アトピーはダニなどに反応して皮膚に起こるアレルギー疾患の1種です。
アトピーは環境の悪化要因以外に心因性のストレスも症状悪化の要因になります。
アトピーの原因にはどのようなものがあるでしょうか?
アトピーの治療・改善方法にはどのようなものがあるでしょうか?
本記事ではアトピーの原因について以下の点を中心にご紹介します。
- アトピーの主な原因について
- 赤ちゃんのアトピーの原因について
- アトピーの治療・改善について
アトピーの原因について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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アトピーとは
アトピーは皮膚に炎症を起こして、慢性的にかゆみのある湿疹を繰り返す疾患です。
もともとアレルギー体質の人や皮膚のバリア機能の弱い人に多くみられます。
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アトピーの主な原因
アトピーの主な原因には以下のようなものがあります。
- 肌の乾燥
- ダニやハウスダスト
- 食べもの
- ストレス
それぞれの原因についてご紹介します。
肌の乾燥
アトピーの原因の1つに肌のバリア機能が低下するという体質要因があります。
肌のバリア機能は以下の3つからなっています。
- 皮脂膜
- 天然保湿因子
- 角質細胞間脂質
それぞれの役割は以下の通りです。
皮脂膜
皮脂膜は角質層の表面にあって、汗と皮脂からなる肌のバリア機能の1つです。
皮脂層は以下のような役割を担っています。
- 外的刺激(乾燥や摩擦、皮膚の常在菌など)から肌を保護する
- 皮膚の表面を覆って水分蒸発を防ぐ
天然保湿因子
天然保湿因子も肌のバリア機能の1つです。
角質層内にあるNMFといわれるもので、水分を保持する性質があります。
NMFはNatural Moisturizing Factorの略で低分子のアミノ酸や塩類などのことです。
角質細胞間脂質
角質細胞間脂質も肌のバリア機能を担っています。
角質細胞間脂質は角質細胞と角質細胞の隙間を埋めてつなぎとめる脂です。
また、角質内の水分を挟み込んで逃がさない役割も担っています。
肌の乾燥は3つのバリア機能を低下させる原因になります。
バリア機能が低下すると肌内部の水分が蒸発し、乾燥がさらに進みます。
肌内部の水分の蒸発が起こる原因はバリア機能の低下で
- 皮脂膜が薄くなる
- 角質のきめが荒くなる
などが起こるためです。
ダニやハウスダスト
ダニやハウスダストなどのアレルゲンによる環境要因もアトピーの原因になります。
アレルゲンが体内に入ってきたときの体の免疫反応で、アレルギー炎症が起こるのです。
本来はアトピーとは直接関係がないのに、過剰に反応して炎症が起こるものです。
もともとダニなどに対してアレルギー反応を起こしやすい体質の場合もあります。
環境要因となるアレルゲンにはダニやハウスダスト以外にも
- 食べもの
- カビ
- 花粉
- 動物の毛
などがあります。
食べもの
体質要因や環境要因以外でも、乱れた食生活はアトピーの症状に影響を与えます。
アトピー症状に影響を与える乱れた食生活とは以下のようなものが該当します。
- 栄養バランスの乱れ(外食や偏食などによる)
- 極端な食事制限(ダイエットなどによる)による栄養不足
- 甘いものの摂りすぎ
- 脂質の多いものの摂りすぎ(油、バター、牛肉、豚肉など)
毎日の食生活を見直し、栄養バランスのよい食事を心がけることが大切です。
ストレス
厚生労働省の調査によると、成人におけるアトピーの悪化要因にストレスが入っています。
また最近の研究ではストレスでかゆみが促進されることも明らかになってきています。
ストレスが自律神経を乱し、かゆみを促進する要因になるというものです。
アトピーの症状が悪化するストレスには
- 学校生活におけるストレス(成績、苦手な科目のテスト、人間関係など)
- 職場の人間関係によるストレス
- 家族間の問題
など、日常生活の中にあるストレスがかゆみと関係が深いといわれています。
アトピーの症状
アトピーは
- 赤くなる湿疹
- ぶつぶつと盛り上がりができる湿疹
- ジクジクと水分が多い湿疹
- ゴツゴツした、しこりのような湿疹
- 皮膚が硬くなってゴワゴワした状態
- かさぶたになる
などのような症状があります。
また、アトピーの症状は比較的左右対称にできやすいことも特徴です。
アトピーの症状は重症度に応じて4段階(軽症・中等症・重症・最重症)に分けられます。
それぞれの重症度の目安は以下のようになります。
- 軽症:面積に関わらず、軽度の皮疹のみみられる
