双極性障害は気分が高まる躁状態と気分が落ち込むうつ状態を繰り返す病気です。
躁状態を繰り返すことで周囲の人を傷つけたり、無謀な計画や買い物などを実行することでさまざまな日常生活への影響を与えます。
そして、うつ状態になると死にたくなるほどの重たい空気に押し潰されそうな気分になると同時に躁状態の自分に対して自己嫌悪を感じてしまい、より気分が落ち込むことがあります。
双極性障害の方とはどうやって接したら良いのでしょうか。
本記事では、双極性障害の接し方について以下の点を中心にご紹介します。
- 双極性障害の症状と原因とは?
- 双極性障害の躁状態のときとうつ状態のときの接し方は?
- 双極性障害の恋人・友人・家族・同僚などへの接し方は?
- 双極性障害の治療や看護の手助けをする接し方は?
- 双極性障害の社会支援での接し方は?
双極性障害の人との接し方について理解するためにもご参考にして頂けますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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双極性障害とは?
そもそも、双極性障害とはどのようなものなのでしょうか。
- 双極性障害の症状
- 双極性障害の原因
- うつ病との違い
に分けて、ご説明します。
双極性障害の症状
双極性障害は、活動的になる躁状態や軽躁状態と、気分が落ち込み何をしても楽しいと思えなくなるうつ状態が繰り返されます。
躁状態にもうつ状態にも当てはまらない時期もあります。
人間には誰しも感情の浮き沈みがありますが、双極性障害は一日中、毎日、何日も続き、周囲の人から見ても明らかにいつもと違うような場合のことをいいます。
双極性障害は、気分障害に分類されており、うつ状態だけでなくて対極の躁状態も見られる病気で、躁うつ病ともいわれています。
こうした気分の波によって振り回されてしまうことが続くと、「自分は生きる価値のない人間だと感じる」「死にたくなる」という思いが強くなってしまう症状(希死念慮)が強まってしまいます。
行動に移されてしまう方も少なくなく、しっかりとした治療が必要になる病気です。
双極性障害の原因
双極性障害の原因は明らかになっていません。
しかし、双極性障害の発症にはゲノム(遺伝子)が影響するといわれています。
原因となる遺伝子は特定されていませんが、脳の神経細胞同士をつなぐシナプス、神経細胞からの神経伝達物質の放出などに関連する遺伝子とのつながりが指摘されています。
うつ病との違い
双極性障害は、躁(そう)状態で始まることもあれば、うつ状態で始まることもあり、人によって異なります。
躁状態で受診した場合は、双極性障害という診断がつく一方、うつ状態で受診した場合、多くの場合うつ病と診断されます。
なぜなら、双極性障害はうつ状態と躁状態の両方があらわれる病気であり、躁状態がない以上、現在のうつ状態からうつ病が疑われるからです。
実際、うつ病と診断されていた患者さんの10人に1人か2人は最終的に双極性障害に診断が変わるといわれています。
双極性障害は正しい診断がつくまで時間を要する病気で、正しい診断に行き着くまで、平均して4〜10年ほどかかっているといわれています。
「うつ病」と類似していますが、双極性障害の場合、抑うつ状態に加えて躁状態にもなります。
また、双極性障害は最近では「うつ病」と同様に回復、治療が可能とされています。その原因は複合的な要因によることが多いです。
うつ病よりも身体的要因など内因の割合が大きいことが特徴です。
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双極性障害の人との接し方は?
