昨今では、成人男性のおよそ3人に1人が、何らかの肝機能異常があると推定されています。
肝機能検査は、症状が出にくいといわれる「肝臓の病気」を発見する手がかりになります。
手遅れにならないために、定期的な健康診断で肝機能について知っておきましょう。
本記事では健康診断の肝機能について以下の点を中心にご紹介します。
- 健康診断で肝機能を調べる検査って?
- 肝機能の高い・低いの原因は?
- 健康診断の肝機能の検査は前日の食事も関係するの?
- 肝機能を改善する方法とは?
健康診断の肝機能について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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健康診断とは
健康診断とは、生活習慣病やさまざまな病気の発見を目的とした検査です。
定期的に検査することで、病気の予防や早期治療をすることができます。
労働安全衛生法では、「企業や事業所は1年に1度、従業員に健康診断を受けさせる」と制定されています。
従業員が、心身とも健康に就業することを目的とした「企業側の義務」といえます。
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健康診断で肝機能を調べる検査
肝臓は、生命を維持するために重要な臓器の一つで、代謝と解毒の働きをします。
飲食物などで取り入れた栄養は、そのまま体内で利用することができません。
そこで肝臓は、胃や腸で分解・吸収された栄養素の形を利用しやすい形に変えて貯蔵します。
また肝臓は、必要な栄養素を肝臓以外の臓器に分配する働きもあります。
肝臓は、体内に入った有害な物質が体に悪影響を及ぼさないように、分解する働きもします。
さらに肝臓には、不要な物質を解毒したり排出する働きがあるのです。
肝臓は、右上腹部から肋骨の下あたりにかけて存在している臓器です。
成人では1キロ以上の重さがありますが、再生機能が高いことでも知られています。
臓器の一部を切り取られても、もとの大きさに再生することができる唯一の臓器です。
また肝臓は、障害が起きても症状が現れにくい「沈黙の臓器」ともいわれています。
肝臓は痛みを感じないため、症状が出た頃には、すでに病気が進行している場合が多いのです。
肝機能とは
肝臓や組織に何らかの炎症や障害が起きると、血液中に酵素が漏れ出します。
漏れ出た酵素の種類や値を検査することで、肝機能の状態を知ることができます。
一般的な健康診断の血液検査では、おもに以下の3項目を中心に肝臓の中の酵素の数値を調べます。
- GOT(AST)
- GPT(ALT)
- γ-GTP
血液検査で調べる
健康診断で肝機能を検査するときは、血液を調べます。
肝臓の機能に障害が出ると、肝細胞が破壊され酵素が血液中に漏れ出し、肝機能の数値が高くなります。
肝機能の基準値
肝機能の状態を知るために、血液検査を行います。
それぞれの項目の「基準値」をまとめたので、参考にしてください。
GOT(AST)
【基準値9~32IU/L】
「アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ」の略で、肝臓の中にある酵素の1つです。
肝臓だけでなく、心筋や骨格筋にもみられる酵素です。
肝臓や心臓に何らかの障害が起こると血液に漏れ出し、GOTの数値が高くなります。
GPT(ALT)
【基準値3~38IU/L】
「アラニンアミノトランスフェラーゼ」の略で、GOTと同じく肝臓の酵素の1つです。
おもに肝臓に含まれる酵素で、肝臓に炎症や障害があると血液に漏れ出し数値が上がります。
γ-GTP(γ-GT)
【基準値男性:15~90IU/L 女性:8~68IU/L】
「ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ」の略です。
おもに胆道(胆汁の通り道)や膵臓、腎臓に多く含まれています。
肝臓には、アミノ酸を生成したり、蛋白質を分解・合成したりする働きがあります。
中でも、胆汁に障害が起こると、γ-GTPの数値が上昇するのが特徴です。
γ-GTPが高くなる原因として、過剰なアルコール摂取が考えられます。
ALP
【基準値103~289U/L】
「アルカリフォスファターゼ」の略で、体内のリン酸化合物を分解する働きがある酵素です。
肝・胆道系酵素といわれますが、腎臓や胎盤、骨にも多く含まれています。
臓器に異常が起きると、血液中にALPが流れ出し、中でも反応が多くみられるのは胆汁と骨の異常です。
ALPとγ-GTPの両方の数値が高いと、胆道系の疾患が疑われます。
もしALPのみが高値の場合は、胆道系以外で骨の異常の可能性があります。
総蛋白
【基準値6.5~7.9g/dⅬ】
血液中の蛋白質と、肝機能は深い関わりがあります。
食事などで摂取した蛋白質は、そのままでは大きいため小腸で吸収することができません。
蛋白質は、体内で分解され吸収しやすい状態になり、アミノ酸へと変換されます。
