双極性障害とADHDは似ているので、判断が難しいといわれています。
双極性障害とADHDは、特徴や症状をしっかり把握することで鑑別しやすくなります。
双極性障害とADHDの似ている点、異なる点にはどんなものがあるのでしょうか?
双極性障害とADHDはどのように鑑別するのでしょうか?
本記事では双極性障害とADHDについて、下記の内容を中心にお伝えします。
- 双極性障害とADHDの似ている点は?
- 双極性障害とADHDの違いは?
- 双極性障害とADHDの鑑別は?
双極性障害とADHDについて理解するためにも参考にしていただければ幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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双極性障害とは?
双極性障害はどのような病気か、詳しく解説します。
症状や原因についてもみていきます。
双極性障害の疫学
疫学では、双極性障害の発症しやすい年齢や性別、生活環境などが研究されています。
しかし双極性障害はまだまだ明らかになっていないことが多い病気です。
双極性障害は世界で6番目に増加しつつある疾患で、日本での双極性障害の生涯有病率は約0.2%といわれています。
うつ病は女性の発症が多い傾向にありますが、双極性障害は明確な男女差はみられません。
双極性障害の症状
双極性障害は躁状態とうつ状態を繰り返す病気で、躁状態とうつ状態で対照的な症状が現れます。
躁状態では下記のような症状が出現します。
- 自信やエネルギーに満ち溢れていて、行動的になる
- 買い物やギャンブルに莫大な金をつぎ込む
- 借金して大きな事業を始めようとする
- 人の意見に耳を貸さない
- 多少眠らなくても活動できる
躁状態のとき本人は気分が高揚しており、これが本来の自分であると思っています。
本来の自分と思っているため、周りの指摘を受け入れることが上手くできません。
ときには攻撃的になるため、問題行動ととらえられることも多いです。
攻撃的になるため、人間関係の悪化、経済的、社会的損失を招く恐れもあります。
一方で、うつ状態の症状は下記のようなものが挙げられます。
- 何に対しても興味が持てない
- 自分を必要以上に責める
- 不眠、寝すぎてしまう食欲がない、食べ過ぎてしまう
- やる気が起きない
病気の期間の約半分〜3分の1程度はうつ状態である場合が多いといわれており、心身ともに苦しい状態が続いてしまいます。
双極性障害の原因
2022年現在では、双極性障害は遺伝の影響が大きいといわれています。
しかし双極性障害の原因は、はっきりと解明されていません。
親が双極性障害である場合、子どもも双極性障害になりやすいといわれています。
しかしすべての人が発症するわけではありません。
遺伝的要素のある方が、強いストレスで脳にダメージを受けることにより発症するという説もあります。
一方で、遺伝的要素がないのに発症する方もいるため、原因については明確になっていないというのが現状です。
障害の種類について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も是非ご覧ください。
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ADHD(注意欠如・多動症)とは?
ADHDとは、注意欠陥多動性障害という発達障害です。
ADHDでは、下記のような症状がみられます。
多動性、衝動性
- 落ち着きがなく目的のない動きをする
- 不用意な発言、過度な私語
- 待つことができない
不注意
- 注意が持続しにくい
- 作業にミスが多い
- 片付けが苦手
ADHDの原因は、神経系の脳の働きがうまくいっていないことだといわれてますが、明確にはわかっていません。
ADHDは4歳以前から、12歳までには発症することが多いようです。
しつけや育て方の問題ではなく、下記に加えてさまざまな要素が影響していると考えられています。
- 遺伝的要因
- 環境的要因 など
大人になってから特に影響が出るのは、社会生活です。
本人が苦しい思いをしないように適切に治療していく必要があります。
双極性障害とADHDの似ている点は?
双極性障害とADHDは異なる病気ですが、双極性障害の躁状態と、ADHDの症状には似ている点があるといわれています。
似ているといわれることが多いのは下記の症状です。
- 衝動的に行動する
- 落ち着きがない
- 多弁
- 不注意
どちらも集中して物事に取り組むことが難しい、生活の中で感情の起伏が激しいというような特徴がみられます。
双極性障害とADHDの違いは?
双極性障害とADHDは似ていても異なる点があります。
それぞれの症状から、異なる点をみていきましょう。
双極性障害のみでみられる症状
双極性障害にはADHDに似ている躁状態だけでなく、抑うつ状態もあるのが特徴です。
活動的で高揚感のある躁状態と対照的に、抑うつ状態ではやる気が起こらず悲観的になります。
躁状態だけをみるとADHDと混同しがちです。
しかし抑うつ状態は正反対の症状が出現するので、ADHDにはない特徴といえます。
ADHDのみでみられる症状
ADHDは、小児期に診断されることが多くなっています。
双極性障害の4歳以前の発病は非常に稀です。
幼少期からADHDの症状がみられている場合、双極性障害ではなくADHDが疑われます。
大人になると衝動性や多動性が軽減されることが多いです。
大人の場合、下記のような行動が目立つようになるといわれています。
- 段取りや整理整頓が苦手
- 落ち着きがない
- 感情のコントロールが難しい
双極性障害とADHDの鑑別は?
