食中毒は細菌やウイルスで起こる病気で、代表的な症状として腹痛や吐き気、下痢などが挙げられます。
食中毒の中には発熱症状を伴う場合もあります。
食中毒が起こる原因にはどのようなものがあるでしょうか?
また、発熱する食中毒にはどのようなものがあるでしょうか?
本記事では食中毒になった際の発熱について以下の点を中心にご紹介します。
- 食中毒になると熱は必ず出るのか
- 熱が下がらないときの対処法
- 発熱する期間
食中毒時の発熱について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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食中毒とは
食中毒について以下2つをご紹介します。
- 食中毒の症状
- 食中毒が起こりやすい時期
食中毒の症状
食中毒は、食中毒を起こす細菌やウイルスが付着したものを食べることで起こります。
食中毒になると、腹痛や下痢、おう吐、発熱などの症状がでます。
食中毒の症状や発症するまでの時間などは原因によってさまざまです。
食中毒の原因は大きく以下の5つになります。
- 細菌
- ウイルス
- 寄生虫
- 自然毒
- 化学物質
食中毒が起こりやすい時期
食中毒は年間を通していずれかの病因物質で発生しています。
厚生労働省の「食中毒統計資料」でもその傾向は明らかです。
過去5年間(2017年〜2021年)の病因物質別月別食中毒発生件数(平均値)の傾向は以下の通りです。
- 細菌性の食中毒は梅雨時期(5月〜6月)と夏(7月〜9月)に増加傾向
- ウイルス性の食中毒は冬(12月〜3月)に発生が顕著
- 自然毒による食中毒は春や秋に多く発生の傾向
- 寄生虫による食中毒は年間を通して発生
出典:厚生労働省【食中毒 – 統計資料, 厚生労働省(過去の食中毒発生状況)(病因物質別発生状況)】
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熱が辛い食中毒の主な原因とは?
食中毒の主な原因について、原因となる菌やウイルスごとにご紹介していきます。
ノロウイルス
水やノロウイルスに汚染された食品(カキなどの二枚貝)を原因とします。
カキなどを生や加熱が不十分で食べるとノロウイルスで食中毒になります。
ノロウイルスは85℃~90℃で90秒以上加熱しないと死滅しません。
また、感染者からの接触による二次感染で感染拡大が起こります。
感染者からの接触には、便や吐しゃ物などがあります。
ボツリヌス菌
ボツリヌス菌は低酸素状態で菌の増殖が起こります。
したがって保存食品(特に自家製のビン詰や缶詰)、容器包装食品などから発生します。
カンピロバクター属菌
カンピロバクター属菌は家畜の腸内にいる細菌です。
食肉処理をするときに付着したものの、生食や加熱が不十分だと発生する食中毒です。
食肉処理の過程での付着は、特に生の鶏肉でみられます。
腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオは魚介類(生の魚や貝など)を原因とする食中毒です。
真水や熱に弱く、塩分のあるところで増殖する菌です。
サルモネラ属菌
サルモネラ菌は特に鶏卵、その他では牛・豚・鶏などを原因食品として発生します。
感染力が強いのが特徴です。
O-157 腸管出血性大腸菌
O-157は牛や豚などの腸内にいる病原大腸菌の1種で感染力が非常に強い特徴があります。
生肉を食べたり、加熱が不十分だと発生する食中毒です。
黄色ブドウ球菌
人の皮膚や鼻、口内に存在する菌です。
おにぎりや弁当、調理パンなど加熱後の手作業で作られる食べ物が原因になる食中毒です。
加熱が食中毒を防ぐ処理として意味をなさない菌です。
セレウス菌
セレウス菌はおう吐と下痢を引き起こす毒素を作り、食中毒を引き起こします。
原因食品は、穀類及び加工品(チャーハン、ピラフ、焼きそば、スパゲッティなど)です。
チャーハンやピラフなどを室温で作り置きすることで増殖します。
適切な保存方法や保存期間を短くすることが大切です。
ときどき飲食店で食中毒による業務停止命令などが出ることがあります。しかし、それは氷山の一角で、実は家庭でも食中毒が起こっているのです。食中毒はどうやったら防ぐことができるのでしょうか。本記事では食中毒について以下の点を中心に[…]
食中毒になると熱は必ず出る?種類を解説
食中毒になった際の発熱症状に関して、以下の2つをご紹介します。
- 熱が出る食中毒
- 熱が出ない食中毒
熱が出る食中毒
発熱を含む症状の出る食中毒の種類を以下の表にまとめました。
種類 | 主な症状 |
サルモネラ菌 | はきけ、腹痛、下痢、発熱、頭痛 |
