「双極性障害」は気分が高まる「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す脳の病気です。
双極性症状は、Ⅰ型とⅡ型に分けられます。
躁状態が激しいⅠ型に対して、軽躁状態のⅡ型は、診断がつきにくい一面があります。
正しい診断がつかないことは、最善の治療が行えないことにつながります。
双極性障害とうつ病の違いはどこにあるのでしょうか?
双極性障害の「Ⅱ型の症状」や「Ⅰ型の症状」との違いはあるのでしょうか?
本記事では、双極性障害のⅡ型について、以下の点を中心にご紹介します。
- 双極性障害Ⅱ型とは?
- 双極性障害Ⅱ型にはどんな治療方法があるの?
- 双極性障害Ⅱ型を予防するにはどうしたらいいの?
- 双極性障害とうつ状態の時はどう過ごしたらいいの?
双極性障害Ⅱ型について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
後半では、双極性障害のⅡ型の症状やⅠ型との違い、ほかの精神疾患についても解説していきます。
ぜひ最後までお読みください。
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双極性障害のⅡ型とは?
「双極性障害」は、気分が高まったり落ち込んだり、躁状態とうつ状態を繰り返す脳の病気です。
躁状態とうつ状態が交互にあらわれることから、「躁うつ病」とも呼ばれています。
「躁」と「うつ」の主な症状は次の通りです。
主な「躁」の症状 | ハイテンション・眠らなくても平気・誰彼かまわず話しかける・衝動的になる |
主な「うつ」の症状 | 気分が沈む・不安・焦燥・不眠・過眠・自殺願望 |
「双極性障害」には、激しい躁状態とうつ状態のある「双極Ⅰ型」と、軽い躁的な状態(軽躁状態)とうつ状態のある「双極Ⅱ型」があります。
Ⅰ型は、躁状態・うつ状態のどちらの場合にも症状が重い状態で、気分の高揚・落ち込みの落差が激しいのが特徴です。
特に躁状態のときは、周囲とのコミュニケーションが難しくなったり、社会的な信用を失ったりすることもあります。
Ⅱ型はⅠ型に比べると、躁状態とうつ状態がともに症状が軽めです。
Ⅱ型の躁状態は「軽躁」と呼ばれています。
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双極性障害のⅡ型の症状は?
Ⅰ型よりも躁状態は軽いですが、それが逆にやっかいなのがⅡ型です。
「軽躁」状態では、自分も周りも異常に気が付かないため、うつ症状が出てからの受診になります。
そして、医師が「うつ病」と診断し、抗うつ病薬だけ処方されるケースが海外でも多く報告されています。
双極性障害は抗うつ病薬による回復は望めず、うつ状態が回復せずに逆に気分が不安定になり、症状の慢性化を招きます。
以下にⅡ型の症状やⅠ型やうつ病との違いを詳しく説明していきます。
双極性障害Ⅱ型の症状
Ⅰ型が躁状態であるのに対し、Ⅱ型は「軽躁」状態です。
うつ症状はうつ病と似ており、Ⅰ型と比べて症状が軽いため慢性的経過をたどりやすい傾向があります。
双極Ⅱ型障害の生涯有病率は、Ⅰ型とほぼ同じの1%くらいとされています。
うつ状態または軽躁状態が発症して、次に軽躁状態またはうつ状態が発症する1サイクルの期間は個人差がありますが、数カ月から数年とされています。
軽躁状態にあると気分が高揚してアイデアが次々に浮かぶなど本人にとっては絶好調です。
心地よいため、自分でおかしいと気が付いて受診することはありません。
しかし、心地よいだけではなく、病気が進行するにつれて、だんだんイライラや焦燥感、不眠などの症状が出てきます。
