睡眠不足が続くとあちこちにからだの不調があらわれます。
睡眠不足が蓄積した状態は睡眠負債と言われます。
睡眠負債が溜まるとどのようなことになるのでしょうか?
睡眠負債は解消できるのでしょうか?
本記事では睡眠負債について以下の点を中心にご紹介します。
- 日本人に睡眠負債が多い理由について
- 睡眠負債が溜まるとどうなるかについて
- 睡眠負債を抱え込まない理想の睡眠時間について
睡眠負債について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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睡眠負債とは
睡眠負債とは睡眠不足が借金のように溜まり心身に影響があらわれる状態です。
睡眠負債は仕事や日常生活に影響を及ぼすような不調や病気のリスクを高めます。
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日本人に睡眠負債が多い理由
他国に比べて日本人が睡眠負債を多く抱えてしまう理由があります。
日本人の睡眠負債が多い理由を以下に3つ挙げます。
【働きすぎ】
日本の睡眠負債が多い理由の1つは働きすぎです。
欧州諸国に比べて労働時間の長さや残業時間の多い実態があります。
日本人は1日あたりの労働時間が長く睡眠時間が十分でない状態と言えます。
日本の労働者1人平均年間総実労働時間の推移は減少傾向にあります。
しかし総実労働時間の減少傾向はパートタイム労働者比率が増えたことによるものです。
一般労働者の総労働時間が大きく減っているわけではありません。
また所定外労働時間(残業時間)も大きく減ったという変化はありません。
労働時間や残業時間に関して欧州諸国と比較してみると
- イギリス、フランス、ドイツに比べて日本の年間労働時間(全就業者)は長い
- 長時間労働者の構成比(週当たりの労働時間)はフランスの27.1%に対して日本は58.6%と約2倍である
出典:厚生労働省【総実労働時間の推移】
出典:【世界の労働時間 国別ランキング・推移(OECD)】
出典:厚生労働省【我が国における時間外労働の現状 ①年間総実労働時間(長時間労働者の構成比)】
【通勤時間の長さ】
通勤時間の長さも睡眠負債の原因の1つになります。
通勤時間の長い都市部で働く人ほど睡眠時間が短いとの統計結果があります。
出典:厚生労働省【統計局ホームページ/平成28年社会生活基本調査 47都道府県ランキング(睡眠時間たっぷりランキング)(通勤時間長いランキング)】
【スマホ利用時間の長さ】
現代はスマホ利用時間の長さが睡眠負債の原因の1つになっています。
スマホによる睡眠への影響は睡眠時間不足だけでなく睡眠の質も低下させています。
日本人の5人に1人が、何らかの睡眠問題を抱えているといわれています。60歳以上では、約3人に1人が睡眠障害を患っているというデータもあります。そのことから睡眠障害は、国民病ともいわれています。睡眠障害になると、どのような問題が生じる[…]
睡眠負債が溜まるとどうなる?
