ヒートショックは冬場のお風呂場で起こりやすい事故です。
ですが、実はヒートショックは、自律神経と深い関わりがあります。
本記事では、ヒートショックと自律神経について以下の点を中心にご紹介します。
- ヒートショックと自律神経の関係
- 自律神経を整えるには
- ヒートショックを起こしやすい人
ヒートショックと自律神経について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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ヒートショックとは
ヒートショックは、急激な気温差によって血圧が変動し、危険な症状が出る状態です。
ヒートショックは、ときに命を脅かすこともあります。
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ヒートショックと自律神経の関係
ヒートショックは自律神経と深い関わりがあります。
そもそもヒートショックとは、血管が収縮することで血圧が乱高下するために起こります。
血圧の急激な変動は、めまい・立ちくらみ・失神などを引き起こします。
あるいは、血管が破れたり詰まったりして、心筋梗塞・脳卒中に至ることもあります。
では、なぜ血圧の変動=血管の収縮が急激に起こるのでしょうか。
原因の1つが、気温差による自律神経の乱れです。
自律神経は血管の収縮をコントロールする神経系です。
たとえば気温の高い場所では、自律神経は血管を拡張させることで体温を下げます。
なぜ血管が拡張すると体温が下がるのかというと、血流の表面積が大きくなって気化熱が発散されやすくなるためです。
反対に、気温の低い場所では血流からの気化熱を抑える必要があります。
自律神経は、血管を収縮させて血流の表面積を小さくします。
気温差が大きすぎる場所を頻繁に行き来を繰り返すと、自律神経も体温を頻繁に調整しなければなりません。
具体的には、自律神経は血管を慌ただしく収縮・拡張させます。
自律神経によって血管の収縮・拡張が繰り返されると、伴って血圧も大きく変動します。
結果として、めまい・心筋梗塞・脳卒中のようなヒートショックに至るというわけです。
ヒートショックを起こさないためには、血圧の変動=血管の急激な収縮を防ぐ必要があります。
つまり、血管の収縮を制御している自律神経を守ることが大切なのです。
自律神経の改善方法
ヒートショックのリスクを下げるには、日頃から自律神経の働きを良くしておくことが大切です。
自律神経を改善する方法をご紹介します。
睡眠
質の良い睡眠は自律神経と整える作用が期待できます。
質の良い睡眠は、交感神経を穏やかにし、副交感神経を高めるのに役立つためです。
交感神経と副交感神経は、ともに自律神経を構成する神経系です。
自律神経は、交感神経と副交感神経が交互に入れ替わることでバランスを保っています。
交感神経は身体にエンジンをかける神経系で、主に日中・緊張時・興奮時に活性化します。
副交感神経は身体にブレーキをかける作用があり、主に睡眠中・リラックス時に活性化します。
自律神経が乱れている方は、副交感神経の働きが弱まっていることが多いです。
そのため、自律神経を整えるには、副交感神経を活性化させることが大切です。
副交感神経を活性化させる方法の1つが質の良い睡眠です。
理由は、副交感神経が睡眠中に優位になるためです。
副交感神経を活性化させるためにも、日頃から質のよい睡眠を意識しましょう。
具体的なポイントは次の通りです。
- 就寝・起床時間を一定にする
- 食事・入浴・運動は就寝2時間前に済ませる
- 就寝1時間以内はブルーライトは使用しない
- 寝具・寝室の気温を心地よく整える
入浴
自律神経を整えるには入浴もおすすめです。
入浴すると副交感神経が活性化しやすいためです。
入浴で身体を温めると、血管が拡張されて血行が促進されます。
血行の促進は副交感神経を優位にする作用があります。
自律神経を整えるためにも、できれば湯船にゆっくり浸かりましょう。
