加齢や生活習慣の乱れなどが原因で「高血圧」になる可能性があります。
「薬物療法」は血圧を下げる方法の1つとして知られています。
しかし血圧を下げる薬が体内でどのような作用があるのかあまり知られていません。
血圧を下げる薬の仕組みは何なのでしょうか?
血圧を下げる薬の副作用は何なのでしょうか?
本記事では「血圧を下げる薬について」以下の点を中心にご紹介します。
- 血圧を下げる薬の仕組みとは
- 血圧を下げる薬の副作用とは
- 血圧を下げる薬を服用してはいけない方とは
血圧を下げる薬について理解するためにも参考にしていただければ幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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血圧を下げる薬の仕組み
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血圧を下げる仕組みを知る前に、高血圧を引き起こす原因について説明します。
高血圧の原因として「血液量過剰型」と「血管収縮型」の2つのタイプがあります。
「血液量過剰型」は血液中の水分が増加し、血管の壁にかかる圧力が増える高血圧です。
原因として、血液中の塩分(塩化ナトリウム)が増えすぎることです。
増えすぎた塩分を排出するために、血管内の水分が増えることで血圧が上昇します。
また、腎臓の機能が低下すると尿から塩分の排出が少なくなり高血圧の原因になります。
血液検査では血液量が増えると分泌される心房性ナトリウム利尿ペプチドが高くなります。
「血管収縮型」は血管が縮むことで血液の通り道が狭くなり、血圧が上昇する高血圧です。
様々な原因がありますが、交感神経が過敏に反応していることが考えられます。
血液検査では、血管を収縮させるホルモンであるレニンという数値が高くなります。
血圧を下げる薬を用いる場合、2つの高血圧のタイプに対応した仕組みが大切です。
血液量過剰型の場合は体内の塩分と水分の排出を目的として薬が用いられます。
薬の種類としては利尿薬やβ遮断薬などが用いられます。
血管収縮型の場合は血管収縮を抑え拡張させる目的として薬が用いられます。
アンギオテンシン受容体拮抗薬やアンギオテンシン変換酵素阻害薬などが用いられます。
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血圧を下げる薬を使用した治療の始め方
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高血圧に対し、血圧を下げる薬を用いる場合は開始基準が定められています。
また、薬の種類と量の調整や合併症の有無なども考慮する必要があります。
開始基準
一般成人では、血圧が140/90mmHg以上が持続する場合、薬の開始基準となります。
高血圧の状態によって薬を開始する時期は違います。
具体的には以下の通りです。
リスクレベル | リスクの詳細 | 薬の開始基準 |
低リスク群 | 血圧が140~159/90~99㎜Hgかつ血圧以外の危険因子なし | 生活習慣の見直し後、6か月後に血圧が140/90mmHg以上 |
中等リスク群 | 血圧が140~159/90~99㎜Hgかつ糖尿病以外の危険因子あり、血圧が160~179/100~109㎜Hgかつ危険因子なしまたは糖尿病以外の危険因子あり | 生活習慣の見直し後、3か月後に血圧が140/90mmHg以上 |
高リスク群 | 血圧が180/110㎜Hg以上、血圧が140/90㎜Hg以上かつ糖尿病、臓器障害、心血管病危険因子あり | 診断後より薬の開始 |
薬の種類と量の調整
薬の種類と量は、高血圧の状態や合併症により変わります。
血圧を下げる薬を初めて導入する場合、以下の薬を単剤から始めることがほとんどです。
- カルシウム拮抗剤
- ARB(アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬)
- ACE阻害薬
- 利尿剤
心不全など循環器疾患を合併している場合は、「β遮断薬」が第1選択薬の候補になります。
タンパク尿の場合は「ACE阻害薬」、狭心症の場合は「CCB」が第1選択薬の候補になります。
最初から血圧を下げすぎると、めまいやふらつきなど副作用が生じやすくなります。
また、急激な血流量の低下は全身の臓器に負担がかかる可能性があります。
薬を開始する場合、少量から開始し徐々に量を増やしていきます。
75歳以上の高齢者の場合は薬が効きすぎることを考慮し、半分の量から開始します。
単剤で様子を見て、効果が少ない場合は薬を併用して用いることが推奨されます。