睡眠負債が溜まると以下のような影響があらわれます。
- 心身にあらわれる不調
- 日中の眠気
- 病気のリスクを高める
- マイクロスリープの危険性がある
それぞれの影響についてご紹介します。
心身に現れる不調
睡眠負債になると以下のような心身に不調があらわれます。
倦怠感 | ストレスの増加 |
イライラ | 頭痛 |
集中力・注意力の欠如 | 血圧上昇 |
吐き気 | めまい |
不調の症状はいずれも自律神経の乱れによるものです。
睡眠不足がからだのさまざまな機能を調節する自律神経のバランスを崩すからです。
日中の眠気
睡眠負債を抱えると日中に強い眠気を催すなどの睡眠障害を起こすことがあります。
日中の眠気を催す睡眠障害の原因は睡眠不足です。
睡眠不足の主な原因には以下のようなものがあります。
- 仕事・勉強・通勤・通学などで睡眠時間が取れない
- 悩みやストレスから
- 自分の趣味などで夜更かししたから
病気のリスクを高める
睡眠負債は病気を発症するリスクを高めます。
睡眠不足は以下のような疾患を起こすリスクがあります。
【生活習慣病】
睡眠不足で食欲が高まることで肥満になり高血圧や糖尿病など生活習慣病につながります。
【うつ病】
睡眠不足の人はうつ病になるリスクが高まることが明らかになっています。
うつ病には睡眠障害症状がありさらに睡眠不足を助長するリスクがあります。
マイクロスリープの危険性
マイクロスリープとは自分で眠気の自覚がないまま瞬間的に眠った状態になる現象です。
マイクロスリープが起きている間に対向車線に入るなど重大交通事故の危険性があります。
マイクロスリープの原因には以下のようなものがあります。
- 睡眠不足
- 薬の副作用
- 疲労
- 時差ボケ
- 睡眠時無呼吸症候群
睡眠負債を抱え込まない理想の睡眠時間
必要な睡眠時間に関して厚生労働省は「健康づくりのための睡眠指針2014」で以下のように示しています。
- 個人差はあるものの、必要な睡眠時間は6時間以上8時間未満のあたりにあると考えるのが妥当
- 日中の眠気で困らない程度の自然な睡眠が一番
出典:構成労働省【健康づくりのための睡眠指針2014】
個人差があるため適切な睡眠時間の判断は難しく一概には言えません。
その人にとっての理想の睡眠時間を割り出すチェックの例をご紹介します。
ご参考ください。
【適正睡眠時間のチェック方法】
- 毎晩同じ時間に就寝する
- 朝は眠れるだけ眠る
- 5日間繰り返す
- 6日目の睡眠時間が適正睡眠時間
6日目の睡眠時間の適正さの確認は以下の通りです。
- 入眠時間が10~15分前後
- 睡眠の持続性(夜中や早朝に目が覚めないこと)
- 朝の起床時の熟睡感
- 日中の眠気がないこと
睡眠負債の解消法
睡眠負債の解消法について以下の2つを挙げます。
睡眠の質を高める工夫
睡眠の質を高める工夫として以下のようなものがあります。
【朝起きたら日光を浴びる】
朝目が覚めたらカーテンを開けて日光を浴びましょう。
朝日光を浴びるメリットには
- 体内時計の調整ができる(体内時計が調整されないと睡眠リズムが乱れる)
- メラトニン(眠気を誘う睡眠ホルモン)の分泌を抑制する
【適度な運動習慣】
適度な運動習慣のある人は不眠が少ないと言われています。
適度な運動習慣のポイントには
- ウォーキングなどの有酸素運動
- 就寝の3時間前の運動がおすすめ
- 運動の習慣化
などがあります。
【入浴】
入浴は身体をリラックスさせるための切り替えに効果的な方法です。
睡眠に効果的な入浴のポイントには以下のようなものがあります。
- 就寝の2~3時間前の入浴
- ぬるめのお湯(38℃程度)で30分程度
- 半身浴の場合は約40℃で30分程度
【寝る前のスマートフォンをやめる】
スマートフォンなどによるブルーライトは覚醒作用があります。
就寝前にブルーライトを浴びると体内時計が乱れてメラトニンの分泌が抑制されます。
寝る前にスムーズな入眠や質の良い睡眠を妨げることを避けましょう。
上手な昼寝の活用法
上手に昼寝を活用することで夜間の睡眠不足を補うことができます。
効果的な昼寝のコツは短時間にすることです。
昼寝は30分以内の短時間の仮眠がおすすめです。
睡眠障害による睡眠負債
睡眠障害による睡眠不足で睡眠負債が増えていくことがあります。
睡眠障害とは睡眠に問題があって心身の健康に影響を及ぼす状態の事です。
睡眠障害の症状には以下のようなものがあります。
- 不眠(寝つきが悪い、途中覚醒、早朝覚醒、熟睡できない)
- 過眠(日中の眠気が強い、居眠り)
- 寝る前に足がムズムズする、動かさずにはいられない
- 睡眠中に大きないびきをかく、呼吸が止まることがある
- 睡眠中に大きな寝言を叫んだり寝ぼけたりする
- 睡眠中に足のピクつきがある
睡眠障害は疲労による「睡眠要求」と体内時計で働く「覚醒力」のバランスが崩れた状態です。
また睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠という2つの睡眠状態で構成されています。
ノンレム睡眠とレム睡眠は約90分周期で変動するサイクルがあります。
ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルが乱れることも睡眠障害につながります。
ショートスリーパーには睡眠負債がない?
