花粉症とは、スギやヒノキなどの花粉が原因で起こるアレルギー症状です。
花粉症の治療には薬物治療、漢方治療、手術などがあります。
では、花粉症に用いる漢方にはどのようなものがあるのでしょうか。
本記事では、花粉症と漢方について以下の点を中心にご紹介します。
- 花粉症に用いられる漢方とは
- 花粉症に漢方を用いるメリット・デメリット
- 漢方以外の花粉症の治療方法について
花粉症と漢方について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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花粉症とは
花粉症とは、スギなどの植物の花粉が原因で起こる季節性アレルギー性疾患の総称です。
主に鼻水などの鼻症状からなるアレルギー性鼻炎や目のかゆみなどのアレルギー性結膜炎があらわれます。
また、花粉皮膚炎といわれる皮膚症状が出ることもあります。
花粉症の患者数は増加傾向にあり、国民の約42.5%が花粉症に罹っているとされています。
とくに、全国の森林の18%を占めるといわれるスギによる花粉症の患者が多くなっています。
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花粉症に用いられる漢方
花粉症の治療に漢方を使用する場合、症状に合った改善策を選ぶことが大切です。
漢方の物差しとして、体を大きく分けて冷えているか、熱がこもっているかに分けます。
体の熱の状態を知ることで、冷ますべきか、温めるべきか判断できます。
そのため、症状を見極める上でポイントとなるのが、症状の寒・熱になります。
以下で花粉症に用いられる漢方についてみていきましょう。
葛根湯加川芎辛夷
鼻炎の症状は基本的に水のようなサラサラした鼻水で、寒症の症状から始まります。
寒症の症状とは、体が冷やされて症状が起きていることをいいます。
葛根湯加川芎辛夷は以下のような症状に効果があります。
- 鼻づまりが強い
- 無色~白色、少し粘り気のある鼻水
- お風呂など温まると、鼻づまりが軽減される
- くしゃみ、鼻水が治まっても鼻づまりだけが残る
- 慢性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)
葛根湯加川芎辛夷は、鼻づまりが強く、鼻がつまって鼻水が出てこないなどの症状がある方に効果が期待できます。
風邪薬でよく使用される葛根湯に生薬をプラスして、つらい鼻づまりの症状を改善する漢方薬です。
お風呂に入ると体が温まり楽になるのは、体が冷えているからだと考えられます。
そのため、体を温めてくれる葛根湯がベースの葛根湯加川芎辛夷を服用して治しましょう。
辛夷清肺湯
辛夷清肺湯は以下のような症状に効果があります。
- 鼻の乾燥感があり、鼻づまりが著しい
- 頭痛や鼻の痛み
- 匂いが分からない
- 鼻の熱感
- 粘り気のある濃い鼻水
- 黄色~緑色の着色した膿性の鼻水
- 慢性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)
辛夷清肺湯は鼻づまりがとにかくひどい、匂いがわからないなどの症状がある方におすすめです。
熱を冷ます効果に加えて呼吸器を潤す効果があり、乾燥がある鼻づまりに効果が期待できます。
荊芥連翹湯と同じく、蓄膿症や副鼻腔炎の改善にもよく使用される漢方薬です。
小青竜湯
小青竜湯は以下のような症状に効果があります。
- 水のようなサラサラした鼻水
- 無色透明な鼻水
- くしゃみが一日何度も出る
- 体が冷えるとひどくなる
- 朝起きてからしばらくひどい
- 花粉症の初期
小青竜湯は透明で水のようなサラサラする鼻水が止まらない方、ティッシュがいくらあっても足りない方などにおすすめの漢方薬です。
小青竜湯は花粉症の初期症状だけでなく、ホコリなどのハウスダストが原因で起こるアレルギー性鼻炎の改善にも効果が期待できます。
鼻風邪の改善にも効果的なため、花粉のピーク時はもちろん、寒くなってくる秋から冬にも身近にあると便利な漢方薬です。
越婢加朮湯
越婢加朮湯は鼻水を止める効果と鼻の粘膜の炎症を取る効果があります。
目のかゆみなども伴う場合におすすめの漢方薬です
また、発赤の強い湿疹や皮膚炎などの皮膚症状にも使われています。
病気の初期で、比較的体力のある方に向いている漢方薬です。
麻黄附子細辛湯
麻黄附子細辛湯は体を温めて鼻汁を止める効果があります。
体が冷えて免疫力が弱まっている方やだるさが強い時に適している漢方薬です。
麻黄附子細辛湯はエフェドリンを含んでおり、目が覚める副作用があります。
そのため、抗アレルギー薬の副作用である眠気を解消できます。
荊芥連翹湯
荊芥連翹湯は以下の症状に向いている漢方薬です。
- 粘り気のある濃い鼻水
- 黄色~緑色の着色した鼻水
- 鼻がつまって鼻水が出ない
- 頬~前頭部の痛みや頭重感
- 慢性化し、治りづらい
- ニキビやのどの炎症
- 花粉症の後期、慢性鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)
荊芥連翹湯は、ネバネバした粘り気のある鼻水や鼻炎が慢性化している方に効果が期待できます。
