うつ病は、実は一度治っても再発を繰り返す可能性が高い病気です。
うつ病は、どれくらいの確率で再発するのでしょうか。
また、うつ病の再発を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
本記事では、うつ病の再発について以下の点を中心にご紹介します。
- うつ病の再発率と期間
- うつ病の再発の原因
- うつ病の再発を防ぐには
うつ病の再発について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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うつ病とは
うつ病は、気分障害の1種です。
主な症状は、以下のような精神的なものと、
- 憂鬱
- 悲観的
あわせて、以下のような身体的なものが多くみられます。
- めまい
- 不眠
- 頭痛
うつ病は長らく、心の病気と考えられてきました。
しかし近年では、うつ病は心ではなく脳の障害の1種ということが分かってきました。
具体的には、うつ病は脳がうまく機能しないことで起こる病気です。
脳の機能不全の原因としては、
- ストレス
- 疲労
などが代表的です。
出典:厚生労働省【うつ病|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省】
出典:厚生労働省【1 うつ病とは】
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うつ病は再発するの?
うつ病は、一度治っても再発するおそれのある病気です。
うつ病の再発率や再発期間について解説します。
うつ病の再発率
うつ病の再発率は、約60%です。
ちなみに、うつ病は再発を繰り返すほど、再発率も高くなると指摘されています。
たとえば、うつ病の1回目の再発率は約60%です。
2回再発すると再発率は70%になり、3回目の再発後の再発率は90%にものぼると考えられています。
出典:厚生労働省【職場復帰のガイダンス(働く方へ)|こころの耳】
再発の期間
うつ病の再発期間は個人差が大きく、一概にはいえません。
たとえば、1年以内に再発することもあれば、10年後・30年後・50年後に再発する場合もあります。
再発期間が短いほど、その後の再発回数が多くなる傾向がみられます。
もちろん短い期間で再発しても、再発回数が少ない場合もあります。
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うつ病はなぜ再発するの?
うつ病は、再発しやすい病気です。
再発回数が多いほど再発リスクも高くなるため、初回の治療後にきちんと再発防止策を講じることが大切です。
有効な再発防止策を考えるには、うつ病再発の原因をきちんと把握する必要があります。
ここからは、うつ病再発の主な原因を紹介していきます。
原因が改善されていないため
うつ病再発の代表的な原因が、うつ病の根本原因が解決されていないことです。
たとえばうつ病の原因が職場にあるとしましょう。
休職して職場を離れれば、うつ病の原因からは一時的に離れられます。
そのため、うつ病の症状も治まったかのようにみえます。
しかし職場に復帰すれば、うつ病の原因と再び向かい合うことになります。
結果、心身にストレスが蓄積して再びうつ状態に陥るというわけです。
新しいストレスが生じたため
前回とは、全く別の原因でうつ病が再発することもあります。
代表的な原因としては、
- 引っ越し
- 転職
などが挙げられます。
簡単にいえば、環境の変化がうつ病再発のキッカケになりやすいのです。
再発は、結婚・出産などの喜ばしい出来事で起こることもあります。
新しい環境に馴染むのは、想像以上に心身に負担がかかるためです。
自身はそうと感じていなくとも、実際には大きなストレスが積み重なり、うつ病が再発することもあります。
あるいは、病気・ケガや身近な人との別れが再発を引き起こすこともあります。
治療を自己中断したため
治療を途中で止めてしまうことも、うつ病再発の代表的な原因です。
特に治療を自己判断で止めると、うつ病の再発リスクが高くなります。
うつ病には、次の3つのステージがあります。
- 急性期:もっともうつ症状がひどい
- 回復期:うつ症状にやや改善がみられる
- 維持期:うつ症状がかなり軽減される
うつ病の治療を自己判断で止めやすいタイミングは、維持期です。
維持期では、通院や服薬が功を奏して、うつ病の症状がほとんど出なくなるためです。
つまり心身の調子がよくなったために、「治った」と思い込んでしまうのです。
維持期に自己判断で通院や服薬を止めるケースは、実は少なくありません。
たとえ調子がよくなったとしても、うつ病は根本的に治っていないこともあります。
うつ病が治っていない状態で元の生活に戻ると、治りかけたうつ病がぶり返すおそれがあります。
うつ病の再発を防ぐには
うつ病の再発を防ぐ方法をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
うつ病について勉強する
うつ病の再発を防ぐには、うつ病について理解を深めましょう。
たとえばうつ病の
- 原因
- 症状
- 治療の仕方
について知識を蓄えることが大切です。
うつ病の原因を理解しておけば、その原因と距離を置くことが可能になります。
症状を知っておけば、前兆などがあらわれたときに、いち早く対処できるようになるでしょう。
治療方法の知識があれば、療養中にやるべきこと・控えるべきことの判別がつきます。
うつ病を防ぐには、まずうつ病ととことん向き合うことが大切です。
ストレス対策を行う
うつ病は、ストレスによって起こることがほとんどです。
うつ病再発を防ぐには、ストレスへの対処方法を講じることが大切です。
第1に大切なのは、ストレスの原因から離れることです。
たとえば、職場にストレスを感じるなら、配置換え・転職を検討するのもよいでしょう。
