食中毒を引き起こす病原大腸菌の1つとして知られるo157(腸管出血性大腸菌)。
食中毒が流行する夏から秋にかけて、感染の報告が相次いでいます。
なかには「o157の感染はどうやってわかる?」「感染の原因や対処方法を知りたい」と感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、o157の初期症状について以下の点を中心に詳しく解説します。
- o157の初期症状
- o157の感染経路と原因食品
- o157感染予防のポイント
o157の初期症状にご興味のある方はご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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o157(腸管出血性大腸菌)とは?
はじめに、o157(腸管出血性大腸菌)について解説します。
o157は、下痢や腹痛を発生させる食中毒菌の1つです。
o157菌が生み出す「ベロ毒素」は出血性の大腸炎を引き起こすことから、「腸管出血性大腸菌」とも呼ばれています。
o157に感染すると、下痢や腹痛などの典型的な食中毒症状だけでなく、場合によっては血便や発熱などの症状も現れます。
また、牛や豚、羊などの家畜がおもな感染原因とされており、家畜の糞便に汚染された食物や水を摂取することによる感染がほとんどです。
o157には基本的な食中毒対策が有効とされ、食中毒が流行する夏季はとくに予防を心がけましょう。
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o157菌の特徴
次に、o157菌の特徴について、以下の3つをご紹介します。
- 感染力が強い
- 毒性が強い
- 潜伏期間が長い
o157は、サルモネラ菌や黄色ブドウ球菌などの食中毒菌に比べて、感染リスクが高いといわれています。
そのため、菌の特徴や性質を理解したうえで、適切な予防と対処を行うことが必要です。
①感染力が強い
o157菌の1つ目の特徴は「感染力の強さ」です。
一般的に食中毒の発生には100万個以上の菌が必要といわれていますが、o157は100個程度の菌で食中毒を引き起こします。
そのため、o157に感染した牛肉や豚肉、感染動物の排泄物によって汚染された水などを摂取すると、
簡単に感染してしまいます。
o157感染者の排泄物を介した二次感染のリスクもあるため、o157が流行する時季は感染対策を徹底しましょう。
②毒性が強い
2つ目は「毒性の強さ」です。
o157が体内に侵入すると、腸管内でベロ毒素と呼ばれる強力な毒素が生み出されます。
ベロ毒素は、フグ毒の30〜50倍の毒性を持つといわれており、o157感染による死亡例もあるほどです。
また、ベロ毒素は腸管の細胞壁を破壊して栄養を摂るため、出血性の下痢や血便などの重たい症状も現れます。
症状が軽いケースもありますが、まれに重篤な合併症を引き起こす可能性もあるため、まずは感染しないことが大切です。
③潜伏期間が長い
3つ目は「潜伏期間の長さ」です。
潜伏期間は感染原因や個人によって異なりますが、平均3〜8日程度といわれています。
ほかの食中毒菌の場合、数時間〜3日程度で症状が現れるのに対し、o157菌は発症までに最大14日ほどかかることもあります。
潜伏期間が長いため感染に気付くことが難しく、知らない間に感染を広げてしまう可能性もあります。
感染原因の特定も容易ではないため、o157が流行する夏季には感染予防を徹底しましょう。
食中毒が治るまでの期間について詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてお読みください。
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o157の初期症状
次に、o157の代表的な初期症状3つをご紹介します。
- 下痢
- 腹痛
- 血便
o157に感染するとほかの食中毒菌と同様に、下痢や腹痛などの食中毒症状が現れます。
まれに発熱や嘔吐の症状が見られるケースもありますが、初期症状は人によってさまざまです。
