健康診断などの血液検査に記載されたhba1cの数値を見たことがありますか?
hba1cは糖尿病に関する数値であることは知られています。
しかし、hba1cが具体的に何を表しているのかあまり知られていません。
hba1cとは何なのでしょうか?
hba1cの数値があらわす体の変化は何なのでしょうか?
本記事ではhba1cについて以下の点を中心にご紹介します。
- hba1cとは
- hba1cの基準値とは
- hba1cが高くなる原因と症状とは
hba1cについて理解するためにも参考にしていただければ幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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hba1cとは
hba1cは採血データの1つで糖尿病の状態を判別する数値です。
Hb(ヘモグロビン)は酸素を運搬する役割と血液中の糖と結合しやすい性質があります。
ブドウ糖とヘモグロビンが結合すると糖化ヘモグロビンになります。
hba1cは血液中のヘモグロビン内に存在する糖化ヘモグロビンの割合を評価する数値です。
hba1cは血糖値と違い、1~2か月前の血糖状態を測定します。
当日の食事などの影響を受けない特徴があります。
何の略か
hba1cは「ヘモグロビンエーワンシー」と呼び、グリコヘモグロビンに分類されます。
ヘモグロビンはHbA、HbA2、HbFに種類が分類されます。
糖(グルコース)が結合したヘモグロビンはHbA1になります。
HbA1はA1a、A1b、A1cに分類されます。
A1cは最も量が多いため、血液検査で抽出しやすい特徴があります。
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hba1cの正常値や基準値の意味とは?
hba1cは糖尿病の診断に用いられる指標で、血糖管理にも用いられます。
hba1cの基準値はどれくらいでしょうか。
基準値を測る意味
hba1cを含む血液検査には基準値が設定されています。
基準値とは健常者の測定結果の内、95%の方が含まれる範囲の値です。
基準値から外れていた場合は何らかの病気の可能性が高くなります。
注意点として基準値から外れている場合、必ず病気というわけではありません。
基準値から外れている方は健常者100人中5人存在します。
つまり、体格など個体差によって基準値から外れる可能性があるためです。
検査の方法
hba1cを検査する方法として免疫法、酵素法、HPLC法の3種類あります。
3種類の検査法の特徴は以下の通りです。
免疫法
免疫法はhba1cを抗原として作成された抗体を用いた測定法です。
特異性の高い抗体を用いるため、hba1cのみ抽出することが可能です。
酵素法
酵素法はhba1cの糖化部分を分解する酵素を用いて測定します。
妨害物質の影響をほとんど受けないため精度が高いです。
また、自動分析装置を用いて大量に検査することが可能です。
HPLC(High Performance Liquid Chromatography:高速液体クロマトグラフィ)法
HPLC法は装置を用いて検体を分離し、hba1cの割合を測定する方法です。
多くの臨床研究に使用され、多くの検査室で用いられる測定法です。
短時間で全血による測定が可能で、異常ヘモグロビンも測定できます。
基準値の数値
日本糖尿病学会によるhba1cの基準値は4.6~6.2%です。
6.0~6.4%の場合、糖尿病の可能性が否定できず、6.5%以上は糖尿病が強く疑われます。
特定保健指導によるhba1cの基準値は5.6%未満です。
基準値でも糖尿病の人はいる
日本糖尿病学会は糖尿病の診断手順を設定しています。
具体的には初回検査の際、
- 1 空腹時血糖≧126mg/dl
- 2 75gブドウ糖負荷試験2時間値≧200mg/dl
- 3 随時血糖値≧200mg/dl
- 4 hba1c≧6.5%以上
の内、1つでも該当する場合は糖尿病型と判定されます。
後日、再検査したときに再び糖尿病型と判定された場合、糖尿病と診断されます。
hba1cが基準値であっても1~4のいずれかが該当する場合は糖尿病になります。
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hba1cが高いとどうなる?
