ホーム

認知症を学ぶ

down compression

介護を学ぶ

down compression

専門家から学ぶ

down compression

書籍から学ぶ

down compression

健康を学ぶ

down compression
健達ねっと>専門家から学ぶ>達人インタビュー>【専門家インタビュー】認知症看護認定看護師が現場で行っている認知症ケアとは?

【専門家インタビュー】認知症看護認定看護師が現場で行っている認知症ケアとは?

旭川医科大学病院 看護部

認知症看護 認定看護師 内山寛美様

旭川医科大学病院看護部では、11分野17名の認定看護師が活躍しています。その中で認知症看護認定看護師として現在現場で働いている内山寛美様に実際に行っている認知症ケアについて詳しくお伺いしました。

スポンサーリンク

視覚や聴覚に関する環境の重要性

 

編集部:今回、視覚や聴覚に関する環境の調整について(旭川医科大学病院看護部認定看護師委員会ニュースレター 2019年9月 第19号)というニュースレターを拝見させていただいたのですが、詳しく内容をお伺いしてもよろしいでしょうか。

内山様:はい。患者さんの周りに視覚や聴覚に関する情報が多いと、どの情報を優先するべきなのかという選択が難しくなってしまいます。

視覚に関しては、患者さんが入院している際に点滴が始まったことや点滴がいつ頃終わるのかのお知らせなどを分かりやすいところに書くのですが、それだけでは患者さんにとってあまり効果的ではありません。

ですので、患者さんがその大切な情報に目を向けていただくためにも、周りの環境を整備することが大事であるということになります。

また、聴覚に関しては、医師が今後治療をどうしていくかの説明や治療のメリットデメリットを説明する際に、説明場所の選択や患者さんが聞きやすい環境になっているかを確認するようにしています。

会話をする際にも、情報を統合的にとらえ解釈する力が落ちてきている患者さんが多いので、早口ではなく、理解したかどうかを確認しながらゆっくりお話をするようにしています。

編集部:患者さんをひとつのことに集中させるためにも身の回りを整えることは大事になってくるのですね。

スポンサーリンク

患者さんやご家族の意向を踏まえたケア

内山様:あと、視覚や聴覚の話ではないのですが、先生からの説明が終わったあとに少し時間をおいて、患者さんがどういう風に受け止めてどういう考えをお持ちなのかを聞くようにしています。

患者さんは医師の説明を受けた後、自身が望む生活像に近づけるのかを踏まえ、治療の選択をする必要があります。

そのため、退院後の生活ではどのようなイメージや目標を持っているのかを患者さん一人一人に確認するようにしています。

その目標に向かって、医療従事者の方々とタッグを組み、それぞれの専門職種でケアと治療を進めていくことが重要であると考えております。

患者さんが転院する場合も、患者さんやご家族の今後の目標や意向などの引継ぎを行うようにしています。

例えば、筋力が低下しリハビリテーション目的で転院される患者さんが多いのですが、その場合は現状どこのレベルで、今後はどこまでを目標としているのかを共有をするようにしています。

認知症看護認定看護師として

認知症看護認定看護師としての取り組み

編集部:認知症認定看護師として現在行っている取り組みはございますか。

内山様:はい。院内に老人看護専門看護師が2名おり、そのうち1名は摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格があります。老人看護専門看護師とソーシャルワーカーさんとチームを組んで、病棟を横断的に確認しながらせん妄や認知症を予防するためのケア方法を考えたり、各病棟の看護師さんにそれを伝えたりしています。

摂食・嚥下機能の面では、やはり食べることが出来ないと、栄養をとることが出来ず筋力も落ちてしまうので、患者さんの食べ物を飲み込む力を調べることは重要になってきています。

あとはせん妄の予防に関しても、せん妄の症状が起きてしまうと、入院期間が延長し、歩ける力があったのにあっという間に歩けなくなってしまうというケースがあります。

そのため、せん妄の予防や、たとえ発症しても短時間でせん妄から抜け出すにはどうしたらいいかなどを考えながら、チームで週に1回病棟を巡回しています。

編集部:栄養を摂取することやせん妄予防の観点からも患者さんをみているのですね。

内山様:そうですね。認知症の患者さんの中にも好きなものだけを食べて人生を全うしたいという考えの方もいます。食に関する価値観を踏まえながら、栄養サポートチームに相談し食種や栄養補助食品を検討するケースが増えています。また、低栄養はせん妄の誘発因子です。低栄養による軽度の意識障害が、記憶障害が進行したように見えることがあります。

ですので、他の専門職種の方とも巡回しながらケア方法などを考えております。

編集部:他にはどのようなことを行っているのですか?

