更年期を迎えると多くの方にあらわれやすいのがホットフラッシュです。
更年期によるホットフラッシュは前触れなく起こります。
そもそもホットフラッシュとはどのような症状なのでしょうか?
また、ホットフラッシュの原因は何なのでしょうか?
本記事では、ホットフラッシュについて以下の点を中心にご紹介します。
- ホットフラッシュの症状
- ホットフラッシュの原因
- ホットフラッシュの治し方
ホットフラッシュについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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ホットフラッシュとは
ホットフラッシュとは、更年期特有のほてり・のぼせ・発汗といった症状の総称です。
具体的な症状は次の通りです。
- 突然顔・上半身がカーッと熱くなる
- 涼しいのに体が熱くて汗が出る
- 顔・頭から滝のような汗が止まらなくなる
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ホットフラッシュが起こる原因
更年期のホットフラッシュの原因は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量の減少です。
具体的には、エストロゲンの減少による自律神経の失調がホットフラッシュの原因です。
卵巣が寿命を迎えると、エストロゲンは分泌されなくなります。
エストロゲンの減少によって、自律神経のバランスにも悪影響が出やすくなります。
自律神経とは内臓の働き・ホルモン分泌・血圧・体温などを管理する器官です。
そのため自律神経のバランスが乱れると、体温や汗の分泌の調節がうまくいかなくなります。
たとえば体温が急激に上昇したり、大量の汗が止まらなくなったりします。
いわゆる「ホットフラッシュ」が起こるというわけです。
自律神経の乱れは、ホットフラッシュ以外にも多彩な症状を引き起こすことがあります。
ホットフラッシュの起こり方
更年期によるホットフラッシュは、前触れなく始まることが多くあります。
たとえば次のようなケースです。
- 真冬の屋外で突然大量の汗が止まらなくなった
- ドライヤーをしていたら急激に体温が上がって汗が止まらなくなった
- 安静にしているときに顔が急にカーッと熱くなった
ホットフラッシュは、涼しい場所で、特に激しい運動もしていないのに始まるのが特徴です。
ただし、症状のあらわれ方には個人差があります。
たとえばドライヤーのようなわずかな熱源が引き金となって、体温が急激に上がる場合もあります。
ホットフラッシュの改善方法
更年期によるホットフラッシュを改善するには、更年期自体にアプローチすることが大切です。
更年期障害の代表的な治し方をご紹介します。
ホルモン補充療法
ホルモン補充療法は、閉経によって減少した女性ホルモンを薬剤で補う方法です。
HRTなどとも呼ばれています。
ホルモン補充療法は医療機関で実施されています。
代表的な診療科は婦人科です。
漢方薬
ホットフラッシュなどの更年期の症状には、漢方薬が効くこともあります。
代表的な漢方薬をご紹介します。
当帰芍薬散
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)は、卵巣機能を高める作用のある漢方薬です。
更年期症状の原因の1つは、卵巣の機能の低下です。
当帰芍薬散で卵巣の機能をサポートすることで、諸症状の緩和が期待できます。
当帰芍薬散はホットフラッシュのほか、冷え・むくみ・PMSなどを軽減できることもあります。
加味逍遥散
加味逍遙散(カミショウヨウサン)には、体内の水分の循環を調整する作用があります。
また、精神を安定させる作用も期待できます。
ホットフラッシュのほか、更年期によるイライラ・不安・頭痛・めまいなどを改善できることもあります。
知柏地黄丸
知柏地黄丸(チバクジオウガン)は、体の熱を冷やす作用があります。
腎(内臓)の働きを補って、体の調子を整える作用も期待できます。
ホットフラッシュのほか、更年期により疲れやすい方にもおすすめです。
桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)は、血の巡りを良くする作用があります。