シュートスリーパーとは体質的に短時間睡眠で日常生活に支障のない人を言います。
ショートスリーパーの体質は遺伝子に関係しており普通の人は短時間睡眠では睡眠負債が多くなります。
ショートスリーパーであっても、極端な睡眠時間では睡眠負債が溜まることはあります。
昼間の眠気や集中力の低下を感じる睡眠時間が判断の目安になります。
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睡眠貯金はできるの?
睡眠を週末などに寝だめで貯金したり預金したりすることはできません。
寝だめでできるのはあくまでも不足分の補填に過ぎません。
睡眠負債は、一時的に睡眠時間を増やしただけでは解消できないことを理解しましょう。
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睡眠の質と健康づくりのための睡眠指針
睡眠の質と健康づくりのための睡眠指針について以下にそれぞれご紹介します。
睡眠の質の状況
睡眠の質の状況を調査した厚生労働省の報告の結果は以下のようになっています。
- 寝つきにいつもより時間がかかった:13.9%
- 夜間、睡眠途中に目が覚めて困った:25.7%
- 起きようとする時刻よりも早く目が覚め、それ以上眠れなかった:16.3%
- 睡眠時間が足りなかった:18.6%
- 睡眠全体の質に満足できなかった:21.8%
- 日中、眠気を感じた
- 上記のようなことはなかった:30.9%
状況調査の回答では約70%が睡眠の質の状況に問題を感じている結果になっています。
そして睡眠の質の状況で感じたこと全てが睡眠負債につながる問題となっています。
出典:厚生労働省【第 3 部 生活習慣調査の結果(第80表)】
健康づくりのための睡眠指針
「健康づくりのための睡眠指針 2014」の睡眠12箇条を以下のように概説します。
- 正しい睡眠知識でからだとこころの健康づくり
- 運動や食事の生活習慣でメリハリのついた睡眠の確保
- 睡眠不足や不眠の解決で生活習慣病の予防
- こころの健康は良質な睡眠から
- 理想の睡眠時間は日中の眠気で困らない自然な睡眠
- 良質な睡眠が取れる環境作り
- 体内時計のリズムを保つ規則正しい生活
- 自分に必要な睡眠時間を知り不足分は昼寝などを活用
- 年齢に合った睡眠時間と適度な運動で良質な睡眠
- 眠くなったら寝るようにするが起床時間は一定にする
- 睡眠中の激しいいびきや呼吸停止などいつもと違う睡眠に注意
- 眠れないなど睡眠の問題が日常に影響が出るときは専門家に相談
いずれの指針も生活上のちょっとした行動に対するアドバイスです。
睡眠指針を念頭に生活し睡眠負債を減らして健康な暮らしに役立てましょう。
出典:厚生労働省【健康づくりのための睡眠指針2014(睡眠12箇条)】
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睡眠負債のまとめ
ここまで睡眠負債についてお伝えしてきました。
睡眠負債についての要点を以下にまとめます。
- 日本人に睡眠負債が多い理由は働きすぎ、通勤時間の長さ、スマホ利用時間の長さによる
- 睡眠負債による影響は心身の不調、日中の眠気、病気のリスクの高まり、マイクロスリープの危険性などがある
- 睡眠負債を抱え込まない理想の睡眠時間は個人差があるが成人で6時間以上8時間未満が妥当とされている
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。