高血圧は血圧が上昇することで発症する病気であることが広く知られています。
家庭用血圧計を購入し日々の血圧を管理している方は少なくありません。
しかし、血圧がどの値になると病院に行く必要があるのかあまり知られていません。
高血圧で病院に行く目安はどの程度でしょうか?
高血圧になるとどの診療科を受診するとよいのでしょうか?
本記事では高血圧で病院に行く基準や目安について以下の点を中心にご紹介します。
- 高血圧で病院に行く基準や目安は
- 高血圧を診療している診療科とは
- 高血圧を放置した場合とは
高血圧で病院に行く基準や目安について理解するためにも参考にしていただければ幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
スポンサーリンク
高血圧で病院に行く基準や目安は?
自分が高血圧かどうか、基準となる血圧値を知ることで病院に行く目安になります。
具体的には以下の通りです。
基準となる血圧値
基準となる血圧値は正常血圧からⅢ度高血圧まで6段階に分類されます。
また、収縮期血圧が高く拡張期血圧が正常な収縮期高血圧があります。
家庭で測定する家庭血圧と病院で測定する診察室血圧は基準の血圧値が違います。
家庭血圧は診察室血圧より低めに設定されています。
成人における高血圧診断基準は以下の通りです。
分類 | 診察室血圧 | 家庭血圧 | ||
収縮期血圧(㎜Hg) | 拡張期血圧(㎜Hg) | 収縮期血圧(㎜Hg) | 拡張期血圧(㎜Hg) | |
正常血圧 | <120かつ<80 | <115かつ<75 | ||
正常高値血圧 | 120~129かつ<80 | 115~124かつ<75 | ||
高値血圧 | 130~139かつ/または80~89 | 125~134かつ/または75~84 | ||
Ⅰ度高血圧 | 140~159かつ/または90~99 | 135~144かつ/または85~89 | ||
Ⅱ度高血圧 | 160~179かつ/または100~109 | 145~159かつ/または90~99 | ||
Ⅲ度高血圧 | ≧180かつ/または≧110 | ≧160かつ/または≧100 | ||
(孤発性)収縮期高血圧 | ≧140かつ<90 | ≧135かつ<85 |
出典:厚生労働省【高血圧】
病院に行く目安
Ⅰ度高血圧以上の数値が出た場合は、高血圧の可能性があります。
健康診断で血圧が140/90㎜Hg以上測定された場合は早めに受診しましょう。
自宅で測定できる場合、135/85㎜Hg以上測定された場合は病院に行く目安です。
しかし、血圧は測定時の本人の状態や環境によって変動します。
1週間ほど測定し平均値が上記の基準を満たしている場合は早めに受診しましょう。
高血圧は別名「サイレントキラー」と呼ばれ、一般的に自覚症状がほとんど見られません。
しかし高血圧を放っておくと脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクが高くなります。
急激に血圧が高くなると起きるのが、頭痛やめまいなどです。
普段と違って違和感を感じる場合は病院に行くことをおすすめします。
スポンサーリンク
高血圧の場合は何科を受診する?
高血圧になった場合、適切な診察や治療が可能な診療科に受診する必要があります。
一般的には循環器科もしくは内科に受診することをおすすめします。
理由は以下の通りです。
循環器科
循環器科は心臓と血管など血液の循環に働く臓器に対する診療を専門とします。
高血圧だけでなく、狭心症や心筋梗塞、大動脈疾患なども診察できます。
心臓や血管の病気に対し、治療だけでなく再発予防やリスク管理にも積極的です。
高血圧の原因として最も多いのは血管の動脈硬化です。
進行すると脳卒中や心筋梗塞、狭心症など血管に関する合併症を引き起こします。
循環器科では検査などで高血圧の原因を正確に評価できます。
降圧剤だけでなく、生活習慣の改善など様々なアプローチを提案することが可能です。
また血管の検査だけでなく、上記合併症の治療や予防なども行えます。
内科
内科も高血圧を得意とする診療科です。
内科は血管系だけでなく風邪から臓器疾患まで全身状態を適切に診察できます。
かかりつけ医としての役割を担っているクリニックも多く、受診しやすい特徴があります。
高血圧は動脈硬化以外に、他の臓器が原因で発症することがあります。
具体的には以下の疾患です。
- 腎臓疾患:腎臓の血管が細くなる、または機能低下により血圧が高くなる