次のようなポイントを意識すると、さらに高い自律神経改善効果が期待できます。
- ぬるま湯(37~40度程度)に浸かる
- 20~30分程度浸かる
入浴は就寝の2時間前を目安に行うのがおすすめです。
ちょうど就寝時間に体温が下がりやすくなるため、スムーズな寝付きを期待できます。
サウナ
サウナも自律神経の改善に期待できます。
サウナでは、熱いサウナ室と冷水風呂を行き来します。
すると血管の収縮・拡張が促進されるため、自律神経が刺激されてバランスが整いやすくなります。
ただし、サウナはヒートショックの原因になることもあるため注意してください。
気温差による血管の収縮・拡張は、まさにヒートショックの原因です。
心臓病がある方・生活習慣病がある方などは、特にヒートショックのリスクが高いです。
ヒートショックを回避するためにも、サウナの是非についてはかかりつけ医に相談してください。
また、サウナでのヒートショックを防ぐにはこまめな水分補給も重要です。
水分不足で脱水症状に陥ると、血液がドロドロになりやすいためです。
血行が悪くなると、脳や心臓が酸欠を起こして、重大な症状があらわれやすくなります。
ヒートショックの原因と症状
ヒートショックの原因は気温差です。
具体的には、気温差によって血管が過剰な拡張・収縮を繰り返すことで、さまざまな症状があらわれます。
ヒートショックの主な症状には次があります。
- めまい・たちくらみ
- 失神
- 頭痛
- 心筋梗塞
- 脳卒中
軽度のヒートショックの主な症状は、めまい・たちくらみです。
原因は、血管の収縮によって血行が阻害され、脳が一瞬酸欠を起こすことです。
脳の酸欠がひどくなると、ひどい頭痛・失神に至ることもあります。
あるいは、過度な収縮によって負担がかかり、血管が破れたり詰まったりすることもあります。
脳や心臓の血管が破れる・詰まるなどすると、脳卒中・心筋梗塞が起こります。
ヒートショックが起きやすい条件
ヒートショックが起きやすいのは、急激な気温差が起こったときです。
特に10℃以上の気温差が生じるときは注意しましょう。
- 【ヒートショックが起きやすい移動の例】
冬の入浴:28℃のリビング→15℃の脱衣所→40℃のお風呂に浸かる
冬のトイレ:28℃のリビング→18℃のトイレ→7℃の便座に座る→リビングに戻る
ヒートショックは風呂場の事故として有名ですが、トイレでも起こりやすいです。
特に排便では、息むときに瞬間的に血圧が高くなるため、ヒートショックのリスクが高まります。
ヒートショックを起こしやすい人は?
ヒートショックが起こりやすい方の特徴は次の通りです。
- 生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常症など)がある方
- 心疾患(心筋梗塞・不整脈)の経験がある方
- 脳卒中の経験がある方
- 飲食後すぐに入浴する方
- 熱いお風呂が好きな方
生活習慣病の方は動脈硬化を併発している方が少なくありません。
動脈硬化になると、血圧の変動に耐えきれずに血管が破れたり詰まったりすることがあります。
心疾患や脳卒中の経験がある方も、ヒートショックのリスクが高いです。
また、飲食直後に入浴する方もヒートショックに注意してください。
ヒートショックの予防策
ヒートショックの予防策をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
入浴のポイント
入浴時はヒートショックが起こりやすいタイミングです。
ヒートショックを予防するためにも、ぜひ次のポイントを実践してみてください。
お風呂の温度
ヒートショックを予防するには、お風呂はぬるま湯が望ましいです。
具体的には、湯温を38〜40℃程度に設定しましょう。
ぬるま湯に浸かると、急激な体温上昇を防げるため、血圧への負担も小さくなります。
反対に熱湯での入浴は、体温の急上昇と血圧の変動を招きやすくなります。
湯船に浸かる前に、しっかりかけ湯をすることも大切です。
