腎臓病は自覚症状が出にくい病気で、出たときは既に病状が進行しています。
腎臓病を早期発見する指標となるのが蛋白尿です。
蛋白尿をセルフチェックする方法はあるのでしょうか?
蛋白尿の出る原因にはどのようなものがあるでしょうか?
本記事では蛋白尿と診断された場合について以下の点を中心にご紹介します。
- 蛋白尿の身体にあらわれる症状について
- 蛋白尿が出る原因について
- 蛋白尿が出たときの対処・改善方法について
「蛋白尿と診断されたら?」について、理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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蛋白尿とは?
蛋白尿とは腎臓や泌尿器などの機能障害により、
一定量以上のたんぱく質が排泄されることを蛋白尿と言います。
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蛋白尿の症状
尿のセルフチェック方法と蛋白尿の症状について以下の2点をご紹介します。
こんな尿が出たら蛋白尿を疑うべき
見た目の尿の色や性状から蛋白尿を疑うべきかどうかがわかる方法があります。
尿の状態からセルフチェックできる方法をご紹介します。
【尿の色や性状と身体のトラブル】
ケース | 尿の色や性状 | 身体のトラブル |
1 | 無色透明 | 長く続く場合は糖尿病や尿崩症の疑いあり |
2 | 白くにごっている | 腎臓や膀胱が尿路感染の疑いあり |
3 | 泡立ちがなかなか消えない | 蛋白尿や糖尿病の疑いあり |
この他に、尿の色でセルフチェックできる〝尿の色カラーチャート“なども使うとよいでしょう。
身体にあらわれる蛋白尿の症状
身体にあらわれる蛋白尿の症状には以下のようなものがあります。
- 足のむくみ
- 血尿
- 高血圧
- 尿量の低下
それぞれの症状についてご紹介します。
足のむくみ
腎臓疾患の症状の1つとして足のむくみがあります。
足のむくみは皮下組織に血液が過剰に滞留して起こり、腎臓病が原因の場合があります。
特に指でむくんでいるところを押すと痕が残る場合は腎臓に問題がある可能性があります。
血尿
腎臓に何らかの機能障害が起きていると蛋白尿の他に尿に血尿が出る場合があります。
血尿の原因には腎臓疾患の他に尿路感染症や結石、腫瘍の可能性があります。
また、血尿と蛋白尿が一緒に出る場合もあります。
血尿が出た場合は早めの病院の受診をおすすめします。
高血圧
腎臓病になると高血圧になることが多くあります。
高血圧になれば、腎臓に負担がかかり、さらに腎臓の機能障害が進むことになります。
尿検査とともに、日頃からの適切な血圧のコントロールが大切です。
尿量の低下
尿量が400ml/日以下になると乏尿という病態になります。
乏尿は大きく以下のように分類されます。
- 脱水などを原因とする腎前性乏尿
- 腎障害による腎性乏尿
- 尿管・膀胱・尿道の閉塞で起こる腎後性乏尿
乏尿状態が長時間続くと吐き気、嘔吐、不整脈などを起こすことがあります。
本来は尿と一緒に排泄されるべき物質が体内に残って蓄積されるからです。
蛋白尿が出る原因
蛋白尿が出る原因について以下の2つをご紹介します。
生活習慣・体調不良によるもの
蛋白尿は生活習慣や体調不良によっても出ることがあります。
体調不良で蛋白尿が出るのは
- 風邪をひいた後
- ストレス
- 運動の後
- 疲労や睡眠・水分不足
などのときです。
腎臓に負担をかける不規則な生活習慣や喫煙、肥満なども蛋白尿が出る原因になります。
生活習慣の改善や定期検診で尿や血液の検査を受けることが大切です。
病気によって起こるもの
蛋白尿によって疑われる以下の病気についてご紹介します。
腎臓病