- ホルモン異常:原発性アルドステロン症やクッシング症候群など
- 睡眠時無呼吸症候群:夜間に血圧が上昇する特徴がある
- 薬の副作用
内科は高血圧に対し、様々な視点から評価し原因を探れます。
また詳細な検査が必要な場合、循環器科などスムーズに紹介することが可能です。
高血圧で病院に行った際に行う治療
高血圧の治療方法として食餌療法、運動療法、薬物療法があります。
具体的には以下の通りです。
食餌療法
高血圧の原因の1つに挙げられるのが、塩分の過剰摂取です。
塩分を過剰に摂取すると、血液中のナトリウムが増え浸透圧が高まります。
塩分を排出するために、脳は喉の渇きを訴え水分摂取を促します。
水分摂取により血流量が急激に増えることで、血圧が高くなると考えられています。
厚生労働省が推奨する1日の食塩摂取目標量は、男性7.5g、女性6.5g以下です。
高血圧の方は、塩分摂取量を1日6g未満に減らすことが重要です。
自分が日々の食事でどれだけ塩分を摂取しているか知ることから始めましょう。
高血圧治療法の1つにDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)があります。
DASH食はアメリカで提唱された食事法で、高血圧の改善効果が認められています。
DASH食のポイントは高血圧によい栄養素を増やし、悪い栄養素を減らすことです。
具体的には以下の通りです。
- 増やす栄養素:カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、タンパク質
- 減らす栄養素:飽和脂肪酸、コレステロール
DASH食の対象者は高血圧症、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症の方です。
腎機能の障害がある場合はDASH食の対象になりません。
運動療法
運動不足により肥満になると内臓脂肪が増え、血圧が高くなる原因になります。
肥満による血圧上昇のメカニズムは以下の3つです。
- 脂肪細胞が分泌する物質(アンギオテンシノーゲン)による交感神経の活動亢進
- 過食により塩分の過剰摂取がすすみ、体液量が増加
- 膵臓からインスリンの過剰分泌がすすみ、腎臓でのナトリウム再吸収が亢進
また、運動不足により体だけでなく血液中の脂質量が増えドロドロした状態になります。
結果、血流が悪くなり心臓の負荷が高まるため血圧が上昇します。
運動に期待できる効果は以下の通りです。
- 血流や血管の状態を改善
- 血圧を下げる
定期的な運動習慣があると収縮期血圧が2~5mmHg低下すると報告されています。
高血圧の方に対する有酸素運動は収縮期血圧が8.3mmHg低下すると報告されています。
ただし血圧が高すぎる状態での運動は、血管に負担がかかる可能性があるので注意が必要です。
血圧が180/110mmHg以上の場合、まず食餌療法や薬などで血圧を下げましょう。
高血圧の方に効果的な運動種目、頻度、時間、運動強度は以下の通りです。
- 運動種目:有酸素運動(ウォーキング、スロージョギング、ランニングなど)
- 運動頻度:週3日以上、できれば毎日
- 運動時間:1回につき10分以上、合計して1日40分以上
- 運動強度:ややきついと感じる程度(最大酸素摂取量の40~60%程度)
出典:厚生労働省【高血圧症を改善するための運動】
薬物療法
運動療法や食餌療法を一定期間実施して、改善が少ない場合は薬物療法が開始されます。
また、血圧が180/110㎜Hg以上など高リスク群の方は診断後より薬が開始されます。
降圧剤の種類と量は高血圧の状態や合併症により違います。
薬を初めて導入する場合、単剤から始めることがほとんどです。
しかし、目標とする血圧まで低下しない場合は複数の薬を併用することが推奨されます。
1種類の薬の増量よりも、薬を併用するほうが降圧効果が期待できることが報告されています。
また、薬の併用は単剤の増量よりも副作用が起こりにくいことが報告されています。
降圧剤として使用する薬の種類は以下の通りです。
- カルシウム拮抗剤:細胞内へのカルシウム流入を防ぎ、血管を拡張
- ACE阻害薬:アンギオテンシンⅡの産生を抑制し、血圧を低下
- ARB:血管収縮に作用するアンギオテンシンⅡ受容体の結合を阻害し血管を拡張
- 利尿剤:体内の水分やナトリウムを排出し血圧を低下
- α遮断薬:交感神経の過剰興奮を抑えることで心臓の働きを落ち着かせ、血流を低下
- β遮断薬:心拍数を下げて、血圧を低下
高血圧を放置するとどうなる?
