妊娠中は身体が大きく変化するため、さまざまな不調があらわれやすくなります。
代表的なのは関節痛です。
妊娠中の関節痛は、どのようなものなのでしょうか。
本記事では、妊娠の関節痛について以下の点を中心にご紹介します。
- 妊娠中の関節痛の原因
- 妊娠中の関節痛の対処方法
- 妊娠中の関節痛が出やすいタイミング
妊娠の関節痛について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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妊娠の関節痛の原因
妊娠中の関節痛の原因は、時期によって異なります。
妊娠による関節痛の原因について、時期別にご紹介します。
妊娠初期
妊娠初期は妊娠から4ヶ月以内を指します。
関節痛の主な原因は次の通りです。
骨盤の圧迫
妊娠初期は、関節の中でも股関節の痛みが目立ちます。
主な原因として、骨盤の圧迫が挙げられます。
妊娠すると子宮がどんどん膨らんでいきます。
すると子宮が骨盤を圧迫します。
そのため、骨盤と大腿骨の継ぎ目である股関節にも痛みが出やすくなります。
あるいは、子宮を支えている靱帯が引き延ばされることで、骨盤周辺に痛みが出ることもあります。
リラキシンの分泌
妊娠初期・後期には、リラキシンというホルモンが分泌されます。
リラキシンの主な役割は、股関節の筋肉や子宮を支える靱帯を緩めることです。
股関節・靱帯を緩める理由は、出産に備えて産道を広げるためです。
リラキシンによって股関節の筋肉などが緩まると、骨盤が開きやすくなります。
つまり骨盤がゆがみやすくなるため、周辺の組織を圧迫して痛みが生じやすくなります。
妊娠中期
妊娠中期は5ヶ月〜7ヶ月の期間を指します。
妊娠中期には、股関節をはじめ全身の関節に痛みが出やすくなります。
主な原因は次の通りです。
妊娠によるホルモンバランスの変化
関節痛の原因の1つは、妊娠による女性ホルモンのバランスの変化です。
女性ホルモンには、関節を支えている軟骨・筋肉の柔軟性を保つ働きがあります。
女性ホルモンのバランスが崩れると、関節を支える組織が硬直しやすくなります。
そのため関節がこわばったり、痛んだりしやすくなるというわけです。
妊娠によるストレス
妊娠による心身の負担が関節痛を引き起こすこともあります。
妊娠によるストレスとは、たとえば次のようなものがあります。
- 身体が重い
- 出産・育児への不安
- 便秘
- 睡眠不足
ストレスは自律神経の乱れを引き起こします。
自律神経とは、身体のさまざまな働きを調節している神経系です。
ストレスは自律神経のうち、交感神経を刺激します。
交感神経には血管を収縮させる作用があります。
ストレスによって交感神経が活性化すると、血管が収縮して全身の血行が悪化します。
特に関節周辺の血行が悪化すると、関節痛が出やすくなります。
妊娠後期
妊娠後期は8ヶ月以降です。
お腹が大きくなって体重が増えます。
そのため、股関節に負担がかかって痛みが出やすくなります。
また、妊娠後期にはリラキシンが再び分泌されます。
骨盤周りの筋肉などが緩みやすくなります。
そのため、股関節にも痛みが生じることがあります。
産後
産後に関節痛が出る場合もあります。
主な理由は2つあります。
1つ目は骨盤が開いたままであるためです。
出産で赤ん坊が産道を通る際には、骨盤が押し広げられます。
骨盤は産後もしばらく開いたままです。
つまり骨がゆがんだ状態が続くため、股関節や腰に痛みが出やすくなります。
2つ目はリラキシンの分泌が続くためです。
リラキシンは妊娠後期から分泌が始まり、産後もしばらく止まらないことがあります。
リラキシンが分泌されている間は、骨盤が緩みやすくなっています。
結果として、股関節に痛みが出やすくなるというわけです。
リラキシンの分泌は、産後1ヶ月程度で止まることが一般的です。
ただしリラキシンが止まっても、骨盤が自然に元に戻るわけではありません。
骨盤を戻すケアをしなければ、関節痛が産後もずっと続くおそれがあります。