内山様:他には、専門学校や大学で老人看護学の講義を行ったりもしていますね。

また、2021年度から院内で認知症ケアの年間教育計画を行っており、院内全体の認知症看護の質を高めることを目標に老人看護専門看護師とともに研修などを開いています。

認知症看護認定看護師になったきっかけ

 

編集部:内山様の認知症看護認定看護師になった経緯などはお伺いしてもよろしいでしょうか。

内山様:そうですね。私は2013年の冬に認知症看護認定看護師を薦められたのですが当時は精神科で働いていました。

上司の方からやってみませんか?と言われ、少し迷いはあったのですが、精神科での勤務期間が長かったので、その経験を生かせるかなと思い決断しました。

思っている言葉を上手く伝えられない精神科の患者さんのもどかしさは、認知症の患者さんと似ている部分があると感じ、そういった面で患者さんの辛い気持ちや本心を聞き取れるような役割を果たしたいと思いました。

編集部:実際働いてみてやりがいなどを感じるときはどのような時ですか。

内山様:患者さんから「ありがとう。」と言われた時が一番嬉しいですね。患者さんの意図を汲み取ることが出来た時はやはり嬉しく思います。

そのためにも、忙しい時もあるのですが、患者さんの前ではゆっくり喋ったり視線を合わせて喋ることを心がけることが大切であると感じます。

治療の説明を理解してもらえると、患者さんが安心した表情を見せてくれるので、その表情を見るととても嬉しいですね。

課題や最終的な目標

 

編集部:内山様の現在抱えている課題や最終的な目標などはございますか。

内山様:現在旭川市内に、認知症看護認定看護師が徐々に増えてきているので、その方々と連絡をとりながら、旭川市の認知症カフェに行くのも大事かなと思っております。

あとは認知症ケアや老人看護ケアの知識を深め、アセスメント力を磨くことも課題です。

現在老人看護専門看護師の方と共に働いており、その方の協力を得ることで成り立つケアもあるので、やはり認知症の分野だけではなく大きな概念で患者さんをみることが必要であると感じています。

認知症が原因だと思っていた患者さんの症状が、老年期が原因だったというケースもあるので、ケアの方向性を導くためにも老人看護という広い視野を持つことは大事だと考えております。

健達ねっとECサイト

健達ねっとをご覧いただいている方へのメッセージ

 

編集部:最後に健達ねっとのユーザー様に一言お願いします。

内山様:そうですね。

自分が認知症になると、これからどういう風に生活したらいいのか悩むと思います。言い出しにくいですが、その悩みを周りに伝えることも大切ではないかと考えています。

厚生労働省では、認知症の方への偏見をなくすため、認知症サポーターを育成する事業があります。2021年度には認知症サポーター数は、約1,300万人となりました。お住まいの地域の方々の認知症への理解が深まると、当事者や家族にとっては心強いですし、慣れ親しんだ土地での生活を維持しやすくなります。認知症の方を支援するための研修を受ける人が多くいることを伝えたいです。

ご家族の方にお伝えしたいことは・・・。

私は、2014年に初めて認知症カフェに参加させていただいたのですが、自分の家族が認知症になったことを周りの人に知られたくないという思いで他の地域のご家族の方がいらっしゃっていたこともありました。

ですので、ご家族の方も悩みなどがもしあった場合には、ぜひ地域包括支援センターや認知症と判断された先生に、我慢せずに相談していただきたいと思っております。

また、自分の親や兄弟を介護するとなった時に、健康だった頃を覚えているので、着替えや排泄がうまくできなくなってしまう姿や以前のようにコミュニケーションが取れないことにイライラすることはあると思います。

しかし、それは誰にでもあることなので、苛立ってしまう自分を卑下したりしないで、距離を置く時間を作ったり、周りに相談することが大切であると思います。

最後に介護士の方にお伝えしたいことは・・・。

チームで介護を行っているので、患者さんによってはこの介護士さんのケアは良くない、と言われる場合もたまにあると思います。

認知症の患者さんで特に前頭側頭型認知症の方は、一度特定のことを不快に感じると受け付けられないというときが多いです。

ですので、もし患者さんから苦手意識を持たれている介護士さんがいても、その人のケアが悪いということではなく、ケアを受け入れてくれる介護士さんに代わるなど、チーム全体でサポートしていくことが大切だと思います。ケアの振り返りを介護チーム全体で考える時間も必要ですが、まずはサポートをしていただきたいです。

拒絶されている介護士さんも辛いと思うので、その方を支援する職場風土をつくりあげることも大切なことだと思います

薬の使い方

旭川医科大学病院 看護部 認知症看護 認定看護師

内山 寛美うちやま ひろみ先生

スポンサーリンク