歯周病と認知症はともに患者数が多い病気として有名です。
実は近年の研究で、歯周病と認知症は深いかかわりがあることが分かりました。
歯周病と認知症の関係とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
本記事では、歯周病と認知症について以下の点を中心にご紹介します。
- 歯周病と認知症の関係とは
- 歯周病を改善した場合の認知症への影響
- 歯周病を予防するためのポイント
歯周病と認知症について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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歯周病とは
歯周病とは、細菌の増殖によって歯肉に炎症が起きた状態です。
細菌が増殖しやすい場所は、歯と歯茎の間です。
歯周病の主な症状は次の通りです。
- 歯茎の赤み
- 歯茎の腫れ
- 歯茎からの出血
- 歯がぐらぐらする
- 口臭
歯周病が重症化すると、歯茎や顎の骨が溶けて、歯が抜けることもあります。
出典:厚生労働省【歯周病 | Teeths | e-ヘルスネット(厚生労働省)】
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認知症とは
認知症とは脳細胞の壊死によって認知機能が著しく低下した状態です。
認知症にはさまざまな種類があります。
- アルツハイマー型認知症
- レビー小体型認知症
- 血管性認知症
- 前頭側頭型認知症
あらわれる症状は認知症のタイプ・個人の性格などによって異なります。
一般的には次のような症状があらわれます。
- 記憶障害
- 理解力・判断力の低下
- 見当識障害(時間・場所・人が分からない)
- 遂行機能障害(物事を順序立てて実行できない)
出典:厚生労働省【認知症|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省】
30歳以上の約70%がかかっているといわれているのが歯周病です。歯ぐきの腫れや出血が気になるという方は、歯周病にかかっているかもしれません。歯周病は、口だけでなく全身の病気に関わる怖い病気です。本記事では歯周病について以下の[…]
なぜ歯周病は認知症と関係があるのか
近年の研究で歯周病は認知症を悪化させる要因であることが分かってきました。
特に歯周病と関係が深いのはアルツハイマー型認知症です。
アルツハイマー型認知症の原因として、脳へのアミロイドβの蓄積が指摘されています。
アミロイドβとは異常なタンパク質です。
脳に過剰なアミロイドβが溜まると、脳神経細胞が破壊されます。
脳神経細胞の破壊が広がると、脳機能が徐々に低下して認知症に至ります。
歯周病菌はアミロイドβの合成・蓄積を促進する作用があることが分かりました。
具体的には、歯周病菌は血流に乗って脳に到達し、アミロイドβが脳細胞に結合しやすい環境を整えます。
つまり歯周病菌の保有者は、非保有者に比べるとアミロイドβが脳に蓄積しやすいのです。
結果として、アルツハイマー型認知症になりやすいというわけです。
ちなみに歯周病菌は、認知症だけでなく、他の疾患リスクを高めることも分かっています。
歯周病菌が誘発しやすい全身疾患としては次が代表的です。
- 糖尿病
- 誤嚥性肺炎
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
歯周病を改善すれば認知症も改善される
歯周病は認知症を悪化させる原因の1つです。
実際に歯周病で失った歯の本数が多いほど、認知症になりやすいと指摘されています。
裏を返せば、歯周病を予防・改善することで認知症の悪化を防げる可能性があります。
歯周病は認知症以外の全身疾患とも深いかかわりがあります。
脳だけでなく身体全体の健康を守るためにも、歯周病はしっかり治療することが大切です。
歯周病は病気以外の面でも健康寿命とかかわりがあります。
たとえば歯周病によって歯が抜けると、食事・会話などがままならなくなることがあります。
食事・会話は生きていく上での楽しみの1つです。
楽しみが減ってしまうと、生きる気力が失われやすくなります。
さらに歯が抜けて食事をしっかり噛めなくなることは、消化器官への負担につながります。
具体的には、消化不良・胃もたれ・逆流性食道炎などが起こりやすくなるのです。
歯周病はさまざまな面から心身の健康を脅かします。
身体・心の健康を保つためにも、歯周病は早期に発見・治療することが大切です。
歯周病予防のポイントとは
歯周病を予防するための最大のポイントは、歯にプラーク(歯垢)をつけないことです。
プラークとは歯と歯茎の間にできる汚れの塊です。
歯周病菌はプラーク内で増殖を繰り返しながら、歯と歯茎の間に炎症を広げていきます。
歯周病を予防・改善するには、歯周病菌の巣であるプラークを取り除く必要があります。
具体的には丁寧な歯磨きを心がけましょう。
ただし、プラークは大きくなるとセルフケアでは除去が難しくなります。
歯磨きで取り除けないプラークは、歯科医院で除去してもらうことが大切です。
あわせて、歯周病を悪化させる原因の改善にも努めましょう。
歯周病を悪化させる原因としては、糖尿病・免疫力の低下などが代表的です。
糖尿病が歯周病を悪化させる理由は複数あります。
理由の1つとして、ドライマウスが挙げられます。
糖尿病になると、唾液の量が減ることがあります。
すると口内が乾燥しやすくなるため、歯周病菌にとって心地の良い環境が整います。
糖尿病は身体の免疫機能の低下も招きます。
免疫力が低下すると、歯周病菌への耐性が弱まります。
出典:厚生労働省【歯周病の予防と治療 | e-ヘルスネット(厚生労働省)】
歯磨きの正しい磨き方とは
歯周病を予防するにはプラークを溜めない・取り除くことが大切です。
丁寧な歯磨きを心がけましょう。
【歯磨きの方法】
- 歯ブラシは先端が歯と歯肉の間に入るようにあてる(角度は45度が目安)
- 軽い力で小さく振動させるように 20 回動かす
- 1~2本を磨いたら隣の歯に移動
- 前歯の裏は1本ずつ縦に磨く
- 歯磨き後、必要があればフロス・歯間ブラシ・洗口液を併用する
歯磨きをしっかり行っているつもりでも、実際には磨き残しがあることも多いです。
磨き残しを見逃さないためにも、歯科医院で定期的な口内チェック・清掃を受けましょう。
8020の達成者の割合は
現在は「8020(はちまるにいまる)」という運動が進められています。
8020は「80歳になっても自分の歯を20以上残そう」という運動です。
歯周病は年を重ねるにつれリスクが高くなります。
実際に高齢者の中には、歯周病で歯を失ったという方も少なくありません。
そこで8020と題して、高齢になっても口内の健康を保つための運動が誕生しました。
平成28年の調査では、8020を達成している方の割合は75歳以上84歳未満で51.2%でした。
平成23年の調査に比べると、8020を達成している方の割合は11%増加しています。
出典:厚生労働省【「平成 28 年歯科疾患実態調査」の結果(概要)】
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歯周病と認知症まとめ
ここまで歯周病と認知症についてお伝えしてきました。
要点を以下にまとめます。
- 歯周病は認知症を悪化させる原因の1つ
- 歯周病を改善した場合、認知症の症状も改善が期待できる
- 歯周病を予防するためのポイントは丁寧な歯磨き・生活習慣病の予防・免疫力を高めること
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。