慢性腎臓病は生活習慣病を原因とし、メタボリックシンドロームと関係が深い病気です。
腎臓病は初期には自覚症状があらわれにくいので尿検査での早期発見が必要です。
尿蛋白の定量検査で30mg/dl以上の場合は陽性になります。
腎臓病になると蛋白尿の他に
- 血尿
- むくみ
- 高血圧
- 尿量の変化
などの症状があらわれます。
糖尿病
腎機能低下で蛋白尿が出ると糖尿病の発症も疑われます。
糖尿病はインスリンの作用低下が原因で高血糖が慢性的に続き
- 腎機能低下
- 網膜症
- 神経障害
の3大合併症を伴うことが多い病気です。
膠原病
全身性エリテマトーデス(SLE)は膠原病の中でも腎臓障害を起こすことの多い病気です。
SLEになりループス腎炎を合併すると以下のような腎臓のほとんどの症状をあらわします。
- 蛋白尿
- 血尿
- ネフローゼ症候群
- 急速進行性腎炎症候群
結石
結石は蛋白尿から考えられる病気の1つです。
結石は腎機能低下によりシュウ酸カルシウムなどの異物が尿路で結晶化して起こります。
結石はできる場所(もしくは移動した場所)で
- 腎結石
- 膀胱結石
- 尿管結石
などと呼ばれます。
尿道炎や膀胱炎
尿道炎や膀胱炎も蛋白尿から考えられる病気です。
泌尿器の炎症が起きる病気で、尿道炎は男性、膀胱炎は女性に多く起こる病気です。
炎症は尿道や膀胱に細菌が外部から入ることが原因となっています。
その他・蛋白尿によって疑われる病気
その他、蛋白尿によって疑われる病気に妊娠高血圧症候群があります。
妊娠高血圧症候群(旧名称は妊娠中毒症)は妊娠中に蛋白尿が出ると疑われる病気です。
妊娠高血圧症候群は蛋白尿の他に
- 浮腫
- むくみ
- 倦怠感
- 高血圧
などの症状があらわれます。
蛋白尿と診断されたら何科を受診するの?
蛋白尿と診断されたときの受診科と検査方法について以下にご紹介します。
腎臓内科・泌尿器科
尿検査で異常がある場合の受診科は以下の症状を参考にしてください。
- 腎臓内科:尿蛋白が多い場合や尿潜血が同時に出ている場合
- 泌尿器科:尿潜血が多い場合(結石やがんの可能性がある)
蛋白尿が出た時の検査方法
蛋白尿が出たときの検査方法について以下ご紹介します。
尿検査
尿検査には以下のようなものがあります。
- 早朝尿:起立性蛋白尿が疑われる場合で自宅で採取した早朝の尿で検査する
- 尿蛋白定量:尿蛋白の定量(尿蛋白/尿クレアチニン比)で評価する
- 尿沈渣:尿沈殿物の顕微鏡検査(異常の場合は糸球体腎炎の疑いあり)
- 尿細胞診:尿中のがん細胞の有無の検査(比較的高齢で尿潜血がある場合)
血液検査
血液検査は糸球体腎炎などが疑われる場合に実施する検査です。
血液検査は腎機能の評価と腎疾患の原因を探すために行うものです。
画像検査
画像検査は尿検査及び血液検査で腎臓病やがんが疑われる場合に、さらに行う検査です。
画像検査はCTやエコーによる検査で、実施する目的は以下の3つです。
- 萎縮腎や低形成腎、多発性嚢胞腎などの腎臓の形態異常評価
- 腎生検適応の有無
- 悪性腫瘍(がん)の有無
蛋白尿が出たらどうする?対処・改善方法
蛋白尿が出たときの対処法・改善方法について以下の3点を挙げます。
- 食生活の改善
- 適度な運動
- 薬物療法の活用
それぞれの方法についてご紹介します。
食生活の改善をする
慢性腎臓病は生活習慣病を原因として起こることは既にご紹介しました。
生活習慣病に大きな影響を与える食生活を改善することで、腎機能の低下を防ぐことができます。
蛋白尿を原因とする腎臓病などの予防には
- 減塩
- タンパク質の制限
- 過度の飲酒を避ける
など、普段の食生活の改善を心がけましょう
適度な運動をする
蛋白尿を原因とする腎臓病には、有酸素運動などの適度な運動が効果的です。
運動治療としては「腎臓リハビリテーション」という運動療法もあります。
