双極性障害は、気分が高まる「躁状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す脳の病気です。
双極性障害の治療には、「薬物治療」と「心理社会的療法」があり、薬物治療は、双極性障害の治療の大きな柱となっています。
双極性障害の「薬物治療」ではどんな薬を服用するのでしょうか?
「心理社会的療法」ではどのように治療するのでしょうか?
この記事では双極性障害の治療薬について以下の点を中心にご紹介します。
- 双極性障害とは?
- 双極性障害の薬物治療方法について
- 双極性障害の薬物治療以外の治療について
- 薬物治療中の妊娠について
- 薬物治療の新薬について
双極性障害について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
後半では、双極性障害の「心理社会的療法」についてもまとめていますので、ぜひ最後までお読みください。
スポンサーリンク
双極性障害とは?
「双極性障害」とは、躁状態とうつ状態を繰り返す脳の病気です。
気分が高揚した状態を「躁状態」、気分が落ち込む状態を「うつ状態」と呼びます。
双極性障害は、躁状態とうつ状態が交互にあらわれることから、「躁うつ病」とも呼ばれています。
双極性障害には、激しい躁状態とうつ状態のある「双極Ⅰ型」と、軽い躁的な状態(軽躁状態)とうつ状態のある「双極Ⅱ型」があります。
「うつ病」と似ていますが、双極性障害はうつ病にはない「躁状態」があるのが特徴です。
双極性障害の症状
躁状態とうつ状態を、それぞれ解説していきます。
「躁」と「うつ」の主な症状は次の通りです。
躁状態の症状
- 人の意見に耳をかさない
- 睡眠時間が2時間以下でも活動できる
- 話が止まらない
- 性的に開放的になる
- 次々にアイデアがでてくるが、組み立てて最後までやり遂げられない
- 買い物やギャンブルに莫大な金額をつぎ込む
うつ状態の症状
- 食欲がない
- 性欲がない
- 眠れない、過度に寝てしまう
- 体がだるい、疲れやすい
- 頭痛や肩こり
- 胃の不快感
- めまい
- 涙もろくなった
- 自分を責めてばかりいる
- 飲酒量が増える
- 落ち着かない
- 反応が遅い
双極性障害の原因
双極性障害がなぜ発病するかについて、はっきりとした原因はわかっていません。
「成育歴」「遺伝」「脳」、誘因として「性格」が複雑に絡み合っていると考えられています。
それぞれについて詳しく解説していきます。
成育歴
幼児期は特に母親とのかかわりが重要です。
スキンシップをしっかり取ることで、信頼感や自我がはぐくまれます。
また、抗ストレスホルモン遺伝子活性によりストレス耐性が身につくこともわかっています。
対して、幼児期に親からの虐待やネグレクトを受けると、「PTSD」や「パーソナリティ障害」などの精神障害の発病にかかわるといわれています。
「双極性障害」と「成育歴」の関係については、まだ研究が十分ではありませんが、なんらかの影響は受けていると考えられています。
遺伝
双極性障害は、遺伝性のある疾患だということがわかってきています。
双極性障害の発症に関係している遺伝子は、1つではなく8つで、複数の遺伝子が組み合わさることで発病するといわれています。
必ず発病するわけではなく、影響が小さいと「カリスマ性」や「高い創造性」としてあらわれます。
ただし、家族に双極性障害の人がいると、自分にも発症の可能性があると知っておくことは大事です。
家族に双極性障害の人がいて自分がうつ病になった場合、診察する医師にその旨をしっかりと伝えてください。