hba1cが基準値を超えている場合、体内で何らかの変化が生じている可能性があります。
具体的には以下の通りです。
血液中に糖がたくさんある可能性
ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が増えるとhba1cが高くなります。
前述の通り、約1~2か月間持続的に血糖が増えていることが推察できます。
糖が増えると血液はドロドロになり、脳梗塞や心筋梗塞など病気のリスクが高まります。
病気の可能性がある
hba1cが高い場合、糖尿病が最も疑われます。
糖尿病になると血液中のブドウ糖の分解が不十分になるためhba1cが高くなります。
糖尿病以外にもhba1cが高くなる病気があります。
具体的には以下の通りです。
- 異常ヘモグロビン症:遺伝的なヘモグロビン異常、2,000~3,000人に1人が発症
- 甲状腺機能亢進症:頻脈、手の震え、体重減少など
- 腎不全:足などのむくみ、食欲不振、疲れやすいなど
血糖値も同じように高ければ糖尿病の疑い
初回検査でhba1cが高い場合でも、糖尿病と診断されるわけではありません。
hba1cと併せて血糖値が基準値を超えている場合、初回検査で糖尿病と診断されます。
またhba1cのみ基準値を超えている場合は糖尿病型と判定され、再検査が必要になります。
再検査のときに血糖値が基準値を超えている場合、糖尿病と診断されます。
再検査でもhba1cのみ基準値を超えている場合は糖尿病の疑いになります。
hba1cを下げる方法
hba1cを下げる方法として食事や運動など生活習慣を見直すことが大切です。
また、サプリメントやお茶を適切に摂取することでhba1cを下げられます。
具体的には以下の通りです。
食事の内容を考える
糖質中心の生活を続けると血液中の糖分が増えてhba1cが上昇します。
hba1cを下げる食事方法として主に3つあります。
具体的には以下の通りです。
血糖の吸収が緩やかな食事の選択
糖質の多い食品の中でも血糖が急激に上がる食品と緩やかに上がる食品に分かれます。
糖の吸収が早い場合、血糖が急激に上がります。
反対に糖の吸収が遅いと血糖は緩やかに上がります。
血糖が急激に上がる食品は以下の通りです。
清涼飲料水(ジュース類や栄養ドリンクなど) | 菓子パン | 白米 |
麺類 | 果物 | 間食 |
血糖が緩やかに上がる食品は以下の通りです。
雑穀米 | かぼちゃ | いも類(ジャガイモなど) |
トウモロコシ | くり | 豆類(大豆を除く) |
hba1cの上昇を抑えるために血糖値を緩やかに上げる食事に変更していきましょう。
食物繊維・ビタミン・ミネラルを積極的に摂る
食物繊維は腸内環境を整えて糖質の吸収を緩やかにする働きがあります。
食物繊維を1日に20g以上摂取すると糖尿病の改善が期待されるとの報告があります。
食物繊維が多く含まれている食品は以下の通りです。
穀物(全粒穀物がおすすめ) | 野菜類(緑黄色野菜) | 海藻類 |
豆類 | キノコ類 |
ビタミンB群は糖の代謝を高める栄養素です。
ビタミンB1、ビタミンB6、ナイアシンは糖代謝の補酵素として働きます。
ビタミンB群が多く含まれている食品は以下の通りです。
ビタミンB1 | 豚肉 | うなぎ | たらこ |
ビタミンB6 | マグロ | 牛レバー | 玄米 |
ナイアシン | まいたけ | たらこ | かつお |
ミネラルは血糖値の調整やインスリンの作用を高める働きがあります。
クロムは血糖値を正常に保つために重要な栄養素です。
マグネシウムはインスリンの抵抗性を低下させる働きがあります。
亜鉛は糖代謝を改善させhba1cを下げる働きがあります。
ミネラルが多く含まれている食品は以下の通りです。
クロム | 海藻(青のり、昆布など) | お茶 | かぼちゃ |
マグネシウム | 海藻(青のり、昆布など) | かぼちゃ | ごま |
亜鉛 | かき | 干し肉 | イワシ |
タンパク質や脂質を摂る
タンパク質は筋肉や内臓などの材料になります。
基礎代謝を高めることで糖の分解を高めます。
タンパク質含有量が多い食品は下記の通りです。
肉類 | 魚介類 |
卵類 | 大豆製品 |
乳製品 |
脂質は吸収がゆっくりであり腸内に長くとどまる性質があります。
糖の吸収を抑え、血糖値やhba1cの上昇を抑えます。
脂質を多く含む食品は下記の通りです。
肉類 | 魚介類 |
乳製品 | ポテトチップスなどの菓子類 |
マヨネーズ、マーガリンなどの油脂類 |
有酸素運動を行う
有酸素運動は負荷の軽い運動を持続的に行う運動方法です。
ウォーキングやサイクリング、水泳などが当てはまります。