鼻粘膜の炎症がひどくなると鼻づまりもさらに悪化して、菌が繁殖しやすくなります。
そのため、鼻水の色も黄色や緑色に変化します。
荊芥連翹湯は熱を冷ましながら鼻炎を改善します。
慢性化した鼻炎の代表的な漢方薬で蓄膿症や副鼻腔炎、それに伴う中耳炎、慢性扁桃炎、ニキビなどにも幅広く使用されている漢方薬です。
花粉症に漢方を用いるメリット
花粉症に漢方薬を用いるメリットには以下のようなことがあります。
- 花粉症の予防薬としても服用できるものがある
- 眠くならず仕事や車の運転前にも安心して服用できる
- 体質改善で再発しにくい体へと導く
- 症状に対して即効性の期待ができるものもある
- 子供や高齢者にも対応できる
毎年、抗アレルギー薬などの薬で花粉症の症状を抑えている方は多いのではないでしょうか。
また、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬は副作用として眠気やだるさがあらわれます。
しかし、漢方薬は眠気やだるさなどの副作用が出にくい傾向にあります。
漢方薬は体質的な部分の改善が治療目的となります。
そのため、漢方薬を服用していくうちに花粉症に強い体へとなっていきます。
また、花粉症の方は約8割で体が冷えているといわれています。
花粉症と冷えは関連性があり、冷えを改善することで花粉症の症状も和らぐこともあります。
花粉症に漢方を用いるデメリット
漢方薬は副作用が少ないイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、体質などに合わないと漢方薬でも副作用が起きてしまいます。
小柴胡湯という漢方薬では、間質性肺炎の副作用が生じることがあります。
小柴胡湯は長引いた風邪などにも処方される漢方薬です。
漢方薬だからといって安心せずに服用することが大切です。
漢方以外の花粉症の治療方法
漢方以外の花粉症の治療方法には
- 薬物治療
- 手術
- 舌下免疫療法
などがあります。
それぞれ具体的にご紹介いたします。
薬物治療
花粉症の薬物治療には以下のような薬が使われます。
- 抗ヒスタミン薬
- 抗ロイコトリエン薬
- 鼻噴霧用ステロイド薬
花粉症の薬物治療では抗ヒスタミン薬がベースになります。
抗ヒスタミン薬はヒスタミンの働きを抑えて、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を抑えます。
また、花粉症の薬は眠くなりやすいといわれています。
しかし、眠気などの副作用が抑えられた第2世代抗ヒスタミン薬が発売されて、今では主流になっています。
抗ロイコトリエン薬はヒスタミンと同じようにアレルギー反応を起こすロイコトリエンの働きを抑制する薬です。
とくに血管を拡張させる働きがあるため、鼻づまりが強い時に使用します。
鼻噴霧用ステロイド薬はくしゃみ、鼻水などの鼻症状が強いときに使用します。
ステロイド薬は副作用が強いというイメージがある方もいるのではないでしょうか。
しかし、鼻噴霧用ステロイド薬は、鼻だけに効果があるため副作用が少ない傾向にあります。
手術
手術は鼻づまりの強い方に対して、鼻の粘膜を切除して小さくする手術が基本となります。
また、レーザー手術など入院しなくてもできる手術もあります。
レーザー手術は比較的簡単にでき、レーザーを鼻粘膜の表面に照射し、アレルギー反応を弱めます。
くしゃみや鼻水にも効果がありますが再発することもあります。
そのほか、鼻水を分泌する腺を刺激する神経を切除し、鼻水を止める手術もあります。
舌下免疫療法(減感作療法)
舌下免疫療法はアレルゲン免疫療法の1つです。
アレルギーの原因物質を少しずつ体内に吸収させて、アレルギー反応を弱めていく治療法です。
スギ花粉症とダニなどのアレルギー症状を根本的に治せる治療法となっています。
しかし、治療期間が3~5年と長期にわたるため、根気のいる治療法です。
花粉症に対する漢方の有用性
民間医療の内容は多岐にわたっています。
米国では薬草関連やカフェイン関連アロマ療法マッサージなどがあります。
民間医療とは、通常医師が医療機関において指導する医療以外の医療のことをいいます。
民間医療の多くは作用機序が科学的に検証されていないものとされています。
花粉症に対する漢方の有効率は患者さん自身の評価では40%以上も示されています。
しかし、多くの場合で20から30%以下の有効率でした。
民間医療の科学的評価についてはほとんど行われていません。
民間医療の科学的評価の方法が必ずしも簡単ではないこと、コストや時間がかかることが原因です。
毎年、花粉症の症状が強い方は、少しでも症状を感じたら早めに治療を開始するのがおすすめです。
花粉症と漢方のまとめ
ここまで、花粉症と漢方の情報を中心にお伝えしました。
要点を以下にまとめます。
- 花粉症に用いられる漢方には、葛根湯加川芎辛夷、辛夷清肺湯、小青竜湯など
- メリットは、眠気などの副作用が起きにくい、デメリットは体質に合わないと副作用がでる
- 漢方以外の花粉症の治療方法には、薬物治療、手術、舌下免疫療法
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。