低体温症という症状をご存じでしょうか。
放置しておくと、体調不良だけでなく、命の危険さえある症状です。
熱中症よりも死亡率が高い低体温症の原因とは何でしょうか。
本記事では低体温症の原因について以下の点を中心にご紹介します。
- 低体温症になる原因とは
- 低体温症になったときのリスクとは
- 低体温症にならないためには
低体温症の原因について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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低体温症とは
低体温症とは、内臓などの深部体温が35℃を下回る状態のことです。
低体温症は、冷え性とよく間違えられます。
冷え性は、指先など体感的には冷たいと感じますが、深部体温は正常です。
低体温症になると、さまざまな臓器が正常に働かなくなってしまいます。
意識を失う、もうろうとする、不整脈を起こすなど、ときには死に至ることもあります。
実際、厚生労働省の発表では、2017年の低体温症による死亡者は1,317人です。
同じくこの年に熱中症で亡くなった方は635人です。
熱中症よりも低体温症で亡くなる方が2倍以上いるのです。
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低体温症の主な原因
低体温症の原因はさまざまです。
とくに高齢になると重症化するリスクが高くなるため、注意が必要です。
低体温症の原因を知って、予防に努めましょう。
基礎代謝の低下
基礎代謝の低下が原因で低体温症になるケースも多くあります。
また、ストレスが原因になることもあります。
ストレスによって自律神経が乱れると、体温調節機能が正常に働かなくなります。
さらに、極度のダイエットや栄養不足になると、体温を高める働きが弱まります。
熱を発生させる筋力も落ちるため、とくに高齢者は注意が必要です。
外的要因
外的要因は、気温の低い環境に長時間さらされることによるものです。
人間の体は気温が下がると、体内の温度を上げようとします。
しかし、体温を一定に保持しようとする能力以上に体温が下がってしまうことで低体温症になります。
たとえば、十分な防寒装備をせずに登山した場合などは低体温症になる危険性があります。
家の中でも暖房が十分でなかった場合、低体温症の原因になります。
泥酔して、路上に寝てしまい低体温症が原因で命を落とすケースも珍しくありません。
内分泌疾患
甲状腺や下垂体、副腎といった内分泌腺の機能低下は、低体温症の原因になります。
たとえば、甲状腺ホルモンは、新陳代謝を促して熱を生む働きがあります。
そのため、甲状腺に何らかの疾患があると、体温が低くなってしまいます。
寒くて震えるのは体温を維持しようとする体の反応です。また、冷え性と低体温症には違いがあります。冷え性と低体温症は何が違うのでしょうか?低体温症が起こる原因にはどのようなものがあるでしょうか?本記事では低体温症について[…]
低体温症のリスク
低体温症になると、さまざまな症状が起こります。
体温が関わっているとは思えないような症状もあり、見逃されることも多いのが低体温症です。
症状を見逃さず、すぐに適切な処置を行いましょう。
主な症状
低体温症になると、体自身の防衛反応が働きます。
体温を上げようとして筋肉を震わせるため、強い震えが起こります。
うまく話すことができない、手足がスムーズに動かない、呼吸がゆっくりになるなどの症状も起こります。
低体温症では、免疫力の低下もみられます。
寒さにさらされ続けると体はストレスを感じ、ステロイドホルモンが分泌されます。
ステロイドホルモンによって、抗体の働きが鈍くなり一時的に免疫力が落ちてしまいます。
体温が下がれば下がるほど、細胞の働きも不活発になります。
消化吸収から新陳代謝、思考力まで多くの身体機能の低下がみられます。
段階ごとの変化
低体温症では、段階ごとに以下のような症状の変化があらわれます。
深部体温 | 症状 |
36.5~35℃ | 寒気 ふるえが始まる 手足の指の動きが鈍くなる 皮膚の感覚が麻痺してくる |
35~34℃ | ヨロヨロと歩くようになる 転倒しやすくなる |
34~32℃ | ふるえが少なくなる 歩くことができなくなる 呼吸が早くなり、意識障害を起こす |
