食事をしたあと急にお腹が痛くなったり、吐き気がした経験はありませんか?
その症状はもしかすると、細菌やウイルスが原因の「食中毒」かもしれません。
では症状を抑えるために常備薬や市販の薬は効果があるのでしょうか?
本記事では食中毒と薬の対処について以下の点を中心にご紹介します。
- 食中毒に用いられる薬は?
- 食中毒には市販薬も効果があるの?
- 食中毒になった場合のセルフケア
- 食中毒での嘔吐物の処理方法
食中毒の薬の対処法について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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食中毒とは
食中毒とは、原因となる細菌やウイルス、有害な物質などが付着した食品を摂取することで起こる健康被害のことです。
一般的に「下痢」や「腹痛」、「発熱」や「吐き気」などの中毒症状があらわれます。
食中毒を起こす原因は細菌やウイルス、有害な微生物や化学物質のほかに寄生虫なども挙げられます。
その中でも食中毒の発症原因が多いのは大きく分けて「細菌」と「ウイルス」です。
「細菌性の食中毒」は梅雨時期や夏期など高温多湿な環境を好むため、とくに5月〜9月頃が増殖しやすくなります。
一方でノロウイルスをはじめとする「ウイルス性の食中毒」は、12月〜3月が増加傾向にあります。
これはウイルスが冬の乾燥した低温を好むためで、人から人へ感染するため飛沫や吐物の処理にも注意が必要です。
さらに「寄生虫」による食中毒もここ数年、増加傾向にあります。
魚貝類に寄生しているアニキサスなどが知られており、季節を問わず一年中感染が報告されています。
原因は冷凍や加熱が不十分であったり、アニキサスの幼虫が付着したまま刺身などで食べることにより発症します。
また「潜伏期間」は細菌やウイルスの種類によって異なります。
食べて数時間で腹痛を起こす場合もありますが、2〜3日経過してから発症することもあります。
これは、汚染された食べ物が食道や胃を通過し、腸内へ細菌が侵入するまでの時間を要するためです。
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食中毒に用いられる薬
食中毒になった場合に用いられる薬は、以下の3つ挙げられます。
解熱剤
解熱剤を簡単に言うと「熱さまし」です。
解熱剤は、熱を下げる効果や頭痛などの痛み止めとして用いられます。
市販薬としては「ロキソニン」や「イヴ」、「バファリン」などが多く知られています。
ご家庭でも突然の発熱に備えて常備薬として置いている方も少なくないと思います。
解熱剤を服用することで、一時的に熱を下げることができます。
したがって体力の消耗や倦怠感を抑えることができます。
しかしデメリットもあります。
発熱のメカニズムは、体内の細菌やウイルスと戦うための防御反応として熱が上がります。
そのため発熱してすぐに解熱剤を使用すると、体内の防御力を弱めてしまうことになります。
高熱が続くときは解熱剤は有効な薬ですが、安易に使用しない方が良い場合もあります。
整腸剤
食中毒に有効な薬には「整腸剤」と「正露丸」が挙げられます。
食あたりによる腹痛や軟便などの対処には「ビオフェルミン錠」などの整腸剤が良いでしょう。
荒れた腸内環境を整えるだけでなく、腸内の悪玉菌を抑制して善玉菌を活発にする成分が配合されています。
食あたりの下痢に有効な薬は「正露丸」といわれ、常備薬としても一般的に知られています。
カンゾウやチンピなどの数種類の生薬が配合され、腸の動きを止めずに腸内のバランスを整えます。
吐き気止め
吐き気止めの薬として知られているのが「ナウゼリン」や「プリンペラン」、「トラベルミン」などがあります。
ナウゼリンは、胃の働きが弱くなったときに、胃腸を整えるために服用する薬です。
妊婦の使用は禁止されていますので、つわり止めでの服用は厳禁です。
プリンペランも、胃腸の働きを整えて、吐き気を止める作用があります。
プリンペランは妊婦のつわり止めとしても使われています。
トラベルミンは、めまいからくる吐き気止めに用いられます。
慢性的なめまいは、内耳の三半規管や前庭器官の乱れに反応した自律神経からくる場合があります。
それらの吐き気を緩和して、消化器官を落ち着かせます。
メニエール病や乗り物酔いにも用いられます。
また、よく耳にする抗生物質(抗菌剤)は細菌性の食中毒に有効ですが、ウイルス性や寄生虫には効果がありません。
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食中毒で下痢止めを用いるのはNG
細菌が付着した食品を摂取することが原因で、胃腸炎を引き起こすのが食中毒です。
したがって体内に侵入した細菌を、いち早く排出する必要があります。
しかし下痢止めを使用してしまうと、腸内の運動を抑制してしまいます。
そのため原因の微生物や化学物質の排出を遅らせ、回復しにくくなることが考えられます。
このように細菌が体内にとどまると、重症化する可能性があります。
初期症状の下痢のときは薬で抑え込むのではなく、自然に排出させて様子をみたほうが良いでしょう。
しかし、数日たっても下痢が治まらなかったり、血便が出るなどの症状の場合は医療機関に受診しましょう。
食中毒は市販薬でも効果がある?
