼ができなくなることも嚥下機能低下の理由の1つです。
咀嚼機能は、健全な口腔の運動機能によって維持されていますが、口腔の運動機能は以下の原因で著しく障害されます。
- 加齢による機能低下
- 脳血管疾患や神経筋疾患の発症による機能障害
運動機能の低下による咀嚼障害は、嚥下障害の悪循環を招くことになります。
つまり、咀嚼障害による嚥下障害が起こる
→食事量が減る
→低栄養状態
→さらなる嚥下障害
と、悪循環を招くのです。
私たちは、食事をするとき、無意識に咀嚼しています。咀嚼には、食べ物をかみ砕くこと以外にも、私たちの健康を守るためのさまざまな役割があります。咀嚼の役割や重要性は、どのようなものなのでしょうか。本記事では咀嚼について以下の[…]
嚥下機能が弱ったらどうなる?
嚥下機能が弱るとどうなるかについて以下の4点を挙げました。
それぞれの症状について紹介します。
誤嚥を起こす
嚥下機能が低下すると、「誤嚥」を起こしやすくなります。
誤嚥は、食道へ送られる食べ物や唾液が、空気の通り道である気道の方へ入り込むことです。
気道へ入っても、むせて咳き込む咳反射ができれば異物は気道から吐き出せます。
ところが嚥下機能が弱ってくると咳反射がうまく働かなくなり、異物を気道から排出できず誤嚥を起こすのです。
誤嚥が原因で肺炎になる
嚥下機能が弱って誤嚥を起こすと、「誤嚥性肺炎」を発症することがあります。
誤嚥性肺炎は、口腔内の細菌が食べ物や唾液と一緒に気管支や肺に入ることで起こります。
誤嚥した細菌が肺の中で炎症を起こす肺炎を誤嚥性肺炎といいます。
嚥下機能が弱っている方は口腔内に食べ物が残りやすいため細菌が繁殖しやすくなります。
定期的な口腔ケアは誤嚥性肺炎を防ぐために非常に重要になります。
むせて食事を食べづらくなる
嚥下機能が弱ると、食事中にむせて食べづらくなります。
食べ物を飲み込む咽頭期では、喉頭挙上が起こることで喉頭蓋が下がって気管を閉じます。
嚥下機能が弱ると筋肉が衰えて喉頭挙上が不十分になりむせるようになります。
喉頭挙上が不十分だと、気管がうまく閉じずに、食べ物が入りやすくなるからです。
食が細くなり全身の栄養状態が悪化する
嚥下機能が弱くなると食が細くなって全身の栄養状態も悪化して行きます。
食事中にむせたり誤嚥をしたりすると食事に疲れるようになり食事量が減ってきます。
食事量の減少は低栄養と脱水状態を引き起こします。
低栄養と脱水状態は、体全体に栄養不足をおこし、さらに嚥下機能を低下させるのです。
嚥下おでこ体操で嚥下機能を維持できる理由
嚥下おでこ体操で嚥下機能を維持できる理由を以下に3つ挙げました。
それぞれの理由について紹介します。
嚥下に関わる筋肉を増やす
嚥下おでこ体操の目的は、嚥下に関わる筋肉を増やすことです。
食べ物は咽頭へ送られてきたとき喉頭挙上という嚥下反射が起こり食道へ送られます。
嚥下おでこ体操では、特に喉頭挙上に関わる筋の筋力強化を主眼とします。
喉頭挙上という嚥下反射に関わる筋には以下のようなものがあります。
- 舌骨上筋群
- 舌骨下筋群
食道の入口が大きく開くように促す
嚥下おでこ体操は、喉頭挙上に関わる筋の筋力強化とともに食道入口部の開大も促します。
食道入口部の開大を促すことによって、食べ物の通過促進と咽頭部での残留を減少させます。
嚥下おでこ体操は喉頭の挙上や前方への移動の運動が低下している方に効果があります。
喉頭の運動機能が低下していると結果的に食道入口の開大が減少しているからです。
食事するための体の準備ができる
嚥下体操は食前に行うことで食事するための体の準備ができます。
嚥下に関わる筋肉を強化することで以下の効果が得られます。
- 嚥下をスムーズにする
- 食べ物の残留を防ぐ
- 誤嚥を防ぐ
嚥下おでこ体操は、運動効果に即時性があります。
食前に行うと、食道の入口を大きく開き食べ物の通過を良くし、食事がしやすくなります。
嚥下おでこ体操のやり方
嚥下おでこ体操のやり方を以下に紹介します。
おでこ体操|基本のやり方