他の不安障害(パニック障害、非定型うつ病)も併発しやすくⅠ型よりも慢性化しやすく、自殺のリスクもⅠ型よりも高くなっています。
双極性障害Ⅰ型の症状との違い
簡単に説明すると、Ⅰ型とⅡ型の大きな違いは躁状態の程度になります。
しかし、そのほかにも違う点がいくつかあります。
双極性障害Ⅰ型 | 双極性障害Ⅱ型 |
躁状態が7日以上長い | 躁状態は4日程度 |
躁状態が重症であると入院することもある | 症状が出ていない時は病前の機能を取り戻すこともある |
躁状態によって社会生活を失うリスクが高い | 循環気質(面倒見がよい、社交的、ほがらか)の傾向がある |
うつの期間がずっと長い | うつ症状が慢性化しやすい |
自殺のリスクが単極性うつ病より高い | 他の精神障害が併発しやすい |
自殺のリスクはⅠ型よりもずっと高い |
比べてみるとわかるように、「躁」と「うつ」がはっきりしている「Ⅰ型」の方が、自分も周りも異常に気が付きやすいため、正しい診断がつきやすくなります。
Ⅱ型は「軽躁」状態のため、どうしてもうつ状態で受診し「うつ病」と診断されがちです。
そのため、抗うつ病薬によってうつ状態がさらに悪化する経過をたどってしまいます。
自殺のリスクも高いため、Ⅰ型よりもさらに注意が必要になります。
うつ病の症状との違い
「双極性障害」と「うつ病」は間違われることが多い病気ですが、双極性障害とうつ病の主な違いは、躁状態の有無です。
双極性障害は、うつ状態と躁状態を繰り返す病気です。
個人差はありますが、多かれ少なかれ躁状態を伴うのが特徴的で、「うつ病」はうつ状態のみで、躁状態になることはほとんどありません。
双極性障害とうつ病の4つの違いは以下の通りです。
- 症状の違い
- 治療薬の違い
- なりやすい年代、男女比の違い
- 再発率の違い
それぞれ詳しく説明していきます。
症状の違い
双極性障害のうつ症状は「急激に発症する」「比較的重症」「妄想や幻覚などの精神症状を伴う」などの傾向があります。
また、うつ病にはない「躁状態」も双極性障害の特徴です。
双極性障害とうつ病では身体症状にも若干の違いがみられます。
ただし、身体症状のあらわれ方には個人差があります。
うつ病 | 双極性障害 | |
食欲 | ない | 異常にある |
体重 | 減る | 増える |
睡眠 | 異常に減るまたは増える | 異常に増える |
疲労感 | 異常に感じる | 感じない(躁状態) |
治療薬の違い
双極性障害の治療はうつ病と異なり、「気分安定薬(リチウム)」や「非定型抗精神薬(オランザピン、クエチアピン)」が第一選択薬です。
双極性障害はうつ症状から始まることも多く、うつ病と診断され、抗うつ薬「SSRI:パキシル」、三環系抗うつ薬「アナフラニール」などによる治療が開始されることもあります。
双極性障害患者が抗うつ病薬だけを飲み続けていると、気分が非常に不安定となり、回復が遅れ症状が慢性化していきます。
治療を開始しても症状が改善せず躁状態があらわれた時には、治療を切り替える必要があります。
なりやすい年代、男女比の違い
双極性障害の発生率は、「うつ病の10分の1」です。
発病しやすい年代も、うつ病は40歳代であるのに対して、双極性障害は20歳前後で、まれに10代の発病もみられます。
男女比にも発生率に違いがあります。
うつ病は「男:女=1:2」と女性の方が発生率は多いですが、双極性障害では男女比の差はありません。
再発率の違い
双極性障害は非常に再発しやすい病気で、90%の人が再発しています。
したがって、予防のため内服を継続する必要があります。
一方で、うつ病は再発がほとんどなく、1〜2年治療すれば回復して内服をやめられます。
双極性障害のⅡ型の原因は?