合併症などの有無を考慮
合併症などの有無により、薬を用いた降圧目標値は変わってきます。
合併症のない75歳未満の成人は125/75mmHg未満が降圧目標値となります。
75歳以上の場合、135/85mmHg未満となります。
高齢の場合、血圧低下により様々な臓器に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
糖尿病や慢性腎臓病を合併している場合、降圧目標値は125/75mmHgです。
心筋梗塞や脳卒中など血管系リスクが高いため、血圧を低めに設定されています。
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血圧を下げる薬を服用してはいけない人
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血圧を下げる薬の副作用により、身体に強く影響を及ぼす方は服用に注意が必要です。
血圧を下げる薬を服用してはいけない人は以下の通りです。
糖尿病による神経障害がある人
「α1遮断薬」は平滑筋に作用し血管を収縮させる神経の働きを抑える薬です。
血糖値を下げるため糖尿病の治療薬として用いられることがあります。
しかし急激な血圧低下により起立性低血圧を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
「β遮断薬」は交感神経に作用し血圧を下げる薬です。
副作用として低血糖症状があらわれにくくなる作用があります。
糖尿病の薬との併用に注意が必要です。
妊婦
妊娠中は血流量が増加し高血圧になりやすく、胎児や母体に影響を及ぼす恐れがあります。
治療法は安静と食餌療法が主となりますが、重症の場合薬物療法が行われます。
以前は薬の副作用で胎児異常など影響を及ぼす可能性があるため禁忌とされていました。
しかし現在は、高血圧の治療に使用できる薬が2つ認可されました。
カルシウム拮抗薬である「アムロジピン」と「ニフェジピン」です。
上記2つの薬以外は安全性がまだ確認されていません。
今後の調査で使用できる薬が増える可能性がありますが、現時点での使用は控えましょう。
進行した腎不全の人
慢性腎臓病になり腎機能が低下すると、ホルモン作用により高頻度で高血圧を合併します。
腎機能を維持するため、慢性腎臓病の血圧管理はとても重要です。
血圧管理の第1選択として、ホルモン分泌を抑制する「ACE・ARB阻害薬」が用いられます。
しかし進行した腎不全の場合、高カリウム血症や腎障害の悪化が見られる場合があります。
医師と相談しながら薬を調整する必要があります。
血圧を下げる薬の種類
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前述の通り、血圧を下げる薬は「血液量過剰型」と「血管収縮型」に合わせる必要があります。
血圧を下げる具体的な薬の種類は以下の通りです。
カルシウム拮抗薬
「血管収縮型」に対応した薬の1つです。
多くの症例で第1選択薬として使用されます。
カルシウム拮抗薬の特徴と使用方法は以下の通りです。
特徴
細胞内にカルシウムイオンが溜まると血管が収縮し血圧が上昇します。
カルシウム拮抗薬は、細胞内へのカルシウムイオン流入を抑えます。
結果、血管拡張作用により血圧を低下させます。
使い方
脳卒中や心肥大、腎臓病を伴う高血圧患者や狭心症合併の患者に有用です。
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)は、「血管収縮型」に対応した薬の1つです。
ARBの特徴と使用方法は以下の通りです。
特徴
アンジオテンシンは、アンギオテンシンⅡ受容体に結合し血管を収縮する作用があります。
ARBは、受容体の結合を阻害するため、血管が拡張し血圧を低下させます。
使い方
心臓や腎臓保護が期待できるため、慢性心不全や慢性腎臓病などの患者に有用です。
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)は、「血管収縮型」に対応した薬の1つです。
ACE阻害薬の特徴と使用方法は以下の通りです。
特徴
アンギオテンシンⅠは、ACEによりアンギオテンシンⅡに変換されます。
結果、血管を収縮させ高め血圧を上昇させる働きがあります。
ACE阻害薬はアンギオテンシンⅡの変換を阻害します。
結果、血管拡張作用により血圧を低下させます。
使い方
心臓や腎臓保護が期待できるため、心不全や糖尿病性腎症などの患者に有用です。
利尿剤
利尿剤は、「血液量過剰型」に対応した薬の1つです。
利尿剤の特徴と使用方法は以下の通りです。