全身の筋肉を使い、効率的にエネルギー消費することで血糖値やhba1cの上昇を抑えます。
一方、筋肉に強い負荷をかけるレジスタンス運動があります。
スクワットやダンベル運動などが当てはまります。
上記有酸素運動に加え、レジスタンス運動を組みあわせるとhba1cの改善が高まります。
血糖値を下げるサプリやお茶を選ぶ
食事以外で血糖を下げる方法としてサプリメントがあります。
サプリメントを摂取すると食事で不足している栄養素を補給できます。
食物繊維やビタミン、ミネラルなどがバランスよく含まれたサプリメントがおすすめです。
サプリメントの服用方法には注意が必要です。
血糖値のコントロールが不十分な場合は薬物療法が開始されます。
薬物療法中にサプリメントを服用すると低血糖や副作用が出現する可能性があるためです。
また、サプリメント服用の結果、薬物の量を勝手に増減してしまう場合があります。
自己判断での薬の調整は副作用などのリスクが増加する恐れがあります。
薬物療法中にサプリメントを開始する場合は必ず主治医に相談しましょう。
お茶は種類によって血糖値上昇を抑える働きがあります。
麦茶は亜鉛やカリウムなどミネラルが含まれており、hba1cの上昇を抑えます。
また、代謝を改善させ血糖値を下げるアルキルピラジンも含まれています。
緑茶やほうじ茶、ウーロン茶はカテキンが含まれています。
糖の吸収を抑える働きがあり、血糖値上昇を抑えます。
hba1cが低いのもダメな理由は?
前述の通り、hba1cは高いと糖尿病などのリスクが高くなります。
一方、hba1cが基準値より低い場合でも様々な病気のリスクや可能性が生じます。
hba1cが低くなるとダメな理由は以下の通りです。
脳梗塞や脳出血のリスクがあがる
心血管疾患はhba1cが高い場合だけでなく、低い場合でもリスク上昇と関連があります。
hba1cが5.0%未満の場合心血管疾患リスクが1.5倍になるとの報告があります。
脳梗塞や脳出血の場合、hba1cが低い群と高い群どちらもリスクが高いです。
原因は不明ですがhba1cが低い場合脳梗塞や脳出血のリスクにつながる可能性があります。
貧血になっている可能性がある
前述の通り、hba1cは赤血球のヘモグロビンが糖化されると上昇します。
しかし、ヘモグロビンが糖化するまでには一定の時間がかかります。
赤血球の寿命が短くなり新しい赤血球が増えると糖化が間に合わずhba1cが低くなります。
赤血球の寿命が短くなる原因として貧血が考えられます。
貧血の場合、赤血球の寿命が短くなり、新しい赤血球を増やす働きが生じます。
結果、糖化ヘモグロビンが減少するためhba1cが低い値になります。
また、貧血の治療中はhba1cが低くなる傾向があります。
理由として新しい赤血球がたくさん増えますが糖化には時間が足りません。
糖化されないまま検査が行われるためhba1cが低い値になります。
低くても糖尿病の可能性がある
遺伝的要因により発症する1型糖尿病の場合、hba1cが低くても発症する場合があります。
高血糖症状から1週間前後で急激に悪化する病気を劇症1型糖尿病といいます。
急激に血糖が上昇する特徴がありますが、hba1cは低い値を示す特徴があります。
hba1cが上昇するには1~2カ月必要なためタイムラグが生じていると考えられています。
hba1cが高いときの原因や症状について
hba1cが高くなるのは血糖に関連した原因があります。
また、hba1cが高い状態が続くと様々な症状があらわれます。
具体的には以下の通りです。
原因
hba1cが高くなる原因として、血糖値が持続的に上がっていることが考えられます。
血糖値が持続的に上がる原因としてはインスリンの量と効果に関連があります。
具体的には以下の通りです。
インスリンが効きにくくなる
食べすぎや運動不足により肥満になると内臓脂肪が蓄積されます。
すると、体内にTNF-αという物質が増加します。
TNF-αはインスリンの働きを悪化させる物質で「インスリン抵抗性」が起こります。
TNF-αの増加によりインスリンの作用が効きにくくなると血糖値が高くなります。
インスリンの量が不足する
上記のようにインスリン抵抗性があるとより多くのインスリンが分泌します。
インスリン分泌過多により膵臓が疲弊するとインスリンの分泌が減少します。
結果、インスリンの量が不足するため血糖値が高くなります。
症状
hba1cが高くなっても初期症状はほとんど見られません。
数年以上hba1cが高い状態が続くと様々な症状が見られる可能性が高まります。
糖尿病になり、血糖値が400~500mg/dlを超えると以下の症状が見られます。
- 多尿、多飲
- 口渇感
- 吐き気・嘔吐
- 倦怠感
- 意識混濁・意識消失
高い状態のまま放置するとどうなる?