双極性障害がなぜ発病するかについて、はっきりとした原因はわかっていません。
「遺伝」「成育歴」「脳」、誘因として「性格」が複雑に絡み合っていると考えられています。
それぞれについて少し詳しく解説していきます。
成育歴
幼児期は、特に母親とのかかわりが重要です。
スキンシップをしっかり取ることで信頼感や自我がはぐくまれます。
また、抗ストレスホルモン遺伝子活性によりストレス耐性が身につくこともわかっています。
対して、幼児期に親からの虐待やネグレクトを受けると、PTSDやパーソナリティ障害などの精神障害の発病にかかわると言われています。
双極性障害と成育歴の関係についてはまだ研究が十分ではありませんが、なんらかの影響は受けていると考えられているため、診断の際には成育歴も確認します。
遺伝
双極性症状は、遺伝性のある疾患だということがわかってきています。
関係している遺伝子は1つではなく8つあり、複数の遺伝子が組み合わさり発病すると言われています。
遺伝子のこの組み合わせで必ず発病するというわけではなく、組み合わせでも影響が小さいとカリスマ性や高い創造性として現れます。
遺伝性がありますので、家族に双極性障害の人がいる場合は、自分にも可能性があることを知っておくことは大事です。
家族に双極性障害の人がいて自分がうつ病になった場合、診察する医師にその旨をしっかりと伝えてください。
抗うつ病薬からではなく、リチウムから治療を開始した方がよい場合があります。
脳
双極性障害は、脳の病気です。
これまでは、アルツハイマーのような特徴的な変化はないとされてきましたが、研究が進み神経細胞を弱める変化があることがわかっています。
一つは、抑制性の神経細胞の減少で、双極性障害の人は4割程少ないとされています。
また、神経細胞のカルシウム濃度が高くなり、細胞死を招きやすくなっていることもわかっています。
性格
双極性障害Ⅱ型の人の傾向として「循環気質」があります。
これは、「社交的で周囲に気を配り」「明朗で陽気」「寡黙で不活発」という3要素が入れ替わりながら表面化する傾向を持つ、とされています。
双極性障害のⅡ型の診断基準は?
「DSM-5」は、アメリカ精神医学会によって出版された、精神障害の診断と統計マニュアルで、精神疾患の国際的な診断基準です。
それだけで病気や障害のすべてがわかるというものではありませんが、うつ病などの精神疾患や発達障害の診断の際に、医療機関で広く用いられています。
双極性障害Ⅰ型
少なくとも1回の明白な躁病エピソード、ならびに通常は複数回の抑うつエピソードの存在により定義される
双極性障害Ⅱ型
複数回のうつ病エピソードとともに、少なくとも1回の軽躁病エピソードが認められるが,明白な躁病エピソードがみられないと定義される
双極性障害のⅡ型の治療法は?
双極性障害の治療は、「薬物療法」が中心です。
うつや躁の症状改善とともに、再発予防の効果があります。
維持療法の時期には、「心理社会療法」というもう一つの柱があります。
以下に、それぞれについて説明していきます。
薬物療法
薬物療法は、双極性障害の治療の大きな柱です。
「気分安定剤」と「非定型抗精神病薬」が第一選択ですが、ガイドラインにも多くの薬がリストアップされています。
人によって、効果の得られる薬が違うためガイドラインに沿って、その人にあう薬を探していききます。
気分安定薬
リチウム(商品名リーマス、炭酸リチウム)
双極性障害の治療の第一選択薬です。
効果が出るまでには1週間〜10日程かかりますが、2〜3週間の治療期間で、4〜8割の症状が改善します。
リチウムは、多幸感や爽快気分を伴う典型的な「躁病」の方に良く効きます。
うつ状態にも効き、再発予防効果に優れています。
特に重要なのが、「自殺予防」で、衝動性を減らすためと考えられています。
気分安定薬の中で、自殺予防として認められているのは、リチウムだけです。
リチウムの服用は、血中濃度が0.4〜1mMの範囲で用いますが、1.5mMを超えると中毒症状が現れることがあるので、定期的(6〜12か月程度)に血中濃度の測定が必要です。
飲み初めの1週間位は、下痢、嘔吐、振戦と呼ばれる律動的な細かい震え、めまい、筋力低下、頭痛、心不整脈、までさまざまな副作用が報告されています。
また、長期間の治療によって甲状腺機能低下症(無症状甲状腺機能低下症)が起こることがあります。
バルプロ酸(商品名デパケン、セレニカ)
バルプロ酸は、抗てんかん薬の1つとして用いられていましたが、気分安定作用をもつことが分かり、双極性障害にも使用されるようになりました。
日本うつ病学会による双極性障害の診療ガイドラインでは、