双極性障害の方と接するときに気をつけたほうが良いことはあるのでしょうか。
- 躁状態のとき
- うつ状態のとき
に分けてご紹介します。
躁状態のとき
躁状態のときには、家族に暴力をふるってしまう人もいます。
信頼関係を壊さないためにも、自分たちの身を守ることも大切であり、また、必要に応じて、かかりつけ医に相談したり、精神科、神経科の受診をする必要があります。
躁状態の時は、ほとんどの場合入院して、薬で気持ちを穏やかにすることが必要です。
ご本人の気分は上々で、「入院の必要はない」という場合が多いのですが、放っておくと、怪我をしてしまったり、他人を傷つけてしまったり、社会的に信用を失ったり、浪費してしまうなど、本人や家族が不利益を被ることになってしまう可能性があります。
うつ状態のとき
物事を否定的に考えてしまい、ひどい場合には自殺をほのめかす発言をすることがあります。
そのため、患者さんを大切にしているということをしっかり伝える必要があります。
必要に応じて、かかりつけ医に相談したり、精神科、神経科の受診をする必要があります。ひどい躁やうつになってしまうと自分が病気だということが分からなくなりますから、なりかけのごく初めのうちに、自分で気づくように心がけて下さい。
そのためには安定している状態から躁になったらどうなるか、うつになったらどうなるかをメモして、ご家族と一緒に確認して下さい。
躁状態、うつ状態になったときにどうするかは、ふだんから考えておかなければなりません。
うつや躁になったら、早く主治医に相談してきちんと治療を受けることが必要です。
双極性障害の人との接し方|シチュエーション別
次に、以下のようなシチュエーションでどのように接するべきなのか、解説していきます。
- 恋人
- 友人
- 家族
- 職場の同僚
ぜひ参考にご覧ください。
恋人
今の自分に適した恋愛をする、もしくはしないことです。
まず、病気になってしまったことはどうしようもないことです。
取り消しにできるわけでもないので、病気について学びながら、少しずつ受容していきましょう。
ある程度受容ができたら、病気になる前は健常な人と同様にできていた恋愛を双極仕様にチェンジすることが下記のとおりです。
- 主に日中に会うようにする
- 一回に会うのは〇時間までにする
- 夜のイベントは避ける
- 泊まりの旅行は避ける
- アルコールは避ける
疲労やストレスを溜めないよう、生活リズムが乱れないように気を付けましょう。
また、当面は恋愛をしないという選択もひとつです。
とくに双極性障害と診断されて間もない方は病状のコントロールにも不慣れですから、しばらく恋愛はお休みモードにして、生活を安定させることを優先しましょう。
余裕が出てきたらおのずとそういったことに関心が出てくることでしょう。
友人
先行きに対して悲観的になったり、自己肯定感が低下したり、投げやりな気持ちになったり、しんどすぎて人との関わりが持てなかったりすることが、対人関係に影響します。
相手に申し訳ないと考えたり、付き合っていく気力が無いと感じたりした時に「相手のためにも別れた方が良い」などと考えがちですが、
「決断は保留・延期する」が正解です。
うつ状態でも躁状態でも、判断力は低下しているものです。
気分の症状が見られるときには大切な人との関係について重大な決断をすることは避けましょう。
家族
家族で規則正しい生活をこころがけましょう。
一日の生活リズムの乱れは双極性障害を悪化させます。
朝起きる時間、食事の時間、就寝する時間をほぼ決めて、同じリズムで生活を続けるようにします。
また、眠る前にはコーヒーなどの刺激物は摂らないようにして、入浴などでリラックスした気分になるようこころがけます。
職場の同僚
過度に気遣って遠まわしな言い方をしないことです。
過度に気遣って遠まわしな言い方をすると、かえって本人の負担になる場合があります。
率直に「最近遅刻が多いが心配している」や「ミスが多いが何か困ったことはないのか?」など、何か抱えているのではないかと心配していることをアピールしたほうが良いでしょう。
何か少しでも理由を話してくれた場合には、話してくれたことに感謝して「そうだね、辛いよね」などと共感するようにしてください。
うつ病の傾向にある人には、言ってはならない言葉があります。どういった言葉があるのか、見ていきましょう。
- 頑張れ
- もっと前向きになれ
- 原因は?
- 大丈夫?
- 元気?