アミノ酸は肝臓まで運ばれ、再び生命を維持するための蛋白質が作られます。
つまり総蛋白は、食事ではなく体内で変換し再生する「肝機能」の影響を受けるのです。
健康診断で総蛋白の数値が低いと、肝臓病、栄養不良が疑われます。
アルブミン
【基準値3.9g/dⅬ】
血液中の蛋白質の1種で、栄養状態を知る1つの目安です。
血清アルブミンは3.9g/dⅬが基準値ですが、3.7〜3.8は要注意となります。
さらに低い3.6g/dⅬ以下の場合は、低栄養とみなされる異常値です。
アルブミンが低値の場合は、「栄養不良」のほかに「肝障害」や「ネフローゼ症候群」などが要因として考えられます。
反対にアルブミンが高値の場合、注意したいのが「脱水」です。
総ビリルビン
【基準値0.2~1.2gm/dⅬ】
肝臓や胆道に異常がないかを調べる検査です。
ビリルビンとは、古くなった赤血球が破壊されたときに生成される黄色い色素のことです。
赤血球に含まれるヘモグロビンの分散産物で、血液によって肝臓へ運ばれます。
肝臓で処理されたあとは、胆汁に排出されます。
何らかの障害で血液中のビリルビンが増えるとみられるのが、皮膚や目に現れる「黄疸症状」です。
総ビリルビンの数値が高いと、肝炎や肝硬変、肝がんなどが疑われます。
LDH
【基準値120~220U/L】
別名は「乳酸脱水素酵素」で、細胞内で糖がエネルギーに変わるときに必要な酵素の1つです。
心臓や肺、腎臓、骨格筋などに多く含まれています。
もし、LDHを含む臓器や組織が何らかの障害や損傷をうけると、数値が高くなります。
アミラーゼ
【基準値40~130U/L】
アミラーゼは、でんぷん質を分解するときに重要な「消化酵素」です。
膵臓や耳下腺からも分泌される酵素で、でんぷんの代謝に大きく影響しています。
アミラーゼは、血液中に混ざり全身を巡ったのち、腎臓でろ過され、尿中に排出されます。
血液中や尿中に排出されるアミラーゼが増加した場合は、膵臓や唾液腺の細胞の異常が考えられます。
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健康診断で肝機能の数値が高い・低い原因
肝機能の数値は、定期的な健康診断で発見されるケースが多いです。
前述したように肝機能の検査は、
- GOT(AST)
- GPT(ALT)
- γ-GTP(γ-GT)
を中心に検査を行います。
肝臓の中には、「肝細胞」と「胆管細胞」が中心的な役割を果たしています。
GOT・GPTは、アミノ酸の生成に必要な酵素で、含まれているのは肝細胞や心筋などです。
一方でγ-GTPもアミノ酸の生成に欠かせない酵素で、胆管細胞に多く存在しています。
そのため、何らかの炎症や障害が起こるとこれらの酵素が血液中に流れ出し、障害の場所に応じて数値が上昇します。
高い原因
【GOT・GPT数値が高い場合】
- 脂肪肝
- アルコール性(飲酒による)
- ウイルス性(B型肝炎、C型肝炎など)
- 薬剤性(処方薬やサプリメントなど)
- 特殊な疾患(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎など)
- 閉塞性黄疸
【γ-GTP数値が高い場合】
- おもにアルコールの摂取
GOT・GPT値が高くなる要因の多くに、「脂肪肝」が挙げられます。
ある研究では、肝機能障害(原因不明)を起こしている患者の肝細胞を調べた研究があります。
すると、全体の68〜84%が脂肪肝であったとの研究報告があります。
また、GOTが含まれているのは、肝臓以外の心臓や筋肉です。
そのため、GOT数値だけが高い場合は、肝臓以外の心筋梗塞や筋肉異常の可能性があります。
γ-GTPの数値が上昇して肝機能障害を疑うときに、もし飲酒の習慣があるなら考えられる原因は「アルコール」です。
また、胆道に異常がある場合もγ-GTPの数値が上昇します。
ほかにγ-GTPの数値が上昇することで考えられる要因は、別の疾患で処方された薬や漢方薬、サプリメントなどです。
低い原因
肝機能が低い場合に考えられる原因は、
- 妊娠中である
- 腎機能低下
- ビタミンB6の欠乏
などです。
低いからといって、何か治療するほどではないといわれますが、医師に相談することは大切です。
必要に応じて、ビタミン剤の処方や経過観察をすることが必要になります。
また透析中であったり、高齢になるにつれて肝機能が低下することも大いに考えられます。
肝機能の数値は前日の食事の影響も大きい
肝機能は当日の食事はもちろん、前日も大きな影響をもたらします。
とくに検査前の飲酒は、肝機能が異常値になることがあるため、控えた方が良いでしょう。
好ましい食事
- 白米
- おかゆ
- パン
- 鶏肉
- 野菜たっぷりのお味噌汁
- 豆腐
「主食・主菜・副菜」がそろっており、消化や栄養バランスの良い食事を心がけましょう。
コンビ二のお弁当やどんぶりなどは単品料理だけではなく、一緒にサラダを添えるのも良いでしょう。
