気分障害の1つに、双極性障害という病気があります。
双極性障害は、通院で適切な治療を受けるべき病気です。
双極性障害はどのような治療をするのでしょうか?
また、双極性障害の治療期間はどのくらいなのでしょうか?
本記事では、双極性障害の治療について、下記の内容を中心にお伝えします。
- 双極性障害を治療せず放置するとどうなる?
- 双極性障害の治療法
- 双極性障害の再発の予防|維持療法の治療
双極性障害で悩んでいる方や、周りに双極性障害の人がいる方は、参考にしてください。
ぜひ最後までお読みください。
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双極性障害とは?
双極性障害とはどのような病気なのか解説します。
うつ病と同じように考えられることもありますが、異なる病気です。
症状や考えられる原因、うつ病との違いについてもみていきます。
双極性障害の症状
双極性障害とは、躁状態とうつ状態を繰り返す病気です。
躁状態では、自信やエネルギーに満ち溢れていて、行動的になるのが特徴です。
買い物やギャンブルに莫大な金をつぎ込む、借金をして大きな事業を始めようとするなど、問題行動につながる場合もあります。
躁状態のとき、本人は気分が高揚しており、これが本来の自分であると思っています。
このため、周りの指摘を受け入れることが難しくなります。
時には攻撃的になり、人間関係の悪化や経済的、社会的損失を招く恐れもあります。
一方で、うつ状態は何に対しても興味が持てない、自分を必要以上に責めるなどです。
うつ状態は、躁状態とは対照的に、思考がネガティブになります。
双極性障害の場合、病気の期間の約半分〜3分の1程度はうつ状態である場合が多いといわれています。
双極性障害の原因
双極性障害は、何らかの脳の異常があると考えられています。
しかし、双極性障害の原因は、はっきりとは解明されていません。
遺伝やストレス、またはこの2つの要素が重なることで発症するともいわれています。
双極性障害の家系の方は、双極性障害を発症する可能性は高くなるといえますが、必ず発症するとは限りません。
もともと持っている遺伝的要素に、ストレスがかかることで脳がダメージを受け、双極性障害を発症すると考える「ストレス脆弱性モデル」が有力という説もあります。
しかし、遺伝要素がないのに発症するという方もいるため、現時点で原因の特定は難しいとされています。
うつ病との違い
躁うつ病とも呼ばれることから、うつ病と同じ疾患であると思われがちですが、双極性障害とうつ病は、病気自体も治療法も異なります。
うつ病は気分の落ち込みや不眠、やる気が起きないなどの症状が続く病気です。
双極性障害は同じようなうつ状態があるものの、躁状態も出現するのが特徴で、2つの気分の波に苦しむ病気です。
うつ状態の時に病院を受診すると、うつ病と判断されることがあります。
一方で、双極性障害であった場合は躁状態にもアプローチするための治療も必要となり、処方される薬も変わってきます。
眠らなくても平気な時期があった、仕事や勉強がすごくはかどった時期があったなど、躁状態に当てはまる症状が過去にあったという場合は医師に伝え、判断してもらうことが重要です。
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双極性障害を治療せず放置するとどうなる?