また、体内の熱のバランスを整えてくれます。
ホットフラッシュだけでなく、更年期による冷え・動悸がある方にもおすすめです。
抑肝散加陳皮半夏
抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンチンピハンゲ)には、体内の血の巡りを整える作用があります。
更年期によるイライラ・筋肉のこわばりなどの症状にも有効です。
また、更年期による不眠症状がある場合にも効果が期待できます。
突然始まったときの呼吸法
ホットフラッシュが突然始まったときは、呼吸を意識してみましょう。
深呼吸は自律神経を整える効果があります。
そのため、ホットフラッシュをはじめ更年期の諸症状の緩和に役立ちます。
深呼吸のやり方は次の通りです。
- おなかをへこませるように口からゆっくり息を吐く
- おなかを膨らませるようにゆっくり鼻から息を吸う
- それぞれを5~10回繰り返す
深呼吸をするタイミングは「ホットフラッシュが始まりそうだ」と感じたときです。
症状の有無にかかわらず、1日に何回か深呼吸の習慣をつけるのもおすすめです。
深呼吸を習慣化すると自律神経が安定しやすくなります。
更年期には些細なことで自律神経が乱れることも少なくありません。
そのため、普段から深呼吸をして自律神経の調子を整えておくことが大切です。
アロマオイルマッサージ
ホットフラッシュを改善するには、アロマオイルマッサージもおすすめです。
アロマオイルには自律神経を整える効果があるためです。
また、マッサージには全身の血行を良くする効果が期待できます。
ホットフラッシュは血の巡りの悪化で起こることも多くあります。
そのため、マッサージで血行を促進することは大切です。
ホットフラッシュに効くアロマオイルには次のものがあります。
- ローズ
- クラリセージ
- ラベンダー
- サイプレス
- ゼラニウム
マッサージするときは、ふくらはぎを下から上にしぼるように揉んでください。
タイミングは、お風呂上がりなどの体が温まっているときが効果的です。
マッサージをする余裕がない場合は、アロマオイルを嗅ぐだけでもかまいません。
ハーブティー
ホットフラッシュなどの更年期症状には、ハーブティーを飲むのもおすすめです。
ハーブティーがおすすめな理由は、ノンカフェインである点です。
カフェインは自律神経のうち、交感神経を刺激する作用があります。
簡単にいえば、カフェインは自律神経全体のバランスを崩すおそれがあります。
更年期障害がつらい方は、できる限りカフェインの摂取は控えたほうが無難です。
ハーブティーにはリラックス効果もあります。
心身のリラックスは自律神経のバランスの改善に役立ちます。
更年期症状やホットフラッシュに効果があるとされてるハーブは、以下の通りです。
- ローズ
- ローズヒップ
- リンデン
- セージ
- ジャーマンカモミール
ハーブは1種類ではなく、数種類をブレンドする方法もあります。
1日3〜4杯を目安に摂取してみましょう。
ホットフラッシュの予防方法
ホットフラッシュを予防するには、自律神経を整えることが大切です。
自律神経が整いやすくなる習慣を紹介します。
ストレスを溜めない
ストレスは自律神経のバランスを乱す原因の1つです。
自律神経を整えるには、できる限りストレスを溜めないことが大切です。
すでに溜まっているストレスは発散しましょう。
たとえば趣味に打ち込んだり、ゆっくり休養したりする方法があります。
辛い物などの刺激物を摂らない
刺激物の摂取が自律神経を乱す原因になることもあります。
たとえば辛いもののほか、アルコール・タバコなどが代表的です。
更年期がつらい場合は、少なくとも症状が落ち着くまでは刺激物の摂取を控えましょう。
カフェイン・アルコールを摂らない
カフェイン・アルコールは交感神経を刺激して自律神経のバランスを乱します。
そのため、更年期症状がつらい方は、カフェイン・アルコール類の摂りすぎは控えましょう。
カフェインが豊富なものは、コーヒー・紅茶・エナジードリンクなどの飲み物です。
通気性・速乾性の服を着る
ホットフラッシュが起こりやすい方は、通気性が良く速乾性のある服装を心がけましょう。