常備薬や市販の解熱剤をすぐに飲みたいところではありますが、ここで注意が必要です。
解熱剤を飲むことで、食中毒の症状が悪化する可能性があります。
前述したように発熱は、免疫細胞が体に侵入してきた細菌やウイルスと戦っている証拠です。
体温を上げて免疫機能を高めているのです。
しかし解熱すると、抵抗している力が弱くなり原因となる細菌やウイルスの排出が遅くなってしまいます。
薬の効果で熱は下がり一時的に中毒症状が治まったようでも、結果的に回復が遅くなる場合があるのです。
高齢者や乳幼児はとくに症状が悪化しやすいため、自己判断ではなく医療機関への受診が大切です。
食中毒になった場合のセルフケア
食中毒になった場合のセルフケアとして以下のことに気を付けましょう。
- 水分補給をする
- 吐きやすい体勢で休む
- 栄養をとる
【水分補給】
激しい下痢が続いた場合は、体内の水分が大量に奪われており脱水症状を起こす危険性があります。
まずは安静にして、こまめに水分補給をしましょう。
たとえば、
- 湯ざまし
- ほうじ茶
- 常温のミネラルウォーター
- スポーツドリンク
- 経口補水液
などの水分を少しずつとるようにすると良いでしょう。
【吐きやすい体勢】
吐き気があるときは、吐きやすく横向きになるのが良いでしょう。
楽な姿勢が良いですが、上向きでは嘔吐物が喉に詰まる可能性があります。
特に高齢者や小さな子供は注意が必要です。
【栄養をとる】
回復の兆しがみえて食事がとれるようになったら、消化吸収が良く腸への刺激がないものから食べましょう。
- 温かいうどん
- 柔らかいご飯
- おかゆ
- 野菜スープなど
常温や温かい状態のものを食べることが大切です。
回復期には栄養を補うため豆腐・納豆といった豆類、整腸作用が期待できるりんごやヨーグルトなども良いでしょう。
冷たいものや刺激のある辛いものは胃腸に負担がかかるため避けるようにします。
食中毒による吐瀉物の処理方法
吐瀉物(としゃぶつ)とは嘔吐や下痢で出された消化器の排出物のことです。
食中毒による吐瀉物の処理を行う際に、その方法が適切でないと二次感染につながる恐れがあります。
感染を広げないためにも、衛生面に十分に注意して行ってください。
食中毒の吐瀉物処理方法を以下にまとめます。
【必要なもの】
使い捨て手袋 | 次亜塩素酸ナトリウム |
マスク | ペーパータオル |
使い捨てのエプロン | 使い捨て雑巾 |
ビニール袋 | 新聞紙など |
- 手袋やマスク、エプロンを着用します。
- 次亜塩素酸ナトリウム0.5%の消毒液(※1)を用意します。
- ペーパータオルや雑巾を濡らし、嘔吐物や排泄物を上から覆います。
- 嘔吐物を中央に集めるように、ペーパータオルの上からすくい取りビニール袋に入れます。
- 再度、ペーパータオルで床や周辺をふき取ります。
- 消毒液を染み込ませた雑巾で、床の広い範囲をふき取り(2回)ビニール袋に入れます。
- 最後に次亜塩素酸ナトリウム液(0.1〜0.5%)でキレイに拭き上げます。
- 使用したペーパータオルや手袋、雑巾などは全てビニール袋に入れます。
- 新しい手袋をはめたら、汚れた洋服や下着などを取り替え、衣類は熱湯につけて消毒(※2)します。
(※1)6%の次亜塩素酸ナトリウムを使用して消毒液を作る場合:消毒液600ml(次亜塩素酸ナトリウム10ml+水590ml)
(※2)熱水消毒→85℃以上の熱湯に10分間漬け込む
家庭にある塩素系漂白剤でも同じように消毒液が作れます。
嘔吐物の処理に必要な0.1%濃度の消毒液の作り方は以下の通りです。
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使用した使い捨て手袋やエプロンなどはビニール袋に入れて密封します。
それらは「感染性廃棄物」として処理します。
嘔吐物が付着した衣類は熱湯消毒をしたあとは、通常の方法で洗濯します。
出典:厚生労働省「高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版」
食中毒の薬のまとめ
ここまで食中毒と薬についてお伝えしてきました。
食中毒と薬について要点をまとめると以下の通りです。
- 食中毒に用いられる薬は整腸剤や解熱剤などがある
- 食中毒には市販薬も効果はあるが、むやみに使用すると回復が遅れる可能性がある
- 食中毒になった場合のセルフケアは、まず水分補給をして安静にすること
- 食中毒での嘔吐物の処理方法は、衛生面に気を付け処理し、二次感染を防ぐ
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。