カンピロバクター属菌 | 下痢、発熱、はきけ、腹痛、筋肉痛 |
E型肝炎ウイルス | だるくなる、皮膚が黄色くなる、発熱 |
ノロウイルス | はきけ、ひどい下痢、腹痛、発熱 |
腸炎ビブリオ菌 | 激しい下痢、腹痛、(発熱する場合もあり) |
熱が出ない食中毒
食中毒の症状で以下の種類は一般的には発熱を起こしません。
種類 | 主な症状 |
黄色ブドウ球菌 | はきけ、腹痛 |
ボツリヌス菌 | 吐き気、おう吐、神経障害(視力、言語) |
腸管出血性大腸菌(O157、O111など) | 激しい腹痛、下痢、血が多く混じった下痢 |
セレウス菌 | 下痢型(腹痛、下痢)嘔吐型(吐き気、おう吐) |
熱が下がらない時の対処法
熱が下がらないときの対処について以下の3つをご紹介します。
- 解熱剤の使用は注意する
- 水分補給をする
- 安静にしていても変わらない場合は病院へ
解熱剤の使用は注意する
解熱剤は一時的な解熱を目的とする薬で、食中毒の治療薬ではありません。
解熱剤の使用に当たっては以下のような注意が必要です。
- 発熱(37.5℃以上)ですぐに解熱剤を使うと、発熱の原因が分かりにくくなる
- 1日の使用回数は2~3回(使用間隔は5~6時間開ける)
- 市販薬の場合は服用の注意事項を確認する
- 妊婦や妊娠している方、高齢者、持病のある方は医師や薬剤師へ事前に相談
- 年齢による用法・用量に注意
水分補給をする
食中毒になったときは水分補給が大切です。
食中毒ではおう吐や下痢とともに発熱による体温の上昇で水分が失われます。
水分が失われると脱水症を起こすことになります。
脱水症状には水分とミネラルの補給が不可欠です。
最も適しているのは、電解質を含み吸収の早い経口補水液です。
安静にしていても変わらない場合は病院へ
安静にしていても変わらない場合は病院へ行く必要があります。
発熱があって病院へ行くときの目安は以下のようなものです。
- 40℃以上に体温が上昇(食中毒以外の原因の可能性がある)
- 発熱が3~4日続く場合
- 発熱以外に呼吸困難や意識障害、けいれんなどがある場合
- 治療中の病気や持病がある方
食中毒の発熱はいつまで続く?
食中毒の発熱期間は病原菌によって違います。
それぞれの発熱期間についてご紹介します。
細菌性食中毒
細菌性食中毒(サルモネラ菌、カンピロバクター属菌)の発熱期間は以下の通りです。
- サルモネラ菌 :2~3日
- カンピロバクター属菌 :1~2日
ウイルス性食中毒
ウイルス性食中毒(ノロウイルス、ロタウイルス)の発熱期間は以下の通りです。
- ノロウイルス :2~3日
- ロタウイルス :1~2日
化学性食中毒
化学性食中毒による発熱は30分~60分で発症し6~10時間で回復します。
化学性食中毒はヒスタミンを蓄積した魚や発酵食品を食べることで起こります。
ヒスタミンは常温に放置されて鮮度の落ちた魚に蓄積される化学物質です。
自然毒食中毒
動物性自然毒では有害な物質を含んだ魚介類を食べると発熱を起こすことがあります。
植物性自然毒では毒キノコのなかで発熱を起こすものがあります。
自然毒食中毒の発熱期間は以下のようになります。
- 有害魚イシナギの肝臓(ビタミンA) :30分~12時間
- 毒キノコ(カエンダケ) :30分~48時間
食中毒の熱と同時に出る下痢の対処とは
食中毒の熱と同時に出る下痢の対処について以下の3点をご紹介します。
下痢止めを飲まない
食中毒では激しい下痢症状が出ることがありますが、下痢止めの服用は推奨できません。
下痢止めは、消化管の蠕動運動を抑制し、食中毒の原因物質の排泄を遅らせてしまうからです。
水分を補給する
食中毒の下痢症状が続く場合は脱水症状を防ぐために水分の補給が欠かせません。
吐き気がある場合などは水分は常温か少し温かめのお湯でゆっくり摂りましょう。
吐き気が治まってきたら脱水症状に効果の高い
- 経口飲料水
- スポーツドリンク
- リンゴジュース
などを摂るようにします。
整腸剤や胃腸薬は飲んでも良い
下痢症状のときに整腸剤や胃腸薬を使うことは問題がなく飲んでも良いとされています。
整腸剤は乳酸菌などで腸内部の環境改善の作用があります。
胃腸薬も胃の調子を整えたり整腸の作用を持つものです。
飲んでも良い理由としては、いずれも腸の蠕動運動には関与せず、食中毒の原因物質の排泄にも影響がないからです。
食中毒で辛い熱にうなされないために|段階別の予防法
厚生労働省は「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」を提唱しています。
6つのポイントは食事作りを以下の段階別に分けた予防法になっています。