「躁病エピソードと維持期に際して、最も推奨されるリチウムに続いて、幾つかの推奨される薬剤の1つである」としてます。
「リチウムが効きにくい人」や「ラピットサイクリングの人」、「混合状態の人」、「強い不機嫌状態の人」に有効とされています。
また、リチウムよりも比較的安全域の広い薬で、少し多めに飲んで効果を出すといったことも可能です。
眠気、めまい、震えなどがあらわれる場合や、吐き気、食欲不振、腹痛、口内炎などがあらわれる場合があります。
他に体重増加や脱毛が起こる場合があります。
まれですが、肝機能異常や高アンモニア血症が出現することもあります。
カルバマゼピン(商品名テグレトール)
カルバマゼピンは、長らく抗てんかん薬のひとつとして使われていましたが、1990年より双極性障害の躁状態にも有効性が認められ承認された薬です。
抗躁効果が強いのですが、効果が「やや遅い」というデメリットがあります。
気分安定薬のリチウムよりは早いのですが、即効性では抗精神病薬よりも劣るため、著しい躁状態の患者さんには向きません。
治療に時間をかけられる方に、使用される傾向があります。
特徴的な副作用として、「すべての音が半音下がって聞こえる」という聴覚変化があります。
絶対音感のある患者さんにとっては、不快感が強い症状です。
他に倦怠感、過敏症、浮腫、に加え、稀に重症の麻疹様発疹が起こる可能性があります。
発疹などが出た場合は使用を中止する必要があります。
何らかの異常を感じた場合は、すぐに医師に相談するようにしましょう。
ラモトリギン(商品名ラミクタール)
双極性障害の薬物療法の弱点である、うつに効果があり、再発予防効果も期待できます。
一般的に、うつの再発を遅らせたり、改善する効果があるため、「ラピットサイクリング」や「双極性障害Ⅱ型」に有効とされています。
ラモトリギンは作用時間が長いので、1回/日でも効果が持続しますが、200mg以上の高用量で使用する際は、2回/日に分けて服用します。
再発予防目的で使う場合は、200mgまで増量して行きますが、200mgで再発予防効果が得られなかった時には、最高用量の400mgまで使っていくこともあります。
ラモトリギンは、効果が少しずつ出てくるお薬で、長く使うことで、治療効果が少しずつ認められます。
強いアレルギー反応のリスクを避けるため、少量から開始し、はじめの1か月は2週間ずつ慎重に増量していくことが決められています。
基本的に安全性の高い薬ですが、発疹、脱毛など皮膚症状を中心としたアレルギー反応などの重症薬疹にだけは注意が必要です。
非定型抗精神病薬
オランザピン(商品名ジプレキサ)
国内では統合失調症治療薬として承認されていましたが、のちに双極性障害における躁症状やうつ症状を改善する薬として追加承認されました。
双極性障害の「うつ症状」にも「躁症状」にも適応している抗精神病薬です。
オランザピンは鎮静作用が強く、躁症状を抑えたり、焦燥感が強いうつ症状の時に使われています。
抗うつ効果としては、オランザピンだけでは少し物足りない場合に、抗うつ薬のフルオキセチンとの併用も認められています。
双極性障害の治療には、躁状態には10mgから、うつ状態には5mgから服用し、どちらの場合も最高用量は20mgまでとなっています。
作用時間が長く効果がしっかりと持続するので、1日に1回の服用で済むというのもオランザピンの大きなメリットです。
特に注意が必要とされている副作用は、体重増加です。
抗ヒスタミン作用が強いため、食欲が増加するだけでなく、代謝が悪くなり、個人差はありますが、太りやすくなります。
また、オランザピンは、糖尿病の患者、あるいは糖尿病の既往歴のある患者には投与できません。
クエチアピン(商品名セロクエル、ビプレッソ)
クエチアピンの使用は主に統合失調症の治療に限られていましたが、2017年に双極性障害における「うつ状態」の改善に対する効果も認められ承認されました。
成人には1回25mgを、1日2〜3回より投与し、患者の状態に応じて投与量を増量していきます。
医師の判断により増減しますが、一日の最大摂取量は750mgを超えないこととなっています。
クエチアピンには副作用の1つとして傾眠があるため、人によっては眠気を感じることがあります。
服用後の運転は避けるようにしてください。
また、クエチアピンは糖尿病の方や、過去に糖尿病を起こしたことのある方の使用は禁止されています。
アリピプラゾール(商品名エビリファイ)
アリピプラゾールは、双極性障害における抑えることのできない感情の高まりや行動などの躁状態を抑える効果が認められた非定型抗精神病薬の一つです。