高血圧の状態を放置すると、血管に圧がかかり続けるため全身の血管に負担がかかります。
結果、血管に由来する様々な病気を発症する可能性があります。
具体的には以下の通りです。
動脈硬化
全ての血管の内側(内膜)は内皮細胞で構成されています。
内皮細胞は伸縮性が強く、ゴムのように伸び縮みして血管の太さを調整します。
内皮細胞の働きは以下の通りです。
- 動脈硬化予防
- 血液量や血圧を安定させ血液が固まらないように調整する
血管に高い圧がかかり続けると内皮細胞に傷がつき、内皮細胞の働きが低下します。
内皮細胞の損傷部位にLDLコレステロールが付着し、形成されるのが酸化LDLです。
その後、白血球の1つであるマクロファージが酸化LDLを取り込みます。
結果、内膜に粥状のこぶ(プラーク)ができ、血管の内膜は厚くなり血管は狭くなります。
上記メカニズムを経て形成された血管の状態が動脈硬化です。
動脈硬化になると血管の内膜は弾力性が失われ、硬くなります。
動脈硬化は以下のような危険因子が重なると発症しやすくなります。
- 加齢
- 喫煙
- コレステロール
- 高血圧
- 肥満
- 運動不足
動脈硬化は自覚症状がほとんどありません。
しかし、そのまま放置すると必要な酸素や栄養が全身にいきわたりにくくなります。
結果、様々な臓器や組織に影響を及ぼします。
また、動脈硬化下血管はもろいため、心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクが高くなります。
出典:厚生労働省【動脈硬化】
心筋梗塞
心臓は全身に血液を送り出すため、心臓自体に多くの酸素やエネルギーを必要とします。
心臓に酸素や栄養を運ぶ血管が冠動脈です。
冠動脈は大動脈から繋がり左右2つの冠動脈で心臓の筋肉(心筋)に血液を送っています。
その後冠静脈に流れて右心房に集められます。
高血圧により冠動脈が動脈硬化になると、狭くなるのが冠動脈の内側です。
結果、血流が低下して心筋が酸素不足してしまう場合があります。
一時的な酸素不足は狭心症と呼ばれ、強い胸痛などの自覚症状を伴います。
狭心症は通常数分程度で症状が治まるのが特徴です。
しかし冠動脈の動脈硬化を放置すると冠動脈が完全に閉鎖し、心筋梗塞を発症します。
心筋梗塞になり心筋の酸素不足が続くと起きるのが、壊死です。
壊死した心筋は再生せず、心臓の働きが低下し十分な血液が全身に送り出せなくなります。
対処が遅れると死に至る可能性があります。
心筋梗塞は脂汗が出るほどの激しい胸痛や脱力感、失神などです。
狭心症と違い、30分以上症状が続くという特徴があります。
心筋梗塞を発症後、6時間以内に治療開始できると約9割生存できるとの報告があります。
脳卒中
脳卒中発症の原因として高血圧が強く関係しています。
収縮期高血圧は、脳出血発症リスクが3.3倍、脳梗塞は2.1倍上昇するとの報告があります。
また拡張期高血圧は、脳出血発症リスクが9倍、脳梗塞4.8倍上昇するとの報告があります。
上述の通り、高血圧になると引き起こされるのが、全身の血管の動脈硬化です。
血液の流れが低下すると脳の血液が詰まりやすくなり脳梗塞につながります。
また、高血圧により脳の血管が破裂すると脳出血やくも膜下出血の原因になります。
脳卒中は以下のような危険因子が重なると発症しやすくなります。
- 高血圧
- 喫煙
- 飲酒
- 糖尿病
- 肥満
脳卒中は突然発症することがほとんどです。
しかし、頭痛やめまい、手足のしびれなど前触れが見られる場合があります。
脳卒中は血管の損傷した部位により症状は違います。
脳卒中発症後の典型的な症状は以下の通りです。
- 言語障害(ろれつが回らない)
- 顔の半分が動きにくい
- 半身不随(片側の手足が動きにくい)
出典:厚生労働省【脳血管障害・脳卒中】
高血圧の原因
高血圧を引き起こす原因として生活習慣の乱れやストレスなど様々です。
具体的には以下の通りです。
塩分の摂りすぎ
体内の細胞や血液には塩分に含まれるナトリウムが含まれています。
血液中のナトリウムの量が増えると濃度を戻すために喉が渇き、水分を多く摂取します。
結果、水分摂取により体液量や血液量が増加し、血圧上昇につながります。