特徴
血中にナトリウムが増えると、体内の水分量が増加し血圧が増加します。
利尿剤は、体内の水分やナトリウムを排出し、血圧を下げたりむくみ改善が期待できます。
ARBやカルシウム拮抗薬などと併用することで降圧効果が増強されます。
使い方
浮腫を主症状とする疾患(心不全、腎不全など)の患者に有用です。
α遮断薬
α遮断薬は、「血液量過剰型」に対応した薬の1つです。
α遮断薬の特徴と使用方法は以下の通りです。
特徴
交感神経が分泌するノルアドレナリンと、α1受容体が結合すると末梢血管が収縮します。
結果、心臓の動きが高まり心拍出量が増加し血圧が高まります。
α遮断薬は、α1受容体の結合を遮断するため、交感神経の働きを抑制し血圧を低下させます。
使い方
他の薬で降圧効果が不十分な場合に使用されます。
また、褐色細胞腫に合併する高血圧や早朝高血圧などに用いられます。
血圧を下げる薬の副作用
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血圧を下げる薬は、薬の種類によって様々な副作用をもたらす可能性があります。
具体的には以下の通りです。
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
ACE阻害薬は、腎臓に作用しホルモン分泌を抑えることで血圧を下げます。
しかし、腎臓の機能が低下している方が服用すると腎機能を悪化させる可能性があります。
またACE阻害薬は血中ブラジキニンを増やし、血管浮腫を発症させる可能性があります。
気道周囲の血管浮腫が強く見られると空咳の原因になります。
その他ACE阻害薬で見られる副作用は以下の通りです。
- むくみ
- 不整脈
利尿剤
利尿剤は血圧を下げるだけでなく、むくみを改善させる薬として用いられます。
薬の効果が効きすぎると体内から大量の水分が排出されます。
結果、ナトリウムやカリウムなど電解質のバランスが崩れる可能性があります。
低ナトリウム血症になると倦怠感などの症状があらわれます。
低カリウム血症になると、「こむら返り」や「動悸」などが生じる可能性があります。
その他糖尿病や高尿酸血症の方は状態を悪化させる可能性があります。
中枢性交感神経抑制剤
「中枢性交感神経抑制剤」は交感神経α2受容体を刺激し血管拡張させ血圧を下げる薬です。
副作用が多く、通常は多剤併用で血圧コントロールが困難な場合に使用されます。
副作用として、精神神経系の症状と消化器症状があらわれる可能性があります。
具体的には以下の通りです。
- 精神神経症状:眠気、めまい、脱力感など
- 消化器症状:口渇感、食欲不振、便秘、吐き気など
血圧を下げる薬の服用中に注意すること
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血圧を下げる薬を服用する際、薬の調整や長期間飲み続けることが大切です。
また、自己判断で薬を調整することは様々な影響を及ぼす危険性があります。
具体的には以下の通りです。
複数の薬との併用
通常血圧を下げる薬は1種類から開始します。
しかし、目標血圧まで低下しない場合は複数の薬を併用することが推奨されます。
1種類の薬の増量よりも、薬を併用するほうが降圧効果が高いことが期待されると報告されています。
また、単に特定の血圧を下げる薬を増量した場合、副作用が起こりやすくなります。
薬を併用した場合、副作用が起こりにくいことが報告されています。
血圧を下げる薬の組み合わせには推奨されるパターンがあります。
具体的には以下の通りです。
カルシウム拮抗薬とARB | カルシウム拮抗薬とACE阻害薬 | カルシウム拮抗薬と利尿薬 |
ARBと利尿薬 | ACE阻害薬と利尿薬 | ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬とβ遮断薬 |
利尿薬とβ遮断薬 | 利尿薬とα1遮断薬 | β遮断薬とα1遮断薬 |
長期間の服用
血圧を下げる薬の目的は治療だけではなく、予防薬としてとても重要です。
理由として、高血圧が続くと動脈硬化が進み血管の病気につながる可能性があるためです。
ウイルス性の病気のように病気の改善に伴って治療を中断することはありません。
高血圧治療の為の薬は長期間服用することで効果を発揮します。
血圧を下げる薬を飲み続けることで、動脈硬化の進行を遅らせられます。
結果、脳梗塞や心臓病など血管系の病気の予防につながります。
長期間の服用で様々な副作用を心配する方がいます。
しかし、血圧を下げる薬を正しく服用した場合は副作用の頻度が多くありません。
薬を飲んでいる方は飲んでいない方より長期的に健康が維持できるとの報告があります。