糖尿病になりhba1cが高い状態を放置すると様々な合併症につながる可能性があります。
具体的には以下の通りです。
3大合併症
高血糖の状態が続くと、細い血管が徐々に傷つきます。
結果、全身に様々な障害が生じます。
部位による障害の違いは以下の通りです。
- 糖尿病性腎症:腎臓の機能が低下しむくみや腎不全、透析の原因になる
- 糖尿病性網膜症:眼底出血や網膜剥離につながり、視力障害を引き起こす
- 糖尿病性神経障害:手足のしびれ、間隔が鈍くなる
大血管の疾患
高血糖の状態が続くと、動脈硬化になるリスクが高まります。
また血液がドロドロになり血管に詰まりやすくなります。
結果、以下のような病気を発症する可能性があります。
- 脳卒中:脳梗塞や脳出血など、半身の麻痺症状などが生じる
- 心臓病:狭心症や心筋梗塞など、胸痛や息苦しさなど症状が生じる
- 末梢動脈性疾患:手や足の動脈が詰まり、歩行困難や壊疽など症状が生じる
hba1cのngsp値とは
hba1cはNGSP値(National Glycohemoglobin Standardization Program)を採用してます。
NGSP値は国際標準化されたhba1cの基準値です。
hba1cのNGSP値の詳細は以下の通りです。
平均的な血糖値を指す指標
前述の通り、hba1cは1~2か月前の平均的な血糖状態を測定します。
日本糖尿病学会によるNGSP値の基準値は4.6~6.2%です。
2012年以前は別の単位を使われていた
hba1cの基準値の数値はNGSP値以外にJDS値で表記している場合があります。
従来は日本独自で標準化されたJDS値を用いていました。
しかし日本糖尿病学会は海外に基準を合わせ、国際的な標準化を目指すことになりました。
2012年より国際標準値のNGSP値に移行する方向になっています。
2012年以前のngsp値を見るためには計算しなおす必要がある
現在はNGSP値で表記していますが、2012年以前はJDS値で標記されています。
検査結果を検討するためにJDS値をNGSP値に置き換える必要があります。
JDS値とNGSP値を置き換える変換式は以下の通りです。
- NGSP値(%)=1.02×JDS値(%)+0.25%
- JDS値(%)=0.980×NGSP値(%)−0.245%
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hba1cが指標として使われている理由
糖尿病状態を表す数値に血糖値や尿糖値があります。
血糖値や尿酸値は、1日の中で変化を測定できるメリットがあります。
しかし、食事や運動、ストレスなどの影響により数値が変動するデメリットがあります。
結果、血糖値や尿糖値のみでは血糖コントロールの有無を確認することが難しいです。
前述の通り、hba1cは1~2か月前の平均的な血糖状態を測定します。
食事やストレスなど生理的因子により変動が見られない特徴があります。
糖尿病による血糖コントロールの有無を確認できる指標になります。
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hba1cのまとめ
ここまでhba1cについてお伝えしてきました。
hba1cの要点をまとめると以下の通りです。
- hba1cは糖化したヘモグロビンのことで、1~2か月前の血糖状態を測定できる
- hba1cの基準値は4.6~6.2%で6.5%以上の場合糖尿病が疑われる
- hba1cが高くなる原因は血糖値が持続的に高いため、症状として糖尿病や合併症がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。