家庭に原因がある場合は、家族と十分に話し合って、ストレスがたまらないように協力してもらいましょう。
たまったストレスを発散することも大切です。
たとえば、休養や趣味はストレス発散の代表的な方法です。
ストレスを過度にためないためにも、自分にあったストレス発散方法を考えてみてください。
生活習慣を見直す
生活習慣の改善もうつ病再発防止に有効です。
具体的には、
- 規則正しい生活
- 栄養バランスのよい食事
- 適度な運動
などを心がけましょう。
規則正しい生活が再発予防になる理由は、自律神経が整いやすくなるためです。
自律神経は、心身の調子を整えている神経系です。
自律神経が狂うと、不安・悲観的などの心的症状が出やすくなります。
あるいは、不眠・頭痛などの身体的な症状があらわれることも多いです。
つまり自律神経が狂うと、うつ病によく似た症状があらわれやすいのです。
自律神経の乱れは、そのままうつ病に発展することも珍しくありません。
うつ症状やうつ病を防止するためにも、生活を整えて自律神経を正常に保ちましょう。
認知行動療法に取り組む
うつ病の再発防止には、認知行動療法も有効です。
認知行動療法とは、自身の認知の歪みを自覚して、意識的に思考を切り替える方法です。
認知の歪みとは、物事に対する自分の思考回路のクセです。
うつ病の方の多くは、物事をネガティブに捉える傾向があります。
たとえば、上司に軽く注意されただけでも、「私って本当にダメ人間だ」という思考に陥りがちです。
軽く注意されただけで「ダメ人間」とすぐ否定的になることが、認知の歪みに該当します。
認知行動療法では、まず自分の認知が歪んでいることを客観的に意識します。
次に、自分の認知が歪んでいることを理解した上で、物事を違う方向からポジティブに捉える訓練をします。
上司の注意を例にとると、「私のためを思って注意してくれたんだ」と考えるのです。
ダメ人間だと落ち込んだときに比べて、「次は頑張ろう」という希望・モチベーションがわきやすくなるでしょう。
認知行動療法は、ストレスを感じにくい思考回路・立ち回り方を身につける方法です。
ストレスに打ち勝つ姿勢が鍛えられるため、うつ病の再発リスク低下が期待できます。
出典:厚生労働省【うつ病の認知療法・認知行動療法 (患者さんのための資料)】
医師の指示に従う
うつ病の治療中は、医師の指示に従いましょう。
具体的には、自己判断で通院や服薬を止めるのはNGです。
うつ病は、
- 回復期
- 維持期
に入ると症状が軽快します。
症状が軽いからといって、うつ病が治ったとは限りません。
完全に治っていない状態で治療を止めると、うつ病がぶり返す可能性があります。
うつ病を完全に治すためにも、治療は医師の指示に従って行ってください。
通院・服薬をやめるのは、医師の許可が出てからにしましょう。
カウンセリングを行う
うつ病の再発を防ぐには、信頼できる相談相手を持つことが大切です。
日々の悩み・ストレスは、誰かに話を聞いてもらうだけでも随分解消されるためです。
身近な相談相手は家族・友人・パートナーです。
身近な方に相談できないときは、医師やカウンセラーなどを積極的に利用しましょう。
再発を防ぐには周りからの理解も必要
うつ病の再発を防ぐには、周囲による次のことが大切です。
- 理解
- 協力
たとえば職場の理解・協力があれば、体調が悪いときに仕事を調整してもらいやすくなります。
周囲の協力を得るためにも、ご自身の体調や状況などは、日頃からこまめに相談しておきましょう。
うつ病再発の兆候
うつ病の再発の兆候には、次のようなものがあります。
- 憂鬱
- 不安な気持ち
- 不眠
- 感情の起伏が激しい
- 意欲の低下
- 食欲不振
具体的な症状は、個人によって差があります。
少しでもおかしいと感じる症状がある場合は、念のため病院を受診しましょう。
あわせて、じっくり休養を取ることも大切です。
うつ病が再発してしまったら
もしうつ病が再発した場合は、改めて治療が必要です。
治療を受けるためにも、医療機関を受診してください。
再発の場合は、前回と同じ医療機関・医師に相談するのがおすすめです。
同じ医師であれば前回の状況などが詳細に分かっているため、的確な治療を受けやすくなります。
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うつ病の年間推移
うつ病は、ときに「現代病」とも呼ばれるほど、有病者が多い病気です。
厚生労働省の調査でも、うつ病を含む気分障害の患者数は、年々増加傾向であることが分かりました。
厚生労働省の調査は、
- 統合失調症
- 気分障害
- 神経症性障害
を対象としています。
1996年と2017年の調査結果を比べると、気分障害の患者数が大幅に伸びていることが分かります。
【1996年】
- 統合失調症など:72.1万人
- 気分障害など:43.3万人
- 神経症性障害など:46.6万人
【2017年】
- 統合失調症など:79.2万人
- 気分障害など:127.6万人
- 神経症性障害など:83.3万人
うつ病を含む気分障害の患者は、20年で3倍近く増えています。
また、うつ病患者は今後も増え続けると予測されています。
うつ病患者を増やさないためには、本人が対策を講じることはもちろん、周囲が理解・協力することも大切です。
出典:厚生労働省【図表1-2-9 こころの病気の患者数の状況】
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うつ病の再発まとめ
ここまでうつ病の再発についてお伝えしてきました。
うつ病の再発の要点を以下にまとめます。
- うつ病の再発率は60%程度で、期間は個人差が大きいため一概にいえない
- うつ病の再発の原因は、不十分な治療・根本原因の未解決・環境の変化など
- うつ病の再発を防ぐにはストレスの解消・医師の治療・周囲の協力が大切
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。