- 中等症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%未満にみられる
- 重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%以上、30%未満にみられる
- 最重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上にみられる
軽度の皮疹とは、軽度の紅斑、乾燥、落屑主体の病変のことを指します。
また、強い炎症を伴う皮疹は以下のような症状です。
- 紅斑
- 丘疹
- びらん
- 浸潤
- 苔せん化
赤ちゃんのアトピーの原因
赤ちゃんのアトピーはアトピー素因がもとにあります。
アトピー素因とはアトピーになりやすい要因のことです。
家族にアレルギー性疾患を持つ人がいると、遺伝的にアトピーになりやすいのです。
アレルギー性疾患は以下のようなものをいいます。
- アトピー性皮膚炎
- ぜんそく
- アレルギー性鼻炎
- アレルギー性結膜炎
- 花粉症
赤ちゃんのアトピーの原因は、肌のバリア機能が弱いことも関係しています。
赤ちゃんの肌は大人に比べて皮膚が薄く、外部からの刺激により敏感です。
皮膚が薄く敏感なのでかゆみや炎症を起こしやすいのです。
掻きむしるなどで皮膚が傷つくとさらにバリア機能の低下を招きます。
バリア機能の低下で、アレルゲンがより侵入しやすくなるのです。
アトピーができやすい場所
アトピーができやすい場所は年齢によって変わってきます。
年齢区分とアトピーのできやすい場所を表にまとめました。
年齢区分 | アトピーのできやすい場所 |
乳児期(2歳未満) | ほお、口のまわり、耳、頭皮 |
幼児期~学童期 (2歳~12歳) | 首のまわり、ひじの内側、わきの下、ひざの裏側 |
思春期・成人期 (13歳以上) | 顔、首のまわり、額、胸、背中、ひじの内側 |
アトピーの検査方法
アトピーの検査に使われる方法(バイオマーカー)を以下の表にまとめました。
マーカー | 基準値(上限) | 適用 |
血清IgE値 | 明確な基準値なし | アレルギー素因を示す 長期経過における病勢の反映 |
特異的IgE値 | 検出の有無 | アレルゲンに対する抗体反応 |
末梢血好酸球数 | 明確な基準値なし | アトピー性皮膚炎の病勢反映 |
血清LDH値 | 0~2歳<400 IU/L 2~6歳<300 IU/L 6~12歳<270 IU/L 13歳~<250 IU/L | アトピー性皮膚炎の病勢反映 |
血清TARC値 | 6ヵ月~12ヵ月未満<1,367 pg/mL未満 1歳~2歳未満<998 pg/mL未満 2歳~15歳<743 pg/mL未満 成人<450 pg/mL未満 | アトピー性皮膚炎の病勢を好酸球数やLDHよりも鋭敏に反映する アトピー性皮膚炎のマーカーとして保健適用 |
血清SCCA2値 | <1.6 ng/mL | アトピー性皮膚炎の病勢を鋭敏に反映 (診断用医薬品として承認) |
出典:【アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021(表10)】
表中のバイオマーカーのうち、血清TARC値はアトピー重症度を測定するのに使われます。
血清中TARCは(Thymus and activation-regulated chemokine)の略語です。
血清TARC値はケモカインの1種で湿疹の程度が重症なほど高くなります。
アトピーの治療・改善方法
アトピーの治療・改善方法について以下に4つ挙げます。
- 薬物療法
- スキンケア
- 整理整頓
- ストレス発散
それぞれの方法についてご紹介します。
薬物療法
アトピーは原因が多岐にわたり現時点では完全に治癒ができる薬物療法はありません。
対処療法としてアトピーの炎症を鎮静するために抗炎症外用薬が使われます。
外用薬には以下のような種類があります。
- ステロイド外用薬
- 非ステロイド系消炎外用薬
- カルシニューリン阻害外用薬(タクロリムス軟膏)
- JAK阻害外用薬(デルゴシチニブ軟膏)
抗炎症外用薬で有効性と安全性から使われる代表的な薬剤はステロイド外用薬です。
ステロイド外用薬は個々の皮疹の重症度に応じたものが選択され
- 病変の性状
- 部位
に応じて炎症を抑えるように薬のタイプが使い分けられます。
ステロイド外用薬には以下のようなタイプがあります。
- 軟膏
- クリーム
- ローション
- テープ剤
抗炎症外用薬の他にも以下のような薬による薬物療法があります。
- 抗ヒスタミン薬
- シクロスポリン
- ステロイド内服薬
- 漢方薬
- バリシチニブ
スキンケア