かけ湯は、足・手・腰・肩のように、心臓から遠い場所から順番に行ってください。
入浴の際は浴槽に浸かる時間にも注意しましょう
目安は10分程度です。
長時間の入浴は、体温の上昇を招くためです。
家族の在宅中に入る
入浴は、できれば家族の在宅中に行いましょう。
たとえヒートショックが起こっても、すぐに対応してもらえるためです。
反対に、1人での入浴中にヒートショックが起こると、取り返しのつかない事態になることがあります。
たとえば湯船の中で失神し、溺死するケースは少なくありません。
不慮の事故を避けるためにも、すぐに誰かが駆けつけられる状態での入浴がベストです。
家族の方も、ヒートショックのおそれがある方がお風呂に入っているときは、浴室の音に耳を澄ませてください。
長い時間物音がしない場合は、遠慮せずに浴室の様子を確認しましょう。
物音の有無にかかわらず、定期的に声かけをするのも有効です。
特に高血圧や全身疾患がある方は、入浴前に家族に一声掛けてからお風呂に入るようにしましょう。
飲食直後を避ける
飲食後は最低でも1時間程度時間を空けてから入浴しましょう。
飲食直後の入浴は血圧の急変動が起こりやすいためです。
飲食後は、消化のために血液が胃腸に集中するため、血圧が低くなっています。
一方、お風呂に入ると身体は体温を下げようとして血管を拡張させます。
つまり、ただでさえ低い血圧がさらに低くなるおそれがあります。
血圧が極端に下がると、全身に血液が循環しにくくなるため、めまいや失神などの症状が起こりやすくなります。
ゆっくりと立ち上がる
浴槽から出るときは、ゆっくり立ち上がるようにしましょう。
急に立ち上がると、血圧の調整が間に合わなくなることがあるためです。
お風呂に浸かっている間は血管が拡張するため、血圧は低くなります。
血圧が低い状態で立ち上がると、とっさに血流が脳にのぼらないことがあります。
つまり脳が酸欠を起こすため、めまい・たちくらみなどが起こりやすくなります。
最悪の場合は失神し、湯船で溺死するおそれもあります。
トイレのポイント
トイレもヒートショックが起こりやすい場所です。
トイレでのヒートショックの予防方法をご紹介します。
いきみ過ぎない
排便時などに、過度にいきむのは止めましょう。
いきむと、身体に力が入るため、瞬間的に血圧が上がります。
続いて、排便後には血圧は一気に下がります。
つまり短時間で血圧が乱高下するため、ヒートショックが起こりやすくなります。
排便時にいきまないようにするには、普段からの便秘対策も大切です。
便秘対策としては、次のような方法があります。
- こまめな水分補給
- 食物繊維を積極的に摂る
- 善玉菌の多い発酵食品を多く摂る
ゆっくりと立ち上がる
トイレから立ち上がるときは、ゆっくりした動作を心がけましょう。
いきなり立ち上がると、脳に血流が届かず、めまいやたちくらみが起こることがあります。
場合によっては、そのまま転倒して頭を打ちかねません。
転倒のおそれが高い場合は、トイレ内に手すりをつけるなどの対策が必要です。
ちょっとした外出のポイント
ヒートショックは室内・室外の行き来で起こることもあります。
特に室内外の気温差が大きくなる真夏・真冬は、ヒートショックに注意してください。
具体的には、体温の急激な変化を防ぎましょう。
夏場であれば、室内を冷やしすぎないことで、屋外との気温差を小さくできます。
冬場は、しっかり防寒をして出かけてください。
たとえゴミ捨てのようなごく短時間の外出でも油断は禁物です。
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シャワーより大切なHSP入浴法
お風呂はヒートショックが起こりやすいタイミングです。
しかし、かといって湯船につからないのは、健康に良くありません。
お風呂に浸かることは、血行を良くしたり、疲労を回復させたりする効果が高いためです。
さらに入浴では、HSPが作られることも分かってきました。
ここからは、HSPを作るための入浴法をご紹介します。
HSPとは?