おでこ体操の基本のやり方は以下の通りです。
おでこに手を当てて抵抗を加える
おでこ体操を始める前にまず姿勢をただしましょう。
正しい姿勢で顔は前を向いた状態で以下のようにします。
- おでこに手を当てる
- そのままの姿勢で手に抵抗を加える
おへそを覗き込むように強く下を向く
おでこに手を当てて抵抗を加えた状態で
- おへそを覗き込むように強く下を向く
- おでこを押している手に逆らうように喉に力を入れる
おでこ体操|持続訓練
具体的なおでこ体操のうちの持続訓練の方法です。
以下の体操を毎日1セット(回数:5〜10回)行います。
基本のやり方でゆっくりとおでこ体操する
基本のやり方で、ゆっくりと行います。
- おでこに手を当てて抵抗を加える
- おへそを覗き込むように強く下を向く
5つ数えながら持続して行う
5つ数えながらおでこを押している手に逆らうように喉に力を持続して入れます。
おでこ体操|反復訓練
具体的なおでこ体操のうちの反復訓練の方法です。
以下の体操を毎日1セット(回数:5〜10回)行います。
基本のやり方で1から5まで数える
基本のやり方の
- おでこに手を当てて抵抗を加える
- おへそを覗き込むように強く下を向く
を1回ごとに行います。
数える数字に合わせて下を向くように力を入れる
1回、2回と数える数字に合わせて下を向くように力を入れます。
嚥下おでこ体操の効果的なタイミング
嚥下おでこ体操の効果的なタイミングは以下の通りです。
朝昼夕の食前にするのが効果的
嚥下おでこ体操は即時効果が期待できるので朝昼夕の食前にするのが効果的です。
おでこ体操には嚥下をスムーズにしたり、食べ物が喉に残らないような効果があります。
食事前に嚥下おでこ体操すると
- 嚥下に関わる筋の筋力強化
- 食道の入口の開大
などが図られ、特に食道入口の開大は食べ物の通過を良くするという即時性があります。
嚥下おでこ体操は1日5〜10回行うのが良いでしょう。
スキマ時間も使って喉を鍛える
スキマ時間に喉を鍛える方法もあります。
特別な体操以外で歌ったりしゃべったり笑ったりすることも嚥下障害の予防になります。
大声で歌ったりしゃべったり笑ったりすることは口腔ケアの体操と同じ効果があります。
いずれも口や舌、喉など嚥下に必要な筋肉トレーニングになるからです。
その他の体操も取り入れてみよう
その他以下のような体操も取り入れてみましょう。
唾液腺マッサージ
食事前に以下の唾液腺をマッサージすることで、唾液の分泌活性化を促します。
- 耳下腺のマッサージ
- 顎下腺のマッサージ
- 舌下腺のマッサージ
舌体操
舌を動かすトレーニングも嚥下に必要な筋肉を鍛える効果があります。
舌を動かすトレーニングは以下の要領で行います。
- 舌をベーと出し、その後舌を喉の奥の方へ引く
- 口の両端をなめる
- 鼻の下、顎の先を交互に触るようにする
舌を動かすトレーニングは食事の前に無理のない範囲で継続して行いましょう。
パタカラ体操
パタカラ体操は喉を鍛えるトレーニングです。
「パ・タ・カ・ラ」と大声で繰り返し発声します。
大きく口を開けて舌や気管を動かして喉など嚥下に関わる筋肉を鍛えられます。
顎持ち上げ体操
顎持ち上げ体操も喉を鍛えるトレーニングになります。
顔を正面に向けて両手の親指を顎の下に入れます。
親指で顎の下を押し上げながら顔を下に向けて顎と親指を押し合います。
嚥下おでこ体操のまとめ
ここまで嚥下おでこ体操についてお伝えしてきました。
嚥下おでこ体操についての要点をまとめると以下の通りです。
- 嚥下機能の低下理由には加齢による筋力低下や喉の位置下降、唾液の分泌量減少、嚥下反射の弱体、不十分な咀嚼などがある
- 嚥下機能が弱ると誤嚥や誤嚥性肺炎の発症、むせなどで食事量が減少し全身の栄養状態が悪化する
- 嚥下おでこ体操は嚥下関連筋の強化、食道入口の開大、食前に体の準備ができるなど嚥下機能維持に効果がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。