増えた塩分と水分は腎臓でろ過され、尿として排出されます。
腎臓の働きは血圧の変化を認識し塩分の再吸収や排出をして、血圧を一定に保つことです。
塩分を摂りすぎると血液量の増加が持続し、血圧上昇が続くため高血圧の原因になります。
血圧が高い状態が続くと腎臓の機能に負担がかかり、低下するのがろ過機能です。
ろ過機能が低下すると、体内の水分や塩分がうまく排出できなくなります。
結果、血液量が増加し高血圧を発症する原因になります。
肥満
内臓脂肪が増えて肥満になると血圧が上昇する原因になります。
肥満の方は塩分を含む食事を多く摂取する傾向にあります。
結果、体内にナトリウムが増加し体液量が増えることで起きるのが、血圧の上昇です。
肥満になると血糖値が高くなりインスリンが過剰に分泌されます。
インスリンの働きは、腎臓でのナトリウムの再吸収を亢進させることです。
結果、血液中のナトリウムが増加するため全体の血液量が増えることで血圧が上昇します。
インスリンは血糖以外に交感神経を刺激してカテコールアミンを放出する作用があります。
カテコールアミンの働きは、末梢血管に作用し収縮させることです。
結果、血流が抑えられるため血管抵抗が増加し血圧が上昇します。
肥満の方は皮下脂肪などに脂肪細胞が多く蓄積されます。
脂肪細胞はアンギオテンシノーゲンという物質を放出する作用があります。
アンギオテンシノーゲンの働きは血管収縮です。
血管収縮により、血圧が上昇します。
また、肥満になると血液中の脂質量が増えドロドロした状態になります。
血液の流れが悪くなるため心臓に負荷がかかるため血圧が上昇します。
運動不足
血液は心臓から大動脈を通り、動脈、毛細血管、静脈と流れ、最後は心臓に戻ります。
手足の先は心臓から遠く、心臓に戻る際重力に逆らって血液を押し上げる必要があります。
血液を押し上げるのに必要なのが、筋肉の収縮弛緩によるポンプ作用です。
運動不足になると、筋肉が固くなり筋肉量が減少します。
血液を押し出す力が弱くなるため、血行が悪くなります。
結果、血管の圧力を高める作用が働き、引き起こされるのが高血圧です。
運動中は発汗作用が高まり汗から塩分を排出します。
運動不足になると発汗作用が弱まるため、塩分が溜まりやすく高血圧の原因になります。
また、肥満の原因といわれるのは、運動不足になると筋肉が脂肪に変化するからです。
前述の通り、肥満になると血圧が高くなる傾向があります。
飲酒・喫煙
お酒は血管拡張作用があり、適量のアルコール摂取は血圧を低下させる働きがあります。
しかし、過度の飲酒は血圧を上昇させる働きがあります。
また、習慣的な飲酒は血圧が高くなり、高血圧の原因の1つです。
血圧の薬を服用している方はアルコールと一緒に飲まないようにしましょう。
薬の効き目が変化し、副作用など様々な症状があらわれる可能性があります。
タバコに含まれるニコチンの作用は、血管収縮の誘発です。
結果、タバコ服用後は手足の血流が悪くなったり血圧が高くなる可能性があります。
タバコを1本吸うと血圧が10~20mmHg上昇し、その状態が15分続くとの報告があります。
またタバコは動脈硬化のリスクを高め、高血圧や心臓病、脳卒中などを誘発します。
タバコを吸っている方は原則禁煙です。
ストレス
心身のストレスは高血圧の原因の1つです。
ストレスを感じると交感神経の働きが亢進します。
脳下垂体に作用し、副腎皮質ホルモンの分泌が亢進します。
結果、交感神経系の作用により心拍数が増加、血管の収縮が生じ血圧が上昇します。
生活環境の中で様々な影響を受けるのがストレスです。
起床時は交感神経と副交感神経が切り替わるため血圧が上がりやすいとの報告があります。
部屋の内外の寒暖差は血管収縮を誘発しやすく血圧上昇につながります。
ストレスは性格や気質など個人差があるのも特徴です。
責任感が強い方、忍耐力がある方、完璧主義な方はストレスを溜めやすい傾向にあります。
ストレスは仕事環境にも影響を受けます。
騒音ストレスの高い職場で高くなる傾向にあるのが血圧です。
また、失業中の期間が長くなると血圧が高くなる傾向にあります。
いつから高血圧の治療を始めるべき?