ただし、うつ状態に対しては治療効果が示されていません。
効果の出方も、ドーパミンをブロックするのではなく、ドーパミンを調整するという作用を持つため、穏やかに効き、副作用は少なめです。
アリピプラゾールは服用の初期段階で、じっと座ったままでいられず、そわそわと動き回る「アカシジア症状」が起こることがあります。
ルラシドン(商品名ラツーダ錠)
ルラシドンは、2020年に治療の選択肢に加わった非定型抗精神病薬です。
双極性障害における「うつ症状」の改善に適応を持つ、3番目の抗精神病薬になります。
ルラシドンは、双極性障害のうつ状態では80〜120mgと高用量にしても有効性が実証できなかったため、最大用量が60mgと設定は低めです。
また、作用時間が比較的長いため、1日1回の服用で設定されています。
空腹時に飲むと期待した効果が得られない場合があるため、必ず食後に服用します。
ルラシドンは、吐き気、眠気、頭痛、不眠症などに加えて、じっとして居られなくなる「アカシジア症状」が報告されています。
このような症状に気づいたら、担当の医師に相談してください。
心理社会的療法
双極性障害の治療で、薬物治療の他に大事なものが「心理社会的療法」です。
薬物療法は、脳全体に働きかけ治療しますが、心の悩みは解決できません。
心理社会的療法は、広い意味での「精神療法」で、再発を予防する上では薬と同じくらい大切な役割を果たします。
「薬物療法」と「心理社会的療法」、別々の役割を持つこの2つの治療法が、患者さんの生活を支える2つの柱となります。
心理社会的療法は以下の3つになります。
- 心理教育
- 対人・社会リズム療法
- 家族療法(家族心理教育)
それぞれ詳しく説明していきます。
心理教育
心理社会的療法の中心となるのが、「心理教育」です。
心理教育では、双極性障害の知識を深めながら、「再発しやすい」という性質を理解し、リスクを減らす生活の仕方を学んでいきます。
双極性障害は、薬で症状が落ち着いてからがある意味本番です。
再発をゼロにすることは難しいですが、服薬をつづけながら運動、睡眠、ストレスへの対処法を学び、気分の波を穏やかに保てるようにしていきます。
心理教育の内容は、
- 病気についての知識を知る
- 再発のサインを知る
- 服薬の大切さを知る
- 症状への対処法を知る
- ストレス対処法を知る
になります。
心理教育では、医師と話しあい学び、双極性障害と向き合う心構えを育てていきます。
対人・社会リズム療法
人間関係の不調や生活リズムの乱れは、症状の再発につながる「引き金」となります。
「対人・社会リズム療法」の目的は、対人関係のパターンを変えることにあります。
この療法で焦点をあてるのは、患者さんに影響を及ぼす「家族」「恋人」「上司」など、他者との人間関係です。
患者さんの周りにある対人関係のやりとりや、そこから生じる出来事、気分の変化との関係などに注目しながら、カウンセリングしていきます。
対人関係療法で周囲の人とのかかわりを改善し、人間関係がよくなると、患者さんは今の状況を受け止められるようになります。
ストレスが減るので、気分が安定してきます。
社会リズム療法は、日常の様々な行動を紙に書き出し、自分を客観的にとらえ、生活リズムの乱れを洗い出し改善することです。
生活リズムが改善されれば、それだけで患者さんの症状が落ち着くことがわかっています。
家族療法(家族心理教育)
精神医学では、家族で過ごす生活環境を「家族生活環境」といいます。
治療に適した家族生活環境で暮らす患者さんは、再発率が下がることがわかっています。
患者さんに対して、「批判的な発言する」「敵意を抱く」家族と暮らす家族生活環境では再発しやすくなります。
これに対して「温かみ」や「肯定的な言葉」をもって接する家族生活環境は再発率も低くなります。
双極性障害が発病した当初は、治療により元に戻った状態の患者さんをあたたかな気持ちで見守れます。
しかし、たびたび症状を繰り返していると家族も疲弊してきます。
これは、躁状態の問題行動に振り回され、サポートしたい気持ちを失うことにもなります。
家族療法は、そんな家族をサポートする心理社会的教育でもあります。
家族療法の内容は、
- 病気についての知識を得る
- 症状への対応
- 再発への対応を学ぶ
- ストレスマネジメント
- 服薬の大切さを知る
- 治療に適した環境つくり
になります。
「心理社会的療法」は病気の知識を深めながら、「再発しやすい」性質を理解します。
リスクを減らす生活の仕方を学んでいくために、薬物療法と並んで大事な治療です。
双極性障害のⅡ型を予防するには?
