有酸素運動のウォーキングには、さまざまな健康効果が期待できます。
そのため、病気・ケガ・寝たきりのリハビリに適した運動です。
ウォーキングには、具体的にどのようなリハビリ効果を期待できるのでしょうか。
本記事では、ウォーキングによるリハビリの効果について、以下の点を中心にご紹介します。
- ウォーキングのリハビリ効果
- リハビリ効果を高めるウォーキングのやり方
- ウォーキングの注意点
ウォーキングによるリハビリの効果について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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ウォーキングによるリハビリの効果は?
ウォーキングは高齢者・病気やケガをした方のリハビリに効果的とされています。
ウォーキングによるリハビリ効果とは具体的にどのようなものなのか、ご紹介していきます。
心肺機能が高まる
ウォーキングには心肺機能を高めるリハビリ効果があります。
ウォーキング中は、多くの酸素を体内に取り込むためです。
ウォーキングをして酸素を多く吸い込むと、肺がしっかり広がります。
肺で取り込まれた酸素は、血液に乗って、心臓から全身へと送り出されます。
簡単にいえば、心肺が忙しく働かなければならないため、自然と機能も強化されるというわけです。
心臓・血管の健康が維持される
ウォーキングには心臓・血管を健やかに保つリハビリ効果があります。
ウォーキングをすることで血流が促進されるためです。
なぜウォーキングをすると血流が促進されるのでしょうか。
答えは、運動中に体内に取り込んだ酸素を血液に乗せて全身に届けようとするためです。
血流が増えると、心臓を収縮させる筋肉(心筋)の動きが活発化します。
自然に心筋が鍛えられるため、心臓機能が強化されます。
一方、心臓から送り出された酸素(血液)は血管を通って全身を巡ります。
血流の増加は、血液の通り道である血管の拡張をもたらします。
血管が適度に拡張すると、血流が血管の壁に与える圧力が軽減されます。
簡単にいえば、血圧が下がります。
血圧が下がると、血管・心臓への負担が軽くなります。
結果として、血管・心臓の健康が維持されやすくなるのです。
骨密度が向上する
ウォーキングには骨密度の減少を防ぐ効果が期待できます。
理由は、着地の際に体に適度な衝撃が加わるためです。
体に物理的な衝撃が加わると、骨細胞の中のNF-κBの働きが弱まります。
NF-κBは古い骨を破壊するプロセスに関わる酵素です。
NF-κBが抑制されると骨の破壊がゆるやかになるため、骨密度の減少を防げます。
骨密度の維持・向上は骨粗鬆症の予防につながります。
骨粗鬆症とは骨が脆くなる病気で、骨折や寝たきりの大きな原因の1つです。
出典:厚生労働省【骨粗鬆症予防のための運動 -骨に刺激が加わる運動を | e-ヘルスネット】
認知症を予防する
ウォーキングには認知症の予防効果が期待されています。
ウォーキングは脳の活性化をもたらすためです。
ウォーキングが脳を活性化させる理由は主に3つあります。
1つめは脳への血流が増加するためです。
ウォーキングによって全身の血流が促進されると、脳への血液供給も増えます。
すると脳が十分な酸素・栄養を受け取れるため、働きが活性化しやすくなります。
2つめは脳神経の成長が促進されるためです。
ウォーキングによって体を動かすと、筋肉からアイリシンというホルモンが分泌されます。
アイリシンは、海馬でのBDNFの分泌を増やす働きがあります。
BDNFは脳由来神経栄養因子です。
具体的には、脳神経細胞の成長・維持・再生やシナプスの形成を促します。
海馬でのBDNF分泌が増えると、海馬が活性化します。
さらに海馬の容積の増加も見込めます。
海馬は記憶・学習などの認知機能を司る脳器官です。
認知症では多くの場合、海馬の萎縮や不活性化が認められます。
裏を返せば、海馬の肥大・活性化は認知症を防ぎやすくなります。