「抗うつ病薬」からではなく、リチウムなどの「気分安定薬」から治療を開始した方がよい可能性があります。
脳
双極性障害は、「脳の病気」です。
これまでは、アルツハイマーのような特徴的な変化はないとされてきましたが、研究が進み神経細胞を弱める変化があることがわかっています。
一つは、抑制性の神経細胞の減少で、双極性障害の人は4割程少ないとされています。
また、神経細胞のカルシウム濃度が高くなり、細胞死を招きやすくなっていることもわかっています。
性格
双極性障害の人の傾向として「循環気質」があります。
循環気質とは「高揚する気分」と「沈下した気分」が交互に循環して繰り返す気質傾向のことで、「躁うつ病」にみられる気質とされています。
気分の上下は誰しもありますが、この循環気質の幅が常軌を逸し、周囲とコミュニケーションが取れなくなったり、社会不適合的な行動で信用を失ったりすることもあります。
うつ病の症状との違い
「双極性障害」と「うつ病」は間違われることが多い病気ですが、双極性障害とうつ病の主な違いは、躁状態の有無です。
双極性障害とうつ病の違いは4つあります。
- 症状の違い
- 治療薬の違い
- なりやすい年代、男女比の違い
- 再発率の違い
それぞれ詳しく説明していきます。
症状の違い
双極性障害のうつ症状は「急激に発症する」「比較的重症」「妄想や幻覚などの精神症状を伴う」などの傾向があります。
また、うつ病にはない「躁状態」も双極性障害の特徴です。
「双極性障害」と「うつ病」では身体症状にも若干の違いがみられます。
ただし、身体症状のあらわれ方には個人差があります。
うつ病 | 双極性障害 | |
食欲 | ない | 異常にある |
体重 | 減る | 増える |
睡眠 | 異常に減るまたは増える | 異常に増える |
疲労感 | 異常に感じる | 感じない(躁状態) |
治療薬の違い
双極性障害の治療はうつ病とは違い、気分安定薬(リチウム)や非定型抗精神薬(オランザピン、クエチアピン)が第一選択薬です。
双極性障害は「うつ症状」から始まることも多いです。
うつ病と診断され、抗うつ薬「SSRI:パキシル」、三環系抗うつ薬「アナフラリール」などによる治療が開始されることもあります。
双極性障害患者が抗うつ病薬だけを飲み続けていると、気分が非常に不安定となります。
そのため、回復が遅れ症状が慢性化していきます。
治療を開始しても症状が改善せず躁状態があらわれた時は、治療を切り替える必要があります。
なりやすい年代、男女比の違い
双極性障害の発生率は、「うつ病の10分の1」です。
発病しやすい年代も、うつ病は40歳代であるのに対して、双極性障害は20歳前後で、まれに10代の発病もみられます。
男女比にも発生率に違いがあります。
うつ病は「男:女=1:2」と女性の方が発生率は多いですが、双極性障害では男女比の差はありません。
再発率の違い
双極性障害は非常に再発しやすい病気で、90%の人が再発しています。
したがって、予防のため内服を継続する必要があります。
一方で、うつ病は再発がほとんどなく、1〜2年治療すれば回復して内服をやめられます。
障害の種類について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も是非ご覧ください。
私たちの社会にはさまざまな障害を持つ人々が存在します。それぞれの障害には、独自の特徴や困難があります。障害の種類について知ることは、理解や共感を深めるための第一歩となります。しかし、障害にはどのような種類があるのでしょうか?本記[…]
スポンサーリンク
双極性障害の治療薬は?