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妊娠の関節痛の対処法
妊娠による関節痛の対処方法をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
自己判断で湿布をしない
関節痛がひどいときでも、自己判断で湿布をしないようにしてください。
理由は胎児に悪影響が出ることもあるためです。
代表的な悪影響は、胎児の動脈管早期収縮・腎機能低下です。
特に次のような成分を含む湿布は使用を控えましょう。
- ロキソプロフェン
- ケトプロフェン
- インドメタシン
- ニプロパッチ
妊娠中に湿布を利用したい場合は、まずかかりつけ医に相談してください。
コルセットをする
関節痛があるときは、コルセット・骨盤ベルトを装着するのもおすすめです。
コルセットや骨盤ベルトは、骨盤のゆがみ・ずれを矯正するのに役立ちます。
関節にかかる負荷を分散させることで、関節痛を緩和する効果も見込めます。
コルセットは妊婦の方向けのものを使用しましょう。
妊娠用でないコルセットをつけると、お腹を圧迫して胎児に悪影響が出ることもあります。
身体を温める
関節痛があるときは、患部を温めてみましょう。
温めることで患部周辺の血行が促進されるため、痛みが軽減されやすくなります。
たとえばホッカイロやホットタオルを利用する方法があります。
ブランケットや膝かけを腰回りなどに巻きつけておくのも良い方法です。
安静にする
痛みがひどいときは、楽な姿勢で安静にしましょう。
関節に負担を掛けないようにするためです。
おすすめなのは、横向きに寝て、軽く腰を曲げる姿勢です。
足の間にクッションなどを挟むと姿勢が安定しやすくなります。
病院へ行く
関節痛が原因で日常生活に支障をきたす場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
たとえば睡眠不足などが代表的です。
妊娠の関節痛が起こるタイミング
妊娠中の関節痛は、時期によって痛む場所が変わることが一般的です。
妊娠初期・中期・後期に分けて、痛みが出やすい部位をご紹介します。
妊娠初期
妊娠初期に痛みやすいのは次のような部位です。
- 脚の付け根
- 股関節
- 腰
原因として、子宮の拡大による骨盤の歪み・靱帯の伸長が挙げられます。
リラキシンの分泌も関節痛の主な原因です。
妊娠中期
妊娠中期に痛みが出やすいのは次の部位です。
- 腰
- 股関節
- 膝
- 首
中期になるとお腹が重くなるため、腰・股関節・膝に負荷がかかります。
そのため、下半身に関節痛が出やすくなります。
中期には肩・首の痛みが出ることもあります。
原因は、お腹が重くなることで身体の重心が変わるためです。
具体的には、お腹を支えるために身体が無理な姿勢でバランスを取ろうとします。
結果として、全身に痛みが出やすくなるのです。
妊娠後期
妊娠後期に痛みが出やすいのは次の部位です。
- 股関節
- 腰
- 膝
後期はますますお腹がふくらみ、体重も重くなります。
腰・股関節などの関節に大きな負荷がかかるため、痛みが出やすくなります。
リラキシンの分泌が再開するのも関節痛の主な原因です。
産後
産後には、主に股関節に痛みがあらわれやすくなります。
理由は、出産の際に骨盤が大きく開くためです。
また、痛みを誘発するリラキシンの分泌も大きな原因の1つです。
妊娠の関節痛が起こる場所
妊娠で起こりやすい関節痛についてご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
股関節
妊娠中に特に起こりやすいのが股関節痛です。
股関節は、大腿骨と骨盤の継ぎ目にあたります。
痛みが出やすいのは、長時間歩いたときや立ちっぱなしのときです。
動き始め・立ち上がりにズキっとした痛みが出ることもあります。
背中
関節ではありませんが、妊娠中は背中に痛みが出ることも多いです。
出やすいのは妊娠中期以降です。
