健康な方でも食後には血圧が多かれ少なかれ変動するものです。
ところで、食後の血圧の変動はどのような仕組みで起こるのでしょうか。
また、食後の血圧の変動に病気の可能性はないのでしょうか?
食後の血圧変動を防ぐ方法はないのでしょうか?
本記事では、食後の血圧について以下の点を中心にご紹介します。
- 食後の高血圧の原因
- 食後の低血圧の原因
- 食後の血圧変動を防ぐ方法
食後の血圧について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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食後の血圧変化で考えられる病気
※画像はイメージです
食後は血圧が上がるor下がることがあります。
それぞれの原因・症状・治療法などをご紹介します。
食後高血圧
食後高血圧とは、食後に血圧が高くなる状態です。
ちなみに、健康な方であっても食後は血圧が上昇することは珍しくありません。
食後に血圧が上がっても、すぐに下がる場合はさほど心配はいりません。
一方で、急激に血圧が上がる場合や血圧がなかなか下がらない場合は、病気などが疑われます。
高血圧になる仕組み
そもそも血圧とは、心臓が血液を送り出す際に血管の壁にかかる圧力です。
血管にかかる圧力が大きいほど血圧は高くなります。
血管にかかる圧力は、何によって左右されるでしょうか。
1つ目は心臓が血液を送り出す勢いです。
心臓の力が強いほど血流の勢いはよくなるため、血管の壁にも大きな圧力がかかります。
2つ目は血管の柔軟性です。
柔軟性が高いほど、血管にかかる血流の圧力は小さくなります。
血流が勢いよく流れても、血管が伸び縮みして負荷を相殺できるためです。
一方、血管が硬化して柔軟性を失うと、血流にあわせて伸縮できなくなります。
すると血管壁には大きな圧力がかかるため、血圧が上がるというわけです。
なお、血管が硬化する現象は動脈硬化と呼ばれています。
動脈硬化の主な原因は、加齢や中性脂肪・コレステロールの蓄積です。
3つ目は自律神経のバランスが崩れることです。
自律神経とは内臓の働き・ホルモン分泌・心拍や血圧を管理している神経系です。
自律神経は交感神経と副交感神経から成り立ちます。
高血圧と関係があるのは、自律神経の中の交感神経という神経系です。
交感神経には心拍・血圧を上昇させて、身体を活動状態にする仕組みがあります。
一方、副交感神経の作用は、心拍・血圧を下げて身体をリラックスさせることです。
交感神経と副交感神経は入れ替わりながらバランスを保っています。
しかし、何らかの原因で自律神経のリズムが乱れると交感神経が過度に優位になることがあります。
交感神経が過度に活発化すると、血圧が上がったまま下がらなくなります。
つまり、高血圧という状態に陥ります。
食後に血圧が上がる原因
食後に血圧が上がる原因は、消化・吸収のために心拍数が増加することです。
心拍数が増えると体内の血液量も増加するため、血圧は上がりやすくなります。
ちなみに、塩分の摂りすぎも食後の血圧が上がる原因の1つです。
塩分には血管を収縮させる作用があります。
そのため、塩分の多い食事をした後は、普段よりも大きく血圧が変動することがあります。
食後の高血圧は、1時間程度で元に戻ることが一般的です。
食後に血圧が上がったまま元に戻らない場合、原因は食事以外の可能性があります。
食事以外の高血圧の原因は次の通りです。
- 加齢
- 肥満
- 飲酒・喫煙
- 運動不足
- ストレス
- 病気(動脈硬化・糖尿病)
上記のような要因を抱えている方は、もともと血圧が高くなりやすいです。
そのため、食後には大きく血圧が上昇することもあります。
高血圧の症状
高血圧は自覚症状が少ない病気です。
食後の一時的な高血圧でも特に症状がないことはよくあります。
ただし場合によっては、血圧上昇に伴って次のような症状が出ることもあります。
- 動悸
- 息切れ
- めまい
- 頭痛
- 肩こり
高血圧の治療方法
高血圧の主な治療方法は薬物療法です。
具体的には血圧を下げる作用のある「降圧剤」が使用されます。
降圧剤の主な種類は次の通りです。
血管拡張薬 | 血管を拡張させて血圧を下げる |
利尿薬 | 排尿回数を増やして塩分の排出を促す |
神経遮断薬 | 心臓への刺激を遮断して働きを落ち着かせる |
薬物療法と並行して食餌療法・運動療法が行われることも多いです。
食餌療法とは、食事を改善することで高血圧にアプローチします。
たとえば塩分・カロリー・脂質の制限などが代表的です。
また、高血圧の方にはカリウムの摂取が推奨されることもあります。
カリウムはミネラルの1種で、作用は余分な塩分を体外に排出することです。