双極性障害の治療は、「薬物療法」が中心です。
うつや躁の症状改善とともに、再発予防の効果があります。
双極性障害の治療で使用する薬の種類や副作用のリスクについて説明していきます。
気分安定薬
「気分安定剤」と「非定型抗精神病薬」が第一選択ですが、ガイドラインにも多くの薬がリストアップされています。
気分安定剤は、共通な作用として、「神経保護作用」が知られています。
リチウム(商品名リーマス、炭酸リチウム)
双極性障害の治療の第一選択薬です。
効果がでるまでには1週間から10日程かかりますが、2〜3週間の治療で、4〜8割の方で症状が改善します。
リチウムは、多幸感や爽快気分を伴う典型的な「躁病」の方によく効きます。
うつ状態にも効き、再発予防効果に優れています。
特に重要なのが、「自殺予防」で、衝動性を減らせると考えられています。
気分安定薬の中で、自殺予防として認められているのは、リチウムだけです。
リチウムの服用は、血中濃度が0.4〜1mMの範囲で用いますが、1.5mMを超えると中毒症状があらわれることがあるので、定期的(6〜12か月程度)に血中濃度の測定が必要です。
飲み初めの1週間位は下痢、嘔吐、振戦と呼ばれる律動的な細かい震え、眩暈、筋力低下、頭痛、心不整脈までさまざまな副作用が報告されています。
また、長期間の治療によって甲状腺機能低下症(無症状甲状腺機能低下症)が起こることがあります。
バルプロ酸(商品名デパケン、セレニカ)
バルプロ酸は、抗てんかん薬の1つとして用いられていましたが、気分安定作用をもつことがわかり、双極性障害にも使用されるようになりました。
日本うつ病学会による双極性障害の診療ガイドラインでは、「躁病エピソードと維持期に際して、最も推奨されるリチウムに続いて、幾つかの推奨される薬剤の1つである」としてます。
「リチウムが効きにくい人」や「ラピットサイクリングの人」、「混合状態の人」、「強い不機嫌状態の人」に有効とされています。
また、リチウムよりも安全域の広い薬で、少し多めに飲んで効果をだすといったことも可能です。
ただ、眠気、めまい、震え、吐き気、食欲不振、腹痛、口内炎などの副作用があらわれる場合があります。
その他に体重増加や脱毛が起こる場合があります。
まれですが、肝機能異常や高アンモニア血症が出現することもあります。
カルバマゼピン(商品名テグレトール)
カルバマゼピンは、長らく抗てんかん薬のひとつとして使われていましたが、1990年より双極性障害の躁状態にも有効性が認められ承認された薬です。
抗躁効果が強いのですが、効果がでるまでやや遅いというデメリットがあります。
気分安定薬のリチウムよりは早いのですが、即効性では抗精神病薬よりも劣るため、著しい躁状態の患者さんには向きません。
治療に時間をかけられる方に、使用される傾向があります。
特徴的な副作用として、「すべての音が半音下がって聞こえる」という聴覚変化があります。
絶対音感のある患者さんにとっては、不快感が強い症状です。
その他に倦怠感、過敏症、浮腫に加え、稀に重症の麻疹様発疹が起こる可能性があります。
発疹などがでた場合は使用を中止する必要があります。
何らかの異常を感じた場合は、すぐに医師に相談するようにしましょう。
ラモトリギン(商品名ラミクタール)
ラモトリギンは、双極性障害の薬物療法の弱点である、うつに効果があり、再発予防効果も期待できます。
一般的に、うつの再発を遅らせたり、改善する効果が期待されているため、「ラピットサイクリング」や「双極性障害Ⅱ型」に有効とされています。
ラモトリギンは作用時間が長いので、1回/日でも効果が持続しますが、200mg以上の高用量で使用する際は、2回/日に分けて服用します。
再発予防目的で使う場合は、200mgまで増量して行きますが、200mgで再発予防効果が得られなかった時には、用量の使用限度の400mgまで使っていくこともあります。
ラモトリギンは、効果が少しずつでてくる薬で、長く使うことで治療効果が少しずつ得られます。
強いアレルギー反応のリスクを避けるため、少量から開始し、はじめの1か月は2週間ずつ慎重に増量していくことが決められています。
また、副作用として発疹、脱毛など皮膚症状を中心としたアレルギー反応などの重症薬疹にだけは注意が必要です。
非定型抗精神病薬
ドーパミンを阻害することによって、躁状態を抑える作用があります。
また、神経保護作用も報告されています。
オランザピン(商品名ジプレキサ)
国内では統合失調症治療薬として承認されていましたが、のちに双極性障害における躁症状やうつ症状を改善する薬として追加承認されました。
