1年間の医療にかかった費用が一定額を超える場合は、医療費控除が利用できます。
それでは、健康診断にかかった費用も医療費控除できるのでしょうか。
また、健診費用を医療費控除するにはどうしたらよいのでしょうか。
本記事では、健康診断の医療費控除について以下の点を中心にご紹介します。
- 健康診断の費用は医療費控除の対象になるのか
- 健康診断の費用が医療費控除の対象になるケース
- 健康診断の費用で医療費控除を受ける方法
健康診断の医療費控除について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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健康診断とは
健康診断とは、身体測定や各種検査によって個人の健康の尺度を把握することです。
主な目的は、生活習慣病を始めとする種々の病気を早期発見し、治療につなげることです。
また、健康診断には病気の予防の目的もあります。
健康診断では、
- 血液検査
- 尿検査
- 検便
- バリウム検査
などを行うことが一般的です。
出典:厚生労働省【健診 | e-ヘルスネット(厚生労働省)】
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健康診断の費用は医療費控除の対象になる?
医療費控除とは、1年間の医療費が10万円を超える場合、控除が受けられる仕組みです。
医療費控除は、確定申告をして申請する必要があります。
確定申告で医療費控除を申請すると、納めた税金の一部が還付されることもあります。
ところで、健康診断にかかる費用は、医療費控除の対象になるのでしょうか。
会社員と個人事業主に分けて、健康診断の医療費控除についてご紹介します。
会社員は福利厚生費
会社に勤める会社員の場合、健康診断の費用は医療費の対象にはなりません。
会社員の健康診断費用は、会社の福利厚生の経費として計上されるためです。
すべての企業(法人)は、従業員に対して健康診断を行うことが義務づけられています。
法人の義務である以上、健康診断にかかる費用は、すべて会社が負担しなければなりません。
そのため、会社員の方が健康診断の費用を個人の医療費控除に含めることは不可能です。
個人事業主は自己負担
個人事業主の健康診断の費用は、医療費控除の対象から外れます。
医療費控除の対象になるのは、原則として疾病の治療にかかった費用であるためです。
一方、健康診断とは病気の発見・予防を目的として行うものです。
なにかの病気の治療のために行うものではないため、健康診断は医療費控除の対象には含まれないのです。
個人事業主は、健康診断にかかった費用を福利厚生として計上することも不可能です。
理由は、個人事業主は法人と異なり、健康診断の受診が義務づけられていないためです。
つまり個人事業主の場合は、健康診断の費用は全額自己負担しなければなりません。
ただし、個人事業主であっても健康診断の費用が医療費控除できる場合もあります。
個人事業主が医療費控除できるのは、健康診断で重大な疾病が見つかり、かつ治療につなげた場合です。
出典:国税庁【No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁】
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健康診断が医療費控除の対象となる重大な疾病
重大な疾病が見つかった場合は、健康診断の費用が医療費控除できる可能性があります。
医療費控除の対象となる病気としては、次のようなものが代表的です。
- がん
- 脳血管障害(脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血など)
- 心疾患(狭心症・心筋梗塞など)
- 生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病)
- メタボリックシンドローム
がん・脳血管障害・心疾患は命の危機に直結する重大な疾病です。
そのため健康診断でがんなどが見つかり、かつ治療につなげた場合は、健診費用が医療費控除の対象になります。
生活習慣病が発見された場合も、健診費用が医療費控除の対象になることがあります。
ただし、生活習慣病の場合の医療費控除については、各税務署によって方針が異なります。医療費控除を受けられない場合もあるため、できれば確定申告前に税務署に確認するのがおすすめです。
メタボリックシンドロームが見つかった場合も、健診費用を医療費控除に含められます。
メタボリックシンドロームは、
- 高血圧
- 脂質異常症
- 糖尿病
などの生活習慣病と同等とみなされているためです。
反対に医療費控除の対象にならないのは、ピロリ菌の感染が発見された場合です。
ピロリ菌は胃がんや胃潰瘍などの重大な疾病の原因の1つとして知られています。
しかし、ピロリ菌の感染が必ずしも胃がんに直結するかは解明されていません。
よってピロリ菌の感染が認められただけでは、健康診断の費用は医療費控除に含めることはできません。
出典:国税庁【No.1122 医療費控除の対象となる医療費|国税庁】
医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」
2017年より、医療費控除の特例としてセルフメディケーション税制が開始されました。
ここからはセルフメディケーション税制について解説していきます。
セルフメディケーション税制とは