塩分は血圧をあげる要因のため、カリウムでこまめに排出することは意義があります。
肥満気味の方にはカロリー制限が行われることもあります。
アルコールの過剰摂取は血圧を上昇させるため、お酒はほどほどにするよう指導されることも多いです。
運動療法は適度に運動して血圧改善を図る方法です。
適度な運動には、血管の柔軟性を高めて血圧を下げる効果が期待できます。
特に推奨されているのは有酸素運動です。
たとえばウォーキング・水泳・サイクリングなどが代表的です。
高血圧の予防策
食後の高血圧は生理的な反応のため、予防は困難です。
食後に限らずもともと血圧が高めの方は、生活習慣を見直すことで高血圧を予防・改善しやすくなります。
具体的なポイントは次の通りです。
- 過剰な塩分・カロリー・脂質を控える
- 栄養バランスのよい食事
- 適度な運動
- ストレスの発散
- 質のよい睡眠
食後低血圧
食後低血圧は、食後に血圧が下がる状態です。
より具体的には食後2時間以内に、収縮期血圧(上の血圧)に20mmHg以上の低下がみられます。
食後低血圧が特に目立つのは、高齢者・高血圧・自律神経系の疾患がある方です。
低血圧になる仕組み
血圧が下がるのは、主に自律神経に関係があります。
血圧を下げる作用があるのは、交感神経のうち副交感神経です。
副交感神経は、夜間などの休息時間に活発化して、心拍や血圧を下げます。
一般的に、血圧は高いより低いほうがよいといわれています。
しかし、時には血圧が低すぎることで問題が生じることもあります。
血圧が低いとは、心臓が血液を送り出す力が弱いということでもあるためです。
心臓の力が弱まると、脳や内臓には十分な血液が届かなくなります。
脳や内臓が血液不足に陥ると、めまい・息切れ・失神などのさまざまな症状があらわれます。
食後に血圧が下がる原因
食後に血圧が下がる主な原因は次の通りです。
- 加齢
- 糖尿病
- 自律神経障害
- パーキンソン病
食後低血圧の代表的な原因は加齢です。
通常、食後は消化・吸収のために全身の血液が胃腸に集中します。
血液が胃腸に集中すると、他の器官周辺の血圧が維持しにくくなります。
血圧が低下すると自動的に活発化するのは、自律神経のうち交感神経です。
交感神経は心拍数を上げて血流を増やすことで、胃腸以外の血圧を維持しようとします。
高齢者の方は、血圧を維持する仕組みが正常に機能しにくくなっています。
すると胃腸には血液が集まるものの、胃腸以外の器官について血圧の維持が困難になります。
結果として、全身の血圧が低下するというわけです。
低血圧の症状
食後低血圧の主な症状は次の通りです。
- めまい
- ふらつき
- 異様な眠気
- 転倒
- 失神
食後2時間以内に上記のような症状がある場合は食後低血圧を疑いましょう。
低血圧の治療方法
食後低血圧の治療方法は個人差があります。
薬物療法の場合は、血圧を上げる「昇圧剤」などが用いられます。
めまい・立ちくらみなどの症状には、自律神経に働きかける「抗不安剤」が有効です。
食後低血圧は、特定の薬剤の副作用として起こることもあります。
たとえば高血圧の治療薬である降圧剤が効きすぎた結果、食後に低血圧が起こるケースはよくみられます。
特定の薬剤が原因となっている場合は、服用方法を見直すことが食後低血圧の改善につながります。
低血圧の予防策
食後低血圧の予防方法は次の通りです。
- 食べすぎを控える
- 時間をかけて食べる
- 水分も一緒に摂る
- 食後に休息する
- 食後にカフェインを摂る
食後低血圧を防ぐには、胃腸に血液が集中しすぎるのを防ぐことが大切です。
たとえば食べすぎ・早食いは控えましょう。
特に炭水化物の摂りすぎは血糖値を乱すため、伴って血圧も乱高下しやすくなります。
適度な水分も大切です。
水分を摂ることで胃酸が増え、消化がスムーズに行われやすくなるためです。
食後低血圧の方は、しばらく横になって休憩してください。
食後にすぐ動くと、転倒・失神などが起きるおそれがあるためです。
食後にカフェインを摂ることもおすすめします。
カフェインには血管を収縮させて血圧を上げる作用があるためです。
たとえばコーヒー・緑茶・紅茶などを飲みましょう。
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糖尿病患者の食後の血圧
※画像はイメージです
糖尿病患者の方は食後低血圧になりやすいと指摘されています。
理由は、糖尿病の方は神経障害が起こりやすいためです。
健康な方は食後低血圧が起こりにくいとされています。
理由は、自律神経のうち交感神経が正常に機能して血圧の低下を防ぐためです。
一方、糖尿病の方は神経障害の合併症が起こることが少なくありません。