高血圧の治療は血圧の状態や血管系の疾患の既往により違います。
具体的には以下の通りです。
正常血圧
(120/80mmHg未満)
正常血圧の方は適切な生活習慣を継続的に行うことが推奨されます。
適切な生活習慣を身につけると、高血圧だけでなく生活習慣病予防につながります。
生活習慣病の予防方法として、ブレスローの7つの健康習慣が提唱されています。
具体的には以下の通りです。
- 喫煙しない:若年者から始めると循環器リスクが上がる
- 定期的に運動する:週2日以上、30分以上の運動を推奨
- 飲酒は適量を守るか、しない:過度な飲酒は高血圧や糖尿病などの原因になる
- 1日7~8時間の睡眠をとる:睡眠不足は交感神経が亢進しやすい
- 適正体重を維持する:BMI22を標準として18.5~25以内に維持する
- 朝食を食べる:朝食を抜くと体内リズムが乱れる
- 間食しない:肥満の原因になる
正常高値血圧
(120-129/80mmHg未満)
正常血圧以外の方は生活習慣の修正が必要になります。
生活習慣の修正は、降圧効果だけでなく高血圧の予防効果が期待できます。
生活習慣の修正項目は以下の通りです。
- 食塩制限:1日6g未満
- 野菜、果物、多価不飽和脂肪酸、低脂肪乳製品の積極的摂取
- 飽和脂肪酸、コレステロールの摂取量の減少
- 適正体重の維持:BMI25未満
- 運動療法:毎日30分または週180分の運動、軽強度の有酸素運動
- 飲酒制限:1日の飲酒量を男性20~30ml以下、女性10~20ml以下に制限
- 禁煙
正常高値血圧の方は生活習慣の修正を3~6ヶ月間実施します。
改善が認められない場合は生活習慣の修正を強化し続けます。
高値血圧
(130-139/80-89mmHg未満)
高値血圧の方は脳心血管病に対する予後影響因子によりリスクレベルが違います。
具体的には以下の通りです。
- リスク第1層:予後影響因子なし
- リスク第2層:65歳以上、男性、脂質異常症、喫煙のいずれか
- リスク第3層:中等リスク3つ以上、または脳心血管病の既往、糖尿病などいずれか
高度血圧の方のリスクレベルの違いは以下の通りです。
- 低リスク:リスク第1層
- 中等リスク:リスク第2層
- 高リスク:リスク第3層
低・中等リスクの方は生活習慣の修正を3カ月間実施します。
改善が認められない場合は生活習慣の修正を強化し続けることが大切です。
高度リスクの方は生活習慣の修正を1カ月間実施します。
改善が認められない場合は生活習慣の修正に加え降圧剤の開始を考慮します。
高血圧
(140/90mmHg以上)
高血圧の方は血管系のリスクレベルにより対応が違います。
具体的なリスクレベルの違いは以下の通りです。
- 低リスク:Ⅰ度高血圧で第1層
- 中等リスク:Ⅰ度高血圧で第2層、Ⅱ度高血圧で第1層
- 高リスク:Ⅲ度高血圧、Ⅱ度高血圧の第2~3層、Ⅰ度高血圧の第3層
高血圧の低・中等リスクの方は高度血圧の高リスクの方と対応は同様です。
高血圧の高リスクの方は生活習慣の修正に加え、降圧剤を開始します。
降圧剤開始直後は、副作用などに注意しつつ目標血圧を目指します。
血圧を測るタイミングはいつがよい?
血圧は様々な要因で変動するため、測るタイミングを一定にすることが重要です。
推奨されているタイミングとして、朝起床後1時間以内と夜就寝前、計2回の測定です。
朝は排尿後、食事や薬服用前に測定することが大切です。
排尿前はトイレを我慢して血圧が上昇、食事後は内臓に血液が集まり血圧が低くなります。
薬服用前に測定することで降圧剤の影響を受ける前の血圧を測定できます。
夜の測定で推奨されているのは、薬服用前、入浴前、飲酒前です。
3つの条件とも血圧を低下させる可能性があります。
上記条件が整わない場合、朝の血圧より10~20㎜Hg程度低くなることが報告されています。
また、仕事などが原因で就寝までの時間が短くなると血圧が安定しません。
できるだけ同一の条件になるよう努めましょう。
スポンサーリンク
高血圧に関するよくある質問
高血圧に関する質問をまとめました。
具体的には以下の通りです。
高血圧は治るの?