ウォーキングはBDFNを増やして海馬を強化することで、認知症のリスクを下げるのです。
3つめは生活習慣病を防ぐためです。
認知症は、生活習慣病などから発展することもよくあります。
理由は、病気のために体を動かせなくなったり、寝たきりになったりするためです。
体を動かさなくなると、脳への刺激も減ります。
結果、脳が不活性化して認知機能の低下を招きます。
ウォーキングは健康維持に役立つ運動です。
病気による不活発化・寝たきりを防ぐことは、ひいては認知機能の低下の抑制につながります。
ストレスが軽減する
ウォーキングにはストレスを軽減する効果も知られています。
主な理由は2つあります。
1つ目はセロトニンの分泌を促すためです。
セロトニンはイライラを鎮めたり、幸福感を高めたりするホルモンです。
セロトニンは、規則的な運動を行うと分泌量が増えます。
たとえばウォーキングのように、一定のリズムで歩行する運動が適しています。
2つめは筋肉の硬直がほぐれるためです。
体がほぐれると、心も自然とリフレッシュしやすくなります。
出典:スポーツ庁【プラス「10」分のウォーキングから始めるストレス対策】
免疫力が向上する
ウォーキングは免疫力の向上に役立ちます。
主な理由は2つあります。
1つめは血行が促進されて体温が上がるためです。
適度に体温が上がると免疫細胞が活性化します。
2つめは自律神経が整うためです。
自律神経は、免疫機能・血圧・心拍などを管理している神経系です。
自律神経はストレスなどでリズムを崩しがちです。
一方、ウォーキングはストレスを解消する効果があるため、ひいては自律神経の改善に役立ちます。
自律神経が整うと、免疫機能も正常に維持されやすくなります。
血糖値を下げる
ウォーキングには血糖値を下げる効果が期待できます。
主な理由は2つあります。
1つめは、運動のエネルギー源として血中の糖が消費されるためです。
運動すると筋肉の修復のために、血中の糖が筋肉に取り込まれます。
結果として、血液中の糖の量が減少します。
2つめはインスリンの効きを良くするためです。
インスリンは血糖値を下げるホルモンです。
運動をすると筋肉量が増加します。
インスリンは、筋肉が増えることで効きが良くなります。
肥満や生活習慣病の予防
ウォーキングには肥満・生活習慣病を予防する効果も期待できます。
たとえば次のような生活習慣病予防に役立ちます。
- 高血圧
- 動脈硬化
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 脳卒中
- 心疾患(心筋梗塞・狭心症)
出典:厚生労働省【ウォーキング | e-ヘルスネット】
腰痛予防から美肌効果も
ウォーキングには、その他にもさまざまな効果が期待できます。
代表的な効果は次の通りです。
- 腰痛予防:腰回りの筋肉が強化されるため
- 美肌効果:新陳代謝が良くなるため
- ボディメイク:肥満が解消されてボディラインが整う
- 社会的効果:外に出ることで他人との交流が生まれる
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リハビリにおけるウォーキングの適正な強度
リハビリ効果を高めるには、適切な方法でウォーキングをする必要があります。
ここからは、リハビリのための適切なウォーキングの方法をご紹介していきます。
ウォーキングの歩数は8000歩
リハビリ効果を高めるには、ウォーキングの歩数は1日8,000歩が適当です。
1日8,000歩歩く方は、そうでない方より全原因の死亡率が約15%低いとされています。
心血管系の死亡率に限定すると、1日8,000歩の方の死亡率は約8%低いという調査結果が出ました。
8,000歩は小分けにしてもかまいません。
たとえば3,000歩・3,000歩・2,000歩のように合計で8,000歩を目指しましょう。
いきなり8,000歩が難しい方は、1,000歩ずつ歩数を増やすようにしてください。