神経障害とは、自律神経・運動神経・感覚神経などの働きが低下することです。
つまり糖尿病の方は、健康な方よりも交感神経が正常に機能しにくいのです。
結果として、食後に血圧を正常に維持することが難しくなります。
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食後の血圧測定でどちらのタイプかを知る
※画像はイメージです
どんな方でも食後は多少血圧が変動するものです。
ただし、どのように変動するかは個人によって違います。
食後の血圧について変動の仕方を知るには、実際に血圧を測定するのが一番です。
食前と食後に血圧を測り、上がっているのか下がっているのか調べてみましょう。
食後の血圧測定は1週間程度続けるのがおすすめです。
1回だけでは血圧の変動を正確に判断できないことがあるためです。
食後の血圧変化を少なくする食事の摂り方
※画像はイメージです
食後、血圧の変動を防ぐ方法についてご紹介します。
一度に食べ過ぎない | 少量をこまめに食べる |
ゆっくりよく噛んで食べる | 炭水化物の摂取量を減らす |
食事の前後に水分を摂る | アルコールを控える |
食後はしばらく横になる | 食後はゆっくり動く |
カフェインを摂取する | 食後に軽く運動する |
高血圧といわれたことがある人の状況
※画像はイメージです
血圧は低いより、高いほうが問題視されています。
高血圧は動脈硬化・心疾患・脳卒中などのリスクを高めるためです。
高血圧は現代病の1つでもあります。
ここからは厚生労働省の調査をもとに、高血圧と診断されたことがある方の状況などを紹介していきます。
高血圧といわれたことがある人の割合
平成22年において、高血圧の方の割合は次の通りです。
具体的な数値は次をご覧ください。
男性(%) | 女性(%) | |
30-39歳 | 11.6 | 4.4 |
40-49歳 | 21.5 | 10.0 |
50-59歳 | 36.0 | 22.4 |
60-69歳 | 47.1 | 42.1 |
70歳以上 | 57.5 | 57.0 |
男女別にみると、高血圧の割合は男性のほうが高くなっています。
年齢別にみると、男女とも年齢が上がるにつれて高血圧患者の方の割合は増えています。
高血圧は加齢によってリスクが高まるということが分かります。
高血圧といわれた人の治療状況
高血圧といわれた方の治療状況(30歳以上)を男女別にまとめました。
具体的な数値は次をご覧ください。
【男性】 | 30-49歳(%) | 50-69歳(%) | 70歳以上(%) |
これまでに治療を受けたことがない | 58.6 | 20.2 | 8.0 |
過去に受けたことがあるが、現在は受けていない | 12.4 | 8.6 | 8.9 |
過去に中断したことがあるが、現在は受けている | 1.1 | 2.9 | 4.0 |
過去から現在にかけて継続的に受けている | 28.0 | 68.4 | 79.1 |
具体的な数値は次をご覧ください。
【女性】 | 30-49歳(%) | 50-69歳(%) | 70歳以上(%) |
これまでに治療を受けたことがない | 44.9 | 14.5 | 5.7 |
過去に受けたことがあるが、現在は受けていない | 23.6 | 10.0 | 6.6 |
過去に中断したことがあるが、現在は受けている | 2.2 | 4.1 | 3.5 |
過去から現在にかけて継続的に受けている | 29.2 | 71.4 | 84.2 |
男女どちらも、年齢が高いほど継続した治療を受ける方が多くなっています。
反対に若年者の方は高血圧と指摘されても治療に積極的でない傾向です。
食後に血圧が極端に高くなる方は、食事生活や日頃の生活習慣に問題が疑われます。
乱れた生活習慣は高血圧の大きな要因です。
つまり食後に高血圧になりやすい方は、将来的な高血圧のリスクが高いといえます。
高血圧は早期発見・治療することで良好な予後を期待できます。
高血圧の早期発見につなげるためにも、普段から食後などに血圧を測る習慣をつけるのもおすすめです。
出典:厚生労働省【平成22年国民健康・栄養調査結果の概要】
食後の血圧まとめ
※画像はイメージです
ここまで食後の血圧についてお伝えしてきました。
食後の血圧の要点を以下にまとめます。
- 食後の高血圧の原因は、消化・吸収のために心拍数が増えること
- 食後の低血圧の原因は、加齢・糖尿病などによって血圧を維持する機能が正常に働かないこと
- 食後の血圧変動を防ぐ方法は、食べすぎ・早食いの防止や食後の休憩などが有効
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。