本態性高血圧と診断された場合、基本的に治ることはありません。
理由として、動脈硬化の状態や遺伝的体質など避けられない要因があるためです。
本態性高血圧の薬物療法は血管の治療ではなく対症療法になる場合がほとんどです。
しかし、生活習慣や食生活を改善することで動脈硬化の進行を予防することは可能です。
二次性高血圧症と診断された場合、高血圧が治る可能性があります。
二次性高血圧は腎臓病や薬の副作用など原因がはっきりしている高血圧です。
高血圧の原因となる病気に対し、治療がうまくいくと高血圧が改善します。
結果、血圧の薬を中止、減量できる場合があります。
降圧剤は一生飲み続けないといけない?
血圧を下げる薬の服用が開始された場合、原則一生飲み続けることになります。
理由として、前述の通り血圧を下げる薬は予防薬として効果を発揮するためです。
長期間血圧を安定させることで動脈硬化に起因する様々な病気の予防につながります。
注意点として、血圧を安定させる方法は血圧を下げる薬だけではありません。
血圧の薬は補助的な治療法であり、生活習慣の修正と併用することが重要です。
正しく薬を服用しても生活習慣が乱れている場合、血管に負担がかかる可能性があります。
高血圧治療として大切なことは、生活習慣の修正とストレスと上手につきあうことです。
塩分の摂りすぎで高血圧になるのはなぜ?
血液の成分はスポーツドリンクに似ています。
水分以外にナトリウムやカリウムなど様々な成分が含まれています。
塩の成分はナトリウムです。
血液中のナトリウムの量が増えると濃度を下げるために喉が渇き、水分を多く摂取します。
結果、水分摂取により体液量や血液量が増加し、血圧上昇につながります。
増えた塩分と水分は腎臓でろ過され、尿として排出されます。
腎臓の働きは血圧の変化を認識し塩分の再吸収や排出をして、血圧を一定に保つことです。
塩分を摂りすぎると血液量の増加が持続し、血圧上昇が続くため高血圧の原因になります。
血圧が高い状態が続くと腎臓の機能に負担がかかり、起きるのがろ過機能の低下です。
ろ過機能が低下すると体内の水分や塩分がうまく排出できなくなります。
結果、血液量が増加し高血圧を発症する原因になります。
高血圧は遺伝する?
両親や兄弟に高血圧の方がいる場合、高血圧を発症しやすくなります。
高血圧の約9割を占める本態性高血圧は、遺伝と関連があると報告されています。
しかし、高血圧の発症は遺伝だけでなく、食習慣や生活習慣も関連しています。
塩分の高い食事や運動不足など一緒に暮らすと似たような生活になる場合が多いです。
高血圧の発症は遺伝と生活習慣を合わせた家族的要因が60%あると報告されています。
また、極めてまれですが単一遺伝子の異常による家族性高血圧があります。
原発性アルドステロン症はアルドステロン合成酵素に関連した遺伝子異常がある病気です。
アルドステロンの過剰産生により、高血圧と低カリウム血症などの症状が見られます。
血圧が高くても症状がなければ大丈夫?
高血圧は別名「サイレントキラー」と呼ばれ、一般的に自覚症状がほとんど見られません。
しかし高血圧を放っておくと高くなるのが、脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクです。
また、降圧剤や生活習慣の修正が効果的に働くと、血圧が下がり安定してきます。
血圧が安定してくると、自己判断で薬の量を減らしたり高いときだけ服用する方がいます。
血圧の薬は予防薬としてとても重要な薬です。
自己判断で薬の量を調整すると、脳卒中などのリスクを高める可能性があります。
薬の用法・用量は正しく守り、量を調整する場合は必ず医師に相談してください。
スポンサーリンク
高血圧で病院に行く基準や目安のまとめ
ここまで高血圧で病院に行く基準や目安についてお伝えしてきました。
高血圧で病院に行く基準や目安の要点をまとめると以下の通りです。
- 病院に行く基準や目安は、自宅で135/85㎜Hg以上、健診で140/90㎜Hg以上の場合
- 高血圧になった場合、循環器科や内科で診療を受けられる
- 高血圧を放置した場合、動脈硬化や心筋梗塞など脳心血管病になる可能性がある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。