アトピーは皮膚が乾燥することによる皮膚バリア機能の低下が主な原因です。
したがって皮膚の清潔、保湿のためのスキンケアが大切です。
スキンケアの方法をまとめると以下のようになります。
- 汗や汚れはすぐに落とす
- 強くこすらない
- 洗浄力の強い石鹸やシャンプーは避けて、使用後は十分にすすぐ
- 入浴やシャワーの温度は熱くし過ぎない(38~40℃程度にする)
- 沐浴剤や入浴剤は避ける(ほてりを感じるようなものは避ける)
- 入浴後は保湿のため適切な外用剤(保湿剤、ステロイド剤など)を使う
整理整頓
アトピーの治療・改善方法の1つに環境悪化因子(アレルゲン)の排除があります。
アトピーが悪化する環境アレルゲンとして
- ダニ
- ハウスダスト
- ペットの毛
- 花粉
などが挙げられます。
室内のダニやハウスダストなどのアレルゲンに有効な対策の1つが整理整頓です。
特にダニ類は掃除の行き届かない所で繁殖します。
掃除がしやすいように
- 家具類
- 押し入れ
などの整理整頓に心がけこまめな掃除をしましょう。
整理整頓以外にもダニなどのアレルゲンを減らす対策には以下のようなものがあります。
- 床面の掃除
- 寝具の処理
- ダニの生息しにくい素材の使用(フローリング材、ソファーなど)
- 乾燥(通気、換気、除湿などで室内湿度60%以下の管理)
ストレス発散
ストレスが自律神経を乱してかゆみが促進されることは既にご紹介しました。
日常生活の中でストレスを上手に解消することはアトピーの症状改善に大切なことです。
厚生労働省はストレス緩和のために以下の「こころと体のセルフケア」を薦めています。
- 体を動かす
- 今の気持ちを書いてみる
- 腹式呼吸をくりかえす
- 「なりたい自分」に目を向ける
- 音楽を聴いたり、歌を歌う
- 失敗したら笑ってみる
少し不調だなと感じたら、早めにやってみましょう。
出典:厚生労働省【こころと体のセルフケア】
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アレルギーとアトピーの違い
アレルギーとアトピーの違いについて説明します。
体にはウイルスや細菌など病気を引き起こす異物から体を守る免疫システムがあります。
免疫システムの中で、特定の異物に免疫が過剰に反応することがあります。
免疫が過剰に反応する特定の異物のことをアレルゲン(ダニやスギ花粉など)といいます。
免疫が過剰に反応してさまざまな症状が引き起こされるのがアレルギー反応疾患です。
主なアレルギー疾患には以下のようなものがあります。
ぜん息 | アトピー性皮膚炎 |
アレルギー性鼻炎 | アレルギー性結膜炎 |
花粉症 | 食物アレルギー |
重症薬疹 | 接触皮膚炎 |
じんましん | ラテックスアレルギー |
アナフィラキシー | 職業性アレルギー |
アトピーはアレルゲンに反応してアレルギー症状が皮膚にあらわれる疾患です。
したがって、アレルギー反応全てがアトピーになるわけではありません。
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アトピーと季節の関係
資生堂は「1000の真実」というコンテンツ情報を発信しています。
「1000の真実」はアトピーやアレルギーなど肌トラブルに悩む方向けのコンテンツです。
「1000の真実」の中にアトピーと季節の関係がわかる調査結果があります。
調査結果によると肌トラブルを感じる季節(月)は多い順に以下のようになっています。
- 夏(6月~8月頃) :33.2%
- 冬(12月~2月頃) :31.1%
- 春(3月~5月頃) :25.3%
- 秋(9月~11月頃) :14.0%
夏と冬に肌トラブルが多い原因はそれぞれ以下のようなものです。
- 夏:汗、暑さ、紫外線
- 冬:乾燥
したがって、それぞれの季節に合わせた対策を意識することが大切です。
一方、「1年中変わらない」と回答した方も49.5%いることが報告されています。
季節を問わず肌トラブルに悩む人が約半数いるということも承知しておきましょう。
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アトピーの原因まとめ
ここまでアトピーの原因についてお伝えしてきました。
アトピーの原因についての要点を以下にまとめます。
- アトピーの主な原因には肌の乾燥・ダニやハウスダスト・食べ物・ストレスがある
- 赤ちゃんのアトピーの原因には遺伝的にアトピーになりやすいアトピー素因がある
- アトピーの治療・改善には薬物療法・スキンケア・整理整頓・ストレス発散などがある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。