o157の特徴的な症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
①下痢
o157に感染した際の初期症状1つ目は「下痢」です。
o157は、腸管内の細胞壁を壊して栄養を摂取するため、刺激された腸管内の分泌液が増えることで下痢の症状が現れます。
下痢の症状が現れた場合は、脱水症状を起こさないよう十分な水分補給が必要です。
②腹痛
2つ目は「腹痛」です。
下痢より前に症状が現れる場合が多く、軽度の腹痛から寝込むほどの腹痛まで痛みの程度はさまざまです。
重度の腹痛になると、座っていることもままならずベッドの上をのたうち回るほどの痛みになることも。
軽い腹痛のあとに、時間差で鋭い痛みをともなう腹痛が発症するケースも報告されています。
o157が流行する季節は「ただの腹痛」と油断せず、医療機関の受診を検討しましょう。
③血便
3つ目は「血便」です。
血便は、o157感染の際に見られる特徴的な症状です。
o157は、腸管内で増殖する際に腸管内部の細胞壁を傷つけるため、感染時の便には血が含有されます。
血便や血性下痢など便の状態には個人差がありますが、血を含んでいることがo157の特徴です。
血便の症状が現れた場合はo157に感染している可能性が高いといえるため、すぐに医療機関を受診しましょう。
o157の感染経路
次に、o157の感染経路について、以下の2つをご紹介します。
- 経口感染
- 接触感染
o157は感染力が強いため、o157に汚染された食品や感染者の排泄物を介して容易に感染が広がります。
一般的に、咳やくしゃみによる空気感染はないといわれていますが、日常に感染リスクが潜んでいるため注意が必要です。
①経口感染
1つ目の感染経路は「経口感染」です。
経口感染は、o157に汚染された食材を摂取し、菌が体内に取り込まれることで発生します。
o157のおもな感染原因として挙げられるのが、牛や豚、羊などの家畜です。
そのため、十分に加熱されていない食肉や、家畜の糞便に汚染された井戸水などを摂取すると感染する可能性も高くなるといえます。
o157に汚染された食品を見極めることは難しいため、調理前の煮沸や加熱殺菌を徹底して感染リスクを減らしましょう。
②接触感染
2つ目は「接触感染」です。
接触感染とは、o157感染者の排泄物が体に付着し、菌が何らかの理由で口に入ることで起こる感染です。
直接排泄物に触れていない場合でも、トイレの便座やドアノブ、電気スイッチなどから菌を受け取ってしまうケースもあります。
o157は、基本的に人の手を介して感染が広がるため、トイレ使用後や食事の前には入念な手洗いと消毒が必要です。
排泄物の処理と手洗い消毒を適切に行い、二次感染を防ぎましょう。
o157の原因になる食品
ここでは、o157の原因となる以下2つの食品をご紹介します。
- 食肉
- 生食用の発芽野菜
o157は牛や豚などの大腸に生息しているため、感染動物の食肉、または家畜の糞便に汚染された食品から
感染する場合がほとんどです。
o157菌を含む可能性が高い食品をチェックし、食材選びや調理方法を工夫しましょう。
①食肉
まずは、o157の感染原因となる肉製品9つをご紹介します。
- 焼肉
- 牛生レバー
- ユッケ
- ハンバーグ
- 牛角切りステーキ
- 牛タタキ
- ローストビーフ
- ハンバーガー
- シカ肉
o157は、牛由来の食品から感染するケースが多く、いずれの場合も食品が十分に加熱されていなかったことが
原因とされています。
生肉をはじめ、加工された肉製品からo157菌が検出された事例もあるため、食肉を調理する際は十分に火を通すよう心がけましょう。
②生食用の発芽野菜
2つ目は、以下の生食用の発芽野菜です。
- キャベツ
- カイワレ大根
- メロン
- 白菜漬け
- ホウレンソウ
- サラダ
- 調理トウモロコシ
- きゅうり
o157に感染した動物が栽培中の野菜に触れた、感染した動物の排泄物を含んだ水が栽培に使用されたことが汚染の原因です。
また、食肉と同じ空間で保管されたり、同じ道具を使用して調理されたりすることで感染が広がるケースもあります。
生食用の発芽野菜は、しっかり洗浄を行う、加熱殺菌を行うなど安全に食べられるような工夫が必要です。
o157は加熱すれば感染しない?