双極性障害は治療が必要な病気で、放置していても自然に治ることはありません。
治療をしなければ悪化したり、再発したりを繰り返します。
双極性障害は、生活に悪影響が出る可能性もあるので、適切な治療を受ける必要があります。
早い段階で病院を受診し、治療を開始すれば、症状の緩和やコントロールが可能な病気です。
病院を受診するのは、勇気がいるかもしれません。
しかし、専門の医師のサポートで病気と向き合い、少しでも楽に自分らしく生活できるように、治療を進めていくことが大切です。
双極性障害の治療法
双極性障害ではどのような治療をするのかをご紹介します。
一般的に薬での治療がメインとなるため、治療薬の効果や副作用についてもみていきましょう。
躁病エピソードの治療
躁状態が中程度以上の場合は、気分安定薬のリチウムと非定型抗精神病薬の併用が推奨されています。
また、躁状態が軽度の場合は、リチウムの単剤投与が推奨されています。
双極性障害の躁状態は急速に悪化するといわれており、できる限り即効性が求められます。
気分安定薬には即効性がないため、中等度以上の場合は始めから抗精神病薬を併用します。
抗精神病薬は様子を見て減少、中止し、気分安定薬単独での治療をしていくのが一般的とされています。
気分安定薬のリチウムは、副作用として手指の微細な振戦や多尿、甲状腺機能低下、記憶障害、体重増加、などが挙げられています。
リチウムは催奇性にも注意が必要で、特異的なものとしてはエプスタイン奇形があります。
このため、リチウムの妊婦への投与は禁忌となっています。
抑うつエピソードの治療
抑うつの治療には、気分安定薬、抗うつ薬が使用され、長期的な再発予防を考えて薬物を選択していく必要があります。
有効な治療薬として、クエチアピン、リチウム、オランザピン、ルラシドン、ラモトリギンが推奨されています。
抑うつエピソードの急性期の治療薬として抗うつ薬を用いる際には、躁病への転換(躁転)や、躁とうつを急速に繰り返す急速交代化のリスクを考慮すべきであるといわれています。
抗うつ薬の単独使用は躁転のリスクを上昇させますが、気分安定薬と併用することにより躁転のリスクが回避できるという報告があります。
一方で、急速交代型では、気分安定薬と併用したとしても、双極性障害の経過を悪化させるという報告があります。
このことから、抗うつ薬の使用には慎重になる必要があると考えられます。
また、薬物療法以外では、修正電気けいれん療法も有効で、その効果は薬物療法を上回るとの報告があります。
双極性障害の再発を予防|維持療法の治療
双極性障害は再発しやすい病気であり、再発予防のための維持療法が必要になります。
維持療法に取り入れられる薬物療法と心理社会的治療の特徴や治療法を詳しくみていきます。
薬物療法
薬物療法での第一選択薬は気分安定薬のリチウムとなっています。
リチウムは、抑うつと躁病の両方に有効とされています。
また、初期段階では抗精神病薬を併用していくことが多くあります。
一方で、維持療法ではリチウム単独で用いることが多くなります。
気分安定薬を服用しながら、気分が安定した状態を長く保つのが、維持療法においての薬物治療の目的となります。
完治を目指し焦ったり、治ったと思ったりして服薬をやめるのは再発につながってしまうため注意が必要です。
心理社会的治療
心理社会的治療は薬物治療と併せて行う治療で、下記のような種類があります。
- 心理教育
- 認知行動療法
- 家族療法
- 対人関係・社会リズム療法
心理教育は、病気や薬剤の性質を理解し、病気を自らコントロールできるようになることを目的としています。
再発の兆候を自分で把握することも目標となります。
認知行動療法は、ポジティブな思考の習慣をつけることを目指します。
ネガティブな考え方の癖を自覚し、客観的に考えられるようにします。
家族療法は、家族とともに回復を目指すことを目的としています。
家族の病気への理解を深め、協力してもらいながら、治療にあたることが重要です。
対人関係・社会リズム療法は生活リズムを整え、人間関係のストレスを軽減できるようにします。
生活リズムが乱れると症状悪化、再発の原因につながる恐れがあります。
つまり双極性障害の治療では、規則正しい生活リズムを作ることも大切です。
また、人間関係によるストレスを改善していくことで再発予防へとつなげます。
双極性障害のサインかも?治療の目安となる症状
自分や周囲の人が双極性障害かもしれないと思ったら、どのタイミングで受診すればよいのか悩みますよね。
ここでは、治療の目安となる症状をご紹介します。
当てはまっている場合はできるだけ早めに対処するようにしましょう。
うつ状態
うつ状態のサインは、以下のような症状が挙げられます。