双極性障害とADHDの鑑別はどのようにするのでしょうか。
それぞれの場合に分けて解説します。
双極性障害の診断
双極性障害は、躁病エピソードと抑うつエピソードの2つの波があるのが特徴です。
交互に発生することもあれば、どちらか一方が優勢のことも多くあります。
2つの波があることが、他の病気との判別が難しい原因です。
躁状態はADHD、抑うつ状態であればうつ病との区別が難しいといわれています。
両方のエピソードがあるということを本人や家族が医師に的確に伝え、判断してもらう必要があります。
双極性障害の気分の波は、自分でコントロールするのが難しく、薬物療法などの治療が必要です。
ADHDは環境の変化により気分や言動が変化します。
双極性障害は誰かの影響ではなく、病気特有の症状として気分の波が出現するのが特徴といえます。
ADHDの診断
ADHDは小児疾患の一つとして考えられており、小児期に症状が出現する傾向にあります。
小児期に親や学校生活での指摘により発覚することが多いです。
しかし大人になるまで持ち越され、診断されるケースもあります。
大人になってからの症状は他の病気との判別が難しいため、小児期のエピソードなども含めて診断していきます。
小児期の集団行動においてADHDの可能性が高いのは次のような行動です。
- 集中力が持続しにくい
- 順番が待てない
- 整理整頓が苦手
大人になってからのADHDは衝動性や多動性よりも、下記のような不注意行動が目立ちます。
- ミスが多い
- 忘れ物が多い
ADHDも双極性障害と同じく気分の波が激しいといわれています。
気分の波が激しい原因は下記のとおりです。
- 双極性障害:病気による内的要因
- ADHD:環境などの外的要因
双極性障害とADHDは合併しやすい?
双極性障害とADHDの合併についての研究では、90人の患者を対象に構造臨床インタビューが行われています。
インタビューの結果、全患者の合計23.3%が双極性障害に沿ってADHD診断の基準を満たしていました。
さらに、双極性障害+ADHD群では双極性障害の開始年齢が、ADHD群のない双極性障害群よりも早くなっています。
躁病エピソード数が頻繁で多いのは、双極性障害+ADHD群です。
ADHDは双極性障害の頻繁な併存疾患であり、双極性障害の早期開始年齢、双極性障害の経過中の躁病エピソードの数の増加に関連しているといえます。
双極性障害やADHDは障害年金をもらえるの?
障害年金を知っていますか?
病気や障害を患った場合、申請し認定されると公的な年金を受け取れます。
精神障害や発達障害でも受給できる可能性があるので、障害年金を受給するための条件をみていきましょう。
障害年金とは?
障害者年金は、病気やけがで生活に支障が出ている、仕事が制限される場合に受け取れる公的年金です。
知的障害などの先天性の障害や肢体不自由、人工透析、がんなどの病気、うつ病などの精神障害も対象になります。
しかし、これらの病気や障害でも誰でも受け取れるわけではなく、受給対象は以下の条件に該当している方です。
- 障害の原因となった病気やけがの初診日において年金に加入していること
- 認定日の状態もしくは現在の状態が障害等級表に定める等級に該当していること
- 保険料の納付要件を満たしていること
障害年金は障害基礎年金と障害厚生年金に加入していると、公的年金に応じた金額を受け取れます。
配偶者や子供の有無によっても変わるため、受給額については人によって異なります。
また、障害認定の等級が1〜3級まで定められており、重度になるほど受給額も高額です。
等級の判定方法は?
障害年金の等級は医師の診断書と本人記入の申立書などに基づき、総合的に判断されます。
精神障害は身体障害と比べて、自分がどの等級に該当するのか判断が難しいです。
精神障害の等級は、主に精神疾患の状態と、能力障害の状態が判断基準になります。
3級は障害厚生年金のみで、労働に関する基準になっています。
日常生活は自分で送れるものの、労働が著しく制限される状態です。
2級は日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものです。
発達障害の場合は著しい制限ではなく、「援助が必要」という基準になっています。
1級は日常生活において必要なことでも、自分ですることが困難な状態です。
常に援助が必要であることが判断基準となります。
双極性障害やADHDはどこに分類される?
双極性障害は気分障害、ADHDは発達障害に該当し、各等級の状態に当てはまれば障害年金の受給対象となります。
障害年金2級では、判定基準が下記のように示されています。
気分障害
- 気分、意欲、行動の障害及び思考障害の病相期がある
- 症状が持続したり、ひんぱんに繰り返したりする
- 日常生活が著しい制限される
発達障害
- 社会性やコミュニケーション能力に乏しく、不適切な行動がみられる
- 日常生活への適応に当たって支援が必要
1級はさらに重度な症状により、常に他者の援助が必要な状態です。
双極性障害もADHDも、障害年金の受給率は高くありません。
しかし生活に支障が出ている場合は受給できる可能性があります。
市町村の窓口や医師に相談してみると良いかもしれません。
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双極性障害とADHDのまとめ
双極性障害とADHDについてお伝えしました。
双極性障害とADHDについてまとめると、以下の通りです。
- 双極性障害とADHDはどちらも多動性、衝動性、不注意、落ち着きのなさが出現する
- 双極性障害特有のよくうつ状態はADHDと区別する際の判断材料となる
- ADHDの症状は小児期から出現するため、症状の出現時期も鑑別ポイントとなる
本記事の内容が、少しでも皆様のお役に立てたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。