通気性の良い衣服は熱気・湿気が体に溜まりにくく、体温の急激な上昇を押さえられます。
速乾性の衣服は、汗をかいても乾きやすいのが特徴です。
汗で湿った衣服を身につけると、不快感からストレスを感じやすくなります。
ストレスフリーで過ごすためにも、快適な衣服で過ごすことを心がけましょう。
寝具を掛け過ぎない
就寝中のホットフラッシュの対策として、寝具を工夫することが大切です。
たとえば通気性が良く速乾性の寝具を利用すると、寝汗による不快感を軽減できます。
更年期障害にお悩みの方の中には、寝汗で寝不足になるケースも多くみられます。
寝不足は自律神経を乱す原因の1つです。
つまり更年期症状を悪化させるおそれがあるのです。
更年期症状の悪化を防ぐためにも、寝汗対策は万全にしましょう。
寝具だけでなく、エアコン・除湿機を利用して室温・湿度を調整することも大切です。
ホットフラッシュに似た症状の病気
ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり・発汗)に似た症状が出る代表的な病気は、バセドウ病です。
バセドウ病は甲状腺ホルモンが活発化する病気で、甲状腺機能亢進症とも呼ばれます。
甲状腺ホルモンは新陳代謝を促進するホルモンです。
具体的には、心拍や体温を上げて体を興奮させる作用があります。
バセドウ病によって甲状腺ホルモンの分泌が活発化すると、ほてり・発汗などが起こりやすくなります。
また、更年期障害に似た病気としては橋本病も有名です。
橋本病は甲状腺機能低下症の1つで、甲状腺の働きが低下した状態です。
橋本病ではホットフラッシュの症状はあまりみられません。
かわりに倦怠感・憂鬱などの症状が出やすいのが特徴で、更年期障害に間違われることも多い病気です。
いずれの病気も重症化を防ぐために、自己判断せずに受診するようにしましょう。
ホットフラッシュ以外にもある更年期症状
更年期ではホットフラッシュ以外にもさまざまな症状があらわれます。
ただし、更年期にあらわれる症状の種類・程度は個人差があります。
ここからはホットフラッシュ以外の更年期の症状を紹介します。
不調のすべてを更年期と思いこんでしまうと、重大な疾患を見逃す可能性もあります。
少しでも更年期以外の原因が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診してください。
肩こり・頭痛
更年期には、肩こりや頭痛などの症状があらわれることがあります。
しかし、肩こり・頭痛は更年期以外が原因で起こることもあります。
たとえば、高血圧・脳卒中(くも膜下出血)などが代表的です。
腹痛・腰痛
更年期には腹痛や腰痛が起きることもあります。
原因の1つとして、自律神経の乱れによる血行不良が挙げられます。
血行が悪化するとおなか・腰が冷えやすくなるため、痛みを感じやすくなるのです。
腹痛や腰痛は、更年期以外の原因で起こることもあります。
代表的なのは子宮がん・子宮内膜症です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの消化器系トラブルの可能性もあります。
疲れやすい
疲れやすさも更年期の症状の1つです。
些細な動作で疲れ果てて寝込むケースや、休んでも疲れが取れないといったケースがみられます。
疲れが出やすいほかの病気としては、鉄欠乏性貧血・風邪・うつ病などが代表的です。
甲状腺機能低下症(橋本病)も疲れやすさが目立つ病気です。
眠れない
更年期には、眠れないなどの不眠症状が出やすくなります。
たとえば、寝付きの悪さが代表的です。
夜中に何度も目が覚めたり、朝早い時間に目が覚めたりするケースもあります。
不眠症状が出やすいほかの病気には、不眠症・うつ病・むずむず脚症候群などがあります。
イライラ
更年期には、イライラ・怒りっぽいなどの症状が出ることもあります。
あるいは、憂鬱・根拠のない不安などに駆られるケースもみられます。
イライラの症状は、ほかの病気であらわれることもあります。
代表的なものは、うつ病・PMS・甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などです。
動悸・息切れ・めまい
動悸・息切れ・めまいは更年期を代表する症状の1つです。
