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お顔だけではなく、“全身の整え”をするエンゼルメイク
エンゼルメイクとは、「亡くなった人の身だしなみの整えをすること」です。
メイクという言葉が入っているため、お顔のメイクだけだと思う方が少なくないのですが、全身の整えをします。ナースなどケアを担当している人とご家族、縁者の方とで、亡くなった人の顔色の整え、シャンプー、清拭、爪切り、更衣などを行います。すっきりと清潔な上に、穏やかでその人らしい外見になることを目指すのです。
メイクという言葉が入っているため、お顔のメイクだけだと思う方が少なくないのですが、全身の整えをします。ナースなどケアを担当している人とご家族、縁者の方とで、亡くなった人の顔色の整え、シャンプー、清拭、爪切り、更衣などを行います。すっきりと清潔な上に、穏やかでその人らしい外見になることを目指すのです。
私は看護師時代の経験をきっかけに、2001年に「エンゼルメイク研究会」を発足し、これまでエンゼルメイクの検討を続けてきました。その活動成果は、看護職のみなさまに書籍や講演などで伝えていますが、ここでは広く一般のみなさまに知ってほしい、看取りやエンゼルメイクにまつわるお話を紹介します。
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エンゼルメイクは、貴重な看取りの一場面になりうるもの
高齢の男性・Aさんが亡くなったときの、エンゼルメイクの一場面です。
ご家族がAさんのお顔のそばに行って悲しみを表すなか、Aさんのご長男だけは病室の隅にひとり立っていました。
そんな彼に、担当の看護師はAさんの足の爪切りをお願いしました。
ご家族がAさんのお顔のそばに行って悲しみを表すなか、Aさんのご長男だけは病室の隅にひとり立っていました。
そんな彼に、担当の看護師はAさんの足の爪切りをお願いしました。
「自分以外の爪切りなんてやったことないからなあ」
と、あまり積極的ではないご長男でしたが、看護師の「ぜひ」というすすめを受けて行うことになりました。
彼は、Aさんの足の爪切りに慣れない手つきで取り掛かりましたが、そのうち、爪切りの手を止めては、Aさんの脛(すね)をゆっくりとさする、ということをし始めました。
その後、爪を切っては、Aさんの足に向かって何かを話しかけたのでした。切り終えてナースに爪切りを返しながら、彼はしみじみと「やってよかったです」と話したそうです。
ご長男にとって、この爪切りが実感のともなう貴重な看取りの場面になったのではないでしょうか。
その後、爪を切っては、Aさんの足に向かって何かを話しかけたのでした。切り終えてナースに爪切りを返しながら、彼はしみじみと「やってよかったです」と話したそうです。
ご長男にとって、この爪切りが実感のともなう貴重な看取りの場面になったのではないでしょうか。
ご家族は、ご遺体を生きているときと同様に気遣う
亡くなった人の身体を、ご家族や縁者の方は、「痛くないか、寒くないか、苦しくないか」と、生きているときと同様に気遣うということがさまざまな実例からわかってきました。
高齢の男性・Bさんは、口が開いた状態で亡くなりました。口を閉じることを説明した担当ナースに、ご家族は「無理に閉じてほしくない」と希望し、その理由として、「亡くなったときに開いていたなら、本人はそれが楽なのかもしれないから」とおっしゃったそうです。
長らくエンゼルメイクは、ナースが良かれと思うやり方で行われてきました。口が開いていれば閉じることが当然でした。しかし、ご家族に対して細かに希望を伺うことで、そこにさまざまな思いがあることがわかってきたのです。亡くなった後でも「痛みがあるかもしれない」と、痛み止めを希望されるご家族もいます。
看護師は、ご家族の希望を尊重して対応する構えでいます。「こうしてほしい」「こうしてほしくない」などの希望があれば、言葉を飲み込んでしまわずに、伝えてほしいと思います。
たとえば、こんなエンゼルメイクがおすすめ
前述の爪切りのほかに、たとえば次のようなエンゼルメイクがあります。基本的には看護師が準備を行い、その後を一緒に行うところがほとんどで、ご家族の方には可能な範囲で手を出していただく形が多いです。
手浴、足浴
洗面器にお湯をはり、そこに手や足を入れて洗ってさしあげます。おだやかに香りが立つ入浴剤や、エッセンシャルオイルを入れるのもおすすめです。「最後に父の手浴をしてあげられたことが、たいへん救いになっている」と、担当だった看護師にいつも話してくださる方もいます。
着衣のときのボタンかけや、靴下(あるいは足袋)を履かせる
最近は、ご本人のお気に入りだったワンピース、消防服、白衣、野良着など、思い思いの衣類を着けていただくことが多くなっています。その着衣の際に、ボタンをかける、靴下を履かせるなど、手を出して行った実感や、その記憶が、きっとのちの心の作業にプラスに働くことでしょう。
お顔のエンゼルメイク
顔は、その人らしさが凝縮されている部分です。そして、その人らしさのイメージは、ご家族や縁者のみなさまの記憶の中にあります。眉の形や唇の色などがどんなふうだったかを、具体的に言葉にしていただき、メイクに反映することがその人らしさにつながります。ご家族のみなさまで「こうだった」「ああだった」と話し合っていただくこと自体も、貴重な看取りの一場面になりえます。
マニキュア
「2人のお孫さんが、おばあさまの手の爪を片方ずつ塗った」など、お孫さんが行った話をよく聞きます。比較的手を出しやすい作業でもあるためだと思われます。
エンゼルメイク専用の義歯があることも知っておこう
歯が入ると一気にその人らしい表情になるため、臨終を迎えた方に義歯を入れようとするケースもあります。
しかし、「上下どちらかの歯がない」、「上下いずれもない」、あるいは「義歯はあるが、口腔内が変形したため入らなくなっている」などの事態になることが少なくありません。
そんなときに使える、エンゼルメイク専用の義歯があります。選択肢のひとつとして知っておくとよいでしょう。
【著者プロフィール】
1982年東京警察病院看護専門学校卒業
1982年看護師として東京警察病院、茨城県赤十字血液センターに勤務
1986年~1990年出版関係専門学校を経て、編集者として各出版社に勤務
1991年独立し執筆中心になる2001年エンゼルメイク研究会代表
1982年東京警察病院看護専門学校卒業
1982年看護師として東京警察病院、茨城県赤十字血液センターに勤務
1986年~1990年出版関係専門学校を経て、編集者として各出版社に勤務
1991年独立し執筆中心になる2001年エンゼルメイク研究会代表