自己判断での薬の加減
血圧を下げる薬は体にあらわれないため、効果が実感できないと感じる方がいます。
また毎日飲み続けることが面倒になり、自己判断で薬をやめる方がいます。
自己判断で薬を飲んだり止めたりなど不規則な服用を続けることはとても危険です。
血圧は季節や日時で変動することがあります。
血圧の都度容量を調節することは大変難しく、根拠に乏しい行為です。
不規則な服用は脳卒中や心臓病など血管系の病気のリスクが高まるとの報告があります。
また特定の薬の場合、突然やめることで離脱症状がみられる場合があります。
血圧の薬は血圧の状態に応じて量を調整することが可能です。
血圧が低めの状態が続いた場合、変動が大きい場合はまずかかりつけ医に相談しましょう。
血圧を下げる薬は一生飲むの?
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血圧を下げる薬の服用が開始された場合、原則一生飲み続けることになります。
理由として、前述の通り血圧を下げる薬は予防薬として効果を発揮するためです。
長期間血圧を安定させることで動脈硬化に起因する様々な病気の予防につながります。
注意点として、血圧を安定させる方法は血圧を下げる薬だけではありません。
血圧の薬はあくまで補助的な治療法と考えてください。
正しく薬を服用しても生活習慣が乱れている場合、血管に負担がかかる可能性があります。
高血圧治療として大切なことは、生活習慣を見直してストレスと上手につきあうことです。
具体的な生活習慣の改善方法は以下の通りです。
- 食事:1日塩分摂取量を6g未満に減らす、栄養バランスを整え3食正しくたべるなど
- 運動:1日30分以上、中等度の強度(ウォーキング、ランニング)の有酸素運動など
- 飲酒:過度な飲酒を控える
- 喫煙:禁煙が原則
ストレスが続くと、血圧が上昇し、脳卒中などの原因になります。
また、寒暖差など気候の変化は身体にストレスを与える可能性があります。
自分のストレスが何か把握し、余暇活動などリフレッシュすることをおすすめします。
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血圧を下げる薬とグレープフルーツの関係
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血圧を下げる薬の一部に、グレープフルーツと一緒に飲んではいけない種類があります。
「カルシウム拮抗薬」は小腸内の酵素で代謝されることで効果を発揮します。
しかし、グレープフルーツに含まれるフラノクマリンは小腸内の酵素の働きを阻害します。
カルシウム拮抗薬の代謝速度が遅くなるため薬の吸収が長引きます。
結果、薬の効果が強くなり、血圧が下がりすぎたり心拍数増加の原因になります。
小腸内の酵素を阻害する物質は、グレープフルーツの果汁だけでなく果肉にも含まれています。
また、柑橘系の中にグレープフルーツと同じ相互作用を起こす種類があります。
具体的には以下の通りです。
- ハッサク
- だいだい
- ぽんかん
- 伊予かん
- 甘夏みかん
柑橘系の中には、カルシウム拮抗薬に影響を与えない種類があります。
具体的には以下の通りです。
- かぼす
- すだち
- デコポン
- スイートオレンジ
- レモン
カルシウム拮抗薬以外の薬はグレープフルーツと相互作用を起こす可能性は低めです。
血圧を下げる薬の種類に不安のある方はかかりつけ医に相談しましょう。
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薬を飲む以外の血圧を下げる方法
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薬以外の方法で血圧を下げる方法をまとめました。
具体的には以下の通りです。
減塩
塩分を過剰に摂取すると血液中のナトリウムが増え、浸透圧が高まります。
塩分を排出するために脳は喉の渇きを訴え、水分摂取を促します。
水分摂取により血流量が急激に増えることで血圧が高くなると考えられています。
高血圧の方は、塩分摂取量を1日6g未満に減らすことが重要です。
自分が日々の食事でどれだけ塩分を摂取しているか知ることから始めましょう。
自炊で減塩する場合、減らすためのコツがあります。
具体的には以下の通りです。
- 下味はつけない:食べる直前に味付けすると調味料を減らせる
- 酸味や香辛料を使う:塩分が少なくても味が感じられる
- 加工食品は茹でる:加工食品に含まれる塩分を減らせる
- 野菜や果物を摂取する:塩分を排出するカリウムを積極的に摂取できる
- ラーメンなど麺類のスープを残す:スープに多量の塩分が含まれている