8,000歩の運動のうち、約20分間はやや強度の高い運動をするのが良いとされています。
たとえば早歩きをしてみましょう。
ウォーキングは週1〜2回
リハビリ効果を得るには、少なくとも週に1~2回のウォーキングがおすすめです。
余裕がある方は、週3回以上を目指してください。
ウォーキングは息が軽く弾む程度の強度
リハビリにおすすめなのは、息が軽く弾む程度の速度でのウォーキングです。
修正ボルグスケールでいえば、強度2~4が適当です。
ウォーキング | 筋トレ | |
筋肉増強 | △ | ○ |
内臓脂肪の減少 | ○ | △ |
糖の消費 | △ | ○ |
心肺機能の強化 | ○ | △ |
血圧を下げる | ○ | △ |
ウォーキングと筋トレの目的が違う
ウォーキングと筋トレでは目的もやや異なります。
ウォーキング | 筋トレ | |
筋肉増強 | △ | ○ |
基礎代謝の向上 | △ | ○ |
健康維持 | ○ | △ |
時間 | 長時間できる | 短時間が適当 |
運動強度 | 低い | 高い |
ウォーキングは運動強度が低いため、身体機能の低い方でも取り組みやすいのが特徴です。
対して筋トレは、ある程度の身体機能を持つ方に適した運動です。
リハビリ目的であれば、強度の低いウォーキングが向いているでしょう。
よりリハビリ効果を高めるには、ウォーキング・筋トレの両方に取り組むのもおすすめです。
順番は筋トレ・ウォーキングのように行いましょう。
筋トレ→ウォーキングの順番で行うことで、成長ホルモンの分泌が促進されるためです。
成長ホルモンには脂肪燃焼・骨の成長の促進や、筋肉の疲労を修復する作用があります。
ダイエットや健康管理などを目的にウォーキングを行っている方は多いです。ウォーキングは手軽に始めやすいですが、正しい知識や方法はあまり知られていません。ウォーキングを行うとどのような効果が得られるのでしょうか?ウォーキングの目[…]
ウォーキングによるリハビリの注意点
ウォーキングでリハビリを行う際の注意点をご紹介します。
ウォーキングがかえって健康を損なう原因とならないよう、ぜひ参考にしてください。
持病がある方は主治医に相談
持病がある方は、ウォーキングをしたい旨をまずかかりつけ医に相談してください。
身体状況によっては、ウォーキングによって体調が悪化するおそれがあるためです。
特に高血圧症・心疾患のある方は、必ず事前に医師に相談してください。
ウォーキング前後にストレッチをする
ウォーキング前には必ずストレッチをしましょう。
いきなり運動をすると、筋肉や関節を痛めるおそれがあるためです。
まずはストレッチをして、筋肉・関節をゆるめましょう。
ウォーキング後のストレッチも重要です。
ストレッチをすることで、筋肉がクールダウンして疲労が回復しやすくなります。
ストレッチはウォーキング後30分以内に行いましょう。
体調が悪い時は無理に行わない
体調が悪いときは、無理にウォーキングをする必要はありません。
無理をすると、健康を損なうおそれがあります。
もし運動中に体調が悪くなった場合は、すぐに休憩しましょう。
天気が悪い日は行わない
天候が悪い日のウォーキングは控えましょう。
たとえば雨の日は、転倒のおそれが高くなります。
気温が高い日・湿度が高い日のウォーキングも避けるのがベストです。
大量発汗による脱水症状のリスクが高いためです。
天候の関係でウォーキングをお休みしたときは、次のウォーキングをすこし長めに行うのもおすすめです。
適度な水分摂取を行う
ウォーキング中は発汗が促進されます。
脱水症状を防ぐために、適度な水分補給を行ってください。
たとえ喉が渇いたと感じなくても、水分補給は必ず行ってください。
高齢者の方は、喉が渇いたと感じる機能が低下していることが多いためです。
10分に1回のように給水のタイミングを決めておくと、脱水を防ぎやすくなります。
膝痛改善に効果的なウォーキング方法とは?