HSPはヒートショックプロテインの略です。
プロテインとは、たんぱく質のことです。
HSPは細胞の損傷を修復する作用があります。
より具体的には、免疫力アップなどに役立ちます。
HSPは身体に熱が加わることで合成されます。
HSPの合成方法としては、たとえば入浴などが代表的です。
HSPの作り方
HSPを効率的に作るには入浴がおすすめです。
HSPを作るための入浴方法を詳しくみていきましょう。
準備するもの
HSPを作るうえで大切なのは、体温調節です。
体温を測るためにも、体温計を準備しておきましょう。
舌下式の体温計は、身体が濡れていても使えるため便利です。
入浴中は時間計測も行うため、時計やタイマーがあると良いでしょう。
水濡れによる故障を防ぐためにも、浴室に持ち込む機器は防水仕様のものにしてください。
あるいは、ジッパー付きの袋などに入れておくのもおすすめです。
HSPが作られはじめる体温
HSPは体温が38℃になると作られ始めます。
ただし、一気に体温を38℃にあげるのはヒートショック予防の観点から望ましくありません。
体温をあげるには、まずぬるま湯に入り、徐々に湯温を上げていく方法が有効です。
最初の湯温は38〜40度が目安です。
湯温を徐々にあげ、42℃にまで持って行きましょう。
入浴中はこまめに体温を計測し、38℃になっているか確認してください。
体温が38℃になった状態で10分間入浴を続けると、HSPの合成が期待できます。
湯温が下がると体温も下がるため、お湯を冷まさないような工夫をしてください。
たとえば顔だけだして蓋をすると、お湯が冷めるのを防ぎやすくなります。
入浴後のポイント
HSP合成のためには、入浴後もできるだけ体温を維持することが大切です。
大きめのバスタオルで身体を包むなどして、保温に努めましょう。
大量の汗が出やすいため、こまめに水分補給をしてください。
ただし、冷たい飲み物は体温を急激にさげるため控えてください。
15分間ほど体温を保持できれば、HSPが十分に合成されている可能性が高いです。
一度合成されたHSPは、2日目に効果のピークを迎えます。
その後、HSPは徐々に減少して4日~7日ほどで消えます。
つまりHSPを持続的に体内に留めるには、HSP入浴法を1週間に2回程度行うのが理想的です。
HSPの効果
HSPの効果は、損傷した細胞の修復です。
特に免疫細胞の修復・活性化を期待できます。
免疫細胞が活性化すると、免疫機能がアップするため感染症にかかりにくくなります。
さらに免疫細胞の活性化は、副交感神経を優位にする効果も期待できます。
簡単にいえば自律神経のバランスが整いやすくなるため、ヒートショックの予防につながります。
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高齢者の不慮の溺死事故の発生状況
厚生労働省によると、毎年3万人の高齢者が不慮の事故で亡くなっています。
なかでも大きな割合を占めるのは「不慮の溺死及び溺水」です。
ここからは、高齢者の不慮の溺死・溺水の実態をご紹介します。
不慮の溺死事故の死亡者数
消費者庁のまとめを参考にします。
【高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による発生場所別死亡者数(令和元年)】
- 家及び居住施設の浴槽 における死亡者数:71%
- その他の場所での不慮 の溺死及び溺水:29%
高齢者の溺死・溺水の7割は屋内で起こっていることが分かります。
不慮の溺死事故の発生月
高齢者の不慮の溺死及び溺水件数が多い月数のトップ5は次の通りです。
- 1位:1月(937件)
- 2位:12月(737件)
- 3位:2月(624件)
- 4位:3月(509件)
- 5位:11月(458件)
特に冬場に集中していることが分かります。
冬場はヒートショックが起こりやすい季節でもあります。
不慮の溺死事故の年齢・男女比
不慮の溺水による死亡者数を年齢・男女別に以下の表にまとめました。
死亡者数/人口10万人 | ||
男(人) | 女(人) | |
65‐69歳 | 5.7 | 2.5 |
70‐74歳 | 10.1 | 6.1 |
75‐79歳 | 18.0 | 15.8 |
80‐84歳 | 27.1 | 23.1 |
85‐89歳 | 41.5 | 26.8 |
90歳以上 | 52.7 | 23.4 |
溺死による死亡者数は、年齢が上がるほど増えていることが分かります。
男女別にみると、溺死者数は全年代で女性より男性が多くなっています。
溺水の原因がすべてヒートショックとは限りません。
ただし、ヒートショックが起こりやすい冬場に溺死・溺水が多発しているのは事実です。
不慮の事故・死を避けるためにも、日頃からヒートショック予防に努めることが大切です。
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ヒートショックと自律神経のまとめ
ここまでヒートショックと自律神経についてお伝えしてきました。
ヒートショックと自律神経の要点を以下にまとめます。
- ヒートショックは、血管の収縮・血圧を管理する自律神経の乱れで起こると考えられている
- 自律神経を整えるには、睡眠・入浴などが有効
- ヒートショックを起こしやすい人は、基礎疾患がある方など
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。