- 醤油など調味料は直接かけない:つけて食べることで調味料を減らせる
減量
内臓脂肪が増えて肥満になると血圧が高くなります。
原因として、
- 脂肪細胞が分泌する物質(アンギオテンシノーゲン)による交感神経の活動亢進
- 過食により塩分が過剰に摂取され体液量が増加する
- インスリンが過剰に分泌され、腎臓でのナトリウム再吸収が亢進する
ことが考えられます。
また、肥満になると血液中の脂質量が増え、ドロドロした状態になります。
血液の流れが悪くなるため心臓に負荷がかかるため血圧が上昇します。
肥満の方の場合、体重を1㎏減らすと血圧が約2mmHg低下するとの報告があります。
肥満の方が減量する上で以下の点に注意する必要があります。
- 有酸素運動を中心に運動を取り組むこと
- 運動だけでなく食事(消費カロリーと摂取カロリーのバランス)も行う
- 1か月に1~2㎏位ゆっくりと減量することが推奨される
- 生活習慣(1日3食、早寝早起き、規則正しい生活、早食いしないなど)を見直す
DASH食
DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、高血圧改善に良い食事方法です。
1990年代にアメリカで提唱され、高血圧の改善に効果が認められています。
DASH食は高血圧によい栄養素を増やし、悪い栄養素を減らすことが特徴です。
具体的には以下の通りです。
- 増やす栄養素:カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、タンパク質
- 減らす栄養素:飽和脂肪酸、コレステロール
DASH食は高血圧症、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症の方が対象になります。
腎機能の障害がある場合はDASH食の適応になりません。
DASH食におすすめの栄養素と食品は以下の通りです。
栄養素 | 食品例 |
カリウム | いも類、カボチャ、大豆、ほうれん草、海藻類など |
カルシウム | 牛乳、小松菜、小魚、豆腐など |
マグネシウム | ナッツ類、大豆、海藻類など |
食物繊維 | オクラ、山芋、こんにゃく、海藻類など |
タンパク質 | 牛肉、豚肉、魚介類、大豆製品など |
運動
運動すると血管の状態を改善し血圧を下げる効果があります。
習慣的に運動すると、収縮期血圧が2〜5mmHg低下すると報告されています。
高血圧の方が有酸素運動すると収縮期血圧が8.3mmHg低下すると報告されています。
注意点として血圧が高すぎる状態で運動を始めると血管に負担がかかる可能性があります。
血圧が180/110mmHg以上の場合、まず食餌療法や薬などで血圧を下げましょう。
高血圧の方に効果的な運動種目、頻度、時間、運動強度は以下の通りです。
- 運動種目:有酸素運動(ウォーキング、スロージョギング、ランニングなど)
- 運動頻度:週3日以上、できれば毎日
- 運動時間:1回につき10分以上、合計して1日40分以上
- 運動強度:ややきついと感じる程度(最大酸素摂取量の40~60%程度)
減酒・禁煙
お酒は血管拡張作用があり、少量・適量のアルコールは血圧を一時的に低下させます。
しかし、習慣的に飲酒を続けると血圧が上昇するとの報告があります。
また、血圧の薬を服用している方はアルコールと一緒に飲まないようにしましょう。
薬の効き目が変化し、副作用など様々な症状があらわれる可能性があります。
血圧に負担の少ない適量の飲酒例は以下の通りです。
アルコールの種類 | 男性 | 女性 |
日本酒 | 180ml(1合) | 90ml(0.5合) |
ビール | 500ml(中瓶1本) | 250ml(中瓶半分) |
焼酎 | 110ml(0.6合) | 50ml(0.3合) |
ワイン | 180ml(2杯) | 90ml(1杯) |
タバコは様々な化学物質が含まれており、血管収縮を誘発します。
結果動脈硬化のリスクが高くなり、高血圧や心臓病、脳卒中などを誘発します。
タバコを吸っている方は原則禁煙です。
4〜5年禁煙すると、脳卒中などのリスクが喫煙しない方と同等になるとの報告があります。
1人で禁煙が難しい場合は禁煙外来に通うことをおすすめします。
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血圧を下げる薬に関するよくある質問
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血圧を下げる薬に関するよくある質問をまとめています。
具体的には以下の通りです。
薬を飲んだら血圧は下がる?