出典:厚生労働省【家庭でできる食中毒予防の6つのポイント |厚生労働省】
購入
ポイント1:食品の購入について以下に要約します。
- 生鮮食品は新鮮なものを購入する
- 消費期限等を確認して購入する
- 購入食品はビニール袋等で小分けにして持ち帰る
- 温度管理の必要な食品は買い物の最後にする
保存
ポイント2:家庭での保存について以下に要約します。
- 温度管理の必要な食品は帰宅後すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れる
- 冷蔵・冷凍庫は7割収納を目安に冷蔵は10℃以下、冷蔵は-15℃以下で保存
- 細菌汚染防止のため、肉や魚などはビニール袋や容器で他の食品と分けて保存
- 肉、魚、卵などを取り扱う前後は必ず手洗いをする
調理前の下準備
ポイント3:調理前の下準備について以下に要約します。
まず台所のチェックは以下の項目です。
- ゴミは捨ててあるか
- タオルやふきんは清潔なものと交換されているか
- 石鹸の用意はしてあるか
- 調理台の上は片付いて使いやすくなっているか
そのほかのポイントは以下の通りです。
- 井戸水の使用は水質に注意
- 肉、魚、卵の取扱い後の手洗い
- ペットに触れたり、トイレの使用、おむつ交換、鼻をかんだ後等の手洗い
- 生の肉や魚の汁が他の食品にかからないようにする
- 生の肉や魚などの調理器具(包丁やまな板)からの細菌汚染を防止する
- ラップしてある野菜(カット野菜も含む)もよく洗う
- 冷凍食品の解凍は冷蔵庫の中や電子レンジで行う
- 水を使う解凍は、気密性の容器にいれて流水で行う
- 冷凍や解凍を繰り返さずに、使う分だけを解凍し調理する
- 調理器具(包丁、食器、まな板、ふきん、たわし、スポンジなど)は使用後すぐに洗剤と流水でよく洗う
調理
ポイント4:調理について以下に要約します。
- 調理前に再度、台所の汚れや清潔なタオル、ふきんへの交換を確認してから手を洗う
- 加熱して調理する食品は十分な加熱処理をする
- 加熱の目安は、中心部の温度が75℃で1分間以上
- 電子レンジは電子レンジ用容器、ふたを使い、調理時間に気を付ける
食事
ポイント5:食事について以下に要約します。
- 食事前の手洗い
- 盛り付けは清潔な手で、清潔な器具を使い、清潔な食器におこなう
- 料理温度の目安は、温かい料理は65℃以上、冷たくして食べる料理は10℃以下
- 調理前や調理後の食品を室温で長く放置しない
- O157等の感染防止で、特に乳幼児や高齢者の食事では加熱が不十分な食肉は食べさせない
食べ残し
ポイント6:食べ残しについて以下に要約します。
- 残った食品は手を洗ってから清潔な器具、皿を使って保存する
- 残った食品は底の浅い容器で保存し早く冷えるようにする
- 時間が経ちすぎた食べ残しは思い切って捨てる
- 残った食品を温めなおすときは75℃以上に加熱する
- 残ったみそ汁やスープは沸騰するまで加熱する
- ちょっとでも怪しいと思ったら食べずに捨てる
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食中毒の予防のための熱処理の必要性とは
厚生労働省は家庭での食中毒予防に関してさまざまな注意喚起を行っています。
「お肉はよく焼いて食べよう」との呼びかけは熱処理の必要性の注意喚起です。
熱処理の必要性については具体的に以下のような注意喚起をしています。
- 「牛レバーは十分加熱して食べましょう」
- 「豚のお肉や内臓も十分加熱して食べましょう」
- 「生のひき肉を使った製品は中心部までの加熱が必要です」
- 「イノシシ、シカなどの野生鳥獣(ジビエ)のお肉も十分加熱して食べよう」
- 「鶏肉も十分加熱して食べよう」
出典:厚生労働省【食中毒|厚生労働省 (mhlw.go.jp)】
いずれも加熱不十分のまま食べ、重篤な食中毒が発生しているからです。
ジビエ肉に十分な加熱が必要なのは、家畜と違って、飼養管理がされていないからです。
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食中毒の熱のまとめ
ここまで食中毒の熱についてお伝えしてきました。
食中毒時の発熱についての要点を以下にまとめます。
- 熱の出る食中毒にはサルモネラ菌、カンピロバクター属菌、E型肝炎ウイルス、ノロウイルスなどがある
- 熱が下がらないときは下剤の服用は控え、水分をとり、安静にするのが基本で、症状が治まらないときは病院へ行く
- 食中毒時の発熱期間は細菌性・ウイルス性は1~3日、化学性中毒・自然毒中毒は短期間で治まる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。