- 自分を責めてばかりいる
- やる気が起きない
- 表情が暗い
- 反応が遅い
- 食欲がない
- 不眠、寝すぎてしまう
- 動悸
上記のような症状がみられた場合は、しっかりと休養を取ることが重要です。
必要であれば職場や学校から距離を取り、できるだけストレスのない環境で過ごすようにしましょう。
また、体を動かすことで、症状が軽減できる場合もあります。
家族や友人など、気楽に話せる人の力も、症状の改善にとても大きな力となります。
躁状態
躁状態になると、以下のような症状があらわれます。
- 根拠のない自信に満ち溢れる
- 多少寝なくても活動できる
- 多弁、声が大きくなる
- 人の意見に耳を貸さない
- 突発的に何かを始めようとする
- 金遣いが荒くなる
躁状態では、周りがみて明らかに異変を感じるような高揚感のある症状が出る人もいれば、少し調子がよい程度にとどまる人もいます。
明らかな躁状態であれば治療につなげやすいといえますが、軽躁状態の場合では判断が難しくなります。
問題行動につながりがちな躁状態は、薬物治療が有効とされているため、できるだけ早い受診が必要になります。
双極性障害の治療はいつまでかかる?治療期間の目安
双極性障害の治療期間は個人差がありますが、一般的に3か月程度で症状の改善がみられます。
また、1年程度で治療を終えることができるといわれています。
しかし、双極性障害は再発率が高い病気です。
そのため、完治ではなく「寛解」といって、病気自体は治ってはいなくても症状が治まっている状態を目指します。
薬を飲みながらでも、躁状態やうつ状態の波がなく、気分が安定していれば寛解であると考えられます。
また、再発防止のためには維持療法が重要であり、心理教育も取り入れながら長期的に、焦らず治療していくことが重要です。
双極性障害の治療費
双極性障害は、自立支援医療の対象となっています。
自立支援医療では、精神疾患の治療を受ける際の外来への通院、投薬、訪問看護などについて、健康保険の自己負担分の一部を公的に支援する制度です。
市町村の窓口で申請して認定された場合、「自立支援医療受給者証(精神通院)」が交付されます。
「自立支援医療受給者証(精神通院)」が交付されていれば、病院に受診する際に保険証や診察券とともに提出することで負担額が軽減されます。
この制度を利用することにより、長期的な治療であっても金銭的な負担を軽減しながら続けることができます。
ただし、入院医療の費用や、病院や診療所以外でのカウンセリングなどの公的医療保険が対象とならない治療、投薬などにかかる費用、精神疾患・精神障害と関係のない疾患の医療費は対象外となります。
また、医療費の自己負担額には上限があり、世帯の所得に応じて負担額が決まる仕組みとなっています。
出典:厚生労働省【こころの病気への支援や助成など|治療や生活へのサポート|メンタルヘルス】
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双極性障害の心理社会的治療は効果があるの?
双極性障害の治療のメインとなる薬物療法は、個人差はあるものの、その効果が報告されています。
一方で、心理社会的治療は本当に効果があるのか、必要性について疑問を感じる方も少なくないはずです。
双極性障害に対するグループ治療教育プログラムの影響を探った研究があります。
研究では、治療に参加した16人の双極性障害の患者に対して、半構造化インタビューを実施しました。
参加者によって報告された変化には、患者と障害との関係の進化、障害に関する患者の知識の改善、日常生活全般にわたる障害管理の改善、心理社会的スキルおよび社会的関係の発達が含まれています。
結果としては、心理社会的治療の有益性を示しているといえます。
薬物療法は双極性障害の治療に欠かせないものです。
同時に心理社会的療法も、薬物療法とは別の側面から双極性障害にアプローチします。
このことから、心理社会的療法は病気と向き合う患者に有益な治療となっていると考えられ、その重要性が注目されています。
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双極性障害の治療のまとめ
双極性障害の治療についてお伝えしました。
本記事の内容をまとめると、以下の通りです。
- 双極性障害は自然治癒せず、悪化や再発のリスクがあるので、早期の治療が必要
- 双極性障害の治療法には薬物治療、心理社会的治療がある
- 維持療法では、気分安定薬の服薬、心理社会的療法の継続を行う
本記事の内容が、少しでも皆様のお役に立てたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。