次に、o157と加熱処理について解説します。
o157をはじめとする食中毒菌は熱に弱く、75度のお湯で1分以上加熱することで殺菌効果が得られるとされています。
ただし、加熱不十分で殺菌ができていなかった事例もあるため、高めの温度設定と長めの調理時間を意識するとよいでしょう。
なお、野菜に付着した菌を除去する場合には、100度のお湯で5秒間程度湯がきする方法が有効とされています。
また、生野菜や果物用の殺菌剤として「次亜塩素酸ナトリウム」の使用も認められています。
次亜塩素酸ナトリウムを使用する際は、「食品添加物」に分類されるものを選び、使用説明書に記載された濃度や、つけおき時間を厳守しましょう。
家族がo157に感染した際の対処方法
ここでは、家族がo157に感染した際の対処方法をご紹介します。
家族がo157に感染した場合は、ほかの家族も感染している可能性が高いため、すぐに医療機関を受診しましょう。
また、感染の原因となった食品の特定や手洗い消毒の徹底による二次感染予防も大切です。
とくに、調理前や排泄後の適切な手洗い消毒は、菌の拡散を防ぐことにつながります。
o157に感染した家族に下痢の症状がある場合は、湯船の使用を控えたり入浴の順番を最後にしたりして二次感染リスクを減らしましょう。
なお、タオルや食器からも感染する可能性があるため、感染者が出た際は可能な限り物の共用を控えるのが適切です。
食中毒の対処法について、詳しく知りたい方は、こちらの記事も是非ご覧ください。
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o157はどれくらいで治る?
次に、o157感染から治癒までにかかる時間について解説します。
o157は、初期症状が現れてから10日程度で治癒するのが一般的です。
症状の出方には個人差がありますが、代表的な症状である腹痛や下痢などは1週間程度で治まることが多いと報告されています。
まれに発熱や嘔吐などの症状が出るケースもありますが、軽度かつ一過性である場合がほとんどです。
しかし、o157が原因で合併症を発症した場合、入院をともなう長期の治療が必要になることもあります。
免疫力が低い状態でo157に感染すると合併症を引き起こすリスクが高くなるため、日頃から健康的な生活を意識することが大切です。
食中毒と発熱の関係に興味のある方は、こちらの記事も合わせてお読みください。
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o157感染予防のポイント
最後に、o157を予防する以下3つのポイントについて解説します。
- 清潔な環境を保つ
- 迅速な調理と冷却を行う
- 加熱処理を行う
o157には、「菌を付けない・菌を増やさない・菌を殺す」という基本的な食中毒予防が有効的です。
日頃から適切な食材選びや排泄物の処理、手洗いや消毒を徹底し、感染リスクを減らしましょう。
①清潔な環境を保つ
1つ目の予防ポイントは「清潔な環境を保つこと」です。
o157菌は人の手を介して感染を拡大させるため、まずは手洗い消毒を徹底して菌のいない状態を作りましょう。
とくに、外出からの帰宅時やトイレ使用後、調理前など菌を広げる可能性がある場合には丁寧な手洗いと消毒が必要です。
また、ドアノブや電気スイッチなどの人の手が触れやすい場所をこまめに消毒殺菌することも効果的とされています。
菌が住みづらい環境を維持し、o157の感染を予防しましょう。
②迅速な調理と冷却を行う
2つ目は「迅速な調理と冷却を行うこと」です。
o157菌を持つ食品を購入してしまった場合でも、迅速な処理で菌の増殖は抑えられます。
すぐに食べる予定がある食肉は、しっかり火を通して調理と加熱殺菌を行いましょう。
食肉を保存する場合は、冷凍庫を-15度以下に設定し、購入後できるだけ早く低温環境に置くことで、
菌の増殖スピードが遅くなります。
なお、食肉に付着した菌は、加熱調理後や冷凍保存中であっても少しずつ増殖するため、
早めに食べるよう注意しましょう。
③加熱処理を行う
3つ目は「加熱処理を行うこと」です。
o157菌は熱に弱いため、75度のお湯で1分間加熱すると死滅するといわれています。
o157に汚染されている可能性がある食品はもちろん、同じ環境で調理する野菜なども加熱しておくと安心です。
ただし、加熱しても十分に火が通っておらずo157に感染したケースも多いため、
火加減や調理時間を細かく確認しましょう。
なお、加熱処理の際は、よくかき混ぜたり、鍋底に空気を送ったりして、食品全体に熱を伝えると効果的
とされています。
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o157の初期症状まとめ
ここまでo157についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- o157の初期症状では食中毒と同様に下痢や腹痛が発生し、多くの場合血便や血性下痢をともなう
- o157菌は、菌に汚染された食肉や生食用の発芽野菜を介して体内に取り込まれ、
感染者の排泄物をとおして感染が広がる - 衛生的な環境の保持、迅速な調理と冷却、加熱処理を徹底することでo157の感染は予防可能
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。F