背中に痛みが出やすい理由は、主に2つあります。
1つ目はお腹が重くなるためです。
お腹が重くなると、身体を支えようとして背中の筋肉に大きな負荷がかかります。
つまり背中がこりやすくなるため、痛みが出やすくなるというわけです。
お腹を支えるために猫背・反り腰になることで、痛みが出ることもあります。
2つ目は下腹部の筋肉が伸びることです。
下腹部の筋肉は、姿勢を支える役割を果たします。
妊娠してお腹が大きくなると、下腹部の筋肉が引き伸ばされて緩みます。
代わりに、姿勢を保持するために背中の筋肉に大きな負荷がかかります。
そのため、背中に痛みが出やすくなります。
足の付け根
妊娠中は足の付け根が痛むこともあります。
痛みやすいタイミングは次の通りです。
- 長時間歩いたとき
- 立ちっぱなしのとき
- 床に座ったとき
- 階段の上り下り
- 動作を始めるとき
足の付け根の痛みの主な原因は、子宮による骨盤の圧迫などです。
骨盤
骨盤の痛みは、妊娠初期から中期にかけて起こりやすくなります。
主な理由は、子宮を支える靱帯が引き伸ばされるためです。
妊娠による骨盤痛の感じ方には個人差があります。
月経痛に似た痛みが出るケースが目立ちます。
おしり
妊娠中はおしりが痛むこともあります。
主な理由は、おしりにある坐骨神経が圧迫されるためです。
坐骨神経が圧迫される主な原因は次の通りです。
- お腹を支えるために反り腰になる
- リラキシンによって骨盤の靱帯が緩んで圧迫する
- お尻の筋肉が硬直する
おしりの痛みは産後もしばらく続くことがあります。
妊娠のときの関節痛以外に出る痛み
妊娠中は、関節以外の場所にも痛みが出やすくなります。
妊娠中に起こりやすい身体の痛みをご紹介します。
腹痛
妊娠中は腹痛が起こりやすくなります。
腹痛が出やすいのは、特に妊娠初期です。
主な原因は次の通りです。
- ホルモンバランスの変化
- 便秘
- 子宮を支える靱帯の伸長
冷や汗が出るほどの強烈な痛みがある場合は、異所性妊娠や流産が疑われます。
すぐに医師に相談してください。
胸の痛み
妊娠の初期には乳房が張ったり痛んだりすることがあります。
乳房の痛みは女性ホルモンの作用によるものです。
具体的には、授乳に備えて女性ホルモンが乳腺を発達させることで痛みが発生します。
頭痛
妊娠初期は頭痛がすることも少なくありません。
特に多いのは、頭の片側がズキズキ痛む片頭痛です。
片頭痛の原因の1つは、自律神経の乱れです。
妊娠中は女性ホルモンのバランスが大きく変化します。
すると自律神経が影響を受けて、バランスを崩しやすくなります。
結果として、片頭痛などの頭痛が出やすくなります。
胃痛
妊娠中は胃が痛むこともあります。
個人差はありますが、胃痛が起こりやすいのは妊娠初期です。
主な原因は次の通りです。
- 女性ホルモン(プロゲステロン)の増加
- つわりによる偏食ストレスによる自律神経の乱れ
妊娠の関節痛がひどい時の休業は必要?
妊娠による関節痛がひどくなると、思うように仕事に取り組めないこともあります。
仕事にならないときは、関節痛を理由に休業しても良いのでしょうか。
基本的には休業できます。
多くの企業は、妊娠による諸症状が辛い場合は休業できる体制を整えています。
休業以外にも、短時間勤務・重労働の免除などを行っている企業もあります。
具体的な措置は企業によって異なります。
妊娠中の関節痛がひどい方は、休業の可否などについて、まず企業の担当者に相談してみましょう。
出典:厚生労働省【妊娠中・産後の症状等に対して考えられる措置の例】
妊娠の関節痛のまとめ
ここまで妊娠の関節痛についてお伝えしてきました。
妊娠の関節痛の要点を以下にまとめます。
- 妊娠中の関節痛の原因は、子宮の肥大による骨盤の圧迫・靱帯の伸長・リラキシンの分泌など
- 妊娠中の関節痛の対処方法は、コルセットの着用・温める・医師に相談するなど
- 妊娠中の関節痛が出やすいタイミングは初期と後期
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。