ウォーキングにはさまざまな健康効果が期待できます。
しかし膝痛持ちの方は、膝の痛みからウォーキングが難しい場合も多いものです。
そんなときにおすすめなのがノルディックウォーキングです。
通常のウォーキングよりも膝への負担が小さいため、膝痛持ちの方のリハビリにも適しています。
ノルディックウォーキングの効果
ノルディックウォーキングは膝痛持ちの方にも取り組みやすい運動法です。
ここからはノルディックウォーキングの特徴・効果をご紹介していきます。
ノルディックウォーキングとは
ノルディックウォーキングは、専用のポールを地面につきながら行うウォーキングです。
下半身だけでなく上半身も動かすため、効率的に全身運動を行えます。
ノルディックウォーキングは、クロスカントリーの選手が行うスキーウォーキングを元に考案されました。
季節・場所を問わずにできるため、現在では全国で愛好者が増えています。
ノルディックウォーキングの効果
ノルディックウォーキングにはさまざまな健康効果が期待できます。
代表的な効果をご紹介します。
転倒リスクの軽減
ノルディックウォーキングは、通常のウォーキングよりも転倒リスクを軽減できます。
両手に持ったポールで体を支えながら歩行するためです。
体幹が安定しやすいため、足の筋力が衰えた方・関節痛がある方でもスムーズな歩行が可能です。
疼痛の軽減
ノルディックウォーキングは、ポールで体重を支えながら歩行します。
関節にかかる負荷を分散できるため、膝や腰に痛みがある方でも取り組みやすい運動です。
歩行中の痛みが軽減されると、従来よりも長い時間での歩行も可能になります。
歩行距離のアップは、筋力増強・心肺機能のさらなる強化につながります。
上肢・下肢の筋力が鍛えられる
ノルディックウォーキングでは下半身だけでなく、上半身も鍛えられます。
ポールを交互に地面に突き刺しながら運動するためです。
腕をしっかり振らなければならないため、背中や腰周りの筋肉が自然に強化されます。
上半身の筋肉が強化されると、全身のバランス機能が向上するため転倒のリスクが下がります。
柔軟性の向上
ノルディックウォーキングには筋肉・関節の柔軟性を高める効果が期待できます。
ノルディックウォーキングでは、通常のウォーキングよりも効率的な歩行が可能になるためです。
効率的な歩行は歩行時間・歩行距離のアップにつながります。
実際に慶應義塾大学の調査結果では、通常のウォーキングとノルディックウォーキングに次のような差がみられました。
通常のウォーキング | ノルディックウォーキング | |
歩行時間 | 68分~74分 | 78分~96分 |
歩行距離 | 6996歩~7580歩 | 7964~9367歩 |
歩行時間・歩行距離の増加とは、つまり運動量の増加を意味します。
運動量が増えるほど、筋肉・関節への影響は大きくなります。
運動効率が良くなる
ノルディックウォーキングには運動効率を良くする効果も期待できます。
慶應義塾大学の調査結果を参照します。
通常のウォーキングより、ノルディックウォーキングでは歩行時間・歩行距離が大幅に伸びました。
一方、カロリー消費量はさほど大きく変化していません。
つまり、無理なく体を動かせている=運動効率が良くなったことが推測されます。
ウォーキングによるリハビリ効果まとめ
ここまで、ウォーキングによるリハビリの効果についてお伝えしてきました。
ウォーキングによるリハビリの効果の要点を以下にまとめます。
- ウォーキングのリハビリ効果は、心肺機能の向上・血管の健康の維持・骨密度の向上・認知症の予防など
- リハビリ効果を高めるウォーキングのやり方は、1日8,000歩を少なくとも週に1~2回
- ウォーキングの注意点は、無理をしない・水分補給を行う・体調に不安がある場合は医師に相談する
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。