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健達ねっと>専門家から学ぶ>達人インタビュー>【専門家インタビュー】歯を失うと認知症になりやすい?口腔の健康状態と認知症の関係について紹介!

【専門家インタビュー】歯を失うと認知症になりやすい?口腔の健康状態と認知症の関係について紹介!

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野
教授 相田 潤様

東北大学大学院歯学研究科 国際歯科保健学分野
大学院生 木内 桜様

歯の本数が認知症発症を引き起こす可能性について、これまでメカニズムについて検証した研究はほとんどありませんでした。
そこで、今回は東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野教授 相田潤様、東北大学大学院歯学研究科 国際歯科保健学分野 教授 小坂健様、大学院生 木内桜様が行った、口腔の健康状態と認知症発症の関係性の研究についてインタビューを行いました。

プレスリリースはこちら

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研究内容について

編集部:歯を失うと認知症になるメカニズムについての調査内容と調査結果について教えてください

相田様、木内様:これまでの研究から、歯の本数と認知症の発症や認知機能について関連がある可能性が報告されています。
しかし、私たちの調査チームの知る限り、実際に人を対象とする研究で、そのメカニズムについて検証した研究はありませんでした。

そこで、日本各地で大規模に調査が実施されている、日本老年学的評価研究機構(JAGES)のデータの解析を行いました。
内容としては、歯の本数が、認知症発症と関連しているのか、また、友人や知人との交流などの社会的な要因や、野菜や果物摂取といった栄養に関する要因が、口腔の健康状態と認知症発症の間を仲立ちするかについて、調べました。

その調査の結果、歯が少ない人では認知症発症が多く、またその関連を友人や知人との交流などの社会的な要因や、野菜や果物摂取といった栄養に関する要因が部分的に説明することが分かりました。特に、男性では、友人や知人との交流などの社会的な要因が13.79%、女性では野菜や果物摂取といった栄養に関する要因が8.45%説明し、大きな役割を果たしていました。

今回の結果は、歯が少なくなると、うまく話せない、笑いにくい、同じものを食べにくいといった理由で人と会うのをためらったり、野菜など咬みにくい食べ物を避けがちになってしまったりすることが影響した可能性を考えています。

編集部:どういった方を対象とした調査なのでしょうか?

相田様、木内様:本調査は日本全国に暮らしている、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象とした調査になっています。
2010年に調査票を対象地域の方にお配りし、ご返送いただいた方を対象にデータを解析しました。
また、2010年調査に参加いただいた方を2013年、2016年と6年間追跡調査を行いました。
今回の研究では、その中でも認知機能が保たれている方を対象としました。

編集部:認知症予防としての口腔ケアの重要性を改めて感じたのですが、具体的にどういったケアが必要なのでしょうか?

相田様、木内様:できるだけ歯を残していくことが重要だと思います。
そのためには、歯を磨くときにはフッ化物の入っている歯磨剤を選んでいただくことが重要です。
近年では、1450ppmという高濃度のフッ素が入っている歯磨剤も薬局で購入できるので、ぜひ使っていただきたいです。また、定期的にお口の中を専門家である歯科医師や歯科衛生士にチェックしていただくのも重要だと思います。
もしお口の中で治療していない箇所があれば、近くの歯科医院で早めに相談してほしいです。
最近オーラルフレイルという概念が注目されていますが、私たちの研究チームで以前行った研究では、歯の本数、むせの自覚、口腔乾燥、咬みにくさといった口腔機能が主観的な認知機能の低下と関連していたといった調査結果も明らかになっています。
この結果からは、口腔の健康を維持することで認知症の手前の段階である主観的な認知機能低下を防ぐ可能性も示唆されています。

 

(東北大学プレスリリースhttps://www.tohoku.ac.jp/japanese/2021/04/press20210416-02-oral.html より)

 

ご家族やご友人との会話や、一緒に食事することは口腔の重要な機能の一つであり、使うことで口腔機能が維持されていくとも考えられています。
コロナ禍で一緒に友人や知人とお食事する機会が減っている方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひデジタルデバイスを活用すること等で交流する機会を持っていただけたらと思います。

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今後の目標について

編集部:今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?

相田様、木内様:今回は歯の本数に注目して研究を行いましたが、入れ歯やインプラントなどで口腔状態を維持・回復させることは、認知症の予防になるのかといった視点にも注目したいと考えています。

編集部:こちらの分野の最終的な目標を教えてください。
私たちの目標は人々が健康に暮らせる社会をつくっていくことです。その中でも、歯学研究科という特性を活かし、口腔の健康に着目して、健康な社会に貢献していきたいと考えています。

健達ねっとのユーザー様へ一言

編集部:健達ねっとのユーザー(認知症に不安を感じている方や、認知症の方の家族)に何かメッセージをお願いいたします。

木内様:一見遠く見える口腔と認知機能や認知症との関係が近年明らかにされつつあります。
新型コロナウイルス感染症の影響で歯科医院に行きにくいと感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひ身近な歯科の専門家にお口の状態について、相談してみてください。

相田様:認知症の12個の有力なリスク要因の1つが、人との交流がなくなることです。口の状態が悪いことで、人と会ったり食事をしたりすることをためらうことが、交流を減らし、認知症のリスクを高めることが今回の研究から示唆されました。会話や会食を楽しめる口の状態を維持して、健康を維持していただけたらと思います。

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東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野 教授

相田 潤あいだ じゅん

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