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例に位置付けられています。
内容は、1年間の医薬品購入費が一定額を超える場合、所得税・住民税の控除が受けられるというものです。
セルフメディケーション税制が適用されるには、さまざまな要件を満たす必要があります。
セルフメディケーション税制の適用要件
セルフメディケーション税制が適用されるための条件は、次の通りです。
1世帯の1年間のOTC薬品の購入費用が合計1万2,000円を超える場合
- 医療費控除は併用できない
OTC医薬品には、スイッチOTC医薬品が含まれます。
スイッチOTC医薬品とは、医療用薬品から転用(スイッチ)された医薬品です。
簡単にいえば、ドラッグストアなどで販売されている市販薬を指します。
セルフメディケーション税制の対象となるかどうかは、医薬品のパッケージ表記などで確認できます。
1年間の医薬品の購入費用は、家族で合算できます。
ちなみに医薬品費の上限額は、8万8,000円です。
病院などで処方される処方薬は、セルフメディケーション税制の対象には含まれません。
また、医療費控除を利用する方は、セルフメディケーション税制は併用できません。
出典:国税庁【セルフメディケーション税制の概要・手続など】
セルフメディケーション税制を活用するには
セルフメディケーション税制の利用対象者は、健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取り組みを行っている方です。
具体的には、次のような取り組みを行っている方がセルフメディケーション税制を利用できます。
- インフルエンザの予防接種
- 市町村のがん検診
- 会社の定期健康診断
- 特定健康診査
- 定期健康診断
- 人間ドック
セルフメディケーション税制を申告する際は、上記のような取り組みを行っていることを照明する必要があります。
具体的には、健康診断の結果通知表・領収証の提出が義務付けられています。
セルフメディケーション税制を利用する場合、医療機関で受け取った領収証・検査結果などは保管しておきましょう。
出典:国税庁【セルフメディケーション税制の概要・手続など】
健康診断の医療費控除は確定申告で行う
健診費用を医療費控除できるのは、重大な疾病が見つかり、その後治療した場合です。
疾病の治療につなげた場合は、健康診断は診察の1種とみなされるためです。
健康診断の費用を医療費控除するには、確定申告をする必要があります。
たとえ年末調整がある会社員でも、医療費控除を申請するなら確定申告が必要です。
ここからは、健康診断の費用を医療費控除する際の流れを紹介していきます。
健康診断の費用も確定申告書に記載する
健康診断の費用を医療費控除として申請する場合は、実際にかかった金額を確定申告書に記載しましょう。
ちなみに、健診費用だけでなく、次の3項目も医療費控除の対象に含まれます。
- 通院費用(診察代)
- 入院費用
- 手術費用
医療費控除の対象には、扶養家族の医療費も含まれます。
扶養家族とは、簡単に言えば生計を共にしている家族です。
生計を同一にしていれば、遠方の家族の医療費も医療費控除の対象になります。
出典:国税庁【医療費控除を受ける方へ】
医療機関からの領収書を明細書に記載する
医療費控除を申請する際は、実際にかかった医療費を証明する資料が必要です。
具体的には、医療費の明細書の添付が求められます。
医療費の明細書は、医療機関で受け取った領収書をもとにご自身で作成してください。
明細書作成のためにも、医療機関で受け取った領収書はすべて保管しておきましょう。
ちなみに、明細書作成に使用した医療費の領収書は5年間の保管義務があります。
医療費控除の手続きは年末調整では出来ない
年末調整では、医療費控除の手続きはできません。
たとえば会社員の方でも、医療費控除を申請するのならば、個別で確定申告を行う必要があります。
特定健康診査の費用は医療控除の対象
健康診断にかかった費用は、原則として医療費控除の対象にはなりません。
しかし健康診断のうち、特定健康診査に関しては医療費控除の対象に含められる場合もあります。
特定健康診査は、「メタボ健診」とも呼ばれています。
名前の通りメタボリックシンドロームに特化した健康診断で、対象者は40歳〜74歳の方です。
特定健康診査の目的は、メタボリックシンドロームの早期発見です。
疾病の治療を目的とするものではないため、原則としては医療費控除の対象から外れます。
ただし、特定健康診査でも次の2つの条件を満たす場合は、健診費用が医療費控除の対象になります。
- メタボ(高血圧症・脂質異常症・糖尿病と同等の状態)と診断された
- 健診担当医師の指導で特定健康指導(治療)が行われた
上記の要件を満たす場合は、人間ドックの費用も医療費控除の対象になる場合があります。
出典:国税庁【No.1122 医療費控除の対象となる医療費|国税庁】
健康診断の医療費控除のまとめ
ここまで健康診断の医療費控除についてお伝えしてきました。
健康診断の医療費控除の要点を以下にまとめます。
- 健康診断の費用は、原則として医療費控除の対象にならない
- 健康診断の費用が医療費控除の対象になるケースは、がん・脳血管障害・心疾患・生活習慣病・メタボリックシンドロームが発見され、かつ治療した場合
- 健康診断の費用で医療費控除を受けるには、会社員であっても必ず確定申告する必要がある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。