高血圧の薬は生活習慣や食事の見直しでも改善が少ない場合に開始されます。
血圧の薬を飲んでいても、生活習慣が乱れている場合は薬の効果は発揮できません。
薬の作用を効果的にするために、食事や生活習慣も注意しながら取り組みましょう。
薬を飲んでも血圧が下がらないのはなぜ?
高血圧を急激に下げると、めまいやふらつきなどの原因につながります。
また、血流量が低下することで全身の臓器に負担がかかる可能性があります。
血圧を下げる期間は、約2〜3か月かけてゆっくりと行われます。
1週間程度では血圧の変動が見られなくても心配はいりません。
医師と相談しながら、薬の量や種類を慎重に調整することが推奨されます。
薬を飲み忘れたときはどうすればいいの?
高血圧の方は、4人に1人が薬を飲み忘れるとの報告があります。
薬の飲み忘れの対処法は、1日の服用回数により違います。
具体的には以下の通りです。
- 1日1回:飲み忘れに気づいたときにすぐ服用する
- 1日2回(朝夕):朝は飲み忘れ3時間までの場合すぐに服用、夕は寝る前までに服用
- 1日3回:飲み忘れ~1~2時間程度の場合すぐに服用、それより遅い場合はスキップ
他の薬との飲み合わせは?
血圧を下げる薬と飲み合わせることで悪影響が出る薬はあります。
具体的な例は以下の通りです。
- カルシウム拮抗薬と強心薬:効き目が強くなる可能性がある
- ACE阻害薬とカリウム保持性利尿剤:高カリウム血症になる可能性がある
血圧を下げる薬を服用している場合は、事前に医師に相談することをおすすめします。
薬は血圧が高いときだけ飲んでもいいの?
血圧が安定してくると、自己判断で薬の量を減らしたり高いときだけ服用する方がいます。
血圧の薬は予防薬としてとても重要な薬です。
自己判断で薬の量を調整すると、脳卒中などのリスクを高める可能性があります。
薬の用法・用量は正しく守り、量を調整する場合は必ず医師に相談してください。
食前の薬を食後に飲んでも大丈夫?
血圧を下げる薬は、食事のタイミングにほとんど影響を受けません。
食前の薬を食後、食間に飲んでも問題ありません。
注意点として、血圧を下げる薬は薬の効果時間が決まっています。
食事をとらない場合でも必ず同じ時間に服用してください。
血圧の薬の副作用について知りたい
血圧の薬の副作用は様々です。
一般的な副作用はめまいや頭痛、むくみが見られます。
薬の種類別による副作用は以下の通りです。
- カルシウム拮抗薬:動悸、ほてり、発疹
- ARB:高カリウム血症
- ACE阻害薬:空関、高カリウム血症
- 利尿剤:低カリウム血症、高血糖、高尿酸血症
- β遮断薬:徐脈、倦怠感
- α遮断薬:動悸、徐脈、倦怠感
血圧を下げる薬のまとめ
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ここまで血圧を下げる薬についてお伝えしてきました。
血圧を下げる薬の要点をまとめると以下の通りです。
- 血圧を下げる薬の仕組みは血液の水分を減らす方法と血管を拡張させる方法がある
- 血圧を下げる薬の副作用とはむくみや不整脈、低ナトリウム血症などがある
- 糖尿病で神経障害のある方や妊婦などは血圧を下げる薬を服用してはいけない
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。