白米は消化がゆっくりですが、パンは消化吸収が早いといわれていますのでおすすめです。
健康診断の中で肝機能検査を受ける場合は、他の検査にも支障が出ないように食事を考える必要があります。
控えた方が良い食事
- 脂っこいもの
- アルコール類
- 肉料理
- インスタント食品
- 甘いお菓子や飲み物
アルコールは、肝機能のほかに中性脂肪や血糖にも大きく影響します。
そのため検査の前日は、アルコール類を控えるようにしましょう。
もし健康診断の中で、胃カメラやX線をする場合は、消化の良いものを選んでください。
きのこ類や海藻類は、普段の食事には取り入れたい食材ですが、検査のときはNGです。
きのこ類や海藻類は、食物繊維が豊富なことから、消化吸収が遅くなるため控えましょう。
健康診断の肝機能で引っかかった際の再検査
肝臓は何か異常があっても自覚症状はほとんどないといわれ、健康診断で発見されることが多いです。
そのため、症状が出たころには、病気が進行している可能性があります。
肝機能検査で引っかかってしまった場合は、早めに医療機関に受診しましょう。
ここでは「要再検査」となった場合にするべきことをまとめていきます。
【医療機関に受診】
「消化器内科」「胃腸科」「内科」が良いですが、肝臓は腹部の臓器なので「消化器内科」がおすすめです。
【再検査の内容】
再検査の項目 | わかること |
AST/ALT | 肝細胞の障害(炎症、壊死) |
アルブミン/総コレステロール | 肝臓での合成機能 |
γ-GTP/ALP/総ビリルビン | 肝臓での解毒・胆道系酵素の排泄機能 |
蛋白/ZTT/血小板数 | 慢性炎症の程度、進行度 |
また、「既往歴、家族の既往、飲酒歴、生活習慣」など問診を行い、疑われる病気の要因を調べます。
- 過剰なアルコール摂取が習慣化している場合→「アルコール性肝障害」
- 中性脂肪やコレステロールの高値が見られる→「脂肪肝」
などが疑われます。
上記の場合は、生活習慣や食事を見直した上で、3〜6ヵ月の期間を空けて再検査します。
肝機能の数値を改善する方法
肝機能の数値を改善するための方法として、「食事内容」と「運動方法」が推奨されています。
生活習慣を変えることで、肝機能数値の改善も期待できます。
ぜひ、参考にしてください。
食事
野菜や蛋白質が多く、バランスの良い食事を心がけましょう。
糖質や脂質の多い食品や加工食品ばかり食べてしまうと、「肝機能低下」の恐れがあります。
また、飲酒の習慣がある場合は、肝臓に負担がかかってしまいます。
どうしてもお酒はやめられないというときは、以下のことに気をつけてください。
- 空腹のときに飲まない
- アルコールは適量を飲む
- 休肝日を作る
空腹でアルコールを飲むと、肝臓に負担がかかります。
肝臓内で分解する時に、蛋白質やミネラル、ビタミンを消費してしまいます。
そのため、一緒に枝豆などの大豆製品やナッツ類、野菜を摂りましょう。
またお酒は一気に飲むのではなく、ゆっくり時間をかけて飲むことも大切です。
ただしストレスや疲労が溜まっているときは、肝臓の働きも悪くなってしまいます。
「休肝日」を作って、肝臓の負担を軽減しましょう。
運動
生活習慣を変えるため、ウォーキングなどの軽い運動を定期的に行うのも有効です。
肥満が原因で脂肪肝になる場合も少なくないため、運動面も見直しましょう。
負担にならない程度のジョギングやウォーキングは気分転換になり、ストレス軽減も期待できます。
肝機能を守る適度な飲酒の目安
厚生労働省が発表している定義によると「適度な1日あたりの飲酒量」は、以下の通りです。
節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度である |
上記のアルコール20gをお酒に換算すると、
- ビール中瓶であれば1本
- 缶チューハイ(7%)であれば350mⅬを1缶
- 日本酒であれば1合
- ウイスキーダブルであれば1杯
に相当します。
また、女性は平均的な体重が低く体脂肪率が高いうえに、体内の水分量が少ない傾向にあります。
したがって、男性と同量のアルコールを摂取すると、血中アルコール濃度が高くなってしまいます。
そのため女性の飲酒量は、男性の1/2〜2/3程度が推奨されています。
出典:厚生労働省【アルコール】
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健康診断の肝機能のまとめ
ここまで健康診断の肝機能についてお伝えしてきました。
健康診断の肝機能について要点をまとめると以下の通りです。
- 健康診断で肝機能を調べるときは、血液検査で肝細胞の酵素の値を調べる
- 肝機能数値の高い原因は、脂肪肝や薬剤性、低下の原因はアルコールによるものが多い
- 健康診断の肝機能の検査は前日の食事も関係するため、野菜中心のバランスの良い食事を心がけ、飲酒は控える
- 肝機能を改善する方法は、食生活の見直しと運動を取り入れる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。