更年期による動悸や息切れは、じっとしているときでもあらわれます。
動悸・息切れ・めまいは、更年期以外の病気であらわれることもあります。
代表的なのは心疾患です。
たとえば不整脈・心臓弁膜症・心筋梗塞などが挙げられます。
不安・うつ
更年期には、不安・うつなどの症状があらわれやすくなります。
何をしても気が晴れなかったり、意欲や集中力が低下したりするケースがみられます。
不安・うつなどは、うつ病・認知症・PMSなどの症状でもあります。
甲状腺機能低下症(橋本病)も、不安・うつ症状の原因の1つです。
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若くても起こるホットフラッシュ
ホットフラッシュをはじめとする更年期の症状は、40代以降の更年期にあらわれることが一般的です。
しかし最近は、20代~30代の若年者に症状があらわれるケースも増えています。
若年者の更年期症状の原因として、自律神経の乱れが指摘されています。
若年者の自律神経の乱れを招く要因は以下の通りです。
- 無理なダイエット
- 偏った食生活
- 寝不足
- 喫煙
- ストレス
- PMS・生理不順
若年者の更年期症状を改善するには、病院で治療を受けることが大切です。
代表的な治療法は、ホルモン補充療法です。
あわせて、生活習慣を見直すなどのセルフケアも必要です。
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ホットフラッシュの症状に関する意識調査
ホットフラッシュの症状について、厚生労働省による年代別の意識調査の結果があります。
調査した内容は以下の通りです。
- 顔がほてる
- 汗をかきやすい
それぞれの結果を表にまとめます。
【女性の年代別更年期症状(顔がほてる):単数回答】
症状が強い(%) | 症状の程度は中くらい(%) | 症状の程度は弱い(%) | 症状が無い(%) | |
20~29歳 | 6.1 | 7.8 | 15.9 | 70.1 |
30~39歳 | 6.1 | 9.0 | 13.4 | 74.1 |
40~49歳 | 2.7 | 7.1 | 13.2 | 77.0 |
50~59歳 | 4.3 | 10.5 | 22.5 | 62.8 |
60~69歳 | 4.1 | 6.0 | 20.3 | 69.6 |
【女性の年代別更年期症状(汗をかきやすい):単数回答】
症状が強い(%) | 症状の程度は中くらい(%) | 症状の程度は弱い(%) | 症状が無い(%) | |
20~29歳 | 6.1 | 14.5 | 18.7 | 60.6 |
30~39歳 | 6.0 | 13.4 | 14.7 | 65.9 |
40~49歳 | 6.0 | 10.4 | 17.1 | 66.5 |
50~59歳 | 8.9 | 15.6 | 21.1 | 54.4 |
60~69歳 | 7.4 | 9.2 | 20.7 | 62.7 |
「顔がほてる」「汗をかきやすい」ともに、50代が最も多いことがわかります。
また、いずれの年代でも「症状の程度は弱い」が多くなっています。
注目したいのは20代の結果です。
若い方にも症状は多いですが、症状が起こる理由は異なります。
ダイエットや偏った食生活、生理不順によって、自律神経が乱れます。
そのため、ホットフラッシュと似たような症状が出るのです。
出典:厚生労働省【「更年期症状・障害に関する意識調査」 基本集計結果 (2022 年7月 26 日)(P52図表48、49参照)】
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ホットフラッシュのまとめ
ここまでホットフラッシュについてお伝えしてきました。
ホットフラッシュの要点をまとめると以下の通りです。
- ホットフラッシュの症状は、顔が熱くなる・大量の汗が止まらないなど
- ホットフラッシュの原因は、女性ホルモンの減少によって自律神経が乱れるため
- ホットフラッシュの治し方は、ホルモン補充療法・漢方薬・アロマテラピーなど
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。