双極性障害を経験した人は、大多数が再発を繰り返します。
双極性障害は、気分や意欲が周期的に変化する病気です。
いったん病気が治っても、ぶり返しがあると病気に振り回されてしまい、安定した生活をすることが困難になります。
処方された薬を正しく服用しなかったり、生活に負荷をかけたりすることが再発の原因です。
双極性障害が再発する原因
双極性障害は再発の可能性がある病気です。
双極性障害が再発する原因を紹介します。
- 処方された薬を正しく飲んでいない
- 過労
- 人間関係のストレス
再発を防ぐためのポイントを紹介します。
- 適切な薬物治療を継続する
- 規則正しい生活で体内時計のリズムを整える
- 有酸素運動を生活に取り入れる
- 掃除してみる
- 食生活を見直す
以下で、詳しく説明していきます。
適切な薬物治療を継続する
双極性障害は、「薬物治療」と「心理社会的治療」の2つの治療法で治療していきます。
しかし、薬物治療を進めるうちに症状が改善し、「もう治った」「治療も薬もいらない」と薬の服用を止めてしまうケースがあります。
調子がよくなれば、調子が悪いときよりは少ない薬にできるかもしれませんが、薬の服用は続けていく必要があります。
実際に、双極性障害の再発の原因として薬の飲み忘れを挙げる方は少なくありません。
規則正しい生活で体内時計のリズムを整える
双極性障害の患者さんは体内時計のリズムが乱れていることが多く、様々な症状の誘因となると考えられています。
つまり体内時計のリズムを正せば症状改善や再発予防につながるとされています。
体内時計のリズムを整える5つのポイントは以下の通りです。
- 就寝と起床を決まった時間に。起きたら朝日を浴びる
- 3度の食事は規則正しく。朝食は特に大事
- 毎日できるだけ、人とふれあう
- 昼間はできるだけ外へでる機会を作る
- 生活の記録をつける
睡眠を整えることは、体内リズムのリセット、症状緩和、再発予防につながります。
夜は決めた時間にとにかく電気を消し、朝はおきて朝日を浴びます。
起床後1時間以内に朝食をとることでその日のリズムがつくられます。
夜は睡眠を促すメラトニンが分泌されやすいタンパク質がおすすめです。
人と会うことで社会のリズムを感じられます。
明るいところで過ごすことで、メラトニンが分泌され夜の寝つきがよくなるため、散歩がおすすめです。
社会リズム療法で、日常の様々な行動を紙に書き出し、自分を客観的にとらえ、生活リズムの乱れを洗い出し改善できます。
有酸素運動を生活に取り入れる
適度な運動はリラックス効果や疲労回復効果があり、運動後の達成感や高揚感は気持ちをリセットしてくれます。
週に3〜4日、1回20〜30分程度の早歩きかジョギングなどの有酸素運動が有効です。
有酸素運動の際は、呼吸を意識して行いましょう。
掃除してみる
身近な家事にも、運動効果があります。
特に軽く汗をかく程度の家事がおすすめです。
身の回りもきれいになり、身体にも心にもとてもよい効果があります。
うつ状態の時は、なかなか行動に移すことは難しいかもしれませんが、掃除を少しずつするポイントがあるので参考にしてみて下さい。
- 机の上など毎日使う部分を片づける
- 棚の中や上、衣類など日頃整理出来ていない部分を片づける
- 部屋全体がかたづいたら、掃除機をかける
- 家族と一緒につかうトイレや洗面所を掃除する
部屋の状態は、心の状態を表すと言われています。
部屋を片づけすっきりした部屋は気持ちがすっきりするでしょう。
また、ダニやカビ対策にもなり衛生的で身体のためにもいいでしょう。