30℃以下 | 意識低下 瞳孔散大 心室細動のリスクが高まる |
低体温症の予防方法
低体温症を予防するために、日常生活ではどのように注意すればよいのでしょうか。
運動
筋肉は体の熱を作るために必要です。
筋肉によって、基礎代謝がアップするので低体温症の予防に役立ちます。
有酸素運動であるウォーキングやストレッチ、ヨガなども筋肉を作るのに有効です。
筋トレは、週に2~3回行うと効果的です。
太もも、お尻といった大きな筋肉を鍛えることを意識し、スクワットなどを行いましょう。
体を温める
手軽だからとシャワーだけで済まさず、じっくりと体の深部まで温めることが大切です。
38~40℃くらいのぬるめのお湯にゆっくりと浸かると深部まで温めることができます。
また、体を冷やさないための服装にも気を配りましょう。
人間の体には「手首」「首」「足首」と首の付く部位があります。
ここは血管が集中しており、熱を放出しやすくなっています。
低体温症を予防するためには、とくに首部分を温めるような服装を心がけましょう。
食生活の改善
体を温める食生活も低体温症予防には欠かせません。
体を温めてくれる食材は、土の中で成長する根野菜です。
とくに根野菜のなかでも、ショウガは体を温める作用に優れています。
逆に体を冷やしてしまうのが、キュウリやナスなど夏野菜です。
体を温めてくれる食品と冷やしてしまう食品を知り、上手に低体温症を予防しましょう。
漢方療法
低体温症を予防・改善するためには、漢方薬による治療も有効です。
漢方では、体の冷えは「陽気不足」と考えます。
陽気不足を改善する漢方薬としては「朝鮮人参」「鹿茸(ろくじょう)」「黄耆(おうぎ)」などがあります。
代表的な漢方薬としては
- 十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
- 婦宝当帰膠(フホウトウキコウ)
- 参茸補血丸(サンジョウホケツガン)
- 海馬補腎丸(カイマホジンガン)
- 八味丸(ハチミガン)
などがあります。
生活習慣の改善
自律神経の乱れは、低体温症の原因になります。
規則正しい生活をすることによって、自律神経を整えるようにしましょう。
決まった時間に起き、決まった時間に寝ることは自律神経を整えるうえで重要なことです。
適度な運動をすることで質のよい睡眠を得ることができます。
規則正しい生活習慣を意識しましょう。
また、ストレスは自律神経の乱れの原因となります。
ストレスをためないように、自分なりのストレス解消法をみつけるとよいでしょう。
夏でも低体温症に注意
低体温症は、冬にばかり起こる症状ではありません。
油断をしていると夏でも低体温症になるケースがあります。
最近ではさまざまな場所で冷房が効いています。
食品スーパー、図書館、電車の中などです。
もともと冷え性の方や体力的な問題を抱える高齢者などは、夏でも低体温症の危険があります。
また、汗をかいたあとや雨に濡れたあとなど、そのままにしておくのも低体温症の原因になります。
気化熱によって肌の熱が奪われ、さらに風が吹くと急激に体温が奪われます。
夏だからといって、油断は禁物です。
最近の日本人は低体温症になりやすい?
1957年に発表された日本人の体温に関する報告は、平均で36.89℃でした。
およそ50年後の2008年には、平均で36.1℃になりました。
日本人の平均体温は、確実に低下傾向にあり、36℃以下の人は約30%もいるそうです。
体温の低下傾向には原因があります。
便利な生活になって、体を動かさなくなってしまったことによる筋肉量の低下です。
新陳代謝が低下し、熱を生み出す力が衰えてきたのが原因といえるでしょう。
そのほかの原因として、冷暖房の普及によって体温調節機能が鈍くなってしまうことがあげられます。
さらに社会構造が複雑化し、人間関係の悩みなどのストレスで自律神経が乱れてしまうことも原因となっています。
低体温症の原因まとめ
ここでは、低体温症の原因について紹介してきました。
その要点を以下にまとめます。
- 低体温症になる原因は基礎代謝の低下、気温の低下、疾患によるもの
- 低体温症になったときのリスクは体調不良、免疫低下、意識障害など
- 低体温症にならないためには運動、生活習慣の改善、体を温める習慣など
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。