双極性障害の「うつ症状」にも「躁症状」にも適応している抗精神病薬です。
オランザピンは鎮静作用が強く、躁症状を抑えたり、焦燥感が強いうつ症状の時に使われています。
抗うつ効果として、オランザピンだけでは少し物足りない場合に、抗うつ薬のフルオキセチンとの併用も認められています。
双極性障害の治療で、躁状態には10mgから、うつ状態には5mgから服用し、どちらの場合も用量は20mgまでとなっています。
作用時間が長く効果がしっかりと持続するので、1日に1回の服用で済むというのもオランザピンの大きなメリットです。
特に注意が必要とされている副作用は、体重増加です。
抗ヒスタミン作用が強いため、食欲が増加するだけでなく、代謝が悪くなり、個人差はありますが、太りやすくなります。
また、オランザピンは、糖尿病の患者、あるいは糖尿病の既往歴のある患者には投与できません。
クエチアピン(商品名セロクエル、ビプレッソ)
クエチアピンの使用は主に統合失調症の治療に限られていましたが、2017年に双極性障害における「うつ状態」の改善に対する効果も認められ承認されました。
成人には1回25mgを、1日2〜3回より投与し、患者の状態に応じて投与量を増量していきます。
医師の判断により増減しますが、一日の最大摂取量は750mgを超えないこととなっています。
クエチアピンには副作用の1つとして傾眠があるため、人によっては眠気を感じることがあります。
服用後の運転は避けるようにしてください。
また、クエチアピンは糖尿病の方や、過去に糖尿病を起こしたことのある方の使用は禁止されています。
アリピプラゾール(商品名エビリファイ)
アリピプラゾールは、双極性障害における抑えることのできない感情の高まりや行動などの躁状態を抑える効果が認められた非定型抗精神病薬の一つです。
ただし、うつ状態に対しては治療効果が示されていません。
効果のでかたも、ドーパミンをブロックするのではなく、ドーパミンを調整するという作用を持つため、穏やかに効き、副作用は少なめです。
ただ、アリピプラゾールは服用の初期段階で、じっと座ったままでいられず、そわそわと動き回る「アカシジア症状」が起こることがあります。
双極性障害の治療で薬をやめるとどうなる?
双極性障害を経験した人は、大多数が再発を繰り返します。
双極性障害は、気分や意欲が周期的に変化する病気です。
いったん病気がよくなっても、ぶり返しがあると病気に振り回されてしまい、安定した生活することが困難になります。
処方された薬を正しく服用しなかったり、生活に負荷をかけたりすることが再発の原因となります。
双極性障害の薬を使わない治療法は?
双極性障害の治療で、薬物治療の他に大事なものが「心理社会的療法」です。
薬物療法は、脳全体に働きかけ治療しますが、心の悩みは解決できません。
心理社会的療法は、広い意味での「精神療法」で、再発を予防する上では薬と同じくらい大切な役割を果たします。
心理社会的療法は以下の3つになります。
- 心理教育
- 対人・社会リズム療法
- 家族療法(家族心理教育)
それぞれ詳しく説明していきます。
心理教育
心理社会的療法の中心となるのが、「心理教育」です。
心理教育では、双極性障害の知識を深めながら、「再発しやすい」という性質を理解し、リスクを減らす生活の仕方を学んでいきます。
双極性障害は、薬で症状が落ち着いてからが、ある意味本番です。
再発をゼロにすることは難しいですが、服薬を続けながら運動、睡眠、ストレスへの対処法を学び、気分の波を穏やかに保てるようにしていきます。
心理教育の内容は、
- 病気についての知識を知る
- 再発のサインを知る
- 服薬の大切さを知る
- 症状への対処法を知る
- ストレス対処法を知る
になります。
心理教育では、医師と話しあい学び、双極性障害と向き合う心構えを育てていきます。
対人・社会リズム療法
人間関係の不調や生活リズムの乱れは、症状の再発につながる「引き金」となります。
「対人・社会リズム療法」の目的は、対人関係のパターンを変えることにあります。
この療法で焦点をあてるのは、患者さんに影響を及ぼす「家族」「恋人」「上司」など、他者との人間関係です。
患者さんの周りにある対人関係のやりとりや、そこから生じる出来事、気分の変化との関係などに注目しながら、カウンセリングしていきます。
対人関係療法で周囲の人とのかかわりを改善し、人間関係がよくなると、患者さんは今の状況を受け止められるようになります。
ストレスが減るので、気分が安定してきます。