掃除することで、運動ができ、心がすっきり、家族から感謝されることもあるでしょう。
なにより、掃除することで、将来への不安や恐怖よりも今を生きることに集中できる効果もあります。
食生活を見直す
双極性障害のうつ状態では、うつ病と異なり体重が増加しやすい傾向にあります。
うつが体重増加を招き、そんな自分に落ち込み自己嫌悪に陥ります。
体重増加が、うつ状態を悪化させることもあるのです。
双極性障害の治療薬でもある非定型抗精神病薬の「オランザピン」「クエチアピン」には体重増加の副作用があり、血糖値上昇による糖尿病のリスクにもなります。
- 週に3日以上度を越して食べる
- 体を動かさずに、甘いお菓子などをたえず食べ続ける
- 3カ月の間に、健康時の体重の5%以上増えている
これらに当てはまる場合は、要注意です。
不安定な気持ちからくるとめどない食欲を克服するには、原因となっている自分の心を
見直す必要があります。
これから述べる対処法を実施しても改善しない場合は医師に相談しましょう。
|目標をきめる|
目標体重をきめましょう。月に1〜2㎏程度の減量が健康的でリバウンドが少ないとされています。
|体重をはかる|
体重測定は大事ですが、毎日はかると体重の増減に一喜一憂してしまいます。
体重測定は週に1回で十分ですので、同じ時間に測定し記録していきましょう。
|記録する|
食べたものや運動を記録してきます。
自分の傾向や問題点が客観的にわかるため、改善しやすくなります。
|食事の時間をきめる|
体重が増加している人の中には、時間を決めずにだらだら食べをしてしまう傾向の方もいます。
そのような方は3食の時間をきめて、それ以外の時間は食べないようにしましょう。
|過食をさける工夫|
記録などで自分の過食の衝動にかられる時間がわかっている人は、散歩や人と会う、電話するなどの予定をいれるのもいいでしょう。
運動や会話することで、過食の欲求が抑えられます。
|バランスよく食べる|
栄養不足の状態では足りない栄養素を補うために飢餓状態となり、いくら食べても食欲はおさまりません。
バランス良く食べて栄養をとりましょう
|朝食をしっかり食べる|
朝食は体内リズムをリセットするために大切です。
リセット効果の高い炭水化物を起床後1時間以内に食べるとよいでしょう。
|買いだめしない|
手元におかなければ食べ続けることはできませんので、お菓子などの買いだめはやめましょう。
|食事は家族と一緒に|
家族と一緒にたべることで、自分では気が付かない食べすぎに気が付いてもらえるでしょう。
また、家族の食事内容や量をみて、自分の食事を客観視できます。
再発を防ぐためには、初期兆候を知ることも大切です。
そして、初期兆候が現れた場合や、再発後の対応についてもあらかじめ周囲と打ち合わせしておきましょう。
再発のがあらわれた時点で医師に相談することも大切です。
双極性障害のⅡ型のまとめ
ここまで双極性障害Ⅱ型の症状と治療法、再発予防についてお伝えしてきました。
まとめると以下の通りです。
- Ⅱ型はⅠ型よりも軽躁状態であることが特徴で、Ⅰ型よりも慢性化しやすく自殺率が高い
- 双極性障害Ⅱ型の治療は、薬物療法と心理社会的療法があり、再発を予防し社会復帰するために重要な治療
- 双極性障害の再発予防には、内服を継続することや規則正しい生活や運動、食事管理が有効
- うつ状態の時は、思考を見直したり、瞑想することで心穏やかに過ごせる
これらの情報が皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。