- これくらいで落ち込むな
- 大したことではない
心身ともに健康な人であれば、何とも思わない言葉かもしれませんが、うつ病の傾向にある人がこういった禁句を耳にしてしまうと、さらに追いつめてしまう可能性があります。
そのため、話をじっくり聞く時間を作るようにしましょう。
1人で悩みを抱え込んでいると、何も解決しないばかりか悪いほうへ物事を考えてしまう場合もあります。
うつ病の兆候がある同僚がちょっとしたきっかけで話をしてくれるようだったら、じっくり聞く時間を作るようにしましょう。
その場合は、傾聴を意識してください。
相手が話している内容を否定せずに聞きましょう。
話を聞いていると、もしかしたら矛盾する部分や作り話が含まれているかもしれません。
そういった場合でも、否定せず自分の意見を押し付けることのないようにしてください。
双極性障害の人との接し方|治療や看護の手助けをしよう
双極性障害の治療をしていく上では、患者さんの努力だけでなく、周囲の人の協力も必要不可欠です。
以下の項目に従ってご説明します。
- 治療目標を設定する
- 治療を継続して受ける
- 生活リズムを整える
- ストレスとの付き合い方を考える
治療目標を設定する
双極性障害の患者さんは、自分がうつ状態なのか、ちょうど良いのか、躁状態なのか、しばしばわからなくなります。
まわりからみ見ると、「ちょうど良い状態だ」と思えるのに、双極性障害の患者さんは「まだ不十分である」と判断、むしろ躁状態の頃を「元気な、本来の自分」と考え、それを目標にしてしまうことがあります。
その結果、焦って疲れて、うつ状態になってしまうか、上がりすぎた目標に突き進んで躁状態になってしまうことがあります。
治療目標を明確にするため、主治医や、ご家族に確認することがとても大切です。
治療を継続して受ける
双極性障害は再発しやすい病気です。症状が改善したことで薬の服用をやめると再発してしまいます。そのため、周囲の人も協力して、継続的な治療を行う必要があります。
安定期になっても、再発予防のために薬を服用し続けます。
どのくらいの間服用すべきかという点は、その人によってちがいますが、数回躁、うつを繰り返した場合は、予防治療をずっと続けるのが普通です。
生活リズムを整える
治療目標を明確にするため、主治医や、ご家族に確認することがとても大切です。
自分自身のリズムの経過を知るために、睡眠覚醒リズム表をつけていくことで、気分の波と、睡眠覚醒リズムの関係や日常の行動との関係を知ることができます。
特に、気分と日常の行動の部分はご家族にもつけてもらい、気分の自己評価とご家族の評価のずれや、ご家族が注目した日常行動が何かをはっきりさせるのにも役に立ちます。
ストレスとの付き合い方を考える
双極性障害の人は、ストレスによって躁状態やうつ状態になってしまうことがあります。患者さんが1人で抱え込まないように、ケアをしていく必要があります。
双極性障害の方は、ストレス、特に人との関係から生じるストレスがきっかけで調子を崩し、うつ状態や躁状態に陥ることがあります。
双極性障害の人とつきあう上で大切なことは、優先順位をつけて「これはやるが、これはおいておく」と決めることです。
また、自分ひとりで問題を抱え込まず、身近な人に相談することを心がけることです。
双極性障害の人との接し方|社会の支援を受けよう
家族会とは、精神障害者を家族にもつ人たちが、お互いに悩みを分かちあい、共有し、連携することでお互いに支えあう会です。
支えあいを通して、地域で安心して生活できるための活動を行っています。
家族会にはいくつか種類があります。
たとえば、病院を基盤とした「病院家族会」、保健所が事業として行っている「保健所家族会・家族教室」、地域ごとに結成されている「地域家族会」、さらに全国や都道府県ごとの連合会などがあります。
活動内容は、家族会によって頻度はまちまちですが定期的(月1回、年数回など)に会を催しているところが大半です。
内容は家族同士の交流を主眼に家族としての困りごとを話し合ったり、専門家を呼んで病気や薬物治療、社会資源、福祉制度などの勉強会をします。
また行政などへの要望・働きかけなどの社会的な活動も精力的に行っています。
精神保健福祉センター・保健所・市町村などで、連絡先、入会方法、活動内容などの具体的な情報を提供してくれます。
自助グループとは、アルコールの問題や薬物依存の問題、病的賭博、摂食障害、ひきこもりの問題などを抱えた人たちが同じ問題を抱えた人と、自発的に当事者の意志でつながり、結びついた集団のことをいいます。
一人で自分の問題から脱却することはむずかしいので、グループメンバーと体験を共有し、分かちあい、自分の抱える問題や悩みをしっかりと直視して自分を変化させていくことができます。
身近な居住地に利用したい自助グループがあるかどうかの情報は市区町村、保健所、精神保健福祉センターに問い合わせをすることができます。
双極性障害の人との接し方のまとめ
ここまで双極性障害の人との接し方についてお伝えしてきました。
双極性障害の人との接し方をまとめると以下の通りです。
- 双極性障害とは、活動的になる躁状態や軽躁状態と、気分が落ち込み何をしても楽しいと思えなくなるうつ状態が繰り返される病気
- 双極性障害の治療を進めていく上では、患者さんの努力だけでなく、周囲の人の協力も不可欠
- 双極性障害の方は病状のコントロールに不慣れなため、しばらくは恋愛や仕事を頑張るよりも、生活を安定させることを優先すると良い
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。