社会リズム療法は、日常のさまざまな行動を紙に書きだし、自分を客観的にとらえ、生活リズムの乱れを洗いだし改善することです。
生活リズムが改善されれば、それだけで患者さんの症状が落ち着くことがわかっています。
家族療法(家族心理教育)
精神医学では、家族で過ごす生活環境を「家族生活環境」といいます。
治療に適した家族生活環境で暮らす患者さんは、再発率が下がることがわかっています。
患者さんに対して、「批判的な発言する」「敵意を抱く」家族と暮らす家族生活環境では再発しやすくなります。
これに対して「温かみ」や「肯定的な言葉」をもって接する家族生活環境は再発率も低くなります。
双極性障害が発病した当初は、治療により元に戻った状態の患者さんを温かい気持ちで見守れます。
しかし、たびたび症状を繰り返していると家族も疲弊してきます。
これは、躁状態の問題行動に振り回され、サポートしたい気持ちを失うことにもなります。
家族療法は、そんな家族をサポートする心理社会的教育でもあります。
家族療法の内容は、
- 病気についての知識を得る
- 症状への対応
- 再発への対応を学ぶ
- ストレスマネジメント
- 服薬の大切さを知る
- 治療に適した環境つくり
になります。
「心理社会的療法」は病気の知識を深めながら、「再発しやすい」性質を理解します。
リスクを減らす生活の仕方を学んでいくために、薬物療法と並んで大事な治療です。
双極性障害の薬物療法|妊娠中の注意事項
双極性障害の治療薬である「気分安定剤」は妊娠3カ月までに服用すると胎児に奇形を起こすリスクがある薬です。
リチウムは、近年の研究で、エブスタイン奇形の発生が最大で1,000例に1例であり、一般的な同奇形の発生数20,000例に1例の20倍と考えられています。
また、他の心血管奇形や流産の増加も指摘されています。
バルプロ酸は、神経管閉鎖不全・心房中隔欠損・口蓋裂・尿道下裂・多指症などのリスクがあります。
ラモトリギンにも同様のリスクがあり、その成分が母乳にでる可能性もあります。
したがって、妊娠を希望される際には、可能なかぎり早めに医師に相談しましょう。
- 内服を継続する
- 薬を変更する
- 薬を完全にやめる
- 一時的に中断し、出産後に再開する
治療の継続については、メリット・デメリットを天秤にかけて判断する必要があります。
特に薬を完全にやめる場合は、いきなり中止すると再発するリスクが高まります。
そのため、少しずつ減量し数週間かけて中止していく必要があります。
薬を変更する場合は「非定型抗精神病薬」への変更を検討します。
「非定型抗精神病薬」は「気分安定剤」よりは胎児への影響のリスクが少なく、母体への治療が継続できます。
いずれにしても、薬物治療中の妊娠は、母体や胎児への影響があるため「こどもがほしいな」と思った早めのタイミングで医師に相談することが大事です。
双極性障害の新薬は?
双極性障害の治療については、日々研究が進んでいます。
その中で、日本で最近治療の選択肢に加わったのが、非定型抗精神病薬の「ルラシドン(商品名ラツーダ錠)」です。
ルラシドンは、2020年に治療の選択肢に加わった「非定型抗精神病薬」です。
双極性障害における「うつ症状」の改善に適応を持つ、3番目の抗精神病薬になります。
双極性障害のうつ状態では80〜120mgと高用量にしても有効性が実証できなかったため、最大用量が60mgと設定は低めです。
また、作用時間が長いため、1日1回の服用で設定されています。
空腹時に飲むと期待した効果が得られない場合があるため、必ず食後に服用します。
副作用として吐き気、眠気、頭痛、不眠症などに加えて、じっとして居られなくなる「アカシジア症状」が報告されています。
このような症状に気づいたら、担当の医師に相談してください。
双極性障害の薬のまとめ
ここまで双極性障害の治療薬についてお伝えしてきました。
まとめると以下の通りです。
- 双極性障害とは、躁状態とうつ状態を繰り返す「脳の病気」である
- 双極性障害の「薬物療法」は、気分安定剤や非定型抗精神病薬を選択する
- 薬物療法の他に「心理社会的療法」があり、病気を理解し再発予防や対処法を学び、病気とつきあっていく術を身に着ける
- 薬物治療中の妊娠は胎児への奇形などの影響があるため、妊娠前に医師に相談し、内服を調整する必要がある
- 非定型抗精神病薬のルラシドンは、体重増加の副作用が少ない新薬
これらの情報が皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。