腎臓リハビリテーションは運動・食事・精神の包括的なサポートをするプログラムです。
期待できる効果は以下の3つです。
- 身体機能の向上
- 心臓や脳への保護効果
- 腎臓の保護効果(可能性として期待されている)
薬物療法を活用する
薬物療法の活用も蛋白尿を原因とする腎臓病の機能低下の改善方法の1つです。
薬物治療は特に血圧と血糖値の治療で以下の薬の組み合わせ治療がおこなわれます。
- RAS系阻害薬
- SGLT-2阻害薬
蛋白尿改善のための漢方薬
蛋白尿改善に効果のある漢方薬についてご紹介します。
蛋白尿に効果のある漢方薬は以下の2つが代表的です。
- 柴苓湯(さいれいとう)
- 七物降下湯(しちもつこうかとう)
柴苓湯は腎疾患において慢性腎炎やネフローゼ症候群などに幅広く活用されています。
蛋白尿排泄量減少や腎機能維持の効果についても認められています。
また七物降下湯も慢性腎臓病への治療効果(蛋白の発現低下の効果)が報告されています。
出典:【173. 七物降下湯の慢性腎臓病への治療効果と機序の解明】
尿蛋白の正常値とは?プラスマイナスの見方
尿蛋白の基準値と検査におけるプラスマイナス値の見方は以下の通りです。
【尿蛋白の基準値】
基準値 | 尿中のタンパク質の量 |
陰性 | 15mg/dl以下 |
疑陽性 | 15~30mg/dl |
陽性 | 30mg/dl以上 |
出典:厚生労働省【たんぱく尿 | e-ヘルスネット(厚生労働省)】
基準値で正常な時は陰性(-)、尿蛋白が尿に出ているときは陽性(+)になります。
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肥満と蛋白尿の関連性
慢性腎臓病(CKD)はメタボリックシンドロームが原因となって発症することがあります。
メタボリックシンドロームとCKDの関係で、肥満を原因とする肥満関連腎臓病があります。
肥満関連腎臓病になるとアルブミン尿(蛋白尿の1種)が出やすくなります。
内臓脂肪型肥満になると
- エネルギー過剰
- 代謝亢進状態
- 脂肪細胞
などから作られる物質が腎臓に負担をかけて腎機能を低下させるからです。
またメタボリックシンドロームの諸症状である
- 糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
はいずれもCKDの発症の危険因子となり、腎機能の低下を招きます。
腎機能の低下で処理しきれないタンパク質が尿にでて蛋白尿となるのです。
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蛋白尿の症状「足のむくみ」の確認方法
蛋白尿の症状「足のむくみ」のセルフチェック方法についてご紹介します。
【セルフチェックの方法】
- 足のすねを手の指で5秒間押してくぼませる
- くぼんだ部分が10秒以上くぼんだままの場合、「むくみあり」と判定される
- 1.と2.を朝と夜に行いむくみの程度を観察する(通常、夜のほうがむくみがひどい)
むくみの症状は、重大な病気のサインの場合があります。
むくみがひどい場合は放置せずに医師の診断を受けるようにしましょう。
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蛋白尿について・まとめ
ここまで蛋白尿と診断されたらについてお伝えしてきました。
蛋白尿について、要点を以下にまとめます。
- 蛋白尿が出ると足のむくみや血尿、高血圧、尿量の低下などの症状があらわれる
- 蛋白尿は生活習慣・体調不良や腎臓病、糖尿病、膠原病、結石、尿道炎や膀胱炎などの病気が原因として疑われる
- 蛋白尿が出たときは食生活の改善や適度な運動、薬物療法の活用で対処する
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。